ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)の論文一覧:自尊心の温度を測っていたら、人生まで見えてきた件
ウルリッヒ・オルト(Ulrich Orth)のプロフィール
ウルリッヒ・オルトさんって、ひとことで言うと、「自尊心って結局どう人生に効いてくるの?」を、まじめに、でも執念深く追いかけてきた心理学者です。現在はスイスのベルン大学の心理学研究所で教授を務めていて、研究テーマとしては自尊心の発達とパーソナリティの発達が公式に挙げられています。
「自尊心」と聞くと、なんとなく自己啓発コーナーの棚に並んでいそうな言葉ですが、オルトさんはそこをふわっと済ませません。
「自分を低く見積もることは、あとから抑うつにつながるのか?」
「自尊心は年齢とともにどう変わるのか?」
そんな問いを、長期データやメタ分析で、じっくり煮込むタイプの研究者です。たとえば、低い自尊心が抑うつのリスク要因になることを扱った研究や、自尊心と抑うつの関係を整理した総説で広く知られています。
つまり、研究者界隈でたとえるなら、
「気分で“たぶんそう”とは言わない人」です。
“なんとなく自信がないとつらくなるよね”を、
「ではその“なんとなく”を、10年単位のデータで見てみましょう」
と本当にやってしまう。ここがオルトさんの面白いところです。論文の題名は静かなのに、やっていることはかなり熱いです。

1.『自己肯定感の低さは、思春期から若年成人期の抑うつにつながるのか』オース、ロビンズ、ロバーツ(2008)
Orth, Robins, & Roberts (2008), Low self-esteem prospectively predicts depression in adolescence and young adulthood
この研究は、“自分を低く見る気持ち”は、ただの気分ではなく、あとから心の不調につながるかもしれない大事なサインだと教えてくれる論文です。落ち込んだから自信がなくなるだけではなく、自信のなさが先に心を削っていくこともある。だからこそ、自尊心は甘やかしではなく、心の土台として大切なんだ。そんなことを、静かに、でもかなり強い説得力で伝えてくる一本です。


2.『自己肯定感の低さは、うつや不安を招くのか? 縦断研究を統合したメタ分析』ソヴィスロ、オース(2013)
Sowislo & Orth (2013), Does low self-esteem predict depression and anxiety? A meta-analysis of longitudinal studies
「自己肯定感が低いと不安やうつになりやすいの? それとも逆?」という、心のぐるぐる論争に大人数の研究をまとめて決着をつけにいった論文です。77本のうつ研究と18本の不安研究を集めて見ると、どうも先に転びやすいのは“低い自己評価”のほう。しかも、うつにはかなりはっきり、不安にもじわっと効いてくる。自分へのダメ出しが、ただの口ぐせでは済まないかもしれない。そう思うと、続きを読みたくなる一本です。

