ポール・L・ウィット(Paul L. Witt)の論文一覧:人前で話すと心臓がドラマーになる人へ。スピーチ不安とコミュニケーションのクセを、やさしく解きほぐす心理学さんぽ

ポール・L・ウィット(Paul L. Witt)の論文を読む女性
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ポール・L・ウィット(Paul L. Witt)のプロフィール

ポール・L・ウィットさんは、ひと言でいうと「人が話すとき、教えるとき、学ぶとき、心の中で何が起きているのか」を研究してきたコミュニケーション学者です。舞台に上がる前のドキドキ、先生のちょっとした声かけ、教室の空気、人間関係のすれ違い。そういう“会話の見えない温度”を、虫めがねでじっくり見てきた人ですね。

公開されている経歴によると、ウィットさんはテキサス・クリスチャン大学のコミュニケーション研究科で教授を務めており、専門はコミュニケーション教育、対人コミュニケーション、授業における先生と学生の関係、そして人前で話すときの不安などです。博士号は北テキサス大学で取得しており、研究テーマには「先生の言葉やしぐさが、学生のやる気や学びにどう影響するか」といったものが含まれています。つまり、教室をただの“机とイスの集合体”ではなく、言葉と表情と沈黙が飛び交う小さな人間劇場として見ている研究者、と言えそうです。

特に有名なのは、「先生が学生に近く感じられる話し方やふるまい」と「学生の学び」の関係を調べた研究です。たとえば、先生がただ情報を黒板に投げつけるだけだと、授業はまるで乾いたクラッカー。しかし、声のかけ方、表情、反応のしかたが少し変わるだけで、学生の心に「この授業、ちょっと入ってみようかな」という小さな扉が開く。ウィットさんは、そうした授業内コミュニケーションの働きを、共著者たちと一緒に分析してきました。その関連論文は、後に賞も受けています。

また、スピーチ不安の研究でも知られています。人前で話す前に、心臓が勝手に太鼓部へ入部し、胃がなぜか緊急会議を開き、手汗が小さな雨季を始める。そんな「発表前のからだと心のざわめき」を、ウィットさんは研究対象にしています。学生がスピーチをする前、している最中、終わった後に、どのような不安の変化が起きるのかを扱った論文もあります。人前で話すのが苦手な人にとっては、「自分だけじゃなかったのか」と少し肩の力が抜ける研究ですね。

さらに、ポール・シュロットさんらとの共著では、家族の会話パターンや、夫婦・親密な関係で見られる「要求する人」と「引っ込む人」のすれ違いなども扱っています。片方が「ちゃんと話そうよ」と前に出るほど、もう片方が「今は無理」と心のシャッターを下ろしてしまう。人間関係でよくあるこの“会話の綱引き”を、感情論だけでなく、研究として整理しているのが面白いところです。

経歴を見ると、ウィットさんは大学での教育経験も長く、上級スピーチ、面接、異文化コミュニケーション、教育コミュニケーションなど、かなり幅広い授業を担当してきたようです。研究室にこもって論文だけを書いているタイプというより、実際の教室や発表の場で起きる「人と人との伝わり方」にずっと関心を向けてきた先生、という印象です。

まとめると、ポール・L・ウィットさんは、「話す」「教える」「学ぶ」「すれ違う」という、私たちの日常にありすぎて見落としがちな場面を、研究のライトで照らしてきたコミュニケーション学者です。彼の研究を読むと、授業中の先生のひと言も、人前で話す前のドキドキも、夫婦や家族の会話の沈黙も、ただの偶然ではなく、人間らしさがにじむ大事なデータなのだと感じられます。いわば、言葉の交通整理をする研究者。心の交差点で「いま、何が詰まっているのか」を見つめてきた人です。

参考文献・確認先:Texas Christian University:Paul L. Witt 履歴・業績一覧 / Google Scholar:Paul L. Witt 論文・引用情報 / ResearchGate:Paul L. Witt 関連研究 / Taylor & Francis Online:Paul L. Witt 関連論文

阿部牧歌(管理人)
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ポール・L・ウィット(Paul L. Witt)の研究から学べること

ポール・L・ウィットさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「人前で話す不安は、気合い不足ではなく、ちゃんと研究する価値のある“心と体の反応”である」ということです。

人前で話すとき、手が汗でしっとりする。心臓が太鼓部に入部する。頭の中の原稿が、なぜか全員で遠足に出かける。口を開いた瞬間、「えー」「あのー」「つまりですね」が大行列を作る。そんな経験、ありますよね。あれは、あなたの根性が豆腐だからではありません。人前で自分の考えを出すというのは、人間にとってけっこう大きな出来事なのです。

ウィットさんは、テキサス・クリスチャン大学のコミュニケーション研究の教授として、人前で話す不安、教育場面での伝え方、先生と学生の関わり、話し手の緊張などを研究してきた人物です。大学の履歴書資料では、同大学コミュニケーション学科の教授であり、情報・行動・コミュニケーション技術を専門として博士号を取得したことが確認できます。

ウィットさんの研究でまず面白いのは、「話す不安」をただの性格問題にしないところです。

たとえば、人前で話すのが苦手な人に向かって、「慣れれば大丈夫」「もっと堂々としなさい」と言う人がいます。もちろん、慣れも大事です。でも、それだけでは少し雑です。お腹が痛い人に「腹筋を信じろ」と言っているようなものです。いや、そういう問題だけではないのです。

ウィットさんたちは、人前で話すときの不安が、どのタイミングで強くなるのかにも注目しています。2006年に紹介された研究では、スピーチ中のストレスは、話し始めてから約1分あたりで高まりやすいことが取り上げられています。 これは、かなり実感に合います。最初の1分、あそこが山です。登山で言えば、いきなり急斜面。心のリュックに不安を詰め込みすぎて、ぜえぜえします。

でも、逆に考えると希望もあります。

「最初の1分が特につらい」とわかっていれば、そこを乗り切る作戦を立てられます。たとえば、最初の言葉だけは紙に書いておく。冒頭は短くする。最初に深呼吸を一回入れる。話し始めに、聴き手を見る前に資料の見出しを見る。最初の一文を何度も練習しておく。こうすると、不安という暴れ馬にいきなり乗るのではなく、まず手綱を持つことができます。

ウィットさんの研究から学べる一つ目の知恵は、「不安を消そうとしすぎないこと」です。

人前で話す前に、「緊張してはいけない」と思うと、かえって緊張します。これはもう、心の落とし穴です。「白いクマを考えないでください」と言われた瞬間、白いクマがこちらに手を振ってくるのと同じです。緊張をゼロにしようとするより、「緊張していても、話せる形にする」ことが大切です。

つまり、目標は「不安の完全消滅」ではありません。

目標は、「不安を連れたまま、目的地まで歩くこと」です。

不安は消えなくてもいい。助手席に座らせておけばいいのです。ただし、運転席を渡してはいけません。「不安さん、今日は横に座っていてください。ハンドルはこちらで持ちます」と言う感じです。

二つ目の知恵は、「話す力は才能だけではなく、設計で伸ばせる」ということです。

話が上手な人を見ると、「あの人は生まれつきだ」と思いがちです。たしかに、人前で話すのが得意な人はいます。でも、話す力には練習できる部分がたくさんあります。構成を整える。最初と最後を決める。例を入れる。間を取る。声を少しゆっくりにする。聞き手の反応を見る。こういう技術は、筋トレのように少しずつ育ちます。

コミュニケーション教育の分野では、ウィットさんは「先生の近づきやすさ」や「授業での伝え方」に関する研究でも知られています。たとえば、先生の身ぶり、表情、声の使い方、学生との距離感などが、学生の学びや印象にどう関わるかを扱う研究領域に貢献しています。ウィットさんらの2004年のメタ分析では、先生の近づきやすいふるまいと学生の学習との関係が整理されています。

これを日常語にすると、「伝える人の態度で、相手の受け取りやすさはかなり変わる」ということです。

同じ内容でも、腕組みして無表情で言われると、言葉が石のように飛んできます。逆に、少しうなずきながら、相手を見て、わかりやすく話してくれると、言葉が椅子に座ってこちらへ来てくれます。内容だけでなく、届け方も大切なのです。

これは、支援や職場でもそのまま使えます。

利用者さんに説明するとき、職員に依頼するとき、会議で意見を言うとき、こちらがどれだけ正しいことを言っていても、伝え方がトゲトゲしていると相手は受け取りにくくなります。正論は、包装紙なしで渡すと手を切ることがあります。少し言い方を整えるだけで、相手はずっと受け取りやすくなります。

たとえば、「これは違います」より、「ここを少し変えると、もっと伝わりやすくなりそうです」。

「なんでできていないんですか」より、「どこで止まりましたか。一緒に確認しましょう」。

「ちゃんと聞いてください」より、「ここが大事なので、少しだけ一緒に見てもらえますか」。

言葉の中身は同じ方向でも、届け方で温度が変わります。電子レンジの設定を間違えると、外は熱いのに中が冷たいことがありますよね。コミュニケーションも同じです。あたため方が大事です。

三つ目の知恵は、「話す不安は、恥ずかしいものではなく、準備のサインとして使える」ということです。

人前で話す前に不安になるのは、「大切に思っている」からでもあります。どうでもいいことなら、そこまで緊張しません。緊張は、心が「これは大事な場面です」と知らせてくれている警報です。ただ、その警報音が大きすぎると困る。火事でもないのに非常ベルが鳴り続けると、話すどころではありません。

だから、不安を見つけたら、こう考えるとよいです。

「私は失敗したいわけではなく、ちゃんと伝えたいんだな」

「だから、最初の一分だけ準備しよう」

「全部完璧に話すより、要点を三つだけ届けよう」

「聞き手は敵ではなく、情報を受け取りに来た人たちだ」

こうやって、不安を準備に変えるのです。不安は、敵にすると暴れます。でも、道具にすると役に立つことがあります。包丁も振り回せば危険ですが、まな板の上で使えば料理ができます。不安も同じです。扱い方が大事なのです。

ウィットさんの研究から日常に持ち帰れるのは、「話すことを特別な才能にしすぎない」という考え方です。

人前で話すことが苦手でも、終わりではありません。最初に何を言うか決める。聞き手に一つだけ覚えてほしいことを決める。緊張しやすい場面を知る。声が早くなるなら、あえて一文を短くする。視線が怖いなら、全員ではなく数か所を見る。こうした工夫で、話すことは少しずつ楽になります。

話す力は、いきなり舞台の真ん中でスポットライトを浴びる力ではありません。最初は、心の袖から一歩出る力で十分です。足が震えてもいい。声が少し揺れてもいい。話の途中で言葉を探してもいい。大切なのは、完璧な話し手になることではなく、「伝えたいことを相手に届ける練習を続けること」です。

ポール・L・ウィットさんの研究が教えてくれるのは、コミュニケーションは根性論ではなく、理解と練習と設計でよくできるものだということです。人前で話す不安にはタイミングがあり、体の反応があり、工夫できるポイントがあります。そして、伝え方には、相手の学びや受け取り方を変える力があります。

人前で話すのが怖い人は、弱い人ではありません。心のマイクの音量が、少し大きめに入っているだけかもしれません。ならば、音量を調整すればいい。最初の一分を整え、話す順番を決め、相手に届く言葉を選ぶ。そうすれば、震える声の中にも、ちゃんと伝わるものが残ります。

ウィットさんの研究は、私たちにこう語りかけているようです。

「うまく話せない自分」を責める前に、「話しやすくなる仕組み」を作ってみよう。

緊張は、悪者ではありません。舞台裏でドタバタしている新人スタッフです。少し指示を出せば、意外と働いてくれます。人前で話すことは、不安をなくす修行ではなく、不安と一緒に言葉を届ける練習なのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ポール・L・ウィット(Paul L. Witt)の論文一覧

1.『話し合いたい人、逃げたくなる人。関係をすれ違わせる“要求/撤退パターン”と、その心・関係・会話への影響を読み解くメタ分析レビュー』ポール・シュロット、ポール・L・ウィット、ジェナ・R・シムコウスキー(2014)

Schrodt, P., Witt, P. L., & Shimkowski, J. R. (2014). A Meta-Analytical Review of the Demand/Withdraw Pattern of Interaction and Its Associations with Individual, Relational, and Communicative Outcomes. Communication Monographs, 81(1), 28–58. DOI: 10.1080/03637751.2013.813632

この論文は、夫婦や恋人の会話でよく起きる「片方が責める、もう片方が黙って逃げる」という、あの気まずいダンスを大研究したものです。いわば、会話の中で発生する“追いかけっこ現象”の総まとめ。研究を集めて分析すると、このパターンは関係満足度の低下やストレス、コミュニケーションの悪化とかなり仲良しだったことが見えてきます。「なんで黙るの?」「だって責められてる気がするんだもん」そんな心の押し相撲を、心理学が虫めがねでのぞいた一本です。夫婦ゲンカの沈黙に、実は名前があったんです。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ話し合いたい人ほど、相手を黙らせてしまうのか? 研究が示した3つのポイント
【心理学論文】なぜ話し合いたい人ほど、相手を黙らせてしまうのか? 研究が示した3つのポイント
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