メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)の論文一覧:聞き上手は耳だけでなく心も使う?会話の空気をふんわり温める心理学メモ

メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)の論文を読む女性
adler-nap

メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)のプロフィール

メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)は、会話や人間関係における「聞くこと」の力に関わる研究で名前が確認できる研究者です。代表的に確認できるのは、ハリー・ウェガー・ジュニア、ジーナ・キャッスル・ベル、エリザベス・M・ミネイらとの共著論文「初対面のやりとりにおけるアクティブリスニングの相対的効果」です。この論文では、ロビンソンはセントラルフロリダ大学のニコルソン・スクール・オブ・コミュニケーション所属として記載されています。

ものすごくざっくり言うと、ロビンソンは「人の話をちゃんと聞くって、ただ黙ってうなずくことじゃないよね?」という、人間関係の台所みたいな部分を研究した人です。会話って、料理でいうと塩加減がむずかしいんですよね。相づちが少なすぎると「この人、聞いてる?」となるし、アドバイスを急ぎすぎると「いや、まず気持ちを聞いてほしかったんだけど……」となる。そこでロビンソンたちは、初対面の会話で「積極的に聞く」「アドバイスする」「簡単な相づちだけする」という反応を比べ、人がどんなときに「わかってもらえた」と感じるのかを調べました。

この研究の面白いところは、「聞き上手」は生まれつきの才能というより、かなり具体的な技術として見られている点です。たとえば、相手の話を受け止め、内容を確認し、気持ちに寄り添うような聞き方をすると、話し手は「この人、ちゃんと私の話を持ってくれているな」と感じやすくなります。まるで、会話の中に小さな座布団をそっと置いてあげるような感じです。座り心地がよいと、人はもう少し話してみようかな、と思えるわけです。

参考文献・確認先:University of Central Florida STARS:Melissa C. Robinson 関連論文情報 / Taylor & Francis:The Relative Effectiveness of Active Listening in Initial Interactions / Google Scholar:Melissa C. Robinson 関連論文 / ResearchGate:関連論文情報

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)の研究から学べること

メリッサ・C・ロビンソンさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「人の話を“聞いているつもり”と、相手が“聞いてもらえた”と感じることは、ぜんぜん別物である」ということです。

これ、かなり大事です。私たちは日常でよく「ちゃんと聞いてるよ」と言います。でも、相手からすると「いや、耳だけ出勤していて、心は有給休暇を取っていませんか?」ということがあります。目の前にいる。うなずいている。相づちも打っている。なのに、なぜか話したあとに「伝わった感じ」がしない。会話の形はあるのに、中身が少しスカスカ。まるで、具のない肉まんです。名前は肉まんなのに、肉がいない。事件です。

ロビンソンさんは、ハリー・ウェガー・ジュニアさん、ジーナ・キャッスル・ベルさん、エリザベス・M・ミネイさんとともに、「初対面に近いやりとりの中で、どんな聞き方が相手に“聞いてもらえた”と感じさせるのか」を調べた研究に関わっています。この論文は『International Journal of Listening』に掲載され、積極的な聞き方、助言、単純な相づちなどを比べた研究として紹介されています。

ここでいう「積極的な聞き方」とは、ただ「うんうん」と言うことではありません。相手の話を受け止めて、「つまり、こういうことなんですね」と言い換えたり、「そこが大変だったんですね」と気持ちを返したりする聞き方です。いわば、相手が投げた言葉のボールを、ちゃんと胸で受け止めてから、やさしく投げ返す感じです。グローブをつけているだけではキャッチボールになりません。ちゃんと受ける、ちゃんと返す。ここが大切なのです。

たとえば、相手が「最近、仕事で気をつかうことが多くて疲れているんです」と言ったとします。

そこで「へえ、大変ですね」と返すのも、もちろん悪くはありません。でも、それだけだと、会話のボールが床にコロコロ転がることがあります。もう一歩進めて、「周りに気を配る場面が多くて、気持ちが休まらない感じなんですね」と返すと、相手は「あ、伝わった」と感じやすくなります。

この「あ、伝わった」が、人間関係ではとても大きいのです。

人は、問題をすぐ解決してほしいときもあります。でも、それ以前に、「自分の話を雑に扱わないでほしい」「自分の気持ちをちゃんと受け取ってほしい」と思うことがあります。心の荷物を持ってきた人に対して、いきなり「では解決策はこちらです」と段ボールを投げ返すより、まず「重かったですね」と言って一緒に持つ。これだけで、相手の心は少し息をしやすくなります。

ロビンソンさんたちの研究から学べる一つ目の知恵は、「聞くことは受け身ではなく、かなり能動的な行動である」ということです。

聞くというと、黙っていればよいように思えます。でも本当に聞くには、けっこう頭も心も使います。相手の言葉を追う。気持ちを想像する。勝手に決めつけない。自分の話に横取りしない。すぐ助言に飛びつかない。これ、地味ですがかなり高度な技です。会話の舞台裏で、心のスタッフがてきぱき働いている状態です。

二つ目の知恵は、「助言は、早すぎると相手に届きにくい」ということです。

私たちは、相手が困っていると、すぐにアドバイスしたくなります。「それならこうしたらいいですよ」「気にしないほうがいいですよ」「上司に言えばいいんじゃないですか」。善意です。たいてい善意です。でも、相手がまだ気持ちを整理できていない段階で助言を出すと、心に入る前に跳ね返ることがあります。

たこ焼きも、熱々すぎると口に入れられません。助言も同じです。まず少し冷ます必要があります。つまり、まず聞く。受け止める。言い換える。確認する。そのあとに、「一緒に考えてみますか」と進む。順番が大事なのです。

三つ目の知恵は、「言い換えは、相手の心に鏡を置くこと」だということです。

ただし、ここで注意したいのは、相手の言葉を機械的に繰り返せばいいわけではない、ということです。

相手「仕事で疲れています」

自分「仕事で疲れているんですね」

相手「はい、疲れています」

自分「疲れているんですね」

これだと、だんだん心理カウンセラーではなく、山びこになります。山に向かって話している感じです。大切なのは、相手の言葉の中にある意味や感情を、少し整理して返すことです。

「作業そのものより、人に気をつかうことが負担になっているんですね」

「失敗が怖いというより、責められるのがつらい感じなんですね」

「本当は頑張りたいけれど、今は心の電池がかなり少ないんですね」

こう返せると、相手は自分の気持ちを少し客観的に見られます。聞き手は、答えを出す人というより、相手の心の鏡を少し磨く人なのです。

この研究は、支援の仕事にもかなり役立ちます。

相談場面では、こちらが「何とかしてあげなければ」と思うほど、助言が早くなります。支援者の脳内では、制度、手順、求人、生活リズム、面接練習、関係機関への連絡が一斉に走り出します。もう脳内の事務所が大忙しです。でも、相談者さんはまだ「しんどかったんです」という場所にいるかもしれません。

そこでまず、

「それはかなり気を張っていたんですね」

「失敗したことより、その後にどう見られるかが不安だったんですね」

「行きたい気持ちと怖い気持ちが両方あるんですね」

と返す。すると、相手は「この人は急かさずに聞いてくれる」と感じやすくなります。安心ができてから、ようやく次の話に進めることがあります。会話にも下ごしらえが必要なのです。いきなり強火で炒めると、焦げます。

職場でも同じです。

部下や同僚が「この作業、ちょっと難しくて」と言ったときに、「マニュアル見ました?」とすぐ返すと、相手は責められたように感じるかもしれません。もちろんマニュアル確認は大事です。でも先に、「どのあたりで止まっていますか」「手順が多くて整理しにくい感じですか」と聞くと、話しやすくなります。

聞くことは、甘やかすことではありません。むしろ、問題を正確に見つけるための技術です。相手が何に困っているかを聞かずに助言すると、地図を見ずに目的地へ向かうようなものです。だいたい迷います。しかも途中でコンビニに寄って、なぜかプリンを買って帰ってきます。

ロビンソンさんたちの研究から、日常で使える具体的なコツはとてもシンプルです。

相手が話したら、まず一度、要点を返してみる。

「つまり、〇〇が一番負担だったんですね」

「〇〇したかったけれど、△△が不安だったんですね」

「今は答えより、まず気持ちを整理したい感じですか」

こうした返しは、相手の話を奪いません。むしろ、相手が自分の話を続けやすくします。

そして、確認の一言を添えるとさらによいです。

「そういう理解で合っていますか?」

この一言は、とてもやさしいです。なぜなら、「私はあなたを勝手に決めつけませんよ」というメッセージになるからです。聞き手が名探偵ぶって「つまりあなたはこうですね!」と断定しすぎると、相手は「いや、違いますけど」と心のドアを閉めてしまうことがあります。会話は推理ショーではありません。確認してよいのです。

メリッサ・C・ロビンソンさんの研究が教えてくれるのは、人間関係において「聞く力」は、ただの礼儀ではなく、相手の安心感をつくる大切な技術だということです。

人は、話を聞いてもらえたと感じると、少し落ち着きます。

落ち着くと、自分の気持ちを整理しやすくなります。

整理できると、次の行動を考えやすくなります。

つまり、よく聞くことは、相手をその場で甘やかすことではなく、相手が自分で歩き出すための足場をつくることなのです。

会話の中で、こちらが立派な答えを出せなくても大丈夫です。むしろ、答えを急ぎすぎないことが、相手の力を引き出すこともあります。人の心は、自動販売機ではありません。正しいボタンを押せばすぐ答えが出るわけではありません。あたたかく聞かれ、言葉を受け止められ、少しずつ自分の中から答えが出てくることがあります。

ロビンソンさんの研究は、私たちにこう語りかけているようです。

「聞いているつもり」で終わらないでください。

相手が「聞いてもらえた」と感じるところまで、もう一歩だけ近づいてください。

その一歩は、派手ではありません。大きな名言もいりません。ただ、相手の言葉を丁寧に受け取り、意味を返し、確認する。その小さな積み重ねが、人間関係の空気を変えていきます。

聞くことは、心の郵便受けを開けることです。相手が差し出した言葉を、折り曲げず、雨に濡らさず、ちゃんと受け取る。そこから、信頼という小さな手紙のやりとりが始まるのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

メリッサ・C・ロビンソン(Melissa C. Robinson)の論文一覧

1.『初対面の会話で、アクティブリスニングはどれほど効くのか-「ちゃんと聴いてくれる人」が相手に与える心理的効果』ハリー・ウェガー・ジュニア、ジーナ・キャッスル・ベル、エリザベス・M・ミネイ、メリッサ・C・ロビンソン(2014)

Weger, H., Jr., Castle Bell, G., Minei, E. M., & Robinson, M. C. (2014). The relative effectiveness of active listening in initial interactionsInternational Journal of Listening, 28(1), 13–31. DOI:10.1080/10904018.2013.813234

この論文は、「初対面で好印象を持たれる聞き方って、結局どれなの?」を実験した、会話の聞き上手選手権みたいな研究です。相手の話をただ聞くだけ、アドバイスする、相手の言葉を受け止めて返す「アクティブリスニング」を比べたところ、やはり“ちゃんと聞いてくれている感”は人間関係の保温ポット。急いで助言を差し出すより、「つまり、こう感じたんですね」と受け止めるほうが、相手の心はふわっと開きやすい。聞くって地味?いえいえ、会話の主役をそっと照らす名脇役なのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】アクティブリスニングの研究からわかった、初対面で信頼される人の意外なしくみ
【論文要約】アクティブリスニングの研究からわかった、初対面で信頼される人の意外なしくみ
記事URLをコピーしました