リンダ・ゲイ・ピーターソン(Linda Gay Peterson)の論文一覧:心のざわざわに耳をすませる、マインドフルネス研究さんぽ
リンダ・ゲイ・ピーターソン(Linda Gay Peterson)のプロフィール
リンダ・ゲイ・ピーターソン(Linda Gay Peterson)は、精神医学や心身医学の分野で活動していた医師・研究者です。肩書きとしては、論文上で M.D.、つまり医学博士・医師として記載されています。ジョン・カバットジンらの有名な1992年の論文「不安障害に対する瞑想にもとづくストレス低減プログラムの効果」に共著者として名を連ねており、ここではマインドフルネスが「心のざわざわ」にどんな助けになるのかを調べる研究に関わっています。いわば、心の中で鳴りっぱなしの非常ベルに「まあまあ、少し座ってお茶でも」と声をかける研究チームの一員、という感じです。
ただし、ピーターソンについては、現在の大学公式プロフィールや詳しい経歴情報があまり多く公開されていません。確認できる範囲では、1980年代から1990年代にかけて、精神科医療、集中治療室で興奮状態になった患者への対応、自殺リスクのある患者への臨床的・法的配慮、パニック障害などに関する研究に関わっていた人物と見られます。つまり、ただ「落ち着きましょう」と言うだけではなく、医療現場のかなり緊張感のある場面で、人の心と体がどう揺れるのかを見つめていた研究者です。
特に面白いのは、彼女の研究領域が「瞑想でリラックスしましょう」というふんわりした世界だけに閉じていないところです。集中治療室、自殺リスク、がん患者への向精神薬、パニック障害など、心がまるで台風の日のビニール傘みたいにひっくり返りそうな場面に向き合っています。その意味でピーターソンは、マインドフルネス研究の“静かな座布団係”でありながら、同時に医療現場の“心の救急箱”にも関わっていた人物と言えそうです。
1990年に出版された精神科教育に関する書籍では、マサチューセッツ大学医学部の家庭・地域医療学部門および精神医学部門に所属していたことが確認できます。また、1981年時点ではテキサス大学健康科学センター精神医学部門に関係していた記録も見つかります。
まとめると、リンダ・ゲイ・ピーターソンは、不安、パニック、自殺リスク、集中治療室での精神症状など、人間の心が「もう無理です、店じまいです」と言い出しそうな場面を、医学と心理の両方から見つめた精神科医・研究者です。カバットジンらとのマインドフルネス研究では、不安に苦しむ人の心に、力ずくではなく静かに寄り添う方法を探る一員として名を残しています。研究者ページに載せるなら、派手な主役というより、医療とマインドフルネスの橋を支えた“縁の下の臨床職人”という紹介が似合う人物です。
参考文献・確認先:PubMed:Linda Gay Peterson 共著論文 / UMass Chan Medical School:論文情報 / DOI:Effectiveness of a meditation-based stress reduction program in the treatment of anxiety disorders / Google Scholar:Linda Gay Peterson 関連論文

リンダ・ゲイ・ピーターソン(Linda Gay Peterson)の研究から学べること
リンダ・ゲイ・ピーターソンさんの研究から学べることを、ひとことで言うなら、「不安は、力ずくで追い払うだけではなく、“今ここ”に戻る練習によって、少しずつ付き合い方を変えられる」ということです。
不安って、なかなか厄介です。こちらが「もう大丈夫」と言っても、心の奥から「本当に?」「でも明日は?」「もし失敗したら?」「あの人の表情、変じゃなかった?」と、次々に不安の小人たちが会議資料を持って走ってきます。しかも彼ら、退勤時間を知りません。深夜でも普通に働きます。働き方改革、どこへ行ったのでしょうか。
ピーターソンさんは、ジョン・カバットジンさん、アン・O・マシオンさん、ジーン・クリステラーさん、ケネス・E・フレッチャーさん、ロリ・プバートさん、ウィリアム・R・レンダーキングさん、サキ・F・サントレリさんたちとともに、不安障害の人たちに対する瞑想を中心としたストレス軽減プログラムの効果を調べた研究に関わっています。この研究は1992年に『American Journal of Psychiatry』に掲載され、全般性不安障害やパニック障害などの人を対象に、瞑想を中心とした集団プログラムが不安やパニック症状を減らす可能性を検討したものです。
この研究で大事なのは、「不安をなくすぞ!」と不安に正面から殴りかかるのではなく、「不安があることに気づき、それに巻き込まれすぎない練習」をしたところです。ここでいう瞑想やマインドフルネスは、難しい宗教修行というより、「今、自分の体や呼吸や心に何が起きているかを、なるべく判断せずに観察する練習」と考えるとわかりやすいです。
たとえば、不安が出てきたとき、ふつう私たちはすぐに不安の映画館に入ってしまいます。
「失敗するかもしれない」
「変に思われるかもしれない」
「また発作が起きるかもしれない」
「もう外に出られなくなるかもしれない」
はい、脳内映画館、上映開始です。しかもジャンルはホラー。ポップコーンは自己否定味。できれば観たくないのに、なぜか最前列に座らされます。
でも、マインドフルネスの考え方では、「今、不安の物語が始まっているな」と気づく練習をします。不安を消そうとするのではなく、「不安がある」と見る。呼吸が浅くなっている、胸がざわざわしている、肩に力が入っている、頭の中で未来の心配が流れている。そうやって、少し離れた席から自分の心を眺めるのです。
これができると、不安に飲み込まれにくくなります。もちろん、不安がゼロになるわけではありません。そんな便利な心の消しゴムがあれば、世界中で売り切れます。でも、不安が出てきても、「これは危険そのものではなく、心と体の反応なんだ」と気づけるようになる。ここが大きいのです。
ピーターソンさんたちの研究では、瞑想を中心とした集団ストレス軽減プログラムが、不安やパニック症状を減らし、その軽減が一定期間保たれる可能性が示されました。論文の結論でも、マインドフルネス瞑想を含む集団プログラムが、不安やパニック症状の軽減に役立ちうるとされています。
ここから学べる一つ目の知恵は、「不安は、追い払おうとするほど大きくなることがある」ということです。
不安なときに、「不安になってはいけない」と思うと、だいたい不安は増えます。「白いクマを考えないでください」と言われた瞬間、白いクマが玄関から入ってくるのと同じです。不安も、「来るな」と言うほど、なぜか座布団を持って居座ります。
だから、不安に対しては、追放令を出すよりも、「あ、来ましたね」と気づくほうがよいことがあります。
「今、不安が出ている」
「胸がざわざわしている」
「頭が未来の心配を作っている」
「でも、今この瞬間は、椅子に座って呼吸している」
こうやって、心を“未来のもしも劇場”から“今ここ”へ少し戻す。これは、不安に負けることではありません。不安に操縦席を明け渡さない練習です。不安さん、助手席へどうぞ。ハンドルはこちらで持ちます、という感じです。
二つ目の知恵は、「体に戻ると、心が少し落ち着きやすい」ということです。
不安が強いとき、頭は未来へ飛びます。明日のこと、来週のこと、失敗したときのこと、まだ起きていないことを、頭の中で何度も再生します。心配の先取り予約です。キャンセル料が高いです。
そんなとき、呼吸、足の裏、手の感覚、肩の力、音、光、椅子の感触に注意を向けると、心は少し現在に戻ります。これは「現実逃避」ではありません。むしろ逆です。頭の中の未来劇場から、実際の今に戻ることです。
「今、足の裏が床についている」
「今、息を吸っている」
「今、肩に力が入っている」
「今、音が聞こえている」
このように体の感覚を見ると、不安の渦から少し距離を取れます。心が嵐の日に、灯台の足元を確認するようなものです。海は荒れている。でも足元はここにある。これだけでも、少し違います。
三つ目の知恵は、「不安を敵扱いしすぎないこと」です。
不安はつらいものです。パニックや強い不安は、本人にとって本当に苦しい体験です。そこを軽く見てはいけません。ただ、不安はもともと私たちを守るための反応でもあります。危険を知らせる警報機です。問題は、その警報機が敏感になりすぎて、トーストの煙でも大火事レベルに鳴ってしまうことです。
マインドフルネスの練習は、その警報機を壊すのではなく、「警報が鳴っていることに気づき、必要以上に大パニックにならない」練習とも言えます。
「不安がある。だから危険が確定した」
ではなく、
「不安がある。体が危険かもしれないと反応している」
と見る。これは小さな違いですが、心の中ではかなり大きいです。前者は不安の言い分をそのまま信じています。後者は、不安を情報として扱っています。不安を神様にしない。不安を天気予報くらいに扱う。外れる日もあります。
四つ目の知恵は、「練習は集団でも力になる」ということです。
ピーターソンさんたちの研究は、集団で行うストレス軽減プログラムを扱っています。参加者は、不安を抱えながらも、瞑想や気づきの練習に取り組みました。 これは、ひとりでがんばるだけではなく、「同じように不安と向き合っている人がいる」と感じられる点でも意味があります。
不安が強いと、人は孤独になりやすいです。
「こんなことで苦しいのは自分だけ」
「また不安になったら恥ずかしい」
「人に迷惑をかけるかもしれない」
こう考えると、ますます外へ出にくくなります。でも、集団の場で「自分だけではない」と感じられると、心の孤立が少しゆるみます。不安はひとりで抱えると、部屋いっぱいに広がります。でも、誰かと分けると、少しサイズが見えてくることがあります。怪物だと思っていたら、実は大きめの影だった、ということもあるのです。
五つ目の知恵は、「マインドフルネスは魔法ではなく、練習である」ということです。
ここは大事です。マインドフルネスと聞くと、「瞑想すればすぐ落ち着く」「呼吸すれば不安が消える」と期待したくなります。でも、実際にはそんな即効魔法ではありません。電子レンジで3分、はい安心完成、とはいきません。
むしろ、マインドフルネスは筋トレに近いです。一回やっただけで腹筋が割れないように、一回呼吸を見ただけで不安体質が完全に変わるわけではありません。何度も練習する中で、「気づく力」「戻る力」「巻き込まれすぎない力」が育っていきます。
不安が出る。
気づく。
呼吸に戻る。
また考えが流れる。
また気づく。
また戻る。
このくり返しです。地味です。でも、心の筋肉は地味な反復で育ちます。派手な必殺技ではなく、毎日の素振りです。
支援や職場でこの考え方を使うなら、相手に「不安になるな」と言わないことが大切です。
不安な人に「大丈夫だから気にしないで」と言っても、なかなか届きません。本人の中では、すでに不安の警報が鳴っています。そこで必要なのは、「不安を消しましょう」よりも、「不安が出たときに、どう戻るかを一緒に練習しましょう」という関わりです。
たとえば、
「今、不安がどこに出ていますか」
「胸ですか。お腹ですか。頭の中の考えですか」
「まず足の裏を床につけてみましょう」
「息を少し長く吐いてみましょう」
「今この場で見えるものを三つ言ってみましょう」
こうした関わりは、不安を否定せず、今ここへ戻る手助けになります。心の迷子センターに連れていく感じです。「不安さん、こちらです。現在地を確認しましょう」と。
また、本人が「また不安になってしまった」と落ち込んでいるときには、「不安になったこと」ではなく、「不安に気づけたこと」を評価するのも大切です。
「不安が出たことに気づけたのは大事ですね」
「前より少し早く対処できましたね」
「不安がありながらも、ここまで来られましたね」
こういう言葉は、本人の中に「不安があっても動ける」という感覚を育てます。不安がゼロでないと動けない、ではなく、不安を抱えながらも一歩進める。これが大切なのです。
リンダ・ゲイ・ピーターソンさんたちの研究が教えてくれるのは、不安との付き合い方には「戦う」以外の道があるということです。
不安を消そうとする。
不安から逃げる。
不安を責める。
不安な自分を否定する。
こういうやり方だけだと、かえって苦しくなることがあります。そこで、「不安に気づく」「体に戻る」「今ここに戻る」「判断しすぎず観察する」という道が出てきます。
これは、心の嵐を止める方法ではありません。嵐の中で、自分がどこに立っているかを見失わない方法です。
ピーターソンさんの研究は、マインドフルネスが不安障害への支援に役立つ可能性を早い時期に示した研究の一部として、とても意味があります。もちろん、強い不安やパニックがある場合には、医師や専門家の支援が大切です。マインドフルネスだけで何でも解決するわけではありません。けれど、不安に飲み込まれすぎず、自分の体と心を観察する力を育てることは、多くの人にとって助けになる可能性があります。
ピーターソンさんの研究から、私たちはこう学べます。
不安は、敵として追い払うだけではなく、観察できる。
呼吸や体の感覚は、今ここへ戻る入口になる。
不安があっても、自分を責めなくていい。
練習を重ねれば、不安との距離を少しずつ変えられる。
心のざわざわは、ときどき大きな波になります。でも、その波の中で「私は今、不安を感じている」と気づけることは、小さな浮き輪になります。波を消すわけではない。でも、沈みにくくなる。
リンダ・ゲイ・ピーターソンさんの研究は、その浮き輪の作り方を教えてくれる研究です。不安を完全に消す魔法ではなく、不安と一緒に生きるための静かな技術。心の中に、ほんの少し観察席をつくること。その席に座れたとき、不安の映画はまだ上映されていても、私たちはスクリーンの中に閉じ込められずに済むのです。

リンダ・ゲイ・ピーターソン(Linda Gay Peterson)の論文一覧
1.『不安障害の治療における、瞑想にもとづくストレス低減プログラムの効果』ジョン・カバットジン、アン・O・マシオン、ジーン・クリステラー、リンダ・ゲイ・ピーターソン、ケネス・E・フレッチャー、ロリ・プバート、ウィリアム・R・レンダーキング、サキ・F・サントレリ(1992)
Kabat-Zinn, J., Massion, A. O., Kristeller, J., Peterson, L. G., Fletcher, K. E., Pbert, L., Lenderking, W. R., & Santorelli, S. F. (1992). Effectiveness of a meditation-based stress reduction program in the treatment of anxiety disorders. American Journal of Psychiatry, 149(7), 936–943. DOI:10.1176/ajp.149.7.936
「不安さん、今日も全力出勤ですか?」そんな心の大騒ぎに、瞑想ベースのストレス低減法がどこまで効くのかを調べた論文です。不安障害やパニックを抱える人たちが、呼吸や気づきの練習を続けると、心の警報ベルは少し静かになるのか。カバットジンたちが、マインドフルネスを“心の消音ボタン”として本気で検証した一篇。読めば、座るだけの時間がちょっと頼もしく見えてきます。

