シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)の論文一覧:よろこびを分け合うだけで関係は育つ?人間関係のあたたかい実験室

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シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)のプロフィール

シェリー・L・ゲーブルさんは、アメリカの心理学者で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学・脳科学分野の教授です。専門は、ざっくり言うと「人間関係」「やる気」「ポジティブな感情」の研究です。つまり、人の心の中にある“うれしい”“近づきたい”“わかってほしい”という小さな電球を、虫めがねでじっくり観察している研究者です。

特に有名なのが、「よい出来事を人に話したとき、相手がどう反応するか」という研究です。たとえば、あなたが「仕事でほめられたんです!」と言ったとき、相手が「すごいですね!どんなところを評価されたんですか?」と前のめりで喜んでくれるのか、それとも「へえ、そうなんですね」で会話終了のシャッターを下ろすのか。ゲーブルさんは、こうした反応の違いが、人間関係の満足度や親密さに大きく関わることを研究してきました。

経歴としては、ミューレンバーグ大学で心理学を学び、ウィリアム・アンド・メアリー大学で修士号を取得。その後、ロチェスター大学で社会心理学の博士号を取得しています。2000年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で教員としてのキャリアを始め、のちにカリフォルニア大学サンタバーバラ校へ移りました。研究者としての道を、東海岸から西海岸へ、まるで心理学の地図を横断する旅人のように歩んできた方です。

ゲーブルさんの研究の面白いところは、「人間関係は、困ったときに助けるだけで育つわけではない」と教えてくれる点です。もちろん、つらいときに支えてくれる人は大切です。でもゲーブルさんは、「うれしいことがあったときに、一緒に喜んでくれる人」も同じくらい大事だと示しました。これはかなり温かい視点です。人生の雨の日に傘をさすだけでなく、晴れた日に「いい天気ですね!」と一緒に空を見上げてくれる関係が、人の心を強くするというわけです。

代表的な研究には、ハリー・リースさんらとの「よいことが起きたとき、人はどうするのか?」という論文があります。この研究では、良い出来事を他者に話し、相手が熱心で前向きに反応してくれると、本人の幸福感や関係の満足度が高まりやすいことが示されています。つまり、喜びは一人で持っていると小さなキャンドルですが、誰かが「それ、いいですね!」と息を吹き込むと、あたたかいランタンになるのです。

また、ナタリヤ・C・マイゼルさんとの研究では、「助けてもらっているのに、なぜかしんどい」という不思議な現象にも注目しています。支援そのものよりも、「こちらの気持ちをちゃんとわかってくれているか」が大事だという視点です。親切も、相手の心に合っていなければ、サイズ違いの服みたいに少し窮屈になる。ゲーブルさんの研究は、そんな人間関係の微妙なサイズ感を見事にすくい取っています。

ひとことで言えば、シェリー・L・ゲーブルさんは、「人は、つらいときに支えられるだけでなく、うれしいときに一緒に喜ばれることで、もっと元気になれる」と教えてくれる心理学者です。人間関係を“大事件”ではなく、日々の小さな返事や相づちから見つめる研究者、と言ってもよさそうです。会話の中の「よかったですね!」を、ただの社交辞令ではなく、人の心を育てる小さな栄養として見直させてくれる。そんな、かなりやさしい目を持った研究者です。

参考文献・確認先:University of California, Santa Barbara Department of Psychological & Brain Sciences:Shelly Gable 公式プロフィール / Google Scholar:Shelly Gable 論文・引用情報 / PubMed:Shelly L. Gable 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)の研究から学べること

シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「人間関係は、つらいときに支えるだけでなく、うれしいときに一緒に喜べるかどうかで、ぐんと育つ」ということです。

これ、ものすごく大事です。私たちは「支え合い」と聞くと、どうしても困ったときの場面を思い浮かべます。落ち込んだときに話を聞く。失敗したときに励ます。病気のときにおかゆを作る。もちろん、これは大切です。人生には、ときどき心の道路に落石がありますから、「大丈夫?」と来てくれる人はありがたいです。

でもゲーブルさんの研究は、そこにもう一つの大きな看板を立てます。

「いいことがあったとき、あなたはちゃんと一緒に喜べていますか?」

これです。人間関係の隠れた名場面は、悲しみの救急車だけではありません。喜びの屋台もあるのです。たこ焼きの湯気みたいに、うれしさを一緒にふくらませる時間。これが関係をあたためるのです。

ゲーブルさんは、親しい人間関係、前向きな感情、やる気などを研究している心理学者です。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の紹介でも、動機づけ、親しい関係、前向きな感情が主な研究テーマだとされています。

特に有名なのが、「よい出来事を人に話すこと」の研究です。これは日本語で言えば、「うれしいことのおすそ分け」です。たとえば、「仕事でほめられた」「試験に受かった」「いい企画が通った」「今日は利用者さんといい関わりができた」など、自分にとってよい出来事を誰かに話す。ゲーブルさんたちの研究では、よい出来事を他者に伝えることが、その出来事自体の効果を超えて、日々の前向きな気分や幸福感と関係することが示されています。

これ、考えてみるとすごく自然です。

いいことがあったとき、自分ひとりで「やった」と思うのももちろんうれしいです。でも、誰かに話して「それ、すごいじゃないですか!」「どんな感じだったんですか?」と返ってくると、うれしさがもう一度ふくらみます。心の中で小さなくす玉が、二回割れる感じです。一回目は出来事が起きたとき。二回目は誰かが一緒に喜んでくれたときです。

逆に、よい報告をしたときに、相手が「へえ」とスマホを見ながら返したらどうでしょう。言葉としては否定されていません。でも、心はちょっとしぼみます。せっかく焼きたてのたい焼きを持っていったのに、「机に置いといて」と言われたような感じです。いや、食べて。せめて湯気を見て。

ゲーブルさんの研究で有名なのが、よい出来事を話されたときの反応の仕方です。関係にとって特に良いとされるのは、「積極的で、前向きな反応」です。日本語でやわらかく言えば、「ちゃんと身を乗り出して、一緒に喜ぶ反応」です。2006年の恋人同士を対象にした研究では、よい出来事を話したときに、相手がどれだけ理解し、認め、大切にしてくれたと感じられるか、また観察者が見た相手の反応が、関係のよさと関わることが調べられています。

たとえば、相手が「今日、上司にほめられたんだ」と言ったとします。

あまりよくない反応は、こんな感じです。

「へえ、よかったね」

これ、完全に悪いわけではありません。でも、だいぶ薄味です。出汁を忘れた味噌汁です。

もっと残念なのは、こうです。

「でも、次もできるとは限らないよね」
「調子に乗らないほうがいいよ」
「それくらい普通じゃない?」

これは、喜びの風船に針を刺しています。相手の心の中では、しゅるしゅるしゅる、と空気が抜けていきます。

ゲーブルさん的に良い反応は、たとえばこうです。

「え、それはうれしいですね!どんなところをほめられたんですか?」
「頑張っていたところが伝わったんですね」
「それ、聞いている私もうれしいです」

この反応は、相手の喜びに水をやる反応です。小さな芽が、にょきっと伸びます。ポイントは、ただ「よかったね」で終わらせないことです。相手のよい出来事に関心を持ち、少し詳しく聞き、感情を一緒に味わう。これが、喜びを大きくします。

ここで大切なのは、「一緒に喜ぶ」は、わざとらしい拍手大会ではないということです。毎回、クラッカーを鳴らす必要はありません。職場で突然ファンファーレを鳴らしたら、たぶん総務がざわつきます。大事なのは、相手のうれしさを雑に扱わないことです。

人は、つらいときに支えてもらうと「この人は自分を助けてくれる」と感じます。でも、うれしいときに一緒に喜んでもらうと、「この人は自分の幸せを喜んでくれる」と感じます。この違いは大きいです。助けてくれる人もありがたい。でも、自分の幸せを妬まず、流さず、ちゃんと受け取ってくれる人は、心の中でかなり特別な席に座ります。

なぜなら、人の喜びに乗るには、少し余裕がいるからです。相手がうまくいったとき、自分と比べてしまうこともあります。「いいなあ」「自分はまだなのに」と思うこともあります。人間ですからね。心の中の比較係が、電卓を持って走ってくる日もあります。でもそこで、相手の喜びをつぶさず、「それはよかったね」と言えることは、関係を育てる力になります。

ゲーブルさんの研究から学べるのは、「よい関係は、悲しみへの対応だけでなく、喜びへの対応で育つ」ということです。

たとえば夫婦や恋人関係で考えてみましょう。相手が疲れているときに支えるのは大切です。でも、相手がうれしそうに話してきたときに、「へえ」で終わらせ続けていると、関係の中の明るい記憶が増えにくくなります。反対に、相手の小さな成功を一緒に喜ぶと、「この人には、いいことも話したい」と思えるようになります。関係の中に、安心だけでなく、楽しさも貯まっていくのです。

これは、職場でも同じです。

部下や同僚が「できました」「うまくいきました」「少し進みました」と言ってきたとき、すぐに改善点だけを言うと、相手の心はしぼみます。

「ここは直して」
「次はもっと早く」
「まだ足りないね」

もちろん改善は大事です。でも、それだけだと、相手は「報告した瞬間に赤ペンで全身を塗られた」ような気持ちになります。先に一言、「ここまで進めたんですね」「それはよかったですね」「この部分、助かりました」と受け取るだけで、空気は変わります。

人は、自分の努力を見てもらえたと感じると、次の改善も受け取りやすくなります。心の玄関を開けてもらう前に、いきなり家具を運び込もうとしないことです。まず「おじゃまします」が必要です。

ゲーブルさんの研究は、ブログやサイト運営にも使えます。読者に対しても同じです。読者が「これ、わかる」「少し楽になった」「自分もできそう」と思える文章は、読者の小さな喜びに反応している文章です。ただ知識を投げるだけではなく、「それはいい気づきですね」「そこに気づけたら十分すごいです」と、読者の中の前向きな動きを育てる。そういう文章は、読み手の心に残ります。

つまり、ゲーブルさんの研究から日常に持ち帰れる技術は、とてもシンプルです。

誰かがいいことを話してくれたら、まず止まる。
相手のほうを見る。
「それはうれしいですね」と受け取る。
できれば、ひとつ質問する。
「どんなところがよかったんですか?」
「そのとき、どんな気持ちでした?」
「そこまで頑張ってきたんですね」

これだけです。高級な心理技法ではありません。でも、効きます。人間関係の栄養ドリンクです。ただし、カフェイン過多ではなく、じんわり効く甘酒タイプです。

ただし注意したいのは、「相手の喜びを奪わないこと」です。

たとえば、相手が「仕事で評価された」と言ったときに、「私なんて全然だよ」と自分の話に持っていく。これは、相手の喜びステージに突然自分が乱入して、マイクを奪うようなものです。やりたくなる気持ちはわかります。でも、まずは相手の曲を最後まで聞くことです。

また、「でも大変になるよ」「次が本番だよ」と、すぐ現実チェックを入れすぎるのも注意です。もちろん必要な場面もあります。でも、相手が今ほしいのは、現実の警備員ではなく、喜びの同席者かもしれません。警備員は少しあとでいいです。まずは拍手です。

シェリー・L・ゲーブルの研究からたどりつく学びは、とてもあたたかく、しかも実用的です。

人間関係は、苦しいときだけ試されるのではありません。
うれしいときにも、ちゃんと試されています。
相手の喜びをどう扱うかによって、「この人にはまた話したい」と思われるかどうかが変わります。

悲しみを半分にする人も大切です。
でも、喜びを二倍にしてくれる人は、もっと一緒にいたくなります。

人と人との関係は、雨の日の傘だけでなく、晴れの日のベンチでも育ちます。誰かが「いいことがあったんです」と言ってきたら、それは関係を育てる小さな種です。雑に踏まないこと。ちゃんと見て、水をやること。

「それ、聞かせてください」

この一言が、相手の喜びをふくらませ、人間関係にやわらかい灯りをともします。ゲーブルさんの研究は、その灯りの大切さを教えてくれる研究なのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
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シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)の論文一覧

1.『受け取った支援は、なぜ時に逆効果になるのか-応答性がひらく、ソーシャルサポートの逆説』ナタリヤ・C・マイゼル、シェリー・L・ゲーブル(2009)

Maisel, N. C., & Gable, S. L. (2009). The paradox of received social support: The importance of responsiveness. Psychological Science, 20(8), 928–932. DOI: 10.1111/j.1467-9280.2009.02388.x

「手伝ってくれてるのに、なんかモヤッとする……」そんな支援あるあるを、心理学がそっと解剖した論文です。この研究によると、大事なのは“支援したかどうか”より、“相手の気持ちや状況にちゃんと合っていたか”。親切もサイズ違いだと、心にチクッとくるんですね。支援は愛の宅配便。でも、届け先と中身が合ってこそ、ありがたく受け取れるのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】受け取った支援の研究からわかった、「助けてもらったのに苦しくなる」意外なしくみ
【論文要約】受け取った支援の研究からわかった、「助けてもらったのに苦しくなる」意外なしくみ

2.『うまくいったとき、人は何をするのか? ポジティブな出来事を分かち合うことが、自分の心と人間関係にもたらす恵み』シェリー・L・ゲイブル、ハリー・T・リース、エミリー・A・インペット、エヴァン・R・アッシャー(2004)

Gable, S. L., Reis, H. T., Impett, E. A., & Asher, E. R. (2004). What do you do when things go right? The intrapersonal and interpersonal benefits of sharing positive events. Journal of Personality and Social Psychology, 87(2), 228–245. DOI: 10.1037/0022-3514.87.2.228

「いいことあった!」を誰かに話したくなるのは、ただの報告欲ではありません。この論文は、うれしい出来事を人に共有すると、本人の気分や幸福感、さらに人間関係までポカポカ温まるのかを調べた研究です。ポイントは、聞き手の反応。「へえ」で終わると幸せの風船はしぼみますが、「それすごい!もっと聞かせて!」と一緒に喜んでもらえると、心の中で小さな祝賀パレードが始まります。喜びは、分けると薄まるどころか、むしろ増えるのです。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人はうれしいことを誰かに話したくなるのか? 研究が示した3つのポイント
【心理学論文】なぜ人はうれしいことを誰かに話したくなるのか? 研究が示した3つのポイント

3.『うれしい知らせは、信頼関係の“避難訓練”になる?-ポジティブな出来事への身近な人の反応を探る研究』シェリー・L・ゲイブル、コートニー・L・ゴスネル、ナタリア・C・マイゼル、エイミー・ストラクマン(2012)

Gable, S. L., Gosnell, C. L., Maisel, N. C., & Strachman, A. (2012). Safely testing the alarm: Close others’ responses to personal positive eventsJournal of Personality and Social Psychology, 103(6), 963–981. DOI:10.1037/a0029488

「いいことあったんだ!」と報告したとき、相手の返事で心の警報機がピコンと鳴ること、ありませんか? この論文は、うれしい出来事への“返し方”が、人間関係の安心感をどう映し出すのかを調べた研究です。「すごいね!」と一緒に喜んでくれる人は、心の非常ベルを静かにしてくれる存在かもしれません。逆に、薄い反応だと「え、私だけ盛り上がってる?」と心が小さく正座することも。幸せ報告は、ただの雑談ではなく、関係の温度計だったのです。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】うれしい出来事を話したときの反応からわかった、信頼関係の意外なしくみ
【論文要約】うれしい出来事を話したときの反応からわかった、信頼関係の意外なしくみ

4.『よい出来事を、さらによいものにする:対人関係におけるキャピタライゼーションのレビューと理論モデル』ブレット・J・ピーターズ、ハリー・T・リース、シェリー・L・ゲイブル(2018)

Peters, B. J., Reis, H. T., & Gable, S. L. (2018). Making the good even better: A review and theoretical model of interpersonal capitalization. Social and Personality Psychology Compass, 12(7), e12407. DOI:10.1111/spc3.12407

「いいことあった!」と話したとき、相手が「ふーん」で終わるか、「え、それ最高!もっと聞かせて!」と身を乗り出すか。実はこの差、人間関係のあたたかさを左右します。この論文は、うれしい出来事を人に話して、相手に喜んでもらうことで幸せがさらにふくらむ仕組みを整理したレビューです。まさに“喜びの炊飯器”。小さな幸せを、会話の湯気でほかほかにする心理学です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】うれしい報告にどう返す? 研究からわかった、人間関係がもっと深まる意外なしくみ
【論文要約】うれしい報告にどう返す? 研究からわかった、人間関係がもっと深まる意外なしくみ
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