クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson)の論文一覧:心の中をのぞいたら、思ったより物語がぎっしり詰まっていた研究たち
クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson)のプロフィール
クリス・J・ジャクソンは、ひとことで言うと、「性格っておもしろいよね」で終わらず、その奥にある“なぜそう動くのか”まで追いかける研究者です。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)で、ビジネス心理学の教授を務め、元・スクール長でもあります。つまり、「心を研究しています」だけでは済まない、かなり本格派の先生です。
研究テーマもなかなか味があります。たとえば、学習のしくみ、パーソナリティの成り立ち、生物学的な性格の土台、認知のクセ、そしてそれらが仕事の成果やパフォーマンスにどうつながるのかを調べています。言ってしまえば、
「この人はなぜこう考えるのか」
「なぜ同じ出来事でも反応が違うのか」
「その違いは仕事や学びにどう出るのか」
という、人間の“中身の配線図”みたいなものを読み解こうとしている研究者です。
しかもこの人、ただの性格研究で終わりません。パーソナリティ心理学だけでなく、組織心理学やリーダーシップ、個人差の研究にも広く関わっていて、「その性格、職場ではどう働くの?」というところまで踏み込んでいきます。心の研究室にいたはずが、いつのまにか会議室や職場の空気まで見に行っている感じです。
「人の性格って、ラベルを貼って終わりではないんですよ」
「その性格が、どう学び、どう動き、どう成果につながるかまで見たいんです」
と、静かに言いながら、こちらの“人間理解の雑さ”をやさしく粉砕してくるタイプです。
要するにクリス・J・ジャクソンは、性格をただ分類する人ではなく、性格が人生や仕事の中でどう動くかを追いかける研究者です。読んでいると、「性格診断って軽い読み物かと思っていたのに、急に人間そのものが深く見えてきたぞ」となる、そんな系統の学者さんですね。
参考文献・確認先: UNSW公式プロフィール:Christopher Jackson / UNSW研究者ページ:Professor Christopher John Jackson / UNSW出版物一覧:Christopher John Jackson / Google Scholar:Chris J Jackson 論文・引用情報 / ORCID:Christopher John Jackson

クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson)の研究から学べること
クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson)の研究から学べることは、ざっくり言うと「人は、生まれ持った性格だけで人生を走っているわけではない。学び方しだいで、その力の向かう先は変えられる」ということです。
これ、なかなか希望のある話です。性格というと、つい「私は飽きっぽいからダメ」「自分は慎重すぎるから向いていない」「あの人は大胆だから成功する」みたいに、心のラベル貼り大会が始まりがちです。しかも一度貼ったラベルは、なかなか剥がれません。まるで冷蔵庫に貼った古いシールです。剥がそうとすると、べたべたが残るやつです。
でもジャクソンさんの研究は、そこで「性格はただの固定された看板ではなく、学び方や経験と結びついて行動にあらわれるものですよ」と教えてくれます。彼は、性格と学習を組み合わせた考え方を提案し、人の行動を「もともとの気質」「考え方」「経験から学ぶしくみ」などが合わさって生まれるものとして見ようとしました。職場や学校での成果、リーダーシップ、問題行動などを考えるうえで、この見方が役立つとされています。
たとえば、刺激を求めるタイプの人がいるとします。日本語で言えば、「じっとしているより、新しいことをしたい」「退屈が続くと心の中の猫が障子を破りはじめる」ような人です。この性質だけを見ると、「落ち着きがない」「危なっかしい」と言われることもあります。
でも、その力が悪いわけではありません。向かう先が大事なのです。
新しいことに飛び込みたい気持ちが、勉強や仕事の挑戦に向かえば、「行動力のある人」になります。新しい企画に手を挙げたり、難しい課題に挑んだり、周りが「まだ様子を見ましょう」と言っている横で、「とりあえず一歩、踏んでみません?」と地面を確かめに行ける人になります。
ところが同じ力が、短絡的な快楽や危ない行動に向かうと、「ちょっと待って、そっちは崖です」という方向に走ってしまうこともあります。つまり、性格そのものが天使でも悪魔でもないのです。性格はエンジンです。どこへ走るかは、ハンドルと地図とブレーキの使い方にかかっています。
ここが、ジャクソンさんの研究の面白いところです。人の性格を「良い・悪い」で切り分けるのではなく、「その力をどう学びに変えるか」「どう役に立つ行動に向けるか」を考えるのです。これは、かなり人間味のある見方です。人を診断名札みたいに分類して終わりにしない。むしろ、「その人の中にあるエネルギーを、どう育てたらよい方向に使えるか」を見ている感じがあります。
たとえば職場で、「この人は衝動的だな」と思う人がいたとします。普通なら、「困った人だな」で終わってしまいがちです。でもジャクソンさん的に見ると、「この人は反応が速い。では、その速さをどう活かせばよいか」と考えられます。すぐ動ける人には、短時間で判断する仕事や、新しい案件の立ち上げが合うかもしれません。ただし、確認を飛ばしてしまう危険もあるので、チェック表や相談の仕組みを横に置いておく。そうすれば、暴れ馬ではなく、風を切る馬車になります。
逆に、慎重な人も同じです。慎重さは、ときに「行動が遅い」と見られます。でも見方を変えれば、「失敗の穴を見つける力」です。みんなが勢いで橋を渡ろうとしているときに、「この橋、板が一枚ゆるんでいませんか?」と気づける人です。これ、組織にはめちゃくちゃ大事です。勢い担当だけのチームは、だいたい途中で何かを爆発させます。慎重担当は、心の消火器係です。
ジャクソンさんの研究から学べる大切なことは、「性格を変えよう」と無理に思わなくてもいい、ということです。大切なのは、性格の使い方を学ぶことです。包丁は、使い方によって料理にもなれば、危険な道具にもなります。刺激を求める性格も、慎重な性格も、粘り強い性格も、感情が動きやすい性格も、全部同じです。問題は「持っていること」ではなく、「どう扱うか」です。
そしてもうひとつ大事なのは、学び方には変えられる部分があるということです。ジャクソンさんの考え方では、生まれつきの傾向だけでなく、考え方や経験の積み重ねも行動に影響します。つまり、「自分はこういう人間だから仕方ない」で終わらなくていいのです。もちろん、根っこの気質を一晩で変えることはできません。人間はスマホの設定画面みたいに、ワンタップで性格変更できる生き物ではありません。
でも、「どう目標を持つか」「どう失敗から学ぶか」「どう自分のクセを使うか」は、少しずつ変えられます。ここに希望があります。性格は牢屋ではありません。むしろ、ちょっとクセのある道具箱です。中には扱いにくい道具もあります。でも、使い方を覚えれば、思ったよりいい仕事をしてくれます。
たとえば、飽きっぽい人なら、「長時間がんばる」より「短く区切って進める」ほうが合うかもしれません。心の中の猿がシンバルを叩きはじめる前に、作業を小分けにするのです。完璧主義の人なら、「最初から完璧にする」より「まず七割で出して、あとで磨く」と決めたほうが動きやすいかもしれません。不安が強い人なら、「不安を消す」より「不安があるからこそ準備ができる」と使い道を変えることができます。
つまり、性格は敵ではなく、ちょっと個性的な相棒です。こちらが扱い方を知らないと、勝手に台所で鍋を鳴らします。でも、役割を与えると、意外と頼もしく働いてくれるのです。
クリス・J・ジャクソンの研究は、「人を見るときに、性格だけで決めつけないこと」の大切さを教えてくれます。あの人は大胆だからすごい、あの人は慎重だからダメ、あの人は刺激を求めるから危ない、という単純な話ではありません。大切なのは、その人が自分の性格をどんな学びにつなげ、どんな行動に変えているかです。
これは自分自身を見るときにも役立ちます。「自分はこういう性格だから無理」と決めつける前に、「この性格を、どの方向に使えば力になるだろう」と考えてみる。すると、短所だと思っていたものが、少しだけ違う顔を見せます。せっかちさは行動力に、心配性は準備力に、飽きっぽさは好奇心に、頑固さは粘り強さに変わるかもしれません。
もちろん、何でも前向きに言い換えればよいという話ではありません。せっかちで人を傷つけるなら、そこは直したほうがいい。心配しすぎて動けないなら、工夫が必要です。けれど、自分の性格をいきなり捨てようとしなくてもいいのです。捨てるより、使い方を覚える。ここが大事です。
ジャクソンさんの研究からたどりつく学びは、こんな感じです。
人は、性格に振り回されるだけの存在ではありません。自分のクセを知り、学び方を整え、経験から少しずつ方向修正していくことで、行動は変わっていきます。性格は人生の初期設定かもしれません。でも、人生そのものは初期設定だけでは終わりません。アップデートできます。しかも、人間のアップデートは、通知音も鳴らず、地味に、静かに、ある朝ふと「前より少しうまく扱えているかも」と気づく形で進んでいきます。
だから、自分の性格にがっかりしすぎなくていいのです。性格は、まだ調理前の食材みたいなものです。クセの強い野菜でも、切り方と味つけしだいで、なかなかいい一皿になります。人間も同じです。大事なのは、「私はこういう素材なんだな」と知ったうえで、どう料理していくか。
クリス・J・ジャクソンの研究は、そのための台所の明かりを、そっとつけてくれる研究だと言えます。

クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson)の論文一覧
1.『自分にやさしくできる人は、低い自己評価に飲み込まれにくい-青年期を追跡した大規模研究』サラ・L・マーシャル、フィリップ・D・パーカー、ジョセフ・チアロッキ、バルジンダー・サドラ、クリス・J・ジャクソン、パトリック・C・L・ヘブン(2015)
Marshall, S. L., Parker, P. D., Ciarrochi, J., Sahdra, B., Jackson, C. J., & Heaven, P. C. L.(2015). Self-compassion protects against the negative effects of low self-esteem: A longitudinal study in a large adolescent sample. Personality and Individual Differences, 74, 116-121. DOI:10.1016/j.paid.2014.09.013
「自己肯定感が低いと、やっぱりしんどくなりやすいの?」
この論文は、そこにセルフ・コンパッションという頼れる味方を登場させます。オーストラリアの青年2448人を追ったところ、自己肯定感が低くても、自分にやさしくできる人は心のダメージが小さかったのです。つまり、心がぐらついた日に必要なのは、根拠なき自信より“自分へのいたわり”かもしれない。読後、あなたの自己対話が少し変わる論文です。

