ロナルド・グレイザー(Ronald Glaser)の論文一覧:ストレスが免疫にこっそり置き手紙をする、心と体の研究さんぽ

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ロナルド・グレイザー(Ronald Glaser)のプロフィール

ロナルド・グレイザー(Ronald Glaser)は、ひとことで言うと、「ストレスって、心だけじゃなくて免疫にも足音を立てて入ってくるんですよ」と科学のライトで照らした研究者です。

彼はアメリカの医学・免疫学の研究者で、特にストレス、免疫、健康のつながりを研究したことで知られています。専門は、少しむずかしく言うと「精神神経免疫学」。日本語でざっくり言えば、心の状態と、脳・ホルモン・免疫の関係を調べる学問です。つまり、「テスト前に風邪をひきやすい気がする」「介護や人間関係で疲れきると体調まで崩れる」みたいな、日常の“あるある”を、白衣を着た研究の虫めがねでのぞいた人です。

グレイザーは、1978年にオハイオ州立大学へ移り、医学部の医療微生物学・免疫学部門の責任者を務めました。その後、1996年には同大学の行動医学研究所の初代所長となります。ここは、ストレスが免疫やホルモン、病気の進み方にどう関係するのかを調べる、まさに“心と体の交差点”のような研究拠点でした。

また、彼の研究人生でとても大きいのが、心理学者のジャニス・キーコルト=グレイザーとの共同研究です。2人は夫婦でもあり、研究上の名コンビでもありました。いわば、片方が「心の動き」を見て、もう片方が「免疫の反応」を見る。心理学と免疫学が、研究室で握手したようなチームです。2人の研究は、慢性的なストレスが健康に悪い影響を及ぼすことを理解するうえで重要な役割を果たし、精神神経免疫学という分野の発展にも大きく貢献しました。

研究テーマとしては、医学生の試験ストレス、介護による慢性的なストレス、孤独、夫婦関係、ウイルスの再活性化、ワクチンへの免疫反応、傷の治り方など、かなり生活に近いものが多いです。つまり、グレイザーの研究は「心がしんどいと、体の中の警備員さんたちはどうなるの?」という問いを、かなり本気で追いかけたものだと言えます。彼自身も、2005年の論文で、ストレスが免疫の乱れを通して健康に影響する可能性を、自分たちの研究史とともに振り返っています。

業績もたいへん大きく、彼は生涯で325本以上の論文や章を発表し、2002年には引用数の多い研究者としても認められました。また、アメリカ科学振興協会のフェローに選ばれ、行動医学や精神神経免疫学の学会でも会長を務めています。研究界でいうと、かなりの“免疫とストレス界の親方”です。

ロナルド・グレイザーのすごさは、ストレスを「気の持ちよう」で片づけなかったところにあります。彼は、心の疲れを根性論の押し入れに放り込まず、免疫細胞やホルモン、ウイルス反応という具体的な体の仕組みから見ようとしました。だから彼の研究は、今読んでもとても大切です。心と体は別々の部屋に住んでいるのではなく、実は薄いふすま一枚でつながっている。そのふすまの向こう側で何が起きているのかを、そっと開けて見せてくれた研究者。それが、ロナルド・グレイザーです。

参考文献・確認先:オハイオ州立大学:Ronald Glaser 追悼記事・研究業績紹介 / Google Scholar:Ronald Glaser 論文・引用情報 / PubMed:Ronald Glaser 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ロナルド・グレイザー(Ronald Glaser)の研究から学べること

ロナルド・グレイザーさんの研究をひとことで言うなら、「心がしんどいと、体の守りまで影響を受けるんですよ」ということを、科学の虫めがねでじっくり見せてくれた研究です。

「ストレスは体に悪い」と聞くと、なんとなく知っている気がしますよね。寝不足が続くと風邪をひきやすいとか、悩みごとが多いと胃がキリキリするとか、忙しすぎると口内炎がこんにちはしてくるとか。体って、なかなか正直です。こちらが「まだいけます!」と強がっていても、体のほうは「いや、もう台所の電球チカチカしてますけど?」と教えてくるわけです。

グレイザーさんは、そうした「心と体のつながり」を、特に免疫の働きから研究しました。免疫というのは、体の中の警備隊のようなものです。ウイルスや細菌などの侵入者が来たときに、「そこの怪しい者、止まりなさい」と働いてくれる頼もしい存在です。ところが、ストレスが長く続くと、この警備隊の動きが鈍くなったり、逆に必要以上に騒がしくなったりすることがある。グレイザーさんとジャニス・キコルト=グレイザーさんの研究は、ストレスが傷の治りを遅くしたり、ワクチンへの反応を弱めたり、炎症に関わる変化を進めたりすることを示してきました。

ここから学べる一つ目のことは、「心の疲れを、気分だけの問題にしない」ということです。

たとえば、仕事でずっと緊張している。家のことも気になる。人間関係で胃のあたりに小さな石が入っているような感じがする。でも周りには「まあ、みんな大変だからね」と言われる。すると、自分でも「これくらいで疲れたなんて言ったらダメだ」と思ってしまうことがあります。

でも、グレイザーさんの研究を知ると、ストレスは単に「心の中でモヤモヤしているだけ」ではないとわかります。心の疲れは、体の奥の会議室にもちゃんと出席しているのです。免疫、ホルモン、炎症、傷の治り。そういう体の仕組みにまで、ストレスの影がすっと入り込むことがある。だから、「気のせい」で片づけるには、ちょっと大物すぎるのです。

二つ目に学べるのは、「休むことはサボりではなく、体の防衛隊を立て直す作戦だ」ということです。

私たちはつい、休むことを後ろめたく感じます。「今日は何もできなかった」「寝てしまった」「ぼーっとしてしまった」と、自分に小言を言ってしまう。でも、体の中ではその間に、免疫の警備員たちが制服を整え、靴ひもを結び直し、「よし、次に備えよう」と準備しているかもしれません。休息は、見た目は静かですが、体内ではなかなかの復旧工事です。心の工務店が、夜中にトントンカンカンやっているようなものです。

だから、疲れたときに「休む」のは、負けではありません。むしろ、長く元気に働き続けるための賢い整備です。スマホだって充電せずに使い続けたら、最後は黒い画面で沈黙します。人間も同じです。気合いだけで走り続けると、心と体の電池が「もう省電力モードです」と小声で訴えてきます。

三つ目に学べるのは、「人間関係のストレスは、思った以上に体に響く」ということです。

グレイザーさんたちの研究では、夫婦関係や介護のストレスなど、日常の人間関係が体の働きに影響することも注目されました。人間関係というのは、目に見えない天気のようなものです。晴れていると心が軽い。曇っているとなんとなく肩が重い。嵐の日が続くと、体まで冷えてくる。

たとえば、誰かに冷たい言い方をされた。職場でずっと気をつかっている。家に帰っても心が休まらない。こういう状態が続くと、体の中では「敵はどこですか?」「まだ戦闘中ですか?」と警報が鳴り続けてしまうことがあります。もちろん、人間関係の問題をゼロにすることはできません。人が二人いれば、そこには小さな交通渋滞が発生します。けれど、「自分が弱いからつらい」のではなく、「関係性のストレスが体にも響いているかもしれない」と考えるだけで、少し見方が変わります。

四つ目に学べるのは、「慢性的なストレスを放置しないこと」です。

短いストレスなら、人間はけっこう耐えられます。締め切り前に集中する、発表前に緊張する、初対面で少しドキドキする。こういう一時的なストレスは、体にとって「よし、ちょっと頑張るぞ」という合図にもなります。

問題は、終わらないストレスです。ずっと気が張っている。ずっと眠りが浅い。ずっと誰かの顔色を見ている。ずっと自分を責めている。これは、体の中の警報ベルが鳴りっぱなしの状態です。火事でもないのに非常ベルが毎日鳴っていたら、建物の人たちは疲れ果てますよね。免疫も同じで、長く続くストレスには弱いところがあります。

だから大事なのは、「大事件になる前に、小さく整える」ことです。よく眠る。食事を抜きすぎない。少し歩く。誰かに話す。予定を詰め込みすぎない。スマホから離れる時間を作る。こうしたことは、地味です。派手な必殺技ではありません。でも、地味な習慣こそ、体の守りを支える土台になります。お城でいえば、金ピカの天守閣ではなく、石垣です。石垣がしっかりしているから、お城は倒れにくいのです。

五つ目に学べるのは、「心と体を別々に考えすぎない」ということです。

昔は、心の問題は心だけ、体の問題は体だけ、というふうに分けて考えられがちでした。でもグレイザーさんの研究は、「いやいや、その二つ、けっこう仲良く連絡を取り合っていますよ」と教えてくれます。心が疲れると体に出る。体がしんどいと心も弱りやすくなる。つまり、心と体は別々の部署ではなく、同じ会社のとなり合った机で働いているようなものです。片方が大忙しになると、もう片方にも書類の山が流れてきます。

だから、心のケアは体のケアでもあります。逆に、体を整えることは心を守ることにもつながります。睡眠、食事、運動、人とのつながり、安心できる時間。どれもありきたりに見えますが、実は体内の小さな守備隊にとっては大事な補給物資です。栄養ドリンク一本で全部解決、とはなかなかいきません。人生はそこまで単純な自動販売機ではないのです。

ロナルド・グレイザーさんの研究からいちばん学べるのは、「ストレスを甘く見ない。でも、怖がりすぎもしない」という姿勢です。

ストレスは、見えないから軽く扱われがちです。でも、体にはちゃんと影響します。だから、自分の疲れを「大げさかな」と切り捨てなくていい。眠れない、疲れが抜けない、風邪をひきやすい、傷が治りにくい、気持ちがずっと張りつめている。そういうサインがあるなら、体が「ちょっと会議しましょう」と呼びかけているのかもしれません。

そして同時に、ストレスに気づけるということは、整える入口に立てるということでもあります。休む。相談する。環境を少し変える。完璧をやめる。人間関係の距離を調整する。小さな手当てを積み重ねることで、心と体は少しずつ息を吹き返します。

グレイザーさんの研究は、私たちにこう語りかけているようです。

「心の疲れは、体にも届きます。だから、あなたのしんどさを軽く見ないでください。休むこと、整えること、助けを求めることは、ちゃんとした健康管理です」

心がくたびれた日は、体の中の警備隊も会議続きで疲れているのかもしれません。そんな日は、無理に自分を追い立てるより、温かい飲み物でも用意して、「今日は防衛隊の休憩日です」と言ってあげる。グレイザーさんの研究は、そんなやさしい自己管理の大切さを、科学の言葉で教えてくれるのです。

阿部牧歌(管理人)
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ロナルド・グレイザー(Ronald Glaser)の論文一覧

1.『トラウマと向き合うということ:心に閉じ込めた感情が、からだの病につながる仕組みを探る』ジェームズ・W・ペネベーカー、ジャニス・K・キーコルト=グレイザー、ロナルド・グレイザー(1988)

Pennebaker, J. W., Kiecolt-Glaser, J. K., & Glaser, R. (1988). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 97(2), 183–189. DOI:10.1037/0021-843X.97.2.183

「つらい出来事は、心の押し入れにしまえば安心?」この論文は、そこに「ちょっと待った!」をかけます。ペネベーカーたちは、トラウマを言葉にせず抑え込むことが、心だけでなく体の不調にも関係するのではないかと考えました。つまり、感情を閉じこめる心の金庫番が、知らぬ間に体の警備員まで疲れさせているかもしれない、という話。書くこと・話すことの力を考えたくなる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】「我慢すれば大丈夫」は本当か?トラウマを抑え込むことと病気の関係
【心理学論文】「我慢すれば大丈夫」は本当か?トラウマを抑え込むことと病気の関係
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