ラウレンツ・L・マイヤー(Laurenz L. Meier)の論文一覧:心の動きを追いかけていたら、こちらの毎日まで見透かされそうになる研究たち

ラウレンツ・L・マイヤー(Laurenz L. Meier)の論文を読む女性
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ラウレンツ・L・マイヤー(Laurenz L. Meier)のプロフィール

ラウレンツ・L・マイヤーさんは、ひとことで言うと、「仕事でしんどくなる心の仕組み」を、かなり本気で追いかけている心理学者です。現在はスイスのチューリッヒ大学で、仕事・組織心理学の教授を務めています。以前はヌーシャテル大学でも教授を務めており、2026年からチューリッヒ大学に移ったことが履歴書などで確認できます。

研究テーマは、ざっくり言えば「働く人の心の天気予報」です。仕事のストレス、職場での意地悪や迷惑行動、仕事と家庭のぶつかり合い、メンタルヘルスなどを研究しています。つまり、「月曜の朝に心がどんよりするのは、本人の根性だけの問題なのか?」「職場のストレスは、人の行動をどう変えてしまうのか?」「仕事の疲れは家庭にまで持ち帰られるのか?」といった、働く人なら思わず正座して聞きたくなるテーマを扱っているわけです。

学歴を見ると、ベルン大学で心理学を学び、2008年に博士号を取得しています。その後、バーゼル大学、アメリカの南フロリダ大学、フリブール大学などで研究を重ね、ヌーシャテル大学を経て、チューリッヒ大学の教授になっています。経歴だけ見ると、スイスとアメリカを行き来する学問の登山家みたいな人です。しかも登っている山が「人間の仕事ストレス山脈」。なかなか険しい。

マイヤーさんの研究でおもしろいのは、「仕事のストレスがありますね」で終わらないところです。たとえば、職場で嫌なことが続くと、人はつい攻撃的になったり、やる気を失ったり、家に帰ってからもイライラを引きずったりします。マイヤーさんは、そうした心と行動の連鎖を、長い期間のデータや日記のような調査データを使って見ようとしています。いわば、心の足あとを一日一日たどる研究です。派手な花火ではありませんが、じわじわ効く線香花火タイプのすごさがあります。

専門分野を日本語で言うなら、「仕事と組織の心理学」「社会心理学」「性格心理学」が重なるあたりです。会社という場所は、ただ机とパソコンが並んでいるだけではありません。上司、同僚、評価、締切、家庭、疲労、感情、性格、期待、空気読み……いろんなものが小鍋でぐつぐつ煮込まれています。マイヤーさんは、その鍋の中で何が起きているのかを、できるだけ丁寧にすくい取ろうとしている研究者だと言えます。

また、最近の紹介では、新しい働き方や人工知能をどう職場に取り入れれば、働く人の幸福感と成果の両方を高められるかにも関心を持っているとされています。つまり、「AIで効率化しましょう、以上!」ではなく、「それで人は健康に働けるの?」「仕事の設計はよくなるの?」まで考えるタイプです。未来の職場に、心理学のブレーキとハンドルを取り付けようとしている感じですね。

まとめると、ラウレンツ・L・マイヤーさんは、働く人のストレスや職場での人間関係、仕事と家庭の関係を、データを使ってじっくり読み解く心理学者です。職場の問題を「本人の気持ちが弱いから」と片づけず、「環境、人間関係、性格、時間の流れがどう絡んでいるのか」を見ていくところに特徴があります。会社という小さな社会の中で、心がどう疲れ、どう守られ、どう回復していくのか。その見えにくいドラマを研究している、働く人の心の観察者と言えるでしょう。

参考文献・確認先:Laurenz L. Meier 公式プロフィール / Laurenz L. Meier 経歴ページ / Google Scholar:Laurenz L. Meier 論文・引用情報 / PubMed:Laurenz L. Meier 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ラウレンツ・L・マイヤー(Laurenz L. Meier)の研究から学べること

ラウレンツ・L・マイヤーさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「職場のストレスは、その場で消える煙ではなく、日々の行動や家庭生活、人間関係にまでじわじわ広がることがある」ということです。

仕事で嫌なことがあった日って、家に帰っても心がまだ職場の名札をつけていることがありますよね。玄関では靴を脱いだのに、頭の中ではまだ会議が続いている。「あの言い方、何だったんだろう」「明日また言われたらどうしよう」「なんで私ばっかり」。気づけば、夕食の味よりも、職場のモヤモヤを噛みしめている。これはもう、心の弁当箱に“職場ストレス味”のおかずが詰め込まれている状態です。あまりおいしくありません。

マイヤーさんは、スイスのヌーシャテル大学などで、仕事・社会心理学・性格心理学が交わる領域を研究してきた心理学者です。本人の研究紹介では、仕事のストレス、職場での反社会的行動、仕事と家庭の関係を中心に、長期的なデータや日記式のデータを使って研究していると説明されています。

ここで大切なのは、マイヤーさんが「職場のストレス」をその場限りの出来事として見ていないところです。

たとえば、上司にきつく言われた。仕事量が多すぎる。理不尽な対応をされた。職場で公平に扱われていない気がする。こういうことがあると、人はただ疲れるだけではありません。そのストレスが、次の行動に影響することがあります。イライラして同僚に冷たくなる。集中力が落ちる。家に帰ってから家族にそっけなくなる。眠りが浅くなる。翌日さらに疲れて、また仕事がしんどくなる。はい、心のドミノ倒しです。最初の一枚は職場で倒れたのに、最後はリビングのあたりまで倒れてきます。

マイヤーさんの研究領域には、職場ストレスと「職場でのよくない行動」の相互関係も含まれています。ポール・E・スペクターさんとの研究では、仕事上のストレス要因と、職場での反生産的行動、つまり仕事や組織、人間関係に悪影響を与える行動が、時間をかけて互いに影響し合う可能性が扱われています。

これを日常語にすると、「ストレスがたまると、人はちょっとイヤな自分になりやすい。そして、そのイヤな行動がまた職場のストレスを増やすことがある」ということです。

たとえば、忙しすぎて余裕がない。すると、同僚からの質問に「それ前にも言いましたよね」と冷たく返してしまう。相手は傷つく。次から相談しづらくなる。情報共有が遅れる。仕事がまた詰まる。自分はさらにイライラする。もう、職場の小さな雪だるまが坂道を転がって巨大化していく感じです。最初は手のひらサイズだったのに、気づけば会議室のドアをふさいでいます。

ここから学べる一つ目の知恵は、「職場の問題を“性格の悪さ”だけで片づけないこと」です。

もちろん、相手を傷つける言動はよくありません。そこはきちんと扱う必要があります。でも、人が冷たくなったり、攻撃的になったり、協力的でなくなったりするとき、その背景には強いストレスや不公平感、疲労があるかもしれません。

「あの人は感じが悪い」で終わらせると、そこで話が止まります。

でも、「何があの人の余裕を奪っているのか」「どんな職場ストレスが行動に出ているのか」と見ると、改善の入口が見えてきます。これは相手を甘やかすことではありません。火元を探すことです。煙に向かって説教しても、火は消えません。

二つ目の知恵は、「仕事と家庭は、思った以上につながっている」ということです。

仕事のストレスは、職場のタイムカードを押した瞬間に消えてくれるわけではありません。むしろ、カバンの中にこっそり入り込んで家までついてくることがあります。マイヤーさんは仕事と家庭のぶつかり合い、つまり仕事の負担が家庭生活に入り込んだり、家庭の負担が仕事に影響したりする問題も研究領域にしています。

仕事が忙しすぎて、家でゆっくり話す気力がない。

職場のイライラを、家族にぶつけてしまう。

家の心配ごとが、仕事中の集中力に影響する。

休んでいるはずなのに、頭の中では仕事の段取りをしている。

こういうことは、決して珍しくありません。仕事と家庭は、別々の部屋に見えて、実はふすまでつながっています。職場で強風が吹くと、家庭の部屋の障子も少しガタガタ鳴るのです。

ここから学べるのは、「帰ったら切り替えればいい」と簡単に言いすぎないことです。切り替えは大事ですが、スイッチを押せば即オフになるほど人間は単純ではありません。ロボット掃除機ですら、ときどきコードに絡まります。人間の心ならなおさらです。

だから、仕事から家庭へ戻るときには、切り替えの儀式があると助けになります。

帰り道に少し歩く。

家に入る前に深呼吸する。

仕事のモヤモヤをメモに出してから閉じる。

家族に「今日は少し疲れている」と先に伝える。

帰宅後すぐ重い話をしない時間をつくる。

こうした小さな工夫は、心の玄関マットです。職場の泥を少し落としてから、家庭に入る感じです。

三つ目の知恵は、「不公平感は、職場ストレスの火種になりやすい」ということです。

人は、単に忙しいだけならまだ耐えられることがあります。でも、「自分だけ損をしている」「努力が正当に見られていない」「ルールが人によって違う」と感じると、ストレスは一気に濃くなります。心のスープが煮詰まります。

マイヤーさんの研究は、仕事ストレスだけでなく、社会心理学や性格心理学ともつながっています。つまり、職場で何が起きたかだけでなく、それを人がどう受け止め、どんな性格傾向や関係性の中で反応するかも大事にしているわけです。

たとえば、同じ注意を受けても、「改善点を教えてもらえた」と感じる人もいれば、「自分だけ責められた」と感じる人もいます。これは、本人の受け止め方だけの問題ではありません。職場の普段の雰囲気、信頼関係、説明の仕方、公平性が関係します。

だから、職場では「公平であること」と同じくらい、「公平だと伝わること」が大切です。

なぜその仕事をお願いするのか。

どういう基準で評価しているのか。

誰にどんな負担がかかっているのか。

困ったときに相談できるのか。

こういう説明がないと、人は不公平感を抱きやすくなります。説明不足は、人間関係の湿気です。放っておくと、心の壁にカビが生えます。

四つ目の知恵は、「職場の問題は一日単位でも変化する」ということです。

マイヤーさんは、長期的な研究だけでなく、日記式のデータを使った研究にも力を入れています。これは、毎日あるいは短い期間で、ストレスや感情、行動がどう変わるかを見る方法です。

これ、すごく現実に合っています。

人は、いつも同じ状態ではありません。月曜日の朝と金曜日の夕方では、心の残量が違います。上司に感謝された日と、理不尽なクレームを受けた日では、帰宅後の表情も違います。睡眠が足りた日と、寝不足の日では、同じ一言でも受け取り方が変わります。

つまり、「その人はいつもこうだ」と決めつける前に、「今日は何が起きていたのか」を見る必要があるのです。

いつもは穏やかな人が、今日は妙にトゲトゲしている。

いつもは前向きな人が、今日は元気がない。

いつもはミスしない人が、今日は確認漏れがある。

そんなとき、「性格が変わった」と見るより、「今日は心の残量が少ないのかもしれない」と考えるほうが、現実的なことがあります。人間にも充電残量があります。ただ、スマホみたいに画面の右上に表示されないだけです。表示してくれたら楽なんですけどね。「本日の余裕、残り12%」とか。かなり便利です。

五つ目の知恵は、「悪循環を切るには、個人の努力だけでなく職場の設計も必要」ということです。

ストレスを受けた人に、「気にしないで」「切り替えて」「大人なんだから」と言うのは簡単です。でも、仕事量が多すぎる、役割があいまい、評価が不公平、相談しにくい、休憩が取れない、こうした職場構造が残ったままだと、同じことがくり返されます。

これは、雨漏りしている部屋で「濡れないように頑張って」と言っているようなものです。いや、まず屋根を直しましょう。

職場でできることは、意外と具体的です。

仕事量を見直す。

役割を明確にする。

相談先を決める。

感謝や評価を具体的に伝える。

不公平感が出やすい決定には説明を加える。

休憩や切り替えを取りやすくする。

人間関係のこじれを早めに扱う。

こうしたことは、ただの「優しい職場づくり」ではありません。職場のパフォーマンスや健康を守るための土台です。人をすり減らしながら回る職場は、短期的には動いても、長期的にはどこかで歯車が欠けます。

支援の現場でも、マイヤーさんの研究は使えます。

利用者さんが作業中にイライラしやすいとき、「性格」だけでなく、負担や不公平感を見ます。

職員さんが疲れているとき、「根性」ではなく、仕事量や相談体制を見ます。

家庭のストレスが仕事に影響している人には、「切り替えなさい」だけでなく、どこで支えを入れられるかを考えます。

つまり、人を見るときに、「その人の中」だけでなく、「その人を取り巻く環境」も見るのです。人間は観葉植物に似ています。しおれているとき、植物だけを責めても仕方ありません。水、光、土、置き場所を見る必要があります。人も同じです。

ラウレンツ・L・マイヤーさんの研究が教えてくれるのは、職場ストレスは単なる気分の問題ではなく、行動、人間関係、家庭生活、健康に広がる可能性があるということです。

ストレスがあると、人は余裕を失います。

余裕を失うと、よくない行動が出やすくなります。

その行動が、また職場の関係を悪くすることがあります。

仕事の疲れは、家庭にも持ち込まれることがあります。

そして、その悪循環は、本人の努力だけでは止めにくいことがあります。

だからこそ、必要なのは「気合い」だけではありません。職場の設計、説明、公平さ、支援、休息、切り替えの工夫です。

マイヤーさんの研究は、働く人にこう語りかけているようです。

「あなたがイライラしているのは、性格が悪いからだけではないかもしれません」

「あなたが家で疲れ切っているのは、切り替えが下手だからだけではないかもしれません」

「職場のストレスが、心のあちこちに染み出しているのかもしれません」

だから、職場の小さなトゲを放っておかないことです。小さなトゲでも、毎日刺さっていると、心は靴ずれします。早めに抜く。傷を洗う。次に刺さらないように靴を直す。

ラウレンツ・L・マイヤーさんの研究は、そんな「働く心の靴ずれ」を見つけるための研究です。職場で起きるストレスを、個人の根性問題に閉じ込めず、行動や家庭、職場環境まで広く見ていく。その視点が、働く人を少しずつ守ってくれるのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ラウレンツ・L・マイヤー(Laurenz L. Meier)の論文一覧

1.『「傷つきやすい自己肯定感」とは何か? 低い自己肯定感・不安定な自己肯定感・条件つきの自己肯定感が、抑うつ症状にどう影響するかを比較した縦断研究』ジュリア・フリーデリケ・ソヴィスロ、ウルリッヒ・オルト、ラウレンツ・L・マイヤー(2014)

Julia Friederike Sowislo, Ulrich Orth, Laurenz L. Meier(2014). What Constitutes Vulnerable Self-Esteem? Comparing the Prospective Effects of Low, Unstable, and Contingent Self-Esteem on Depressive SymptomsJournal of Abnormal Psychology, 123(4), 737-753. DOI:10.1037/a0037770

「自己肯定感が弱い」といっても、ほんまに危ないのは何者なのか。低いこと? ぐらつくこと? それとも他人の評価しだいで上下すること? この論文は、その“心の容疑者たち”を並べて検証した一本です。読むと、自己肯定感ってただ高ければいい話じゃないんだな、と静かに背筋が伸びます。気分の波と心の土台、その関係をのぞいてみたい人にかなり刺さります。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】傷つきやすい自己肯定感の正体とは? 研究からわかった“落ち込みやすさ”の意外なしくみ
【論文要約】傷つきやすい自己肯定感の正体とは? 研究からわかった“落ち込みやすさ”の意外なしくみ
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