ヴェヤ・シーキス(Veya Seekis)の論文一覧:鏡の前のモヤモヤを追いかけていたら、人生の空気まで映してきた論文たち
ヴェヤ・シーキス(Veya Seekis)のプロフィール
ヴェヤ・シーキスさんは、オーストラリアのグリフィス大学で心理学を教えている研究者です。現在は、同大学の応用心理学部で上級講師として紹介されています。博士号もグリフィス大学で取得しており、研究者としても教育者としても、グリフィス大学を拠点に活動している方です。
ひとことで言うなら、ヴェヤ・シーキスさんは「SNS時代の“見た目しんどい問題”に、心理学のライトを当てている先生」です。
たとえば、スマホを開いた瞬間に、きれいな人、細い人、筋肉むきむきの人、加工ばっちりの人が、画面の中で大名行列をしてくることがありますよね。すると人は、「自分の体、これでいいのかな……」と、心の中で小さな会議を始めてしまう。シーキスさんは、まさにそのあたりを研究しています。
研究テーマの中心は、身体イメージ、自分への思いやり、SNS、若者の心です。特に、思春期から若い大人の時期にかけて、SNSや外見への比較がどのように不安や自己評価に影響するのか、そして「自分にやさしくする力」がそのしんどさをどう和らげるのかを調べています。学術誌のプロフィールでも、研究関心として身体イメージ、自分への思いやり、SNS、それらが若者に与える影響が挙げられています。
ここでいう「自分への思いやり」とは、ざっくり言えば、落ち込んでいる自分に対して「なんでこんな自分なんだ」とムチを振るのではなく、「まあ、つらいよね。ここから少し整えようか」と声をかける力のことです。心の中に、鬼監督ではなく、ちょっと優しい保健室の先生を住まわせる感じですね。
代表的な研究には、身体への不満がある若い女性を対象に、自分への思いやりを高める短いワークショップとオンラインでのやりとりを組み合わせた介入研究があります。この研究では、参加者の外見比較、不安、身体への不満などが下がり、身体への感謝や自分への思いやりが高まる傾向が示されました。
また、2017年の論文では、身体イメージの悩みが引き起こされた場面で、「自分への思いやりを書く課題」と「自尊心を高める書く課題」を比べています。つまり、「自分はすごい!」と持ち上げるより、「しんどい自分にもやさしくしていい」と受け止めることに、どんな効果があるのかを見た研究です。なかなか現代的です。心の筋トレにも、プロテイン系とお味噌汁系があるなら、シーキスさんはお味噌汁系の効き目をじっくり見ている感じです。
近年は、TikTokなどの短い動画が若い女性の外見への恥ずかしさや気分にどう影響するかも研究しています。美容系の動画、自分への思いやりを促す動画、旅行系の動画などを比べて、SNSの中身が心にどんな味付けをするのかを調べているわけです。もはやスマホの画面は、ただの画面ではなく、心に調味料をふりかけてくる小さなキッチンなのかもしれません。
教育面では、グリフィス大学で心理学の入門科目を担当し、社会心理学や青年期の発達に関する授業にも関わってきたことが確認できます。つまり、研究室で論文を書くだけでなく、学生に「人の心って、こういうふうに動くんですよ」と伝える先生でもあります。
まとめると、ヴェヤ・シーキスさんは、現代人が抱えやすい「見た目への不安」「SNSによる比較」「自分への厳しさ」といったテーマに向き合いながら、「もっと自分にやさしくしてもいいのでは?」という道を研究している心理学者です。キラキラしたSNSの裏側で、心がこっそり擦りむいている人たちに、心理学のばんそうこうを届けようとしている先生、と言ってもよさそうです。
参考文献・確認先:グリフィス大学:ヴェヤ・シーキス 公式プロフィール / グリフィス大学:ヴェヤ・シーキス 研究業績一覧 / Google Scholar:ヴェヤ・シーキス 論文・引用情報 / PubMed:Veya Seekis 関連論文

ヴェヤ・シーキス(Veya Seekis)の研究から学べること
ヴェヤ・シーキスさんの研究から学べることは、ひとことで言うと、「自分の見た目にダメ出しをするより、自分に思いやりを向けたほうが、心はずっと回復しやすい」ということです。
これ、かなり現代的なテーマです。
私たちは毎日、いろいろな“見た目の圧”にさらされています。鏡を見れば「ここが気になる」、写真を見れば「なんか顔が違う」、SNSを開けば、なぜか全員が発光している。肌はつるつる、髪はさらさら、体型はきれい、部屋までおしゃれ。こちらは洗濯物の山を背景に、寝ぐせと現実を抱えているというのに、画面の中では美のオリンピックが開催されています。
シーキスさんは、オーストラリアのグリフィス大学で心理学を研究している方で、研究関心として、からだの見方、自分への思いやり、SNSが若者に与える影響などが紹介されています。グリフィス大学の研究者情報では、応用心理学部の上級講師・研究者とされています。
ここでいう「からだの見方」とは、ざっくり言えば、自分の体や見た目をどう感じているか、ということです。「自分の体が好き」「まあ悪くない」と思える人もいれば、「ここが嫌」「もっと変えなきゃ」と感じる人もいます。特に若い人にとって、見た目への悩みは、心の中でなかなか存在感のある住人です。しかもこの住人、家賃を払わないくせに声が大きいんです。
シーキスさんの研究で大切なのは、「見た目に悩む人に、もっと自信を持ちなさい!と叫ぶだけでは足りない」と考えているところです。
もちろん、自信は大切です。でも、自信というのは、気合いで急に出てくるものではありません。「自信を持て!」と言われて持てるなら、世の中の悩み相談は半分くらい終了しています。現実には、自信を持とうとしても、心の奥から「でも、ここが嫌なんだよな」と小さな反論係が出てきます。なかなか手強い係長です。
そこでシーキスさんが注目しているのが、「自分への思いやり」です。これは、自分を甘やかすことではありません。自分の見た目が気になったときに、「そんなことで悩む自分はダメだ」と責めるのではなく、「気になるよね。そう感じるのも自然だよ。でも、自分の価値は見た目だけで決まらないよ」と、自分に少しやさしく声をかける姿勢です。
シーキスさんたちの2017年の研究では、見た目への不安を引き起こす場面を読んだ女子大学生に、自分への思いやりを書く課題、自尊心を高める課題、比較用の課題のいずれかを行ってもらいました。その結果、自分への思いやりを書く課題は、直後の「自分の体への appreciation」、つまり体への前向きな受け止めを高め、2週間後にも一定の効果が見られたと報告されています。
ここから学べる一つ目のことは、「見た目の悩みには、自己攻撃ではなく、自己思いやりが効く可能性がある」ということです。
私たちは、鏡の前でつい自分に厳しくなります。「顔がむくんでる」「太ったかも」「肌が荒れてる」「もっときれいにならなきゃ」。この心の実況中継、だいたい辛口です。スポーツ解説なら放送事故レベルの厳しさです。でも、その言葉を毎日浴びていたら、心はそりゃ疲れます。自分の中に、24時間営業の批判新聞社があるようなものです。
自分への思いやりは、その新聞社に休刊日をつくるようなものです。
「今日はむくんで見える。でも、昨日がんばったからかもしれない」
「体型が気になる。でも、この体で毎日生活しているんだよね」
「完璧じゃない。でも、完璧じゃない体にも、ちゃんと価値がある」
こういう言葉は、魔法の呪文ではありません。いきなり悩みが消えるわけではありません。でも、自分を責める勢いを少し弱めてくれます。心の中のトゲトゲした椅子に、座布団を一枚置く感じです。
二つ目の学びは、「SNSを見るときは、心の防寒着が必要」ということです。
シーキスさんは、TikTokの美容動画や自分への思いやりを扱う動画が、若い女性の見た目への恥ずかしさや不安、比較、気分にどう影響するかも研究しています。2023年の研究では、女子大学生を対象に、美容動画、自分への思いやり動画、旅行動画を見せ、その後の顔に関する恥や不安、自分への思いやり、気分、見た目の比較などを調べています。
SNSは便利です。楽しいです。かわいい猫もいます。最高です。でも同時に、見た目の比較工場にもなります。少しだけ見るつもりが、気づけば「世の中のみんな、こんなに整っているの?」という気持ちになってくる。いや、違います。SNSは現実そのものではなく、現実を照明・角度・編集・選抜で煮詰めた濃縮スープです。それを毎日原液で飲んだら、心の胃もたれが起きます。
だから、SNSを見るときは、「これは加工された一部かもしれない」「この人にも映っていない日常がある」「自分と比べるためのものではない」と、心の中に小さな注意書きを貼ることが大切です。画面の中の美しさは、参考になることもあります。でも、それが自分を叩く棒になったら、いったん置いたほうがいいです。
三つ目の学びは、「からだは評価される物ではなく、一緒に生きている相棒である」ということです。
見た目の悩みが強いと、体はまるで審査される作品のようになります。「ここは減点」「ここは改善」「ここは人に見せたくない」。でも本当は、体は作品というより相棒です。朝起きて、歩いて、働いて、笑って、ごはんを食べて、疲れたら眠る。その全部を支えてくれているのが体です。
もちろん、見た目を気にするなという話ではありません。おしゃれしたい、きれいになりたい、整えたい。その気持ちは自然です。問題は、見た目が自分の価値を決める裁判長になってしまうことです。裁判長の座に座らせるには、見た目さんは少々気分屋すぎます。照明、体調、睡眠、写真の角度で判決が変わるんですから。
シーキスさんの研究は、「自分の体を好きになれない日があっても、体を敵にしない道はある」と教えてくれます。自分への思いやりを持つことで、見た目の不安に巻き込まれすぎず、自分の体との関係を少しやわらかくできる可能性があるのです。
四つ目の学びは、「若い人の見た目の悩みは、本人の問題だけではない」ということです。
SNS、広告、友人関係、恋愛、学校、家庭、流行、加工アプリ。見た目への意識は、いろいろな環境から影響を受けます。つまり、「気にしすぎだよ」で終わらせるのは、かなり乱暴です。気にしすぎてしまうような空気の中で生きている、という面もあるからです。
シーキスさんの研究関心には、思春期後半から若い成人期の人たちが、見た目に関する苦しみにどう対処するかというテーマも含まれています。2021年の論文では、自分への思いやりの複数の面が、見た目に関するつらさへの対処にどう使われるかを調べています。
ここから、支援や教育の現場にも使えるヒントが見えてきます。
見た目に悩む人に、「そんなこと気にしなくていい」と言うだけでは、あまり助けにならないことがあります。本人は気にしたくて気にしているわけではありません。気になってしまうから苦しいのです。必要なのは、「気にしなくていい」ではなく、「気になってしまう自分を責めなくていい」「見た目以外の価値も一緒に見よう」「SNSから少し距離を置く工夫をしよう」という支え方です。
ヴェヤ・シーキスさんの研究から学べることをまとめるなら、「見た目に悩む心には、もっと厳しい評価ではなく、もっとやさしい関わりが必要」ということです。
自分を責めても、心は元気になりません。むしろ、見た目への不安は強くなることがあります。反対に、自分への思いやりを育てると、見た目に左右されすぎない心の足場が少しずつできます。自分の体を完璧な展示品として見るのではなく、一緒に毎日を生きている相棒として見ること。その視点が、心を少し軽くしてくれます。
鏡を見るたびに、自分を採点しなくてもいいのです。
写真を見るたびに、自分を裁判にかけなくてもいいのです。
SNSを見るたびに、自分の価値を値下げしなくてもいいのです。
自分の体は、あなたを困らせるためにそこにあるのではありません。今日もあなたを運び、感じさせ、笑わせ、眠らせ、生かしてくれている存在です。
シーキスさんの研究は、そんな当たり前だけど忘れがちなことを教えてくれます。見た目に悩む心へ、「もっと変われ」とムチを打つのではなく、「ここまで一緒にやってきた体に、少しだけやさしくしてみませんか」と声をかける研究なのです。

ヴェヤ・シーキス(Veya Seekis)の論文一覧
1.『自分へのやさしさを書くことは、見た目の悩みを軽くできるのか-セルフ・コンパッションと自尊感情の書く課題の効果』ヴェヤ・シーキス、グレアム・L・ブラッドリー、アマンダ・ダフィー(2017)
Seekis, V., Bradley, G. L., & Duffy, A.(2017). The effectiveness of self-compassion and self-esteem writing tasks in reducing body image concerns. Body Image, 23, 206-213. DOI: 10.1016/j.bodyim.2017.09.003
「見た目が気になって落ちこむ日、ありますよね。じゃあそんなとき、自分を励ますのと、自分にやさしくするのとでは、どっちが効くの?」そんな素朴だけど切実な問いに向き合った論文です。若い女性を対象に書く課題を比べたところ、セルフ・コンパッションの文章は、体への見方を少しやわらげる働きがより目立ったのがポイント。鏡の前でしょんぼりしがちな日に、心への声かけを見直したくなる一編です。

