ニコール・レゲイト(Nicole Legate)の論文一覧:人はなぜ“ちゃんと聴いてくれる人”に心を開くのか? 自律性と会話のぬくもりをめぐる、心の耳そうじ心理学さんぽ

ニコール・レゲイト(Nicole Legate)の論文を読む女性
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ニコール・レゲイト(Nicole Legate)のプロフィール

ニコール・レゲイトさんは、アメリカ・シカゴにあるイリノイ工科大学の心理学准教授です。専門はざっくり言うと、「人はどんな環境にいると、自分らしくいられるのか」「偏見や排除にどう向き合えば、人の心は少しやわらかくなるのか」を研究している心理学者です。イリノイ工科大学の公式プロフィールでは、心理学科の准教授として紹介され、偏見、社会的排除、カミングアウト、健康格差、自己決定理論などを研究関心として挙げています。

もう少し会話っぽく言うと、レゲイトさんの研究テーマは、心の世界の「それ、本人が安心して選べてますか?」係です。人に何かを押しつけるのではなく、「あなたが本当に大事にしたいものは何ですか?」と、心の内側から火を灯すタイプの心理学ですね。ご本人のサイトでも、自分は研究者、教師、臨床家、相談役など“いくつもの帽子”をかぶっていると紹介し、人間には本来、人を助けたり、包み込んだりする力があるという考え方を大切にしているようです。

学歴としては、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で心理学を学び、その後、ロチェスター大学で臨床心理学の博士号を取得しています。博士号の取得は2014年で、同じ年からイリノイ工科大学の教員として活動していると紹介されています。つまり、心理学の研究だけでなく、実際の相談支援や教育の現場にも足を置いている、いわば「研究室の白衣」と「相談室の椅子」の両方を知っている人です。

特に有名な研究テーマのひとつが、性的少数者の人たちが、自分のことを周囲に伝える経験と、心身の健康との関係です。レゲイトさんの研究では、周囲の人がその人の自律性、つまり「自分で選んでいい」という感覚を支えてくれると、本人はより安心して自分のことを話しやすくなり、心や体の健康にもよい影響が出やすいことが示されています。これは「正しいことを言えばいい」という話ではなく、「相手が自分の人生のハンドルを握れるように、横からそっと支える」という感じですね。

また、最近の論文では「聴くこと」の力にも注目しています。たとえば、ネッタ・ワインスタイン、ガイ・イツハコフとの2022年の論文では、親密で難しい会話の中で、質の高い聴き方がどんな意味を持つのかを論じています。ここでの“聴く”は、ただ「ふんふん」と相づちを打つだけではありません。相手が防御的になりすぎず、自分の気持ちを見つめやすくなり、変化への扉を少し開けやすくなるような、心の受け皿としての聴き方です。話す人が主役で、聴く人は照明係。スポットライトを奪わず、でも暗くならないように支える。そんな研究です。

レゲイトさんの研究をひとことで言うなら、「人は押されるより、尊重されたときに変わりやすい」という心理学です。偏見を減らす、排除を防ぐ、自分らしさを守る、誰かの話をちゃんと聴く。どれも一見バラバラに見えますが、根っこには「人の心は、支配されると固くなり、尊重されると少しほどける」という考え方が流れています。心の結び目を、力ずくでほどくのではなく、あたたかい指先でゆっくりゆるめていく研究者、と言えるかもしれません。

参考文献・確認先:イリノイ工科大学:Nicole Legate 公式プロフィール / IIT PATH Lab:Nicole Legate プロフィール / Google Scholar:Nicole Legate 論文・引用情報 / PubMed:Nicole Legate 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ニコール・レゲイト(Nicole Legate)の研究から学べること

ニコール・レゲイト(Nicole Legate)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「人は“やらされている”と心が縮こまり、“自分で選べている”と心がのびのび呼吸しはじめる」ということです。

レゲイトさんは、イリノイ工科大学の心理学の研究者で、偏見を減らすこと、仲間外れ、秘密にすることや打ち明けること、心身の健康の格差などを研究しています。特に大きな柱になっているのが、「人が自分の意思を尊重される環境にいると、心や人間関係はどう変わるのか」というテーマです。大学の紹介でも、周囲の人、たとえば友人・家族・仲間などが、偏見を受けやすい立場の人をどう支えられるか、またその支えが健康にどう関わるかが研究関心として示されています。

ここで大事になるのが、「自律性の支援」という考え方です。少し硬い言葉ですが、日常語にすると、「あなたが自分で考えて、自分で選ぶことをちゃんと尊重しますよ」という関わり方です。反対に、「こうしなさい」「こうあるべき」「普通はこうでしょ」と押しつけられると、人の心は、ぎゅっと小さな箱に入れられたようになります。箱の中で正座させられた心は、なかなか元気に踊れません。

レゲイトさんの研究でよく知られているものの一つに、性的少数者の人たちが、自分の性的なあり方を人に打ち明けること、つまり「カミングアウト」と、周囲からの支援との関係を調べた研究があります。ここで大事なのは、「打ち明ければ必ずよい」という単純な話ではないことです。打ち明けた相手が、その人の気持ちや選択を尊重してくれるかどうか。そこが、心の健康に大きく関わります。大学プロフィールでも、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの人たちは、自分の自律性を支えてくれる相手にはより打ち明けやすく、そうした相手に打ち明けたときには、心身の健康もよい傾向があると紹介されています。

これ、すごく大事です。たとえば誰かが勇気を出して、自分の大切なことを話してくれたとします。そのときに、「え、なんで今まで黙ってたの?」とか「つまりこういうこと?」と、こちらの理解を急いで押しつけると、相手の心はそっとシャッターを下ろしてしまうかもしれません。せっかく開けてくれた心の扉に、こちらがドカドカ土足で入ってしまう感じです。支えるとは、相手の部屋を勝手に模様替えすることではありません。まず玄関で靴をそろえて、「話してくれてありがとう」と静かに座ることです。

レゲイトさんの研究から見えてくるのは、「人は、自分を説明させられるより、自分で語ることを尊重されたときに安心する」ということです。これは性的少数者の話だけに限りません。病気のこと、家庭の事情、仕事での不安、過去のつらい経験、自分の苦手さ。人には、それぞれ“見えない荷物”があります。その荷物を見せるかどうか、いつ見せるか、誰に見せるかは、本来その人が選ぶものです。周りの人ができるのは、「無理に開けなくていいよ。でも、開けたいときにはここにいるよ」と伝えることなのです。

また、レゲイトさんは「仲間外れにすること」の心理的な負担についても研究しています。おもしろいのは、仲間外れにされた人だけでなく、仲間外れに“加わった側”にも心のコストがある、という点です。研究業績の中には、他人を仲間外れにすることに従った人にも心理的な負担が生じることを扱った論文があります。

これは、教室でも職場でも、かなり身近な話です。たとえば、みんながある人を避けている空気がある。自分は本当はそこまで嫌っていない。でも、その場の空気に流されて、一緒に冷たくしてしまう。すると、あとから心の中に小さな石ころが残ることがあります。「あれ、私は何をしてしまったんだろう」と。人を傷つける行動は、相手だけでなく、自分の心の床にも傷をつけるのです。心のフローリング、意外とデリケートです。

さらに、レゲイトさんは、偏見を減らす研修や多様性を大切にする取り組みにも関心を持っています。最近の研究では、多様性・公平性・包摂に関する研修を、やらされ感いっぱいの説教大会にするのではなく、人が自分で納得し、相手を尊重したいと思える形にすることの重要性が論じられています。大学プロフィールの発表リストにも、動機づけの科学が多様性や包摂の研修を改善できるという論文が紹介されています。

ここも、とても現代的です。「偏見を持つな!差別するな!」と上から怒鳴られると、人は表面上は「はい」と言うかもしれません。でも心の中では、「また正しさの金だらいが落ちてきた……」となることがあります。もちろん、差別や偏見を放っておいてよいわけではありません。ただ、人の考え方を変えるには、恐怖で押さえつけるより、「なぜ相手を尊重することが大切なのか」を自分の中で納得できるようにすることが大切です。正しさを棍棒にすると、人は防御します。正しさをランプにすると、人は少し先を見ようとします。

レゲイトさんの研究を日常に活かすなら、まず意識したいのは、「相手に選ぶ余地を残すこと」です。相談されたときに、すぐ「こうしたほうがいい」と結論を渡すのではなく、「話を聞いてほしい感じですか?それとも一緒に整理したほうがよさそうですか?」と尋ねてみる。誰かが自分のことを話してくれたときには、「それはこういう意味だよね」と決めつけず、「そう感じていたんですね」と受け止める。これだけでも、会話の空気はかなりやわらかくなります。

もう一つ大事なのは、「人を正す前に、人として扱うこと」です。相手の言動に問題があるときでも、いきなり人格ごと裁判台に乗せると、関係はすぐにカチコチになります。大切なのは、「その言い方だと傷つく人がいるかもしれません」と行動に目を向けることです。人を丸ごと否定するのではなく、変えられる行動に光を当てる。これが、偏見を減らすうえでも、人間関係を壊さないうえでも大切な姿勢です。

ニコール・レゲイトの研究から学べるいちばんの知恵は、「人は、尊重されていると感じたときに、変わる力を取り戻す」ということです。人は命令されると、心の中に小さな門番を立てます。でも、選ぶ余地をもらい、自分の気持ちを大切に扱われると、その門番は少しずつ鍵を開けてくれます。変化は、無理やりこじ開けるものではなく、安心の中で芽を出すものなのです。

つまり、レゲイトさんの研究は、「やさしさとは、相手を思いどおりに動かすことではなく、相手が自分らしく動ける空気をつくることですよ」と教えてくれます。誰かを支えるとき、誰かと違いを乗り越えるとき、誰かに変わってほしいと願うとき。そこに必要なのは、正しさのメガホンよりも、尊重の小さな灯りです。

人の心は、押されると踏んばります。でも、受け止められると、少しずつ動き出します。レゲイトさんの研究は、その静かな変化のしくみを、心理学の窓からやさしく見せてくれているのです。

阿部牧歌(管理人)
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ニコール・レゲイト(Nicole Legate)の論文一覧

1.『親しい人との難しい会話で、人を前向きに動かす「聴く力」』ネッタ・ワインスタイン、ガイ・イツチャコフ、ニコール・レゲイト(2022)

Weinstein, N., Itzchakov, G., & Legate, N. (2022). The motivational value of listening during intimate and difficult conversations. Social and Personality Psychology Compass, 16(2), e12651. DOI:10.1111/spc3.12651

人間関係の難しい会話って、つい「正しい答え」を探しがちです。でもこの論文が注目するのは、名言パンチではなく、ちゃんと聴く力。相手が悩みを話しているとき、こちらがよく聴いてくれると、「責められてない」「自分で考えていいんだ」と感じやすくなるそうです。つまり聴くことは、ただの相づちではなく、心の中に小さな作戦会議室をつくるようなもの。「聞き上手って、ほぼ心のインフラでは?」と思えてくる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】「聴く力」の研究からわかった、人が前向きに変わる意外なしくみ
【論文要約】「聴く力」の研究からわかった、人が前向きに変わる意外なしくみ
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