フィリップ・D・パーカー(Phillip D. Parker)の論文一覧:それ、私の毎日では?と言いたくなる発見を連れてくる論文たち
フィリップ・D・パーカー(Phillip D. Parker)のプロフィール
フィリップ・D・パーカーさんは、ひとことで言うと、「学生の心の中にある“自分って、できるのかな?”という小さな声を、巨大な研究テーマに育てた教育心理学者」です。
この方の研究テーマは、なかなか人間くさいです。主な関心は、教育の格差、発達の節目、学業達成など。つまり、「なぜ同じ教室にいても、伸びる子と苦しくなる子がいるのか」「進学や学校の変化で、若者の心はどう揺れるのか」「自分は勉強ができる、と思える感覚は、成績や将来にどう関わるのか」といった問題を追いかけています。
ここで登場する大事なキーワードが、自己概念です。英語で言うとセルフ・コンセプトですが、むずかしく言えば言うほど眠気が肩車してくるので、ざっくり言うと、「自分について、自分が持っているイメージ」のことです。
たとえば、
「自分は数学が苦手だ」
「人間関係はそこそこ得意かも」
「大学生活には向いていない気がする」
こういう“自分への見立て”ですね。パーカーさんは、この自己イメージが、学校生活や進路、やる気、ストレス、満足感などにどう関わるのかを研究してきた人物です。Google Scholar でも、発達心理学、長期的なデータ分析、教育心理学などが専門分野として示されています。
おもしろいのは、パーカーさんの研究が「成績が高い人はすごいですね」で終わらないところです。むしろ、教室や学校という環境の中で、人は自分をどう比べ、どう感じ、どう進路を選んでいくのかを見ています。たとえば、優秀な人ばかりの環境に入ると、実力はあるのに「自分はたいしたことないかも」と感じてしまうことがあります。魚でたとえるなら、大きな池に入った小さな魚気分です。実際には立派な魚なのに、まわりがクジラ級だと「あれ、私ってメダカ?」となる。教育心理学では、こうした比較の影響も重要なテーマになります。
また、大学進学のような人生の節目にも関心を持っています。高校から大学へ進む時期は、まるで心の引っ越しです。住む場所だけでなく、人間関係、自信、勉強のやり方、自分の立ち位置まで、段ボールに詰め直すような時期です。パーカーさんが関わった研究には、高校から大学への移行期における人間関係の自己概念が、大学での適応やストレス、満足感に関係することを扱ったものもあります。
所属としては、オーストラリア・カトリック大学の「ポジティブ心理学・教育研究所」との関わりが確認できます。ResearchGate でも、同大学の教授として紹介され、教育心理学や自己概念、動機づけ、発達に関する多数の研究業績が掲載されています。
つまり、フィリップ・D・パーカーさんは、単に「勉強ができるかどうか」を見ている研究者ではありません。むしろ、人が学ぶとき、その心の中でどんな物語が進んでいるのかを見ている人です。
「自分はできる」と思えること。
「ここにいていい」と感じられること。
「比べられても、自分を見失わないこと」。
そういう、成績表にはなかなか印刷されないけれど、人生にはしっかり影響するものを、データという虫めがねで見つめている研究者だと言えます。
学校や大学という場所は、ただ知識を入れる倉庫ではなく、人が自分自身への見方をつくっていく工房でもあります。パーカーさんの研究は、その工房の奥で、若者たちの「自分って何者なんだろう」という小さな火花を、じっと見つめているような研究なのです。
参考文献・確認先:Australian Catholic University:Philip Parker 公式プロフィール / Google Scholar:Philip D. Parker 論文・引用情報 / PubMed:Philip D. Parker 関連論文 / ResearchGate:Philip Parker 研究者プロフィール

1.『自分にやさしくできる人は、低い自己評価に飲み込まれにくい-青年期を追跡した大規模研究』サラ・L・マーシャル、フィリップ・D・パーカー、ジョセフ・チアロッキ、バルジンダー・サドラ、クリス・J・ジャクソン、パトリック・C・L・ヘブン(2015)
Marshall, S. L., Parker, P. D., Ciarrochi, J., Sahdra, B., Jackson, C. J., & Heaven, P. C. L.(2015). Self-compassion protects against the negative effects of low self-esteem: A longitudinal study in a large adolescent sample. Personality and Individual Differences, 74, 116-121. DOI:10.1016/j.paid.2014.09.013
この論文、ひとことで言うと、
「自己肯定感が低いとしんどい。でも、そこで自分にやさしくできる人は、心まで総崩れしにくい」という話です。オーストラリアの青年2448人を追った研究では、セルフ・コンパッションが高い人は、自己肯定感が低くてもメンタル不調が強まりにくいことが示されました。つまり、心の中に“やさしい避難所”を持てるかどうかが案外大事。読んでみると、自分への接し方を少し変えたくなる論文です。

