ルース・ヤセミン・エロル(Erol, R. Y.)の論文一覧:自尊心の成長記録を、人生まるごと見つめた研究室

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ルース・ヤセミン・エロル(Erol, R. Y.)のプロフィール

ルース・ヤセミン・エロルさんは、ひとことで言うと、「自分をどう見るか」と「人とどうつながるか」の関係を、かなり丁寧に追いかけてきた心理学研究者です。

エロルさんの研究でよく知られているのは、「自己肯定感は恋愛関係にどう関係するのか」というテーマです。たとえば、ウルリッヒ・オースさんとの研究では、本人の自己肯定感が、その人自身の関係満足度だけでなく、パートナーの満足度にも関係することが示されています。これはつまり、「自分なんて……」という気持ちは、心の中だけで完結するわけではなく、ふたりの関係の空気にもじわっと染み出す、ということです。心の加湿器ならぬ、心の空気清浄機問題ですね。

また、2014年の研究では、カップルを対象に、自己肯定感と関係満足度が時間の中でどう変化していくかを調べています。恋愛や結婚生活というのは、最初の花火だけで決まるものではなく、日々のやりとりの中で少しずつ形を変えていきます。エロルさんの研究は、その“じわじわ変化する心の天気図”を見ようとしているところが面白いです。

さらに、若者の自己肯定感の発達についても重要な研究があります。2011年の論文では、14歳から30歳までの人たちを長期間追いかけ、自己肯定感が思春期から青年期にかけてどう変化するかを分析しました。この研究では、自己肯定感は平均的には年齢とともに高まっていく傾向があり、性格特性や「自分の人生を自分で動かせている」という感覚などが、その変化に関係することが示されています。若いころの自己肯定感は、まるで育て途中の観葉植物みたいなもので、水や光の当たり方によって、伸び方が変わってくるわけです。

所属については、公開されている論文情報では、スイスのバーゼル大学心理学部、またベルン大学心理学研究所との関わりが確認できます。ResearchGateのプロフィールでも、ベルン大学心理学研究所で人格心理学を研究している人物として紹介されています。ただし、研究者プロフィールは更新が止まっていることもあるため、「現在も必ずこの所属です」と断定するより、「少なくとも公開情報上、バーゼル大学やベルン大学を拠点に研究してきた」と書くのが安全です。

エロルさんの研究の魅力は、「自己肯定感」をふわっとした励まし言葉で終わらせないところです。自己肯定感というと、日本語ではどうしても「自分を好きになりましょう」「自信を持ちましょう」という、やさしいけれど少し綿あめみたいな言葉になりがちです。でもエロルさんは、「それは人生の中でどう育つのか」「恋人や配偶者との関係にどう影響するのか」「相手の心にも波及するのか」という形で、かなり具体的に調べています。

言い換えるなら、エロルさんは「自分を大切にすることは、ひとりぼっちの心の問題ではない」と教えてくれる研究者です。自己肯定感は、胸の内側にしまってある小さな宝石というより、人間関係のテーブルの上にそっと置かれるランプのようなものです。その灯りが安定していると、自分の顔も、相手の顔も、少し見えやすくなる。エロルさんの研究は、そんな心の灯りの明るさを、データという物差しで測ろうとしてきた仕事だと言えます。

参考文献・確認先:ResearchGate:ルース・ヤセミン・エロル プロフィール / Google Scholar:Ruth Yasemin Erol 論文・引用情報 / PubMed:Ruth Yasemin Erol 関連論文 / PubMed:14歳から30歳までの自己肯定感発達に関する論文 / PubMed:カップルの自己肯定感と関係満足度に関する論文

阿部牧歌(管理人)
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ルース・ヤセミン・エロル(Erol, R. Y.)の研究から学べること

ルース・ヤセミン・エロルさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「恋愛や夫婦関係では、“相手がどうか”だけでなく、“自分をどう見ているか”が、関係の満足度にじわじわ関わってくる」ということです。

恋愛というと、つい相手探しの話になりがちです。「やさしい人がいい」「価値観が合う人がいい」「連絡がまめな人がいい」「食の好みが合う人がいい」。もちろん大事です。唐揚げにレモンをかけるかどうかで、家庭内に小さな国境が生まれることもあります。

でも、エロルさんの研究は、もう少し内側を見ます。恋愛や夫婦関係は、「相手がどんな人か」だけでは決まりません。自分が自分をどう見ているか、つまり自尊心も深く関係します。

エロルさんは、ウルリッヒ・オルトさんとともに、自尊心と恋愛関係・夫婦関係の満足度について研究しています。2014年の研究では、885組のカップルを12年間、さらに6,116組のカップルを15年間追跡した2つの長期研究を使い、自尊心の変化と関係満足度の変化を調べています。その結果、本人の自尊心の高さや変化が、カップルとしての関係満足度と関係していることが示されています。

これをやさしく言うと、「自分を大切に思える人は、相手との関係の中でも安心しやすい」ということです。

たとえば、自尊心が安定している人は、相手から少し返信が遅くても、「忙しいのかな」と考えやすいかもしれません。もちろん寂しさはあります。でも、すぐに「嫌われた」「もう終わりだ」「私は大事にされていない」と心の非常ベルが鳴りっぱなしにはなりにくい。

一方、自尊心が低くなっていると、同じ出来事でも受け取り方が変わります。返信が遅いだけで、「自分に価値がないからだ」と感じてしまう。相手が少し疲れているだけなのに、「私といるのが嫌なのかも」と思ってしまう。もう心の中では、裁判所が開廷し、検察官が「被告人、自分には愛される価値がないのでは?」と厳しく問い詰めています。弁護人、早く来てください。

エロルさんたちの別の研究では、自尊心が恋愛関係の質にどう関係するかを整理し、自尊心は本人自身の満足度だけでなく、相手側の満足度にも関わる可能性があると論じられています。さらに、その関係には、愛着に関わる不安や回避、つまり「見捨てられるかも」と不安になりやすいことや、「近づきすぎるのが怖い」と距離を取りやすいことが関係しているとされています。

ここから学べる一つ目の知恵は、「恋愛の不安を、相手の問題だけにしすぎないこと」です。

もちろん、相手の態度が本当に不誠実な場合もあります。約束を破る、無視する、傷つける、支配する。そういう場合は、きちんと距離や境界線を考える必要があります。

でも、相手が普通に忙しいだけなのに、自分の中で不安が爆発することもあります。これは、自分が悪いという話ではありません。自尊心や過去の経験が、現在の出来事を強めに解釈している可能性があるということです。

つまり、恋愛で苦しくなったときには、こう見てみるとよいのです。

「相手の行動そのものは何か」

「自分はそれをどう受け取ったか」

「その受け取り方には、自分への不安が混ざっていないか」

「私は今、安心を確認したいのか、事実を確認したいのか」

こう分けるだけで、心のもつれが少しほどけます。恋愛中の脳は、ときどき名探偵になりすぎます。しかも証拠が少ないのに、かなり壮大な推理をします。「既読がついた時間が昨日より遅い。つまり愛が冷めたのでは」。名探偵、いったんお茶を飲みましょう。

二つ目の知恵は、「自尊心は、恋愛関係の土台になる」ということです。

自尊心があるというのは、「私は完璧です」「私は世界で一番すばらしいです」と思うことではありません。そういう人がいたら、少し距離を取りながら観察したくなります。

ここでいう自尊心は、もっと静かなものです。

「私は欠点があっても、大切にされてよい」

「相手に合わせるだけでなく、自分の気持ちも言ってよい」

「嫌われるのが怖くても、必要なことは伝えてよい」

「関係がうまくいかないとき、それは自分の価値がゼロという意味ではない」

この感覚です。派手な王冠ではなく、心の靴底です。見えにくいけれど、ここが薄いと、恋愛の道を歩くたびに痛くなります。

三つ目の知恵は、「カップルは、二人でひとつの空気を作っている」ということです。

エロルさんとオルトさんの2014年の長期研究では、関係満足度の発達はカップル単位の過程として捉えられることが示されています。つまり、満足度は片方だけの問題ではなく、二人の関係の中で育つものとして見られています。

これはとても大切です。恋愛や夫婦関係では、「どちらが悪いか」を探し始めると、すぐに心の法廷ドラマになります。証拠、反論、過去の発言、LINE履歴。もう裁判資料が山積みです。

でも関係をよくするには、「犯人探し」より「空気づくり」が大切なことがあります。

相手が不安になりやすいなら、見通しを伝える。

自分が不安になりやすいなら、責める前に「安心したい」と言葉にする。

相手が距離を取りやすいなら、追い詰めすぎず、話す時間を決める。

自分が我慢しすぎるなら、小さく本音を出す。

こうした小さな調整が、二人の空気を変えます。関係は一発勝負の花火ではありません。毎日少しずつ火加減を調整する煮込み料理です。強火すぎると焦げますし、弱火すぎると冷めます。愛にも火加減があります。

四つ目の知恵は、「似た者同士ならうまくいく、とは限らない」ということです。

エロルさんたちの長期研究では、パートナー同士の自尊心の“似ている度合い”が、関係満足度の発達に強く影響するとは言えない結果が示されています。つまり、「二人とも自尊心が同じくらいだからうまくいく」という単純な話ではなさそうです。

これは面白いですね。恋愛では「似ている人がいい」「同じ温度感がいい」と言われます。もちろん、価値観や生活リズムの相性は大切です。でも、自尊心については、「似ているかどうか」よりも、「それぞれが自分をどう扱い、相手とどう関わるか」が大事なのかもしれません。

自尊心が低い人同士でも、お互いに支え合い、安心を育てられることがあります。

自尊心が高い人同士でも、相手を雑に扱えば関係はこじれます。

片方が不安になりやすく、片方が安定している場合でも、理解と対話があれば関係は育ちます。

つまり、相性は初期設定だけではありません。日々のアップデートがあります。たまにバグも出ます。再起動も必要です。でも、更新はできます。

五つ目の知恵は、「恋愛の満足度を高めるには、相手を変える前に、自分との関係も整えること」です。

恋愛がしんどいとき、私たちは相手に注目します。

もっと連絡してほしい。

もっとわかってほしい。

もっと大事にしてほしい。

もっと安心させてほしい。

もちろん、相手に伝えることは大切です。でも同時に、自分自身との関係も見直す必要があります。

自分を責めすぎていないか。

相手の反応で自分の価値を決めすぎていないか。

不安を言葉にせず、怒りで出していないか。

嫌われるのが怖くて、本音を隠しすぎていないか。

こうしたところを見ていくと、関係の中での自分の動きが少しわかります。恋愛は、相手を観察する虫めがねだけでなく、自分を見る手鏡も必要なのです。

支援や相談の場でも、エロルさんの研究は役に立ちます。

たとえば、恋愛や夫婦関係で悩む人がいたとき、「相手が悪い」「別れたほうがいい」「我慢したほうがいい」とすぐ結論に飛ばないことです。もちろん、安全が脅かされている場合は別です。暴力や支配がある場合は、本人の安全が最優先です。

でも、一般的なすれ違いの場合には、こう聞くことができます。

「その出来事で、自分はどう感じましたか」

「その感じ方には、過去の経験や自分への不安が関係していそうですか」

「相手に本当に伝えたいことは、怒りですか、それとも安心したい気持ちですか」

「自分を大切にしながら、相手にも伝わる言い方はありますか」

こうした問いは、関係を責め合いの場から、理解の場へ変えていきます。心の取調室を、少しだけちゃぶ台のある部屋に変える感じです。お茶も出しましょう。

ルース・ヤセミン・エロルさんの研究が教えてくれるのは、恋愛や夫婦関係は「相手選び」だけではなく、「自分をどう大切にできるか」と深くつながっているということです。

自尊心が安定していると、相手の行動を過剰に悪く受け取りにくくなります。

自分の気持ちを伝えやすくなります。

相手に依存しすぎず、でも距離を取りすぎず、関係の中にいられます。

そして、関係の満足度は、二人のやりとりの中で育ちます。

恋愛は、相手に自分の価値を証明してもらう場所ではありません。できれば、自分の価値を持ち寄って、二人で関係を育てる場所です。もちろん、いつもきれいにはいきません。鍋を焦がす日もあります。連絡で揉める日もあります。唐揚げレモン戦争が起きる日もあります。

でも、自分を粗末にせず、相手も粗末にせず、不安を責める言葉ではなく伝わる言葉に変えていくことで、関係は少しずつ育ちます。

エロルさんの研究は、恋愛にこう語りかけているようです。

「愛されるかどうか」だけを見つめる前に、「自分を愛されてよい存在として扱えているか」を見てみましょう。

相手との関係を育てるには、自分との関係も育てる必要があります。

恋愛の満足は、相手の行動だけでなく、自分の心の土台にも根を下ろしているのです。

阿部牧歌(管理人)
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ルース・ヤセミン・エロル(Erol, R. Y.)の論文一覧

1.『4歳から94歳まで、自尊心はどう育つのか 縦断研究をもとにしたメタ分析』ウルリッヒ・オース、ルース・ヤセミン・エロル、エヴァ・C・ルチアーノ(2018)

Orth, U., Erol, R. Y., & Luciano, E. C. (2018). Development of self-esteem from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 144(10), 1045–1080. DOI:10.1037/bul0000161from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies.

「自尊心って、年をとるほど下がるんでしょ?」と思ったあなたに、この論文はちょっと待ったをかけてきます。4歳から94歳までを追いかけた大量データをまとめると、自尊心は子ども時代からじわじわ育ち、60代ごろでピーク、その後ゆるやかに下がるらしいのです。人生、自己評価にも季節あり。あなたの“いま”を、長い人生の地図で見せてくれる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ自尊心は年齢によって変わるのか? 研究が示した3つのポイント
【心理学論文】なぜ自尊心は年齢によって変わるのか? 研究が示した3つのポイント
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