【論文要約】自己肯定感は一生同じじゃない? ドイツの大規模研究が明かした心の変化
その自己肯定感、ずっと同じままだと思っていませんか?
『自己肯定感は人生を通してどう育っていくのか ドイツの大規模縦断調査が明かした生涯発達の軌跡』ウルリッヒ・オルト、ユルゲン・メース、マンフレート・シュミット(2015)
Ulrich Orth, Jürgen Maes, Manfred Schmitt(2015)“Self-esteem development across the life span: A longitudinal study with a large sample from Germany”
「自己肯定感」と聞くと、なんとなく“その人の性格の一部”みたいに感じませんか。
つまり、「高い人はずっと高いし、低い人はずっと低いんでしょ?」という、ちょっとした思いこみです。心の身長みたいに、一度決まったらそうそう変わらないものだと思ってしまう。けれど、実際はそう単純でもなさそうです。
人は年齢を重ねるなかで、仕事をしたり、人と比べて落ちこんだり、逆に「まあ、そんな日もあるか」と少し肩の力が抜けたりします。若いころには小さく見えた失敗が、大人になると「いや、あれくらい普通だったな」と思えることもありますよね。心は案外、同じ場所にじっとしていません。むしろ、人生の出来事に合わせて、少しずつ表情を変えていくものなのかもしれません。
今回紹介するのは、自己肯定感は一生のあいだでどう変わっていくのかを、大規模なデータをもとに追いかけた研究です。舞台はドイツ。しかも「なんとなくそう思う」ではなく、かなり大きな調査を通して、自己肯定感の変化をじっくり見ていったところが、この論文のおもしろいところです。
自己肯定感というと、つい「高いほうがえらい」「低い私はだめ」と、心の通知表みたいに受け取ってしまいがちです。けれどこの研究を読むと、自己肯定感はもっと“人生といっしょに動くもの”として見えてきます。ずっと同じではない。だからこそ、今の自分の感じ方だけで、自分の価値を決めつけなくてもいい。そんなふうに、少し気持ちがほぐれる論文です。
今回はこの研究を通して、自己肯定感が年齢とともにどう変わるのか、そしてその変化をどう受けとめたらいいのかを、できるだけわかりやすく見ていきます。

この論文をひとことで言うと
自己肯定感は、生まれてからずっと同じ高さで固定されているわけではなく、年齢とともにゆるやかに変わっていく。しかも、若いころに少しずつ高まり、中年期あたりで高くなりやすく、その後は年を重ねるなかで下がっていく傾向も見られる。
この論文をひとことで言うなら、「自己肯定感には人生なりの波がある」という話です。
「自分に自信がないのは性格だから一生このままかも」と思ってしまうことがありますが、この研究は、まあまあ落ち着いてくださいと言ってくれます。自己肯定感は、石に彫った文字みたいに固定されたものではなく、人生の経験や年齢の流れのなかで、じわじわ形を変えていくものかもしれない。
つまり、自分の今の感じ方だけを見て、「これが自分の最終形態です」と早めに決めなくてもいいわけです。人の心、思ったより途中経過です。

この論文の要点
1. 自己肯定感は、生まれてからずっと同じではなく、年齢とともに変化していく
この論文では、自己肯定感は「その人の固定キャラです」で終わるものではなく、人生の流れのなかで少しずつ動いていくことが示されました。心にもちゃんと年輪がある、という感じです。
2. 自己肯定感は、若い時期から中年期にかけて高まりやすく、高齢期には下がる傾向がある
ずっと右肩上がりというわけでも、ずっと横ばいというわけでもありません。思春期から成人期、中年期にかけて高まり、60歳ごろでピークを迎え、その後は低下する傾向が見られました。自己肯定感にも、人生なりの山と谷があるようです。
3. 今の自己肯定感だけで、「これが自分だ」と決めつけなくていい
この研究がやさしいのはここです。今の自己肯定感が低めでも、それを「一生このまま」の宣告みたいに受け取らなくてよい、ということです。自己肯定感は変わりうるものだから、今日の気分だけで人生の総決算をしなくて大丈夫です。これは日常の自己理解にもかなり使える知見です。

研究の背景:自己肯定感は年齢でどう変わるのか? これまでの研究でわかっていたこと
自己肯定感については、これまでにもたくさん研究されてきました。
「自己肯定感が高い人は、気分が安定しやすい」とか、「自己肯定感が低いと、落ちこみやすさと関係することがある」とか、そういう話はわりと知られています。けれど、ここでひとつ素朴な疑問が出てきます。
それで、自己肯定感って、人生のどの時期に高まりやすくて、どの時期に下がりやすいの? ということです。
たとえば、若いころは不安定で、大人になると少しずつ落ち着いていく気もします。けれど一方で、年齢を重ねれば自動的に自信がつくのかというと、そんなに単純でもなさそうです。人生には、進学もあれば就職もあり、家庭のこともあれば健康のこともある。心はそんなに一直線には育ってくれません。まるで「人生」という名前の道を歩いていたら、途中で坂道もあれば、急に向かい風の日もあるようなものです。
これまでの研究でも、自己肯定感の変化については少しずつ調べられてきました。ですが、子どもから高齢期までを広く見わたして、自己肯定感が一生の中でどう変わっていくのかを、しっかり確かめた研究はまだ十分ではありませんでした。つまり、「自己肯定感は変わるらしい」という話はあっても、「いつ、どう変わるのか」までは、はっきり見えていなかったのです。
そこでこの論文は、そのぼんやりした部分に光を当てようとしました。
自己肯定感はずっと同じなのか、それとも年齢とともに動いていくのか。もし変わるなら、どんな流れをたどるのか。そんな、わりと多くの人が気になっていたけれど、意外とはっきりしていなかった問いに、きちんと向き合った研究です。

研究方法:自己肯定感の変化をどう調べたのか? ドイツの大規模縦断研究の方法
この研究は、自己肯定感が年齢とともにどう変わっていくのかを調べるために、ドイツの大規模なデータを使って行われました。
ひとことで言えば、ある年齢の人をその場でちらっと見るだけではなく、同じ人たちを時間をかけて追いながら、「自己肯定感はどう動くのか」を見ていった研究です。
こういうテーマって、つい「20代はこう、40代はこう、60代はこう」と年齢ごとの人を並べて比べたくなります。もちろんそれも手がかりにはなるのですが、それだけだと「本当に年齢の影響なのか」「その世代特有のちがいなのか」が少しわかりにくいことがあります。そこでこの研究では、よりていねいに、長い時間のなかで自己肯定感の変化を追える形がとられました。
参加者はかなり多く、しかも年齢の幅も広いため、「若い人だけの話」でも「高齢の人だけの話」でもなく、人生全体の流れのなかで自己肯定感を見ようとしたところが、この研究の大きなポイントです。いわば、心の一瞬のスナップ写真ではなく、人生アルバムをめくるような研究です。
研究では、参加者に自己肯定感に関する質問に答えてもらい、そのデータをもとに、年齢とともにどんな変化が見られるのかを分析しました。
つまりこの論文は、「自己肯定感って大事らしいよね」で終わる話ではなく、では実際に、いつ高まりやすく、いつ揺らぎやすいのかを、かなりしっかり確かめようとした研究だと言えます。

この研究でわかったこと:自己肯定感はいつ高まり、いつ下がるのか?
この研究でまず見えてきたのは、自己肯定感は人生を通してずっと同じではなく、年齢とともにかなり動いていくということでした。
若いころから中年期にかけては、自己肯定感は全体として上がっていく傾向がありました。そしてその後、高齢期に入ると、少しずつ下がっていく流れが見られました。
ここでおもしろいのは、自己肯定感は若いころがいちばん高いわけではなかったという点です。
なんとなく、「若いころのほうが勢いがあるし、自信もありそう」と思ってしまいがちです。けれど実際には、年齢を重ねるなかで自己肯定感はじわじわ育ち、中年期あたりで高まりやすかったのです。心の中では、派手な花火が上がるというより、ことこと煮込まれたスープみたいに、時間をかけて深まっていくものなのかもしれません。
一方で、年を重ねれば重ねるほど、ずっと自己肯定感が高くなり続けるわけでもありませんでした。
高齢期になると、自己肯定感は下がる傾向が見られました。これもまた、人の心は単純な右肩上がりではないということを教えてくれます。体の変化、社会的な役割の変化、失うものの増加など、人生の後半にはいろいろな出来事があります。そうした変化のなかで、自分を前向きに感じる力にも揺れが出てくるのだろうと考えられます。
つまりこの研究が教えてくれるのは、自己肯定感には、その時々の人生に応じた“波”があるということです。
今の自分の自己肯定感だけを見て、「私はこういう人間だから」と決めつけるのは、少し早いのかもしれません。人の心は、思ったより固定された置き物ではなく、人生といっしょに少しずつ形を変えていく生きもののようです。

ここが面白い:自己肯定感は性格ではなく、人生とともに変わるものだった
この研究のいちばん面白いところは、自己肯定感を「その人の固定スペック」として見ていないところです。
つい私たちは、「あの人は自己肯定感が高い人」「私は昔から自信がないタイプ」と、自己肯定感を性格のラベルみたいに扱ってしまいます。まるで家電の説明書みたいに、「この人は初期設定でこうです」と決まっているような気分になるんですね。けれどこの研究は、そこにそっと待ったをかけてきます。
自己肯定感は、人生のある時点でぴたりと固まるものではなく、年齢や経験の流れのなかで少しずつ動いていくらしい。ここがまず、かなり大事です。
つまり、今のあなたが「なんだか自分に自信が持てないな」と感じていたとしても、それは“永遠の性格診断”ではないかもしれない。逆に、今うまくいっているからといって、ずっと同じ調子とも限らない。人の心は、思ったより流動的で、思ったより生きものっぽいのです。
しかも面白いのは、自己肯定感は若さの勢いでピークに達するわけではなかったことです。
世の中では、若い時期というと、可能性、きらめき、未来、拍手喝采、みたいなイメージがつきまといます。けれど実際には、自己肯定感はもっと地味に、もっとじわじわ育っていく。まるで「自分を好きになる」というより、「自分の扱い方に少しずつ慣れていく」ような感じです。これはかなり人間くさくて、私は好きです。派手ではないけれど、妙にほんとうっぽい。
そしてもうひとつ、この研究が静かに教えてくれるのは、人生の後半に入ると、自己肯定感はまた別の揺れ方をするということです。
ここには少し切なさもあります。年を重ねることは、単に経験値が増えるだけではありません。できることと同時に、失うものも増えていく。役割の変化もあれば、体の変化もある。そうした中で、自分を支える感覚にも揺らぎが出る。研究結果として読むと冷静な話なのですが、その奥には、ちゃんと人生の手ざわりがあります。
だからこの論文は、「自己肯定感はこうです」と結論を押しつけてくるというより、人の心は年齢とともに景色を変えるという、ごく当たり前なのに忘れがちなことを思い出させてくれます。
自己肯定感は、テストの点みたいに一度出たら固定される数字ではない。むしろ、人生の季節によって風向きが変わるもの。そう思うと、自分の今の状態に対して、少しだけやさしくなれる気がします。
「今の私がすべてではない」。この研究の面白さは、そんな一言にそっとたどり着かせてくれるところにあるのかもしれません。

私たちの生活にどう活かせる?:自己肯定感が低い時期もある 年齢による変化を知って気持ちを少し楽にする
この研究を日常生活にどう活かせるか。
いちばん大きいのは、今の自己肯定感だけで、自分の価値を決めつけなくてよくなることだと思います。
たとえば、自信が持てない時期ってありますよね。何をしてもうまくいかない気がしたり、人と比べてしょんぼりしたり、「私だけ置いていかれていませんか会議」が頭の中で勝手に始まったりする。そんなときは、つい「自分はもともとこういう人間なんだ」と思ってしまいがちです。けれどこの研究を読むと、自己肯定感はずっと同じではなく、年齢や人生の流れのなかで変わっていくものだと見えてきます。
そう思えるだけでも、「今の気分が、自分の全てではないかもしれない」と少し呼吸がしやすくなります。
それから、人間関係にも活かせるところがあります。
たとえば、若い人が自分に自信を持てずに揺れていたとしても、「気にしすぎだよ」で片づけないほうがいいのかもしれません。逆に、年齢を重ねた人が以前より弱気になっていたとしても、「大人なんだから大丈夫でしょ」と簡単には言えません。自己肯定感には人生の波がある。そう知っているだけで、自分にも他人にも、少しやさしい見方ができるようになります。人を見る目が、白黒の判定表から、季節のある風景に変わる感じです。
そしてもうひとつ大事なのは、自己肯定感を“上げなきゃいけない数字”のように扱いすぎないことです。
世の中には「自信を持とう」「もっと自分を好きになろう」という言葉があふれています。でも、心は筋トレの回数みたいに、今日10回やったから明日いきなり増える、というものでもありません。むしろ、自分の変化には波があって当然だと知ることのほうが、長い目で見ると大事だったりします。無理に「前向きな自分」になろうとするより、「今日はこういう日か」と受け止めるほうが、結果的に心にやさしいこともあります。
つまり、この研究が私たちの生活に教えてくれるのは、自己肯定感は固定された性格ではなく、人生の流れのなかで揺れ動くものだという見方です。
だから、今の自分を必要以上に決めつけなくていいし、誰かの揺れも頭ごなしに否定しなくていい。心には心の季節がある。そう思えるだけで、毎日のしんどさに対して、ほんの少しだけやわらかくなれる気がします。

少し注意したい点:自己肯定感は年齢だけで決まるわけではない この研究の限界とは
この研究はとても面白いですし、自己肯定感が人生のなかで変化していくという見方には、かなり納得感があります。
ただし、だからといって「年齢さえ見れば、その人の自己肯定感はだいたいわかる」と考えてしまうのは、少し早とちりかもしれません。
まず大事なのは、自己肯定感は年齢だけで決まるものではないということです。
たとえば同じ40代でも、仕事が安定している人もいれば、しんどい状況の人もいます。人間関係が支えになっている人もいれば、逆にそれで傷ついている人もいます。健康状態も違えば、置かれている生活環境も違う。つまり、年齢はたしかに大きなヒントではあるけれど、それだけで心の中身を説明しきれるわけではありません。人の人生は、年齢の数字だけで読むには、ちょっと具だくさんすぎます。
それから、この研究はドイツの大規模調査をもとにしています。
これは強みでもあるのですが、一方で、そのまま世界中の人にぴったり当てはまるとは限らないという点には注意が必要です。国が違えば文化も違いますし、「自分をどう見るか」「自信をどう持つか」の感覚も少しずつ変わります。つまり、「ドイツでこうだった。よって全人類みな同じ」とまでは言えません。論文は魔法の水晶玉ではなく、あくまでかなり信頼できる“ひとつの大きな窓”くらいに考えるのがちょうどよさそうです。
さらに、自己肯定感が高いほうが絶対によい、低いほうが絶対に悪い、と単純に言い切れないところもあります。
自己肯定感が高いことはたしかに大切ですが、それがそのまま「いつも元気」「いつも成功」「悩みゼロ」を意味するわけではありません。逆に、一時的に自己肯定感が下がっているからといって、その人の価値まで下がるわけでもありません。ここをうっかり混同すると、「自己肯定感が低い私はだめだ」と、論文を読んだのに逆に落ちこむという、ちょっと悲しい展開にもなりかねません。研究を読んでまで自分を責めるのは、さすがに論文側も本意ではないはずです。
つまり、この研究はとても参考になるけれど、「年齢によって自己肯定感には傾向がある」くらいの受け取り方がちょうどよいのだと思います。
人の心には流れがある。でも、その流れは一人ひとり少しずつ違う。そう考えておくと、この論文の面白さをちゃんと味わいながら、読みすぎず、決めつけすぎず、ちょうどよく自分の生活に引き寄せることができます。

まとめ:自己肯定感は一生同じではない 研究からわかる心の変化
この論文が教えてくれたのは、自己肯定感は一生ずっと同じではないという、とても大事で、そして少しほっとする事実でした。
私たちはつい、「自分に自信がないのは性格だから」とか、「昔からこうだから、たぶんこれからもずっとこうだ」と思ってしまいがちです。けれど、この研究はそこにそっと首を振ります。自己肯定感は、石のように固まったものではなく、人生の流れのなかで少しずつ形を変えていくものらしいのです。
若いころから中年期にかけて高まりやすく、その後はまた下がる傾向が見られる。こう聞くと、「じゃあ今の私はどのへんだろう」と、自分の心の現在地を地図で見たくなりますよね。けれど、この論文のいちばんよいところは、「あなたは今ここです」ときっちり判定することではなく、人の心にはその時々の季節があると教えてくれるところにあります。
調子がいい時期もあれば、自分を見失いやすい時期もある。人と比べてしょんぼりする日もあれば、「まあ、今日はこれでよし」と思える日もある。そういう揺れを、ただの弱さや欠点としてではなく、人生の流れのひとつとして見られるようになると、少しだけ自分にやさしくなれます。心を通知表みたいに扱わなくていい、と言い換えてもいいかもしれません。
もちろん、年齢だけですべてが決まるわけではありません。人生はそんなに単純ではないですし、人それぞれ事情も違います。でも、それでもなお、この研究には読む価値があります。なぜなら、今の自己肯定感だけで、自分という人間のすべてを決めなくていいと教えてくれるからです。これは静かな話ですが、なかなか力があります。大声で励まされるより、こういう研究のほうが、かえって心に残ることもあります。
自己肯定感は、上げるべき点数というより、人生とともに揺れながら育っていく感覚なのかもしれません。そう考えると、今日ちょっと自信がなくても、そこですぐに人生の判決を下さなくてよくなります。人の心は、思ったより途中です。
そしてたぶん、それは悪いことではありません。

あとがき
この論文を読んでいて、いちばん心に残ったのは、「自己肯定感って、思っていたよりもずっと生きものっぽいな」ということでした。
私たちはつい、自分の心を固定されたものとして見てしまいます。
「自分は昔から自信がない」「私はこういう性格だから仕方ない」「もう今さら変わらない」みたいに、わりと早い段階で、自分に説明書を貼ってしまうんですね。しかもその説明書、だいたい少し厳しめです。優しくない。もうちょっとソフトな紙で作ってほしい。できれば角丸でお願いしたい。そんな気持ちになります。
でも、この研究は、その貼りっぱなしのラベルを静かにはがしてくれる感じがありました。
自己肯定感は、一生ずっと同じではない。若いころから中年期にかけて高まりやすく、高齢期にはまた下がる傾向もある。そう聞くと、なんだか少し安心します。なぜかというと、「今の自分の感じ方だけで、自分の全部を決めなくていい」と思えるからです。
私はこの手の研究を読むたびに、人生は一直線ではないなと思います。
元気な時期もあれば、妙にしょんぼりする時期もある。昨日まで平気だったことが今日はやけに刺さったり、昔は大事件だったことが今では「まあ、そんなこともあったな」で済んだりする。心って、ほんとうに気まぐれです。でも、この気まぐれさは、だめなことではなくて、むしろ生きている証拠みたいなものなのかもしれません。
今回の論文は、自己肯定感を「高いか低いか」でさばく話ではなく、「人の心には流れがある」と教えてくれるところがよかったです。
ここが私はとても好きでした。世の中には、「自信を持とう」「もっと自分を好きになろう」と、まるで明日から急にそうできるかのように言ってくる言葉がたくさんあります。でも実際には、心はそんなにテキパキしていません。やる気のある日もあれば、布団と和解したい日もある。前向きな言葉より、こういう研究のほうが、かえって人を責めないことがあります。
あと、この論文を読んでいて思ったのは、人を理解するうえでも年齢や人生のタイミングってやっぱり大事なんだな、ということでした。
若いころの不安定さにも意味があるし、年齢を重ねたあとの揺らぎにもまた別の重みがある。そう考えると、自分にも他人にも、少し見方がやわらかくなります。人はそれぞれ、その時期その時期の坂道を歩いているんだなと思うのです。しかもその坂道、たまに思っていたより急です。できれば途中にベンチを置いておいてほしいくらいです。
「アドラーの昼寝」では、論文をただ要約するだけではなく、読んだあとに少しだけ自分の見え方が変わるような記事を書けたらいいなと思っています。
今回の論文も、まさにそういう一篇でした。自己肯定感が低い日があっても、それで人生の判決が下るわけではない。今の自分は、まだ途中かもしれない。そう思えるだけで、心の中の空気が少しやわらぐ気がします。
人の心は、完成品というより、ずっと途中のものなのだと思います。
そしてたぶん、それは欠陥ではなく、希望です。
この論文は、そのことを静かに教えてくれる、なかなかいい研究でした。

制作ノート
出典:Ulrich Orth, Jürgen Maes, Manfred Schmitt(2015)“Self-esteem development across the life span: A longitudinal study with a large sample from Germany”
本記事は、GPT-5.4 Thinking を用いて下書きを作成したうえで、当サイト管理人・阿部牧歌が内容を確認し、表現や流れを整えながら仕上げています。機械の速さと、人の目と感覚の両方を生かしながら、読みやすく信頼できる記事づくりを目指しています。




