ティモシー・B・スミス(Timothy B. Smith)の論文一覧:「仲良くするって大事だよね」を、感想ではなくデータでぐいぐい確かめにいった論文たち

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ティモシー・B・スミス(Timothy B. Smith)の論文一覧:のプロフィール

ティモシー・B・スミスさんは、アメリカのブリガムヤング大学で教える心理学の先生です。肩書きとしては、ざっくり言うと「カウンセリング心理学の教授」。学生と関わることが好きだと大学の紹介にも書かれていて、教えることそのものをかなり大事にしている先生のようです。

研究の守備範囲はけっこう広めです。宗教や精神性、多文化社会、社会問題、健康と家族の心理学、研究方法、倫理などを教える関心分野として挙げていますし、研究テーマとしては「家族関係が人の幸せや社会の土台になること」「多文化社会」「障害のある子どもの子育て」「人身売買や搾取の予防」「宗教と精神性」などに取り組んでいます。つまり一言でいえば、「人がどうつながり、どう支え合い、どう生きやすくなるか」をかなり本気で追っている研究者です。

そして、この方の名前でとくに有名なのが、「人とのつながりは、気分の問題だけではなく、健康や寿命にも関わる」という研究です。ジュリアン・ホルト=ランスタッドさんたちとの共同研究では、社会的な孤立や孤独が早死にの危険と関係していることを、たくさんの研究をまとめて検討しています。研究ページには、孤立や孤独が死亡リスクの上昇と結びついていたこと、しかもその影響は広く知られた健康リスクと比べても無視できないレベルだったことが示されています。ここ、かなり静かに書いてありますが、内容はなかなか重たいです。人づきあいって、心の飾りじゃなくて、命の土台でもあるのかもしれません。

大学の紹介ページを見ると、教授として長く活躍していて、心理学分野の学会から表彰も受けています。研究だけしている人というより、「教える」「調べる」「社会の役に立つ形にする」を三本柱でやっている、まじめで実務感のある先生という印象です。派手に前へ出るタイプというより、数字と地道な検証でじわじわ説得してくる研究者、という言い方が似合います。

ひとことで言うなら、
「人とのつながりって大事ですよね」を、ふわっとした感想で終わらせずに、「いや、そこはちゃんとデータで見ましょう」と机に論文を積み上げて確かめにいく先生。しかもその結果が、「思ったよりずっと大事でした」という方向に出てくるので、読んでいるこちらも背筋がちょっと伸びます。人間関係を“気持ちの話”から“健康の話”にまで引き上げた人のひとり、と言ってよさそうです。

参考文献・確認先: Brigham Young University:Timothy B. Smith 公式プロフィール / Google Scholar:Timothy B. Smith 論文・引用情報 / PubMed:Timothy B. Smith 関連論文 / PubMed:Social relationships and mortality risk / PMC:Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ティモシー・B・スミス(Timothy B. Smith)の研究から学べること

ティモシー・B・スミスさんの研究をひとことで言うなら、「人を支えるときは、“正しい方法”をそのまま渡すだけでは足りない。相手の文化、言葉、家族観、信仰、生活背景に合わせて、ちゃんと“その人に届く形”にすることが大事ですよ」というお話です。

たとえば、すごく栄養のある料理があったとします。タンパク質もビタミンもばっちり。医師も栄養士もにっこり。でも、それが相手の口に合わない、宗教上食べられない、そもそも箸もスプーンも出されていない、となるとどうでしょう。「体にいいんだから食べてください」と言われても、相手からすれば「いや、入口で迷子です」となりますよね。心の支援も、これに似ています。

スミスさんは、ブリガムヤング大学のカウンセリング心理学の教授で、多文化心理学、宗教・精神性、健康や家族、社会的つながりなどを研究しています。大学の紹介でも、研究関心として多文化心理学、健康・家族心理学、宗教や精神性などが挙げられています。

スミスさんの研究で特に大切なのは、「文化に合わせた心理支援」です。これは、難しく言えば「文化的適応」ですが、日常の言葉にすると、「相手の暮らしの言葉に翻訳して支援する」ということです。心理療法やカウンセリングの考え方は、そのままでも役立つことがあります。でも、相手の文化や価値観を無視してしまうと、せっかくの支援が“サイズ違いの靴”になります。立派な靴でも、足に合わなければ歩くたびに痛いのです。

スミスさんたちの研究では、文化に合わせて調整された心理支援は、対象となる人たちに対して効果が高まりやすいことが示されています。2011年の論文では、65件の研究、8,620人を含む分析から、文化に合わせた支援が中程度の効果を示し、文化的な調整が多いほど効果が高い傾向があると報告されています。

ここで大事なのは、「文化に合わせる」とは、ただ外国語に訳すことではない、という点です。もちろん言葉は大切です。でも、それだけではありません。家族をどう見るか、助けを求めることをどう感じるか、病気や苦しみをどう理解するか、信仰や地域とのつながりをどう大切にしているか。こうしたもの全部が、その人の心の土壌になります。

同じ「悩み」でも、育ってきた土が違えば、根の張り方が違います。だから支援者は、いきなり心の枝を剪定するのではなく、「この人の根っこは、どんな土の中にあるのかな」と見る必要があるのです。ここを見落とすと、支援は急に上から目線の園芸番組になります。「はい、ここ切りますね」「水はこれくらいです」「日当たりはこうです」と言いながら、相手の庭の気候をまったく見ていない。これはなかなか危険です。

スミスさんの研究から学べる一つ目のことは、「よい支援とは、相手に合わせて姿を変えられる支援である」ということです。

たとえば、ある人にとっては「自分の気持ちを言葉にしましょう」が、とても大切な助けになります。でも、別の人にとっては、いきなり自分の内面を話すことが強い抵抗になる場合もあります。家族を大事にする文化では、本人だけでなく家族との関係を含めて考えたほうがよいこともあります。宗教や信仰が支えになっている人には、それを無視せず、本人が大切にしている意味の世界として丁寧に扱う必要があります。

つまり、「この方法は科学的に正しいです。以上!」では足りないのです。科学は地図です。でも、実際に歩く人の靴、体力、天気、道の混み具合を見なければ、旅はうまくいきません。スミスさんの研究は、「地図は大事。でも、その人が本当に歩ける道にしようね」と教えてくれます。

二つ目に学べるのは、「支援者側の思い込みを点検すること」です。

人を支援するとき、支援者はつい「普通はこうでしょう」と思ってしまいます。でも、この“普通”が曲者です。普通という言葉は、便利な顔をして、けっこう強引です。自分の文化、自分の職場、自分の家庭、自分の経験の中では普通でも、相手にとってはまったく普通ではないことがあります。

たとえば、「困ったら相談するのが当然」と思っていても、相談することを恥だと感じる人もいます。「個人の意思を大事にしましょう」と言っても、家族や共同体との調和を大切にしている人にとっては、個人だけで決めることが不安になる場合もあります。「自分の気持ちをはっきり言いましょう」と勧めても、相手に失礼にならないように遠回しに伝える文化で育った人には、急に強い表現を求められるように感じるかもしれません。

支援者が自分の“普通メガネ”を外さないまま相手を見ると、相手の姿が少しゆがんで見えます。だからこそ、「この人はなぜこう考えるのだろう」だけでなく、「自分はなぜこれを普通だと思っているのだろう」と考えることが大切です。支援とは、相手を観察する仕事であると同時に、自分のメガネを拭く仕事でもあります。

三つ目に学べるのは、「言葉は単なる道具ではなく、安心の入口である」ということです。

スミスさんたちの文化に合わせた支援の研究では、利用者の母語で行われる支援が効果的になりやすいことも指摘されています。2006年のメタ分析では、利用者の文化的背景に合わせた心理支援が有効であり、英語ではなく利用者の母語で行う支援はより効果的だったと報告されています。

これは、とても納得できます。つらい気持ちを話すとき、人は辞書を引きながら泣きたいわけではありません。「悲しい」「怖い」「もう疲れた」「本当は助けてほしい」。こういう言葉は、頭だけではなく、体の奥から出てきます。母語やなじみのある言葉には、心の鍵穴に合う形があります。だから、支援の言葉は、正確なだけではなく、相手の心に入れる言葉である必要があります。

もちろん、日本語同士でも同じです。専門用語だらけの説明は、相手の心の玄関で靴を脱がずに上がり込むようなものです。「心理的安全性」「認知再構成」「自己効力感」と言われても、聞く人によっては「え、急に漢字の重箱が出てきた」となります。相手に合わせて、「安心して話せる感じ」「考え方のクセを見直すこと」「自分にもできそうと思える力」と言い換える。これが、支援の翻訳力です。

四つ目に学べるのは、「人はひとりの個人であると同時に、文化や家族や社会の中で生きている」ということです。

心の問題を考えるとき、ついその人の内面だけに注目しがちです。「考え方を変えましょう」「気分を整えましょう」「行動を増やしましょう」。もちろん、それも大切です。でも、その人の周りにある貧困、差別、孤立、移民経験、言葉の壁、家族の期待、地域の価値観などを見落とすと、問題を小さく見積もってしまいます。

たとえるなら、部屋の中で震えている人に「寒がりですね」と言うようなものです。いや、まず窓が開いていないか見ましょう。暖房が壊れていないか見ましょう。外が吹雪ではないか見ましょう。心のしんどさも、本人の中だけで起きているとは限りません。環境の冷たい風が吹き込んでいることがあります。

スミスさんの多文化心理学は、「その人だけを直す」のではなく、「その人が置かれている文脈を見る」ことの大切さを教えてくれます。これは、カウンセリングだけでなく、教育、福祉、就労支援、職場の人間関係にも使える視点です。

たとえば職場で、ある人が会議であまり発言しないとします。すぐに「積極性がない」と決めつけるのは早すぎます。もしかすると、発言するタイミングを慎重に見ているのかもしれません。上の立場の人の前では控える文化で育ったのかもしれません。過去に発言して否定された経験があるのかもしれません。日本語での表現に不安があるのかもしれません。つまり、行動だけを見てラベルを貼ると、心の宛名を間違えることがあるのです。

五つ目に学べるのは、「文化を大事にすることは、相手を特別扱いすることではなく、公平に近づくこと」だということです。

よく、「みんな同じように扱うのが公平」と考えられます。もちろん、それが大切な場面もあります。でも、スタート地点や背景が違う人にまったく同じ靴を渡して「さあ走ってください」と言っても、それは本当に公平でしょうか。足のサイズが違う。道の状態が違う。背負っている荷物が違う。ならば、同じゴールを目指すために、支援の形を調整することが必要になる場合があります。

文化に合わせるとは、甘やかすことではありません。相手が本来の力を出せるように、入口の段差を減らすことです。これは、階段しかない建物にスロープをつけることに似ています。スロープは特別なぜいたく品ではありません。必要な人が、同じ場所に入るための道です。

スミスさんの研究を日常に活かすなら、まずは「相手の背景を聞く力」を育てることです。

「普通はこうですよ」と言う前に、「あなたにとっては、どう感じますか」と聞く。「このやり方で大丈夫ですか」と確認する。「ご家族や大切にしている考え方との関係で、気になることはありますか」と尋ねる。こうした問いは、相手の心に椅子を出す行為です。「ここでは、あなたの背景ごと座っていいですよ」と伝えることになります。

そして、自分の言葉を相手に合わせて翻訳することも大切です。難しい理論をそのまま投げるのではなく、生活の言葉にする。たとえば「自己効力感を高めましょう」ではなく、「自分にもできるかも、と思える小さな成功を増やしましょう」と言う。「ストレス対処方略を検討しましょう」ではなく、「しんどくなったときの逃げ道と休み方を一緒に考えましょう」と言う。急に心のハードルが下がります。

また、支援者だけでなく、私たちの日常の人間関係にも使えます。相手の怒りや沈黙や遠慮を見たとき、「性格が悪い」「やる気がない」と決めつける前に、「この人には、この人なりの背景があるのかもしれない」と一呼吸置く。これは、相手を何でも許すという意味ではありません。理解しようとする姿勢を持つ、ということです。理解は、甘やかしではなく、正確に関わるための地図です。

ティモシー・B・スミスさんの研究から学べることは、結局こういうことです。人を支えるとき、方法の正しさだけでは足りません。その方法が、相手の言葉、文化、価値観、家族、信仰、生活の現実にちゃんと届く形になっているかが大切です。

支援とは、万能の鍵を振り回すことではありません。相手の扉の形を見て、鍵を少しずつ合わせていく仕事です。ときには、こちらの鍵束そのものを見直す必要もあります。「この鍵で開かないなら相手が悪い」と言うのではなく、「別の開け方があるかもしれない」と考える。その姿勢が、多文化の時代にはますます大事になります。

心の支援は、世界共通の説明書を読み上げるだけでは届きません。相手の暮らしの匂いがする言葉で、相手の背景を尊重しながら、相手が歩ける道を一緒に探す。スミスさんの研究は、その大切さを教えてくれます。

人は、ただの「相談者」でも「患者」でも「利用者」でもありません。名前があり、家族があり、信じてきたものがあり、傷ついてきた歴史があり、守ってきた誇りがあります。その人の文化ごと、人生ごと、ていねいに迎えること。そこから、本当に届く支援が始まるのです。

阿部牧歌(管理人)
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ティモシー・B・スミス(Timothy B. Smith)の論文一覧

1.『人とのつながりは寿命を左右するのか?-社会的関係と死亡リスクをめぐるメタ分析レビュー』ジュリアン・ホルト=ランスタッド、ティモシー・B・スミス、J・ブラッドリー・レイトン(2010)

Holt-Lunstad, Julianne, Smith, Timothy B., & Layton, J. Bradley. (2010). Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review. PLOS Medicine, 7(7), e1000316. DOI: 10.1371/journal.pmed.1000316

「人間関係って、まあ心には大事そうだけど、寿命までは関係ないでしょ?」と思ったあなたに、この論文は静かに「いや、かなり関係あります」と返してきます。たくさんの研究をまとめて調べた結果、人とのつながりがしっかりある人ほど、生きのびる可能性が高いことが示されました。友だち付き合いを“気分の話”ではなく“命の話”にまで引き上げた、なかなか衝撃の一本です。読み終わるころには、誰かに連絡したくなるかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人とのつながりは命にまで影響するのか? 研究が示した3つのポイント
【心理学論文】なぜ人とのつながりは命にまで影響するのか? 研究が示した3つのポイント
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