カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)の論文一覧:自信、成績、人生の行方まで、わりと本気で見にいった研究

カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)の論文を読む女性
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カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)のプロフィール

カリ・H・チェスニェフスキは、自己肯定感や成長マインドセット、若者の発達などを研究してきた心理学系の研究者です。現在はカリフォルニア大学デービス校(UC Davis)で、Cooperative Extension の専門家として活動し、California 4-H Youth Development Program の研究担当ディレクターも務めています。つまり、「人は自分をどう見て、どう育っていくのか」を研究しつつ、その知見を若者支援の現場にもつなげている人、という感じです。研究室にいるだけで終わらず、ちゃんと社会にも持ち出しているところが渋いです。

学歴もきれいにUC Davisの流れで、人間発達学の学士号と修士号を取り、その後心理学で博士号(PhD)を取得しています。そのあと、ロンドンの精神医学研究機関やスタンフォード大学でポスドクを経験し、さらにUniversity of Western Ontario で心理学の助教授を務めたのち、2010年にUC Davisへ戻っています。研究者としてちゃんと旅をして、また母校に戻ってきた人なんですね。ちょっと物語があります。

研究テーマとしてよく知られているのは、自己肯定感は人生にどんな影響を与えるのかという問いです。たとえば、自己肯定感の低さがその後の抑うつ症状にどう関わるか、あるいは若い頃の自己評価が大人になってからの健康や行動、経済状況とどうつながるか、といったテーマで影響力の大きい研究を出しています。かなりざっくり言うと、「“自分なんて”は、ほんとうに後々まで響くのか?」を、感覚ではなくデータで追いかけてきた研究者です。

しかも最近は、自己肯定感だけでなく、成長マインドセットや若者支援、教育と発達の交差点にも研究を広げています。Psychwire の紹介では、彼女は SELF Lab のPI でもあり、研究成果は主要メディアでも取り上げられてきたとされています。つまり、学術論文の中だけに閉じこもる人というより、「その知見、現実の子どもや若者の役に立ちますか?」まで見にいくタイプの研究者、と言えそうです。研究者というより、発達の地図を描きながら現場にも降りていく案内人みたいな人ですね。

ひとことで言うなら、
「自己肯定感のような見えにくい心の土台が、人生にどう響くのかを、地道に、でもかなり本気で追いかけてきた研究者」
です。

参考文献・確認先:UC Davis 公式プロフィール:Kali Trzesniewski / UC Davis Human Development Graduate Group:Kali Trzesniewski / Google Scholar:Kali H. Trzesniewski 論文・引用情報 / PubMed:Kali H. Trzesniewski 関連論文 / ORCID:Kali Trzesniewski 研究者情報 / Psychwire:Dr Kali H. Trzesniewski 紹介ページ

阿部牧歌(管理人)
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カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)の研究から学べること

カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)の研究から学べることは、ひとことで言うと「若いころの“自分をどう見るか”は、人生の小さな舵になる」ということです。

いや、これ、ちょっと怖いようで、でも希望もありますよね。人は誰でも、心の中に小さな実況アナウンサーを飼っています。「今日も失敗しました」「また比べて落ち込みました」「どうせ自分なんて、という顔をしています」みたいに、わざわざ悲しげな声で中継してくるあの人です。できれば解説席から退場していただきたい。でも、なかなかしぶとい。

チェスニェフスキさんは、カリフォルニア大学デービス校で、人間の発達、若者の成長、自己評価、性格、家庭や学校との関わりなどを研究している研究者です。大学のプロフィールでも、関心領域として、子ども期から青年期、若い成人期にかけての社会性・感情・家族・学校・心の健康などが挙げられています。

特に有名なのは、思春期の自己評価、つまり「自分には価値があると思える感覚」が、その後の健康、行動、経済的な見通しなどと関係することを示した研究です。若いころに自己評価が低い人は、大人になってから健康面の問題、反社会的行動、経済的な苦労などを抱えやすい傾向があると報告されています。

ただし、ここで大事なのは、「自己評価が低いと人生終了です。はい、解散!」という話ではまったくありません。そんな冷たい占いではありません。むしろ逆です。チェスニェフスキさんの研究から見えてくるのは、「自分をどう見るか」は、放っておくと人生にじわじわ影響するからこそ、早めに気づいて、支え直す価値があるということです。

たとえば、思春期のころに「自分はダメだ」と思い込み続けると、挑戦する前からブレーキを踏みやすくなります。「どうせ無理」と思えば、チャンスが来ても見送ってしまう。人に助けを求めるのも苦手になる。失敗したときも、「今回は方法が合わなかった」ではなく、「やっぱり自分がダメなんだ」と心の裁判官が即日判決を出してしまう。

これ、かなりもったいないんです。

失敗そのものより、「失敗した自分をどう解釈するか」のほうが、あとあと大きく響くことがあります。テストで悪い点を取ったとき、「今回は勉強方法を変えよう」と思える人と、「自分は頭が悪いから無理」と思ってしまう人では、次の一歩が変わります。前者は作戦会議に入れますが、後者は心の中で閉店セールを始めてしまう。まだ店は続けられるのに、シャッターを下ろしてしまうわけです。

チェスニェフスキさんの研究がおもしろいのは、自己評価や性格を「ふわっとした気分」ではなく、人生の流れの中で見ているところです。人の心は、今日だけの天気ではありません。昨日までの季節、今いる環境、まわりの人からの言葉、自分が経験してきた成功や失敗が混ざってできる、長めの気候みたいなものです。

だから、「自信を持ちなさい!」と一発で解決するほど単純ではありません。言われて持てるなら、もう全人類が自信満々で歩いています。朝の電車は、自己肯定感で満員御礼です。でも現実はそうではない。自信は、気合いでふくらませる風船というより、日々の経験で少しずつ編んでいく毛布に近いのです。

ここで学べる大切なことは、「子どもや若者に対して、結果だけでなく、見方を育てる関わりが必要」ということです。

たとえば、子どもが失敗したときに、「なんでできないの?」と責めると、その子の心には「できない自分」という札が貼られやすくなります。一方で、「どこでつまずいたんだろうね」「次はどんなやり方を試せそうかな」と一緒に考えると、失敗は人格へのダメ出しではなく、作戦を見直す材料になります。

この違いは大きいです。失敗を“自分の価値の証明”にしてしまうのか、“次の工夫の材料”にできるのか。ここに、自己評価の分かれ道があります。

もちろん、大人にも関係あります。私たちも仕事でミスをしたり、人間関係でうまくいかなかったりすると、心の中で「自分は向いていない」「またやってしまった」と反省会を始めます。しかもこの反省会、だいたい司会者が厳しすぎます。議題は重い、資料は過去の失敗ばかり、休憩なし。なかなかブラック会議です。

でも、チェスニェフスキさんの研究を日常に置き換えるなら、こう考えられます。

「自分を責める言葉」は、ただの感情ではなく、未来の行動を左右する燃料にもブレーキにもなる。だから、自分への言葉づかいを少し整えることは、甘えではなく、人生の運転整備なのです。

たとえば、「自分はダメだ」ではなく、「今のやり方ではうまくいかなかった」に変える。「どうせ無理」ではなく、「小さく試すなら何ができるか」に変える。「失敗したから価値がない」ではなく、「失敗したけれど、学べる部分はある」に変える。言葉を少し変えるだけで、心のハンドルはほんの少し別の方向を向きます。

ほんの少しでいいんです。人生は、いきなり大回転しなくても、1度向きが変われば、長い距離ではかなり違う場所に着きます。

また、チェスニェフスキさんは若者の発達や教育的な支援にも関わっており、現在はカリフォルニア州の青少年育成プログラムの研究にも携わっています。若者の成長を、本人の心だけでなく、家庭、学校、地域の環境とセットで考えている点も重要です。

つまり、人の自己評価は、本人だけの責任ではありません。まわりの大人の関わり、学校での経験、友人関係、家庭の空気、成功体験の積み重ねなどが、じわじわ影響します。人の心は単独栽培では育ちません。土があり、水があり、光があり、ときどき風よけも必要です。

カリ・H・チェスニェフスキの研究から学べることは、「自分をどう見るか」は軽い問題ではない、ということです。自己評価は、ただの気分ではなく、挑戦する力、人と関わる力、失敗から戻ってくる力に関わっています。

でも同時に、自己評価は石に刻まれた運命でもありません。関わり方、言葉のかけ方、環境、経験の積み重ねによって、少しずつ育て直すことができます。

だから、子どもにも、自分自身にも、すぐに「あなたはこういう人」と決めつけないことです。人間は、ラベルを貼って倉庫にしまう商品ではありません。まだまだ書き換え可能な物語です。

チェスニェフスキさんの研究は、静かにこう教えてくれます。

自分を大切に思える感覚は、ぜいたく品ではない。人生を歩くための靴底みたいなものです。すり減っていたら、転びやすくなる。だからこそ、早めに気づき、直し、支え、歩きやすくしていくことが大切なのです。

阿部牧歌(管理人)
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カリ・H・チェスニェフスキ(Kali H. Trzesniewski)の論文一覧

1.『低い自己肯定感は、青年期から老年期までの抑うつ症状の危険因子である』オース、ロビンス、チェスニェフスキ ほか(2009)

Orth, U., Robins, R. W., Trzesniewski, K. H., Maes, J., & Schmitt, M. (2009). Low self-esteem is a risk factor for depressive symptoms from young adulthood to old ageJournal of Abnormal Psychology, 118(3), 472–478. DOI:10.1037/a0015922

「自己肯定感が低いと落ち込みやすい」とは聞くけれど、それって若い頃だけの話じゃないの? と思った方へ。この論文は、青年期から老年期まで幅広く追いかけて、低い自己肯定感がその後の抑うつ症状のリスクになりうることを示した研究です。しかも面白いのは、「落ち込んだから自信をなくす」だけでなく、その逆の流れにも光を当てているところ。心の土台、思った以上にあなどれません。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】自己肯定感の低さは、なぜ抑うつにつながるのか? 若年期から老年期まで続く心のしくみ
【論文要約】自己肯定感の低さは、なぜ抑うつにつながるのか? 若年期から老年期まで続く心のしくみ

2.『知能についての暗黙の理論は、思春期の移行期における学業成績を予測する:縦断研究と介入研究』リサ・S・ブラックウェル、カリ・H・トジェスニエフスキー、キャロル・ソリッチ・ドゥエック(2007)

Blackwell, Lisa S., Trzesniewski, Kali H., & Dweck, Carol Sorich. (2007). Implicit Theories of Intelligence Predict Achievement Across an Adolescent Transition: A Longitudinal Study and an Intervention. Child Development, 78(1), 246–263. DOI:10.1111/j.1467-8624.2007.00995.x

「頭のよさって、生まれつき固定ですか?」。ブラックウェル、トジェスニエフスキー、ドゥエックらは、中学生を追跡して、この問いを本気で調べました。すると、「知能は伸ばせる」と考える生徒ほど、数学の成績がその後よい方向へ伸びる傾向が見えてきます。さらに、「脳や能力は努力で成長する」と学ぶ授業を行うと、成績低下にも歯止めがかかりました。つまり「苦手だから終了」ではなく、「まだ育成中かも」が大事らしい。思春期の勉強観に、心理学がそっとツッコミを入れた一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
成長マインドセットと成績は関係する?中学生を2年間追った研究
成長マインドセットと成績は関係する?中学生を2年間追った研究
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