ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)の論文一覧:「助けてくれてるのに、なぜかしんどい」その不思議をほどく対人支援の心理学

ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)の論文を読む女性
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ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)のプロフィール

ナタリヤ・C・マイゼルさんは、ざっくり言うと「人の助け方って、実はけっこうむずかしいんですよね……」という、人間関係の台所事情を研究してきた心理学系の研究者です。

もともとはカリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学部に所属し、シェリー・L・ゲーブルさんと一緒に、支援を受けることの不思議な逆説を研究しました。代表的な論文では、「人は助けられれば必ず楽になる」と思いきや、実際には“助けられた感”が強すぎると、かえって気持ちが沈んだり、関係がぎくしゃくしたりすることがある、と示しています。つまり、親切も出し方を間違えると、心の玄関先で靴を脱がずに上がり込むようなものなのです。大事なのは、相手の必要にちゃんと合った、押しつけではない支援。マイゼルさんは、そこに注目した研究者と言えます。

その後は、医療や保健サービスの分野でも研究に関わっており、カリフォルニア大学サンフランシスコ校に所属する研究者として、医師の電子カルテ作業や診療記録の負担に関する研究にも名前が見られます。2023年の論文では、電子カルテの記録時間に関する分析で筆頭著者となっており、研究設計、分析、原稿作成などにも中心的に関わっています。

なので、マイゼルさんを一言で紹介するなら、「人を助けるとは何か」を、心理学から医療現場まで追いかける研究者です。やさしさを研究しているのに、ふわっとした精神論ではなく、「その支援、本当に相手のためになっていますか?」と、虫めがね片手に冷静に見つめるタイプ。親切の白衣を着た名探偵、という感じですね。

参考文献・確認先:SAGE Journals / JAMA Health Forum

阿部牧歌(管理人)
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ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)の研究から学べること

ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「人を助けるときは、“助けた量”よりも、“相手の気持ちにちゃんと合っているか”が大事ですよ」ということです。

人間関係って、不思議ですよね。困っている人を助けたら、ふつうは「ありがとう!心の非常食をくれて助かった!」となりそうなものです。ところが、現実の人間はなかなか単純ではありません。助けられたことで、「自分はできない人だと思われたのかな」「迷惑をかけてしまったな」「なんだか借りができたな」と感じて、かえって心がしょんぼりしてしまうことがあります。親切のはずが、なぜか相手の心に小さな重りを置いてしまう。これが、人間関係のなかなか手ごわいところです。

マイゼルさんは、シェリー・L・ゲイブルさんとともに、「支援を受けることの逆説」というテーマを研究しました。この論文は2009年に『Psychological Science』に掲載され、実際に助けを受けることが、なぜときに良い結果ではなく悪い結果につながるのかを考えています。特に大事にされたのが、「応答性」という考え方です。これは、むずかしく言えば「相手の気持ちや必要にちゃんと合った反応ができていること」ですが、もっと日常語にすれば、「今それ、ほんまに相手がほしかった助けですか?」ということです。

たとえば、落ち込んでいる人に向かって、「元気出しなよ!」と明るく声をかける。言った本人は善意の太鼓をドンドコ鳴らしているのですが、相手は「いや、今その太鼓は近所迷惑です……」と思っているかもしれません。逆に、何も言わずに温かい飲み物を置いてくれるだけで、「ああ、わかってくれている」と感じることもあります。つまり、支援は“正論の宅配便”ではなく、“相手の心の玄関に合わせてそっと置く荷物”のようなものなのです。

マイゼルさんたちの研究が教えてくれるのは、「見える支援」か「見えない支援」かだけで判断してはいけない、ということです。心理学では、相手が気づかない形で支える「見えない支援」が注目されてきました。たとえば、パートナーが疲れているときに、何も言わず家事を少し多めにしておくような支援です。ただし、マイゼルさんたちは、支援が見えるか見えないかよりも、「その支援が相手の状態に合っているか」が重要だと考えました。論文の要旨でも、実際に受けた支援は、それが相手の必要に合ったものであるときに役立つ、という考えが示されています。

これはかなり実用的です。たとえば、誰かが仕事で困っているとき、すぐに「こうしたらいいよ!」とアドバイスを投げるのは、心のキャッチボールというより、いきなり剛速球を投げ込むようなものです。相手はまだグローブもはめていないかもしれません。まずは、「今、話を聞いてほしい感じですか?それとも一緒に整理したほうがよさそうですか?」と聞く。この一言だけで、支援はかなりやさしくなります。助ける側の気持ちではなく、助けられる側の受け取りやすさに合わせる。ここが、マイゼルさんの研究から見えてくる大切な知恵です。

また、この研究は、家庭や恋人関係だけでなく、職場の人間関係にもよく効きます。上司や先輩が部下を助けるとき、「ここ間違ってるよ。直しておいたから」と言うと、たしかに仕事は進みます。でも相手の心には、「自分はできないと思われたかも」という小さな雨雲が浮かぶことがあります。一方で、「ここ、少し迷いやすいところなので、一緒に確認しておきましょうか」と言えば、同じ支援でも受け取り方が変わります。助ける言葉の中に、相手への敬意が入っているかどうか。ここが、支援の味つけを決める塩梅なのです。

マイゼルさんの研究から学べるいちばんのポイントは、親切は“相手を見てから出す料理”だということです。お腹がいっぱいの人に大盛りカレーを出しても、ありがた迷惑になることがあります。寒がっている人には毛布が必要かもしれませんし、悩んでいる人には答えよりも沈黙が必要なこともあります。大事なのは、「私は助けたい」という気持ちをそのまま押し出すことではなく、「この人はいま、どんな形なら受け取りやすいだろう」と考えることです。

つまり、支援の名人とは、派手に助ける人ではありません。相手の心の天気を見て、傘を差し出すのか、雨宿りの場所をつくるのか、ただ隣に座るのかを選べる人です。親切をする前に、ほんの少し相手の呼吸を見る。相手の自尊心を傷つけず、相手が「自分で歩けている」と感じられるように支える。そんな支援こそ、じわじわ効く心の漢方薬みたいなものです。

ナタリヤ・C・マイゼルの研究は、「助けることは、思っている以上に繊細な技術なんですよ」と教えてくれます。優しさは、ただ渡せばいいものではありません。渡し方によって、花束にもなれば、ずっしり重い荷物にもなります。だからこそ、誰かを支えるときには、「何をしてあげるか」だけでなく、「相手がどう受け取るか」まで考えたいところです。

人を支えるとは、相手の人生のハンドルを奪うことではありません。助手席にそっと座り、必要なときに地図を広げ、ときには黙って景色を見守ることです。マイゼルさんの研究は、その静かであたたかい支援の作法を、心理学の小さなランタンで照らしてくれているのです。

阿部牧歌(管理人)
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ナタリヤ・C・マイゼル(Natalya C. Maisel)の論文一覧

1.『受け取った支援は、なぜ時に逆効果になるのか-応答性がひらく、ソーシャルサポートの逆説』ナタリヤ・C・マイゼル、シェリー・L・ゲーブル(2009)

Maisel, N. C., & Gable, S. L. (2009). The paradox of received social support: The importance of responsiveness. Psychological Science, 20(8), 928–932. DOI: 10.1111/j.1467-9280.2009.02388.x

「助けてもらったのに、なぜかモヤッとする……」そんな経験、ありませんか?この論文は、支援という名の“やさしさ宅配便”が、必ずしも心にうまく届くとは限らないことを教えてくれます。ポイントは、助けた量ではなく「ちゃんと自分をわかってくれている」と感じられるかどうか。相手の気持ちを見ずに差し出された親切は、ありがたいはずなのに少し重たい荷物になることもあります。人間関係の奥にある、支援のさじ加減をのぞける一本です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】受け取った支援の研究からわかった、「助けてもらったのに苦しくなる」意外なしくみ
【論文要約】受け取った支援の研究からわかった、「助けてもらったのに苦しくなる」意外なしくみ

2.『うれしい知らせは、信頼関係の“避難訓練”になる?-ポジティブな出来事への身近な人の反応を探る研究』シェリー・L・ゲイブル、コートニー・L・ゴスネル、ナタリア・C・マイゼル、エイミー・ストラクマン(2012)

Gable, S. L., Gosnell, C. L., Maisel, N. C., & Strachman, A. (2012). Safely testing the alarm: Close others’ responses to personal positive eventsJournal of Personality and Social Psychology, 103(6), 963–981. DOI:10.1037/a0029488

「今日、ちょっといいことがあってさ」と話した瞬間、相手の反応って意外と見ていますよね。「それ最高じゃん!」と身を乗り出してくれるのか、「へえ」で心のシャッターを半分閉めるのか。この論文は、うれしい報告への返事が、親しい関係の“安心センサー”になることを調べた研究です。つまり幸せな話題は、ただの自慢大会ではなく、「この人は私の喜びを大事にしてくれるかな?」をそっと確かめる小さな実験。人間関係の温度が、リアクションひとつで見えてくる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】うれしい出来事を話したときの反応からわかった、信頼関係の意外なしくみ
【論文要約】うれしい出来事を話したときの反応からわかった、信頼関係の意外なしくみ
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