モティ・アマール(Moty Amar)の論文一覧:人の心は、聞いてもらうとちょっとほどける。孤独・対話・つながりを追いかける心理学の小さな実験室

モティ・アマール(Moty Amar)の論文を読む女性
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モティ・アマール(Moty Amar)のプロフィール

モティ・アマールさんは、ひとことで言うと、「人はなぜ、それを買いたくなるのか」「なぜ、その選択をしてしまうのか」を、虫眼鏡どころか心の内視鏡でのぞいている研究者です。

正式には Moty Amar と表記され、イスラエルの オノ・アカデミック・カレッジの経営学部に所属する研究者として紹介されています。同大学の公式ページでは、経営学部の行動研究室の学術責任者であり、研究委員会のメンバーでもあるとされています。つまり、研究室の奥で「さて、人間の買い物スイッチはどこにあるんでしょうね」と、静かに観察しているタイプの先生です。

専門は、おもに消費者心理学です。むずかしく言うと「マーケティングと心理学の交差点」ですが、やさしく言うなら、スーパーでお菓子を手に取った瞬間、ネット通販で“今すぐ購入”を押した瞬間、あるいは「これは体に良さそうだからおいしい気がする」と思った瞬間、その心の裏側で何が起きているのかを研究している人です。SPSPの記事でも、アマールさんの研究関心は消費者心理学にあると紹介されています。

ただし、アマールさんの研究は「どうすれば商品が売れるか」だけでは終わりません。たとえば、借金の返し方に関する心理、偽物の商品が本物の印象にどう影響するか、食べ物と自己イメージの関係、そして近年では「質の高い聞き方」が孤独感や対立のやわらぎにどう関わるか、といったテーマにも関わっています。もはや研究テーマの机の上が、財布、クッキー、ブランド品、人間関係で大混雑です。けれど、そのごちゃごちゃこそが人間らしさの宝箱なのだと思います。

特に面白いのは、ガイ・イツチャコフさん、ネッタ・ワインスタインさん、ドヴォリ・サルクさんらとの共著で、「人はちゃんと聞いてもらえると、社会的拒絶を話したあとでも孤独感がやわらぐ」という研究に参加している点です。これは、ざっくり言えば「心の傷に、説教よりも“ちゃんと聞くこと”が効くかもしれない」という話です。会話の中で相手に理解されている感覚があると、人は少しだけ社会との糸を結び直せる。まるで、ほつれたセーターの目を、そっと拾い直すような研究です。

経歴を見ると、マーケティングや経済のコンサルタントとして企業や団体にも関わってきたこと、デザイングループで財務責任者を務めたこと、エルサレム市で予算関連の仕事に携わったことなども紹介されています。つまり、純粋な学者というより、現場の泥も、数字のにおいも、組織のややこしさも知っている人です。研究室だけでなく、社会の厨房にも立ってきたタイプですね。

参考文献・確認先:Ono Academic College:Moty Amar 公式プロフィール / Google Scholar:Moty Amar 論文・引用情報 / PubMed:Moty Amar 関連論文 / ResearchGate:Moty Amar 研究プロフィール

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

モティ・アマール(Moty Amar)の研究から学べること

モティ・アマールさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「人間は、自分ではかなり合理的に選んでいるつもりでも、お金・食べ物・買い物・人の話の聞き方などで、けっこう心のクセに引っぱられている」ということです。

いやあ、人間って不思議です。財布を開くときは「私は冷静です」という顔をしているのに、心の中では小さな商店街が大騒ぎしています。「今だけお得です!」「ポイントがつきます!」「自分へのごほうびです!」「昨日がんばったし!」と、脳内の呼び込み隊が全力営業してくる。気づけば、必要だったものは牛乳だけなのに、レジ袋にはお菓子と謎の便利グッズが入っている。これが人間です。かわいいような、こわいような。

アマールさんは、イスラエルのオノ・アカデミック・カレッジに所属するマーケティング分野の研究者で、消費者行動、判断と意思決定、金銭に関する意思決定、食べ物の消費行動などを研究領域としている人物です。研究者情報でも、消費者行動、判断と意思決定、金融意思決定、食行動が研究分野として紹介されています。

アマールさんの研究で特に有名なもののひとつが、「借金の返し方」に関する研究です。ダン・アリエリーさんたちと行った研究では、人が複数の借金を抱えたとき、どう返済するかという心理が扱われています。論文タイトルは「借金管理の心理学」という意味で、消費者が借金を返すとき、必ずしも利息の高いものから合理的に返すとは限らないことに注目しています。

ここが面白いところです。

たとえば、借金がいくつかあるとします。数字だけで考えれば、利息が高いものから返したほうが得な場合があります。これは冷静な計算です。電卓さんも「そうです」とうなずくでしょう。でも人間の心は、電卓だけで動いていません。「まず小さい借金をひとつ消したい」「完済できた感じがほしい」「リストから一個消えると気持ちいい」という心理も働きます。

これは、やることリストに似ています。大きな仕事を一つ進めるより、小さなタスクを三つ消したほうが「今日、めっちゃ働いたな」と感じることがありますよね。実際には大物がまだ机の上で仁王立ちしていても、チェックマークが増えると気分がいい。人間は進んでいる感じに弱いのです。進捗という名の飴玉、大好きです。

アマールさんたちの借金研究から学べるのは、「お金の判断には、数学だけでなく感情が入り込む」ということです。もちろん、家計管理では利息や返済額を冷静に見ることが大切です。でも、本人の気持ちを無視して「合理的にやりなさい」と言うだけでは続かないことがあります。小さな完済でやる気が出る人もいれば、利息の大きさを見たほうが行動しやすい人もいます。お金の問題は、数字の問題であると同時に、心の問題でもあるのです。

これは支援の現場にも使えます。

たとえば、生活費の管理が苦手な人に、「ちゃんと計算しましょう」と言うだけではなかなか変わりません。なぜなら、本人の中には「不安を消したい」「今だけ楽になりたい」「買うことで元気を出したい」「細かい数字を見るのが怖い」という気持ちがあるかもしれないからです。お金の使い方は、単なる計算ミスではなく、気持ちの避難行動になっている場合があります。

だから大切なのは、いきなり説教の大砲を撃つことではありません。

「どんなときに使いすぎやすいですか」

「買った瞬間、どんな気持ちになりますか」

「あとで困るとわかっていても買ってしまうとき、何を満たそうとしている感じがありますか」

こう聞いていくと、行動の裏側が見えてきます。お金の使い方には、その人の不安、疲れ、楽しみの少なさ、自尊心、習慣が絡んでいることがあります。財布の中を見るだけでは足りません。心のレシートも一緒に見る必要があるのです。

また、アマールさんは「よく聞いてもらうこと」と偏見の関係に関する研究にも関わっています。ガイ・イツチャコフさんたちとの研究では、質の高い聞き方が、話し手の偏見に関わる態度を弱める可能性があるかが検討されています。この研究では、アマールさんが共著者として参加しています。

これもまた、かなり興味深いです。

人は、自分の意見を否定されると、たいてい守りに入ります。たとえば、「それは間違っている」と言われると、心の中の武将がすぐ甲冑を着ます。「ならば戦じゃ」となります。ところが、丁寧に聞いてもらえると、人は少し自分の考えを見直しやすくなることがあります。相手に攻撃されていないと感じると、心の門が少し開くのです。

つまり、説得したいときほど、まず聞くことが大切なのです。

これは逆説的ですが、かなり実用的です。人を変えたいと思うと、私たちはすぐに「正しい情報」を投げたくなります。でも、相手が防御していると、その情報は心に入りません。玄関の鍵が閉まっている家に、宅配便を投げ込もうとしても無理です。まずは、安心して玄関を開けてもらう必要があります。そのために大事なのが、「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」という態度なのです。

アマールさんの研究から学べる二つ目の知恵は、「人の判断を変えるには、正論だけでなく、安心して考え直せる場が必要」ということです。

たとえば、職場で誰かが強い思い込みを持っているとします。「あの人はいつもそうだ」「どうせ無理だ」「このやり方しかない」。そこで、いきなり「それは違います」と言うと、相手はますます固まるかもしれません。冷えた餅みたいになります。固い。伸びない。歯にくっつく。

でも、「そう感じる理由があったんですね」「どの場面でそう思いましたか」「別の見方があるとしたら、どんな可能性がありますか」と聞くと、相手は少しだけ考える余地を持てます。人は、責められると変わりにくい。でも、聞いてもらえると、自分の考えを自分で点検しやすくなるのです。

これは、支援や相談でもとても大切です。

たとえば、利用者さんが「自分には絶対無理です」と言ったとします。そこで「そんなことないですよ」とすぐ返すと、本人は「いや、無理なんです」とさらに言いたくなることがあります。心理的な綱引きです。引けば引くほど、相手も引きます。

でも、「絶対無理だと感じるくらい、不安が大きいんですね」「何が一番怖いですか」と聞くと、会話は少し変わります。そのうえで、「全部ではなく、最初の一歩だけならどうでしょう」と提案すると、本人も考えやすくなります。聞くことは、相手の考えに同意することではありません。相手が考え直せる空気を作ることです。

さらに、アマールさんの研究領域には食べ物の消費行動も含まれています。 食べ物の選択も、これまた人間の心のクセがよく出る場所です。お腹が空いているときにスーパーへ行くと、なぜかカゴが暴走します。野菜を買いに行ったはずなのに、気づけば菓子パンが「連れて帰って」と目で訴えてくる。いや、パンに目はありません。でも見える。あれは心理学的にかなり強い現象です。

食べ物、お金、買い物、借金、偏見。これらは一見バラバラに見えます。でも共通しているのは、「人は合理性だけで動いていない」ということです。感情、欲求、安心したい気持ち、進んでいる感じ、損をしたくない気持ち、認められたい気持ち、話を聞いてほしい気持ち。そういうものが、私たちの判断をこっそり動かしています。

アマールさんの研究から学べる三つ目の知恵は、「人の行動を、表面だけで判断しないこと」です。

買いすぎる人を見て、「だらしない」と決めつけない。

借金返済で非効率な選択をする人を見て、「わかっていない」と切らない。

偏った考えを持っている人を見て、「話にならない」とすぐ閉じない。

もちろん、行動の結果には責任が伴います。お金の問題は現実的ですし、偏見は人を傷つけます。でも、変えていくためには、まず「なぜその行動が起きるのか」を見る必要があります。行動の裏には、心理のからくりがあります。からくりを見ずに叱るだけでは、同じことが繰り返されやすいのです。

これは、機械の調子が悪いときに、叩いて直そうとするのに似ています。昔のテレビなら一瞬映るかもしれません。でも、根本的には直っていません。人間も同じです。叱るだけでは、一瞬止まっても、また同じパターンに戻ることがあります。必要なのは、仕組みを見ることです。

日常に活かすなら、アマールさんの研究はこう教えてくれます。

お金を使うときは、「これは本当に必要か」だけでなく、「私は今、どんな気持ちを満たそうとしているのか」を見る。

借金や支払いを整理するときは、「一番得な方法」と「自分が続けやすい方法」の両方を見る。

誰かを説得したいときは、まず相手の話を聞き、相手が安心して考え直せる場を作る。

食べ物や買い物の誘惑に負けそうなときは、「今すぐの満足」と「あとで大事にしたいこと」を分けて見る。

こうした視点があると、自分にも他人にも少しやさしくなれます。人間は、完全に合理的な計算機ではありません。むしろ、感情つき、思い込みつき、欲求つき、疲労つきの生き物です。たまにアップデートも失敗します。でも、だからこそ面白いし、だからこそ工夫が必要なのです。

モティ・アマールさんの研究が教えてくれるのは、人間の判断をよくするには、「正しい情報」だけでは足りないということです。

お金の判断には、感情と達成感が絡みます。

買い物には、欲求と気分が絡みます。

偏見や意見の変化には、聞いてもらえた安心感が絡みます。

つまり、人を動かすものは、数字だけでも、理屈だけでもありません。そこには、心の小さな劇場があります。登場人物は、欲望、不安、見栄、安心、達成感、納得、そしてときどき菓子パンです。

アマールさんの研究は、その劇場の舞台裏を見せてくれます。私たちが「なぜそんな選択をしてしまうのか」を責めるのではなく、「どんな心のしくみが働いているのか」を理解する。その理解が、お金との付き合い方、人との対話、自分の行動の整え方を少しずつ変えていくのです。

阿部牧歌(管理人)
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モティ・アマール(Moty Amar)の論文一覧

1.『つながりは傷を癒す:社会的拒絶を打ち明けたあと、「聴いてもらえた」と感じることが語り手の孤独感をやわらげる』ガイ・イツチャコフ、ネッタ・ワインスタイン、ドヴォリ・サルク、モティ・アマール(2023)

Itzchakov, G., Weinstein, N., Saluk, D., & Amar, M. (2023). Connection Heals Wounds: Feeling Listened to Reduces Speakers’ Loneliness Following a Social Rejection Disclosure. Personality and Social Psychology Bulletin, 49(8), 1273–1294. DOI: 10.1177/01461672221100369

「人に拒絶された話をしたあとって、心の中で小さな雨雲が居座りますよね。で、この論文は何を調べたかというと、“その話をちゃんと聞いてもらえたら、孤独感はやわらぐのか?”ということです。結果はなかなか希望あり。相手がうなずき、理解しようとし、心を向けて聞いてくれると、話した人の孤独感が下がりやすかったのです。つまり、立派なアドバイスより、まずは『うん、聞いてるよ』が心のばんそうこうになるかもしれない。会話の力、あなどれません。」

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】「ちゃんと聴いてもらえた」感覚の研究からわかった、孤独感がやわらぐ意外なしくみ
【論文要約】「ちゃんと聴いてもらえた」感覚の研究からわかった、孤独感がやわらぐ意外なしくみ
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