ロリ・プバート(Lori Pbert)の論文一覧:心のざわざわから生活習慣まで、からだ会議にそっと参加する健康心理学さんぽ
ロリ・プバート(Lori Pbert)のプロフィール
ロリ・プバートさんは、ざっくり言うと、「人が健康によい行動を続けられるように、医療現場や地域の中でどう支えればいいか」を研究してきた健康心理・予防医学の研究者です。たとえるなら、心と体のあいだに立って、「禁煙したい?運動が続かない?ストレスで呼吸までしんどい?では作戦会議をしましょう」と、白衣を着た交通整理員のように道案内してくれる人です。
ロリ・プバートさんは、マサチューセッツ大学チャン医学校で、予防医学・行動医学の分野に所属してきた研究者で、現在は名誉教授として紹介されています。また、たばこ治療研究・研修センターの責任者としても紹介されています。研究の中心は、たばこ予防、肥満予防、健康行動の改善、慢性疾患の管理などです。つまり、「健康に悪いとわかっているけど、なかなかやめられない」「やったほうがいいとわかっているけど、続かない」という、人間あるあるの巨大沼に、研究という長靴を履いて入っていくタイプの学者さんです。
特に有名なのは、若者の喫煙・ニコチン依存への対策です。大学のプロフィールでは、若者のたばこ治療の専門家として全国的に知られていると紹介されています。小児科の現場で、若者のたばこ使用や受動喫煙にどう対応するかについて、研究や実践の指針づくりにも関わってきました。ここでのプバートさんは、ただ「たばこはダメです」と言うだけの人ではありません。「では、医師はどう声をかける?家族はどう関わる?本人が続けられる仕組みは?」と、現場で使える形に落とし込む研究をしているのが特徴です。
また、マインドフルネスを健康支援に活用する研究にも関わっています。たとえば、ぜんそくのある人に対して、マインドフルネスを取り入れたストレス低減法が、生活の質やストレスにどのような影響を与えるかを調べた研究があります。この研究では、肺の機能そのものを大きく改善したわけではないものの、ぜんそくに関わる生活の質やストレスには、長く続く意味のある改善が見られたと報告されています。要するに、「気合いで肺を強くするぞ!」という話ではなく、「病気と一緒に暮らすとき、心の持ち場を少し楽にする」という方向の研究です。
プバートさんの研究のおもしろいところは、かなり実用寄りな点です。研究室の中で「理論として美しいですね」で終わらせず、医療機関、学校、地域、家庭といった実際の場所に持っていくことを大事にしています。健康行動の研究って、言ってしまえば「人間はなぜ、体にいいことを三日坊主にするのか問題」との格闘です。プバートさんはそこに、「本人の努力だけに任せるのではなく、医療や地域の仕組みとして支えましょう」と考える研究者だと言えます。
さらに、2019年にはアメリカの予防医療サービス作業部会のメンバーに任命されています。これは、病気の予防や早期発見について、科学的根拠にもとづく推奨を行う専門家集団です。つまりプバートさんは、単に論文を書く人というだけでなく、「研究を社会の健康ルールづくりに橋渡しする人」でもあります。
まとめると、ロリ・プバートさんは、禁煙、肥満予防、若者の健康支援、マインドフルネス、慢性疾患との付き合い方などを研究してきた、予防医学と健康心理学の実践派研究者です。健康を「根性でなんとかするもの」ではなく、「続けられる仕組みとして育てるもの」と考えるタイプの研究者さんですね。体の中の会議室で、ストレス部長、習慣課長、ニコチン係長がわちゃわちゃしているところに、プバートさんが入ってきて、「はいはい、順番に話しましょう」とホワイトボードを出す。そんなイメージの人です。
参考文献・確認先:UMass Chan Medical School:Lori Pbert 公式プロフィール / Google Scholar:Lori Pbert 論文・引用情報 / PubMed:Lori Pbert 関連論文

ロリ・プバート(Lori Pbert)の研究から学べること
ロリ・プバートさんの研究をひとことで言うなら、「健康づくりは、気合いと根性の一発芸ではなく、毎日の生活の中にそっと組み込む“続けられる仕組み”が大事なんですよ」という研究です。
健康の話になると、私たちはすぐに大きな決意をしがちです。「明日から毎日運動するぞ」「甘いものをやめるぞ」「早寝早起きするぞ」「スマホを見る時間を減らすぞ」。その瞬間だけは、心の中でファンファーレが鳴っています。ところが翌日になると、布団が謎の磁力を発揮し、冷蔵庫のプリンがこちらを見つめ、スマホが「ちょっとだけ見ていきません?」と甘い声で呼んできます。人間の決意、けっこう風に弱い紙飛行機です。
プバートさんは、そうした「健康にいいことを、どうすれば現実の生活の中で続けられるのか」を研究してきた人です。マサチューセッツ大学チャン医科大学の紹介では、プバートさんは臨床心理学者であり行動科学者で、30年以上にわたって、医療現場の中に予防的な健康支援を組み込む方法を設計・評価してきた研究者だと説明されています。つまり、健康づくりを「立派な理想」で終わらせず、「実際の現場で動く形」にする研究をしてきたわけです。
ここから学べる一つ目のことは、「健康行動は、本人の意志だけに背負わせない」ということです。
たとえば、禁煙、運動、食事改善、体重管理、ストレス対策。どれも大切です。でも、どれも簡単ではありません。健康診断の結果を見て「よし、変わろう」と思っても、仕事が忙しい、家事がある、気分が落ち込む、周りに協力者がいない、生活リズムが乱れている。こうした現実のつまずき石が、道のあちこちに転がっています。
そこで「あなたの努力が足りない」と言ってしまうと、支援はそこで細くなります。プバートさんの研究から学べるのは、努力を責める前に、「続けやすい環境をどう作るか」を考えることです。人は、正しい情報を知っただけでは変わりません。健康パンフレットを読んだだけで人生が変わるなら、世の中の保健室はすでに魔法図書館です。大切なのは、知識を生活の中で使える形にすることなのです。
二つ目に学べるのは、「医療や学校など、すでに人が集まる場所に支援を置く」という考え方です。
プバートさんの研究は、病院や診療所などの医療現場に、健康行動を変えるための支援をどう組み込むかに関心があります。大学の研究紹介でも、予防的な健康支援を既存の医療実践に統合し、根拠にもとづく指針や最善の方法につなげることが大きなテーマとされています。
これは、とても現実的です。「困ったら相談に来てください」と待っているだけでは、支援が必要な人ほど来られないことがあります。忙しい人、余裕のない人、困っていることに気づいていない人、そもそも相談する力が弱っている人もいます。だからこそ、すでに人が来る場所に支援を置く。病院、学校、地域、職場。人が通る道に、小さな健康の休憩所を作るような発想です。
これは、就労支援や福祉の現場にもよく通じます。「必要な人だけ来てください」ではなく、「ふつうの関わりの中で、自然に支援につながる」形を作る。たとえば、面談の中で睡眠を確認する。作業訓練の中で体調の波を見る。雑談の中で食事や運動の話を拾う。支援は、立派な看板を掲げた相談室だけで起きるわけではありません。日常のすき間にも、ちゃんと芽を出します。
三つ目に学べるのは、「禁煙支援は、説教より作戦が大事」ということです。
プバートさんは、たばこに関する研究にも関わってきました。マサチューセッツ大学のがん研究センターの紹介では、プバートさんは予防・行動医学の研究者として紹介されており、健康行動の変化や予防支援に関わる研究実績を持つ人物として位置づけられています。
たばこについては、「体に悪いからやめましょう」と言うだけでは、なかなかうまくいきません。吸っている本人も、たいてい体に悪いことは知っています。知らないから吸っているというより、ストレス、習慣、人間関係、気分転換、依存が絡んでいるからやめにくいのです。
ここで必要なのは、正論の巨大ハンマーではなく、生活に合った小さな作戦です。いつ吸いたくなるのか。朝なのか、食後なのか、仕事の休憩中なのか。イライラしたときなのか、誰かと一緒にいるときなのか。吸いたくなる場面が見えてくると、「その時間に別の行動を入れる」「吸う場所に行かない」「数分だけ待つ」「誰かに連絡する」など、具体的な対策ができます。
禁煙は、ただの我慢大会ではありません。生活の配線工事です。いつも同じスイッチを押すと、いつも同じ電気がつく。だから、スイッチの位置を変えたり、別の明かりを用意したりする必要があります。
四つ目に学べるのは、「心を整えることは、体の健康行動にもつながる」ということです。
プバートさんは、ジョン・カバットジンさんらとともに、瞑想を中心としたストレス低減プログラムが不安障害の治療に役立つかを調べた有名な研究にも参加しています。この1992年の研究では、不安障害やパニック障害の患者に対して、瞑想を中心としたストレス低減法を行い、不安や抑うつなどの変化を調べています。
この視点は、とても大切です。健康行動というと、運動、食事、禁煙、体重など、目に見える行動ばかりに注目しがちです。でも、その行動の土台には、心の状態があります。心が焦げついたフライパンみたいになっていると、健康にいい行動を始める余裕がなくなります。「野菜を食べよう」と思っても、疲れすぎてカップ麺に手が伸びる。「歩こう」と思っても、気分が沈んで靴を履く気力が出ない。「早く寝よう」と思っても、不安が頭の中で深夜営業を始める。
だから、心を整えることは、体の健康づくりの土台になります。深呼吸をする。今の感覚に気づく。自分を責める声を少し弱める。小さな休憩を入れる。こうしたことは、ただの気休めではありません。健康行動を続けるための、心の地ならしです。畑で言えば、種をまく前に土をほぐす作業です。土がカチカチだと、よい種も根を伸ばしにくいのです。
五つ目に学べるのは、「子どもや若者への健康支援は、早めが大事」ということです。
プバートさんの研究領域には、若者への健康支援も含まれています。研究プロフィールでは、予防的な健康支援を現場に組み込むこと、また持続可能で実践的な介入を設計・評価することが中心として紹介されています。
若いころの生活習慣は、その後の人生に長く影響します。もちろん、大人になってからでも変われます。でも、早い段階で「自分の体を大切にする感覚」「ストレスを安全に扱う方法」「たばこや不健康な習慣に巻き込まれない力」を育てることは、とても大事です。
ただし、若者に健康の話をするときは、説教くさくなるとすぐに心のシャッターが下ります。「将来困るよ」と言われても、若いころの将来は、だいたい遠い星の話です。だから、今の生活に関係する言葉で伝える必要があります。「よく眠れると朝が楽になるよ」「少し歩くと気分が軽くなるよ」「たばこに頼らないほうが部活や仕事で息切れしにくいよ」。未来の病気だけでなく、今日と明日の楽さにつなげる。これが大事です。
六つ目に学べるのは、「続く支援は、現場の人が使いやすい支援である」ということです。
どれほど立派な支援方法でも、現場で使えなければ続きません。医師や看護師、学校の先生、支援員、相談員が、忙しい日常の中で無理なく使える形でなければ、やがて棚の上で眠る資料になります。資料にも布団が必要なくらい、静かに眠ってしまいます。
プバートさんの研究が大事にしているのは、実際の現場に組み込める支援です。研究室の中だけで「効果がありました」で終わるのではなく、現場で使えるか。続けられるか。多くの人に届けられるか。ここを見るところが、非常に実践的です。大学の紹介でも、実用的で持続可能な健康支援の設計・評価に長く取り組んできたことが示されています。
これは福祉や就労支援でも同じです。理想は大切です。でも、現場が回らなければ続きません。支援は、きれいな理論の花瓶に飾るだけではなく、毎日の業務の机に置けるサイズである必要があります。小さくても、使える。地味でも、続く。そのほうが、人の生活には届きやすいのです。
ロリ・プバートさんの研究からいちばん学べることは、「健康づくりは、本人を責めることではなく、続けられる仕組みを一緒に作ることだ」ということです。
禁煙も、食事改善も、運動も、ストレス対策も、全部「わかっているけど難しい」ものです。人間は、正しい情報だけでは動けません。疲れます。迷います。忘れます。流されます。誘惑に負けます。冷蔵庫のプリンには、なぜか夜だけ強力な説得力があります。
だからこそ、健康支援には温かい現実感が必要です。「なぜできないの?」ではなく、「どこでつまずくのかな」。「もっと頑張って」ではなく、「続けやすい形に変えよう」。「あなたの責任です」ではなく、「環境も一緒に整えよう」。この見方があるだけで、支援はずいぶん人間らしくなります。
プバートさんの研究は、私たちにこう語りかけているようです。
「健康は、決意だけで守るものではありません。生活の中に、小さな続けやすい仕組みを置いていきましょう」
大きな変化を一気に起こそうとしなくてもいいのです。今日、少し歩く。夜に少し早く画面を閉じる。深呼吸を一回する。たばこを吸いたい波を少しだけやり過ごす。食事に一品だけ野菜を足す。そういう小さな行動が、生活の中に根を張っていきます。
健康づくりは、巨大な決意の花火ではなく、毎日ともる小さな灯りです。プバートさんの研究は、その灯りを、病院や学校や地域の中で、どうすれば消えにくくできるのかを考えてきた研究だと言えます。派手ではないけれど、じわじわ効く。まるで、心と体の台所に置かれた、よく働く小さな常夜灯のような研究なのです。

ロリ・プバート(Lori Pbert)の論文一覧
1.『不安障害の治療における、瞑想にもとづくストレス低減プログラムの効果』ジョン・カバットジン、アン・O・マシオン、ジーン・クリステラー、リンダ・ゲイ・ピーターソン、ケネス・E・フレッチャー、ロリ・プバート、ウィリアム・R・レンダーキング、サキ・F・サントレリ(1992)
Kabat-Zinn, J., Massion, A. O., Kristeller, J., Peterson, L. G., Fletcher, K. E., Pbert, L., Lenderking, W. R., & Santorelli, S. F. (1992). Effectiveness of a meditation-based stress reduction program in the treatment of anxiety disorders. American Journal of Psychiatry, 149(7), 936–943. DOI:10.1176/ajp.149.7.936
不安くん、今日も心の中で大暴れ。「ちょっと静かにして!」と言いたくなる人に、この論文はそっと座布団を出します。カバットジンたちは、瞑想を中心にしたストレス低減プログラムが、不安障害の人たちにどんな変化をもたらすかを調査。すると、心のざわざわや不安症状がやわらぐ可能性が見えてきました。瞑想って、ただ目を閉じるだけじゃないんです。心の暴走列車に、やさしくブレーキをかける研究です。

