心理学の論文・著者検索「く」:くぐってみたら、心のクセまで見つかりそうな研究者たち
「く」から始まる心理学の論文著者一覧
心理学における「く」とは?
心理学における「く」は、もしかすると「クセ」の「く」かもしれません。
「くよくよしないようにしよう」と思っているのに、気づけばまた考えている。
「くらべても意味ないよね」とわかっているのに、つい人と比べてしまう。
「苦しくなるだけだからやめよう」と思うのに、過去の失敗を何度も思い出してしまう。
「今日は早く寝るぞ」と決めたのに、布団に入った瞬間、心の中で反省会の幕が上がる。
こういうこと、ありますよね。あります。心というものは、なかなかこちらの指示どおりには動いてくれません。「もう気にしないでください」とお願いしても、心の中の心配係が「いえ、念のためもう一度確認しておきます」と資料を広げてきます。しかもその資料、なぜか過去十年分くらい保存されています。心の倉庫、容量が大きすぎます。
心理学というと、むずかしい専門用語が並ぶ世界に見えるかもしれません。実験、調査、統計、理論。なんだか研究室のドアを開けた瞬間、分厚い本たちが一斉にこちらを見てくるような気配があります。けれど、心理学の入口は、案外とても身近です。
「なぜ、同じことで何度も悩んでしまうのか」
「なぜ、わかっているのにやめられない考え方があるのか」
「なぜ、人と比べて落ち込んでしまうのか」
「なぜ、苦しいのに、苦しい方向へ考えてしまうのか」
こうした問いが、心理学の扉をそっと開きます。
人の心には、いろいろなクセがあります。朝起きたらまずスマホを見るクセ、つい自分を責めるクセ、人の顔色を読むクセ、頼まれると断れないクセ、少し失敗すると「全部だめだ」と考えてしまうクセ。もちろん、クセは悪者ばかりではありません。毎日の生活をスムーズにしてくれるものもあります。歯みがきのように、いちいち考えなくてもできる習慣はありがたいものです。
でも、心のクセの中には、自分を苦しくさせるものもあります。
たとえば、何か失敗したときに、「今回はうまくいかなかった」と思えるなら、次につなげやすいかもしれません。でも心のクセによっては、「自分はいつもだめだ」「また失敗した」「きっとこれからも同じだ」と、話がどんどん大きくなってしまうことがあります。小さなつまずきが、心の中では巨大な落とし穴として扱われてしまうのです。
また、人と比べるクセもあります。あの人はうまくやっている。あの人は評価されている。あの人は楽しそうに見える。それに比べて自分は……と、心の中の比較係がものさしを持って走り回ります。しかもそのものさし、だいたい自分に厳しめです。他人の外側と、自分の内側を比べてしまう。これはなかなか不利な試合です。相手はハイライト映像、こちらは舞台裏まで全部見えているわけですから。
心理学は、こうしたクセをただ「やめましょう」とは言いません。
もちろん、やめられるなら苦労しません。「考えすぎをやめましょう」でやめられるなら、夜中の脳内反省会はとっくに閉会しています。「人と比べるのをやめましょう」でやめられるなら、心のものさし工場はもう廃業しているはずです。でも実際には、なかなかそうはいきません。
だから心理学は、もう少し丁寧に見ていきます。
なぜ、その考え方のクセが生まれたのか。
なぜ、そのクセは今も働き続けているのか。
そのクセは、何から自分を守ろうとしているのか。
そのクセは、どんな場面で強く出やすいのか。
心のクセは、ただの欠点ではありません。もしかすると昔、自分を守るために身についた方法かもしれません。怒られないように顔色を読むクセ。失敗しないように何度も確認するクセ。傷つかないように先回りして不安になるクセ。期待に応えようとして断れなくなるクセ。どれも苦しくなることはありますが、そこには「なんとかうまく生きよう」としてきた心の努力が隠れていることがあります。
そう考えると、心のクセはただ叩き壊すものではありません。
まずは、「あなたは何のために働いてきたの?」と聞いてみる相手なのかもしれません。
もちろん、クセに振り回されるのはしんどいです。くよくよ考える夜は長いですし、人と比べて落ち込む日は胸の中が重たくなります。何度も同じことで悩むと、「またこれか」と自分にうんざりすることもあります。心の中で同じ曲が延々と流れているような感じです。しかも、ちょっと切ない曲。そろそろ別の曲にしてほしいところです。
でも、その「くり返し」の中には、気づきの入口があります。
何度も同じ場面で苦しくなるなら、そこには何かのパターンがあるのかもしれません。
何度も同じ言葉に傷つくなら、そこには大切にしている価値観があるのかもしれません。
何度も同じ不安が出てくるなら、そこにはまだ安心できていない部分があるのかもしれません。
何度も同じ比較で落ち込むなら、そこには本当は望んでいる生き方が隠れているのかもしれません。
心理学は、そのパターンを見つけるための学問でもあります。心の迷路に入って、「また同じところを歩いているな」と気づくための地図のようなものです。地図があれば、すぐに出口に出られるとは限りません。でも、「ここでいつも曲がっていたのか」とわかるだけで、次の一歩が少し変わります。
このページでは、「アドラーの昼寝」に収録している人物のうち、名前が「く」から始まる研究者を紹介しています。
「く」から始まる研究者たちのページをたどっていくと、人間の心のクセ、感情、考え方、人間関係、ストレス、健康、行動のしくみなど、いろいろな研究に出会えるかもしれません。研究者の名前だけを見ると、最初は少し遠く感じるかもしれません。「すみません、どの分野の方でしたっけ」と名刺を確認したくなる名前もあると思います。でも、その先にあるテーマは、私たちの日常としっかりつながっています。
くよくよ考えてしまう。
苦手な人の前で固まってしまう。
くらべて落ち込んでしまう。
くり返し同じ悩みに戻ってしまう。
苦しいのに、助けてと言えない。
心のクセに気づいているのに、なかなか変えられない。
こうしたことは、特別な人だけのものではありません。むしろ、とても人間らしい心の動きです。心はまっすぐな道路ではなく、曲がり角や坂道や行き止まりのある小道です。ときどき看板も読みにくいですし、なぜか同じ場所に戻ってくることもあります。心のナビが「目的地周辺です」と言ったまま、肝心の場所が見つからないこともあります。
でも、心理学を知ると、その小道の歩き方が少し変わります。
「自分はまた同じことで悩んでいる。だめだなあ」と責める代わりに、「ここには自分の心のクセがあるのかもしれない」と見られるかもしれません。
「人と比べてしまう自分が嫌だ」と思う代わりに、「自分は本当は何を望んでいるのだろう」と考えられるかもしれません。
「くよくよするのは弱いからだ」と決めつける代わりに、「心が何かを整理しようとしているのかもしれない」と受け止められるかもしれません。
この見方の変化は、心にとって大きな助けになります。自分を責める声が少しやわらぐと、心の中に余白ができます。余白ができると、次にどうするかを考えやすくなります。ぎゅうぎゅうに詰まった引き出しを、少しだけ整理するようなものです。全部を一気に片づけなくても、まずは一段だけ開けられれば十分です。
心理学における「く」は、「クセ」の「く」。
そして、「苦しさ」「比べる」「くり返し」「くぐり抜ける」の「く」でもあります。
心のクセは、ときに私たちを苦しくさせます。でも同時に、そのクセはこれまでの自分が何とか生きていくために身につけてきた工夫でもあるかもしれません。だから、いきなり嫌わなくていいのです。まずは気づく。少し距離をとる。そして、必要なら新しいやり方を少しずつ試してみる。それでいいのだと思います。
このページから、気になる研究者のページをたどりながら、あなた自身の中にある「心のクセ」にも、そっと目を向けてみてください。
くよくよする心は、ただの弱さではありません。
くらべてしまう心は、ただの面倒ではありません。
くり返す悩みの奥には、まだ言葉になっていない願いや不安が眠っていることがあります。
さあ、「く」から始めてみましょう。
心の小さなトンネルをくぐってみたら、そこには思いがけないクセと、少しやさしい気づきが待っているかもしれません。

アメリカ
- クラウディア・M・ミューラー(Claudia M. Mueller):「子どもを褒めるなら、何を褒めるといいのだろう?」という、子育てや教育をしている人なら一度は気になる問題を研究してきた人物
- クランシー・ブレア(Clancy Blair):「子どもに『集中しなさい』と言う前に、その集中を支えている仕組みをちゃんと調べましょう」と考えてきた発達心理学者
- クリスティーナ・マスラック(Christina Maslach):燃え尽き症候群に、ちゃんと名前札と体温計をつけた心理学者
- クリスティン・L・カークパトリック(Kristin L. Kirkpatrick):セルフ・コンパッション研究の文脈で名前を見かけることの多い心理学者
- クリスティン・ネフ(Kristin D. Neff):「自分にやさしくすること」を、ふわっとした励ましではなく、きちんと研究にした人
- クリストファー・ピーターソン(Christopher Peterson):人間の欠点を数える心理学から、人間の長所を見つける心理学へと、大きく舵を切った研究者
- グレッグ・J・ダンカン(Greg J. Duncan):アメリカの経済学者・教育研究者
- グロリア・マーク(Gloria Mark):私たちの集中力が、パソコンやスマートフォンの前でどのように迷子になるのかを研究してきた人物
オーストラリア
- クリス・J・ジャクソン(Chris J. Jackson):「性格っておもしろいよね」で終わらず、その奥にある“なぜそう動くのか”まで追いかける研究者
- グレアム・L・ブラッドリー(Graham L. Bradley):人のこころと、社会の空気のあいだを行ったり来たりしながら研究している心理学者
ドイツ
- クレメンス・テッシュ=レーマー(Clemens Tesch-Römer):ドイツを拠点に活動してきた心理学者
国籍不明
- クライド・H・ウォード(Clyde H. Ward):心の落ち込みを「なんとなくつらそうですね」で終わらせず、「では、そのつらさをどう測ればよいのか?」という方向から研究に関わった精神医学の研究者
- グレゴリー・A・ホイットニー(Gregory A. Whitney):「人は親しい相手に傷つけられたとき、どう反応するのか」「恋愛やカップル関係は、どうすれば壊れにくくなるのか」というテーマに関わった研究者