シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)の論文一覧:よろこびを分け合うだけで関係は育つ?人間関係のあたたかい実験室
- シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)のプロフィール
- 1.『受け取った支援は、なぜ時に逆効果になるのか-応答性がひらく、ソーシャルサポートの逆説』ナタリヤ・C・マイゼル、シェリー・L・ゲーブル(2009)
- 2.『うまくいったとき、人は何をするのか? ポジティブな出来事を分かち合うことが、自分の心と人間関係にもたらす恵み』シェリー・L・ゲイブル、ハリー・T・リース、エミリー・A・インペット、エヴァン・R・アッシャー(2004)
- 3.『うれしい知らせは、信頼関係の“避難訓練”になる?-ポジティブな出来事への身近な人の反応を探る研究』シェリー・L・ゲイブル、コートニー・L・ゴスネル、ナタリア・C・マイゼル、エイミー・ストラクマン(2012)
- 4.『よい出来事を、さらによいものにする:対人関係におけるキャピタライゼーションのレビューと理論モデル』ブレット・J・ピーターズ、ハリー・T・リース、シェリー・L・ゲイブル(2018)
シェリー・L・ゲーブル(Shelly L. Gable)のプロフィール
シェリー・L・ゲーブルさんは、アメリカの心理学者で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学・脳科学分野の教授です。専門は、ざっくり言うと「人間関係」「やる気」「ポジティブな感情」の研究です。つまり、人の心の中にある“うれしい”“近づきたい”“わかってほしい”という小さな電球を、虫めがねでじっくり観察している研究者です。
特に有名なのが、「よい出来事を人に話したとき、相手がどう反応するか」という研究です。たとえば、あなたが「仕事でほめられたんです!」と言ったとき、相手が「すごいですね!どんなところを評価されたんですか?」と前のめりで喜んでくれるのか、それとも「へえ、そうなんですね」で会話終了のシャッターを下ろすのか。ゲーブルさんは、こうした反応の違いが、人間関係の満足度や親密さに大きく関わることを研究してきました。
経歴としては、ミューレンバーグ大学で心理学を学び、ウィリアム・アンド・メアリー大学で修士号を取得。その後、ロチェスター大学で社会心理学の博士号を取得しています。2000年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で教員としてのキャリアを始め、のちにカリフォルニア大学サンタバーバラ校へ移りました。研究者としての道を、東海岸から西海岸へ、まるで心理学の地図を横断する旅人のように歩んできた方です。
ゲーブルさんの研究の面白いところは、「人間関係は、困ったときに助けるだけで育つわけではない」と教えてくれる点です。もちろん、つらいときに支えてくれる人は大切です。でもゲーブルさんは、「うれしいことがあったときに、一緒に喜んでくれる人」も同じくらい大事だと示しました。これはかなり温かい視点です。人生の雨の日に傘をさすだけでなく、晴れた日に「いい天気ですね!」と一緒に空を見上げてくれる関係が、人の心を強くするというわけです。
代表的な研究には、ハリー・リースさんらとの「よいことが起きたとき、人はどうするのか?」という論文があります。この研究では、良い出来事を他者に話し、相手が熱心で前向きに反応してくれると、本人の幸福感や関係の満足度が高まりやすいことが示されています。つまり、喜びは一人で持っていると小さなキャンドルですが、誰かが「それ、いいですね!」と息を吹き込むと、あたたかいランタンになるのです。
また、ナタリヤ・C・マイゼルさんとの研究では、「助けてもらっているのに、なぜかしんどい」という不思議な現象にも注目しています。支援そのものよりも、「こちらの気持ちをちゃんとわかってくれているか」が大事だという視点です。親切も、相手の心に合っていなければ、サイズ違いの服みたいに少し窮屈になる。ゲーブルさんの研究は、そんな人間関係の微妙なサイズ感を見事にすくい取っています。
ひとことで言えば、シェリー・L・ゲーブルさんは、「人は、つらいときに支えられるだけでなく、うれしいときに一緒に喜ばれることで、もっと元気になれる」と教えてくれる心理学者です。人間関係を“大事件”ではなく、日々の小さな返事や相づちから見つめる研究者、と言ってもよさそうです。会話の中の「よかったですね!」を、ただの社交辞令ではなく、人の心を育てる小さな栄養として見直させてくれる。そんな、かなりやさしい目を持った研究者です。
参考文献・確認先:University of California, Santa Barbara Department of Psychological & Brain Sciences:Shelly Gable 公式プロフィール / Google Scholar:Shelly Gable 論文・引用情報 / PubMed:Shelly L. Gable 関連論文

1.『受け取った支援は、なぜ時に逆効果になるのか-応答性がひらく、ソーシャルサポートの逆説』ナタリヤ・C・マイゼル、シェリー・L・ゲーブル(2009)
Maisel, N. C., & Gable, S. L. (2009). The paradox of received social support: The importance of responsiveness. Psychological Science, 20(8), 928–932. DOI: 10.1111/j.1467-9280.2009.02388.x
「手伝ってくれてるのに、なんかモヤッとする……」そんな支援あるあるを、心理学がそっと解剖した論文です。この研究によると、大事なのは“支援したかどうか”より、“相手の気持ちや状況にちゃんと合っていたか”。親切もサイズ違いだと、心にチクッとくるんですね。支援は愛の宅配便。でも、届け先と中身が合ってこそ、ありがたく受け取れるのです。


2.『うまくいったとき、人は何をするのか? ポジティブな出来事を分かち合うことが、自分の心と人間関係にもたらす恵み』シェリー・L・ゲイブル、ハリー・T・リース、エミリー・A・インペット、エヴァン・R・アッシャー(2004)
Gable, S. L., Reis, H. T., Impett, E. A., & Asher, E. R. (2004). What do you do when things go right? The intrapersonal and interpersonal benefits of sharing positive events. Journal of Personality and Social Psychology, 87(2), 228–245. DOI: 10.1037/0022-3514.87.2.228
「いいことあった!」を誰かに話したくなるのは、ただの報告欲ではありません。この論文は、うれしい出来事を人に共有すると、本人の気分や幸福感、さらに人間関係までポカポカ温まるのかを調べた研究です。ポイントは、聞き手の反応。「へえ」で終わると幸せの風船はしぼみますが、「それすごい!もっと聞かせて!」と一緒に喜んでもらえると、心の中で小さな祝賀パレードが始まります。喜びは、分けると薄まるどころか、むしろ増えるのです。


3.『うれしい知らせは、信頼関係の“避難訓練”になる?-ポジティブな出来事への身近な人の反応を探る研究』シェリー・L・ゲイブル、コートニー・L・ゴスネル、ナタリア・C・マイゼル、エイミー・ストラクマン(2012)
Gable, S. L., Gosnell, C. L., Maisel, N. C., & Strachman, A. (2012). Safely testing the alarm: Close others’ responses to personal positive events. Journal of Personality and Social Psychology, 103(6), 963–981. DOI:10.1037/a0029488
「いいことあったんだ!」と報告したとき、相手の返事で心の警報機がピコンと鳴ること、ありませんか? この論文は、うれしい出来事への“返し方”が、人間関係の安心感をどう映し出すのかを調べた研究です。「すごいね!」と一緒に喜んでくれる人は、心の非常ベルを静かにしてくれる存在かもしれません。逆に、薄い反応だと「え、私だけ盛り上がってる?」と心が小さく正座することも。幸せ報告は、ただの雑談ではなく、関係の温度計だったのです。


4.『よい出来事を、さらによいものにする:対人関係におけるキャピタライゼーションのレビューと理論モデル』ブレット・J・ピーターズ、ハリー・T・リース、シェリー・L・ゲイブル(2018)
Peters, B. J., Reis, H. T., & Gable, S. L. (2018). Making the good even better: A review and theoretical model of interpersonal capitalization. Social and Personality Psychology Compass, 12(7), e12407. DOI:10.1111/spc3.12407
「いいことあった!」と話したとき、相手が「ふーん」で終わるか、「え、それ最高!もっと聞かせて!」と身を乗り出すか。実はこの差、人間関係のあたたかさを左右します。この論文は、うれしい出来事を人に話して、相手に喜んでもらうことで幸せがさらにふくらむ仕組みを整理したレビューです。まさに“喜びの炊飯器”。小さな幸せを、会話の湯気でほかほかにする心理学です。

