ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)の論文一覧:自尊心の温度を測っていたら、人生まで見えてきた件

ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)の論文を読む女性
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  1. ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)のプロフィール

ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)のプロフィール

ウルリッヒ・オルトさんは、ひとことで言うと、「自己肯定感って、人生の中でどう育って、どう揺れて、どう効いてくるの?」を、長い時間をかけて追いかけてきた心理学者です。

現在はスイスのベルン大学で、発達心理学の教授を務めています。ベルン大学の公式プロフィールでも、研究関心として「自尊心の発達」と「パーソナリティの発達」が挙げられています。つまり、オルトさんは「人は自分をどう評価するようになるのか」「年齢を重ねると、心の土台はどう変わるのか」というテーマを、かなり本気で見つめてきた人です。

この人の研究のおもしろいところは、自己肯定感をただの「気分のよさ」として見ないところです。たとえば、「今日は自分、けっこういい感じ」と思う日もあれば、「自分なんて紙コップより頼りないのでは」と感じる日もありますよね。オルトさんは、そういう日々の感覚をふわっとした人生相談で終わらせず、長期間のデータを使って、「自己肯定感は人生のどの時期に高まり、どの時期に下がりやすいのか」を調べてきました。

有名な研究では、自己肯定感は思春期から大人になるにつれて上がっていき、中年期、だいたい50代から60代あたりで高まり、その後の老年期には下がりやすくなる、という流れが示されています。つまり自己肯定感は、冷蔵庫の奥に置いたプリンみたいに最初から固定されているものではなく、人生の経験、人間関係、仕事、健康、年齢などと一緒に、じわじわ形を変えていくものなんですね。

また、オルトさんは「自己肯定感が低いと、うつになりやすいのか」「人間関係と自己肯定感はどちらが先に影響するのか」といったテーマにも取り組んでいます。ここがまた、なかなか人間くさいところです。自己肯定感というと、「自信を持ちましょう!」で話が終わりがちですが、オルトさんの研究はもう少し慎重です。「自信がないからしんどくなるのか」「しんどい経験が自信を削るのか」「人とのつながりが自分を支えるのか」など、心の中の糸を一本ずつほどくように見ていきます。研究者版の“心の毛玉ほぐし職人”と言ってもよいかもしれません。

研究の方法としては、長い期間にわたって同じ人たちを追跡する研究をよく扱っています。これは、いわば「心の定点カメラ」です。一回だけアンケートを取って「はい、あなたの自己肯定感はこうです」と決めつけるのではなく、時間をかけて変化を見る。だからこそ、「自己肯定感は年齢とともにどう変わるのか」「性格や人間関係とどう関係するのか」という、人生サイズの問いに近づけるわけです。

リチャード・W・ロビンスさんとの共同研究もよく知られており、自己肯定感の発達についての論文や章を発表しています。Google Scholarでも、若年成人期から老年期までの自己肯定感の発達を扱った論文などが代表的な業績として確認できます。

まとめると、ウルリッヒ・オルトさんは、「自己肯定感は高ければそれで万歳」ではなく、「いつ、どう育ち、何に影響され、人生にどう関わるのか」を丁寧に調べてきた研究者です。

自己肯定感という言葉は、現代では少しキラキラした自己啓発ワードとして使われることもあります。でもオルトさんの研究を見ると、それはもっと地味で、もっと生活に近いものだとわかります。朝起きたときの自分へのまなざし、人との関係の中で感じる安心感、仕事や失敗を通して変わる自分への評価。そういう小さな積み重ねを、きちんと研究のテーブルに乗せてきた人なのです。

つまり、オルトさんはこう言っているようにも見えます。

「自己肯定感は、根性で一気に上げるものではありません。人生の中で、育ち、揺れ、また育っていくものです」

なんだか、心の盆栽職人みたいですね。派手な花火ではなく、長い時間をかけて枝ぶりを見ていく。ウルリッヒ・オルトさんは、そんなふうに人間の自己肯定感を見つめてきた心理学者です。

参考文献・確認先:ベルン大学:Ulrich Orth 公式プロフィール / Google Scholar:Ulrich Orth 論文・引用情報 / PubMed:Ulrich Orth 関連論文 / ORCID:Ulrich Orth 研究者識別情報

阿部牧歌(管理人)
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1.『自己肯定感の低さは、思春期から若年成人期の抑うつにつながるのか』オース、ロビンズ、ロバーツ(2008)

Orth, U., Robins, R. W., & Roberts, B. W. (2008). Low self-esteem prospectively predicts depression in adolescence and young adulthood. Journal of Personality and Social Psychology, 95(3), 695–708. DOI:10.1037/0022-3514.95.3.695

この研究は、“自分を低く見る気持ち”は、ただの気分ではなく、あとから心の不調につながるかもしれない大事なサインだと教えてくれる論文です。落ち込んだから自信がなくなるだけではなく、自信のなさが先に心を削っていくこともある。だからこそ、自尊心は甘やかしではなく、心の土台として大切なんだ。そんなことを、静かに、でもかなり強い説得力で伝えてくる一本です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感の低さはなぜ危ないのか? 若者のうつを予測した心理学研究
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2.『自己肯定感の低さは、うつや不安を招くのか? 縦断研究を統合したメタ分析』ソヴィスロ、オース(2013)

Sowislo, J. F., & Orth, U. (2013). Does low self-esteem predict depression and anxiety? A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 139(1), 213–240. DOI:10.1037/a0028931

「自己肯定感が低いと不安やうつになりやすいの? それとも逆?」という、心のぐるぐる論争に大人数の研究をまとめて決着をつけにいった論文です。77本のうつ研究と18本の不安研究を集めて見ると、どうも先に転びやすいのは“低い自己評価”のほう。しかも、うつにはかなりはっきり、不安にもじわっと効いてくる。自分へのダメ出しが、ただの口ぐせでは済まないかもしれない。そう思うと、続きを読みたくなる一本です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感の低さは、なぜうつや不安につながるのか? 長期研究のメタ分析で見えた心のしくみ
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3.『自己肯定感と人とのつながりは、どう結びついているのか 縦断研究のメタ分析から見えてきたこと」』ミシェル・A・ハリス、ウルリッヒ・オルト(2020)

Harris, M. A., & Orth, U. (2020). The link between self-esteem and social relationships: A meta-analysis of longitudinal studiesJournal of Personality and Social Psychology, 119(6), 1459–1477. DOI:10.1037/pspp0000265

「自己肯定感が低いから人づきあいがうまくいかないのか、それとも人間関係がしんどいから自己肯定感が下がるのか」。この論文、なんとその“どっち問題”に正面から挑みます。しかも結論は、「たぶん両方です」。良い関係は自己肯定感を育て、自己肯定感はまた関係を少し良くする。心と人間関係が、たがいに背中を押し合っている感じです。ひとりで落ち込んでいるつもりの心が、実はかなり“人とのつながり”でできている。そこが、じわっと面白い論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感の研究からわかった、人間関係が心に与える意外なしくみ
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4.『4歳から94歳まで、自尊心はどう育つのか 縦断研究をもとにしたメタ分析』ウルリッヒ・オース、ルース・ヤセミン・エロル、エヴァ・C・ルチアーノ(2018)

Orth, U., Erol, R. Y., & Luciano, E. C. (2018). Development of self-esteem from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 144(10), 1045–1080. DOI:10.1037/bul0000161from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies.

「自己肯定感って、年をとれば勝手に育つんですか?」という素朴な疑問に、この論文はかなり本気で答えます。4歳から94歳までをまとめて見るという、なかなか壮大な調査で見えてきたのは、自尊心はずっと一直線ではないということ。子ども時代から少しずつ育ち、大人になるにつれてぐんぐん伸び、60代あたりでいちばん高まり、その後は少しずつ下がっていく。心の自信にも、ちゃんと人生の地形があるんですね。自尊心の一生を、年表みたいに見せてくれる、おもしろくて頼もしい論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ自尊心は年齢によって変わるのか? 研究が示した3つのポイント
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5.『自己肯定感は人生を通してどう育っていくのか ドイツの大規模縦断調査が明かした生涯発達の軌跡』ウルリッヒ・オルト、ユルゲン・メース、マンフレート・シュミット(2015)

Orth, U., Maes, J., & Schmitt, M.(2015). Self-esteem development across the life span: A longitudinal study with a large sample from Germany. Developmental Psychology, 51(2), 248–259. DOI:10.1037/a0038481

「自己肯定感って、年をとれば勝手に育つんでしょ?」と思ったら、この論文はわりと冷静に「そう単純でもないです」と返してきます。ドイツの大規模な縦断データを追うと、自尊心は若い頃から中年にかけてじわじわ育ち、60歳前後でピーク、その後は少し下がる流れが見えてきます。心にもちゃんと“人生の地形”がある。そんなことを、数字でしっかり見せてくれる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感は一生同じじゃない? ドイツの大規模研究が明かした心の変化
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6.『自己肯定感は人生を通してどう育つのか そしてそれが大切な人生の結果にどんな影響を与えるのか』ウルリッヒ・オース、リチャード・W・ロビンス、キース・F・ワイダマン(2012)

Orth, U., Robins, R. W., & Widaman, K. F. (2012). Life-span development of self-esteem and its effects on important life outcomesJournal of Personality and Social Psychology, 102(6), 1271–1288. DOI:10.1037/a0025558

「自己肯定感って、気分の話でしょ?」と思っていたら、この論文はそこに人生まるごと乗せてきます。自己肯定感は思春期から中年にかけてじわじわ育ち、50代あたりで山のてっぺんへ。そのうえで、人間関係の満足、仕事の満足、気分の安定、心身の健康にまでじわっと影響していくらしい。つまり自尊心、ただの“気持ち”ではなく、人生のあちこちに顔を出す名脇役。読むと「そんなに働いてたの君?」と言いたくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感は年齢とともにどう変わる? 人生の流れの中で見えてくる心の育ち方
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7.『「傷つきやすい自己肯定感」とは何か? 低い自己肯定感・不安定な自己肯定感・条件つきの自己肯定感が、抑うつ症状にどう影響するかを比較した縦断研究』ジュリア・フリーデリケ・ソヴィスロ、ウルリッヒ・オルト、ラウレンツ・L・マイヤー(2014)

Julia Friederike Sowislo, Ulrich Orth, Laurenz L. Meier(2014). What Constitutes Vulnerable Self-Esteem? Comparing the Prospective Effects of Low, Unstable, and Contingent Self-Esteem on Depressive SymptomsJournal of Abnormal Psychology, 123(4), 737-753. DOI:10.1037/a0037770

「自己肯定感って、低いのが問題なん? それとも日によってグラグラするのが問題なん?」と、ちょっと心の会議を始めたくなる論文です。Sowisloらは、自尊心の“低さ”“不安定さ”“何かに左右されやすさ”を比べて、あとから抑うつにいちばん効いてきやすいのはどれかを検討。読むと、自己肯定感の弱点が“ぼんやりした不安”から“かなり具体的な話”に変わってきます。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】傷つきやすい自己肯定感の正体とは? 研究からわかった“落ち込みやすさ”の意外なしくみ
【論文要約】傷つきやすい自己肯定感の正体とは? 研究からわかった“落ち込みやすさ”の意外なしくみ
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