ステファニー・S・ルード( Stephanie S. Rude)の論文一覧:気分の沈み方をまじめに調べたら、案外やさしい出口が見えてきた研究たち
ステファニー・S・ルード(Stephanie S. Rude)のプロフィール
ステファニー・S・ルードさんは、ひとことで言うと、「落ち込みやすい心のクセを、虫めがねと懐中電灯でていねいに見にいく心理学者」です。アメリカのテキサス大学オースティン校で、教育心理学・カウンセリング心理学の分野に長く関わってきた研究者として確認できます。大学関連の経歴資料では、1983年にスタンフォード大学でカウンセリング心理学の博士号を取得し、その後、トリニティ大学、ジョージア大学を経て、テキサス大学オースティン校で助教授、准教授、教授として活動してきたことが示されています。
研究テーマの中心にあるのは、うつ、考え方のクセ、反すう、思考の抑え込み、自己への向き合い方などです。つまり、「どうして人は、つらいことを何度も頭の中で再放送してしまうのか」「落ち込みやすい人の心には、どんな見えない下書きがあるのか」といったテーマを、かなり粘り強く追いかけてきた方です。心の中に住みついた“ネガティブ編集長”の仕事ぶりを、研究で静かに調べてきた人、と言ってもよさそうです。
有名な研究のひとつに、落ち込みやすい大学生の言葉の使い方を調べたものがあります。ジェームズ・ペネベイカーらとの研究では、うつ状態やうつになりやすさと、文章にあらわれる言葉の特徴との関係が検討されています。つまり、「人の心は、話す言葉や書く言葉にこっそり顔を出すのではないか」というわけです。心は透明人間のように見えませんが、言葉の上には、足あとが残ることがあるんですね。
また、ルードさんは「自分へのやさしさ」に関する研究にも関わっています。クリスティン・ネフさん、クリスティン・カークパトリックさんとの2007年の論文では、自分に厳しくしすぎず、苦しい経験を人間に共通するものとして受け止め、感情に飲み込まれすぎない態度が、心の健康とどう関係するかが検討されました。ざっくり言えば、「自分を責めるムチだけで人生を走らせると、心の馬車はけっこう壊れますよ」という話です。
さらに、感情を書き出すことの効果についての研究にも名前が見られます。2006年の研究では、つらい体験について書くことが反すうを下げる可能性が検討され、2023年の論文でも、感情を受け入れるような書き方や、書き手の関わり方が結果に影響することが示されています。ここで大事なのは、ただ日記を書けば魔法のように元気になる、という単純な話ではないところです。書くことは万能薬ではありませんが、心の中でぐるぐる絡まった毛糸を、少しずつほどく道具にはなりうる、という感じです。
ルードさんの研究のおもしろさは、「気分が落ちていますね」で終わらないところにあります。落ち込みの背景にある記憶の使い方、考え方の偏り、言葉の特徴、自分への接し方まで見ていく。いわば、心の天気予報士というより、心の地層を掘る考古学者に近い人です。表面には「なんとなくしんどい」としか見えないものの下に、どんな思考の層が積もっているのかを探ってきた研究者なのです。
参考文献・確認先:Stephanie S. Rude 経歴資料(テキサス大学オースティン校) / Google Scholar:Stephanie S. Rude 論文・引用情報 / PubMed:Stephanie S. Rude 関連論文

1.『セルフ・コンパッションが支える、しなやかな心のはたらき』クリスティン・D・ネフ、クリスティン・L・カークパトリック、ステファニー・S・ルード(2007)
Neff, K. D., Kirkpatrick, K. L., & Rude, S. S.(2007). Self-compassion and adaptive psychological functioning. Journal of Research in Personality, 41(1), 139-154. DOI:10.1016/j.jrp.2006.03.004
「失敗した、つらい、もうだめかも…」となったとき、心に鬼教官を住まわせるより、自分に少しやさしくしたほうが、むしろちゃんと立ち直れるのでは? そんな問いを、かなり本気で確かめた論文です。セルフ・コンパッションは甘やかしではなく、落ち込みや不安をやわらげ、心をしなやかに整える力になる。読んでいると、自分への声のかけ方を少し変えたくなります。

