カロリーネ・シュネッター(Karoline Schnetter)の論文一覧:「いつかやる」を「今日から動く」に変える、空想の着地術を研究した心理学者

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カロリーネ・シュネッター(Karoline Schnetter)のプロフィール

カロリーネ・シュネッターは、ひと言でいえば、「願いごとに靴を履かせて、現実の道を歩かせる」研究に関わってきた心理学者です。

人はよく、未来を想像します。
「仕事がうまくいったらいいな」
「もっと自信が持てたらな」
「いつか生活を立て直したい」
そんな願いは、心のなかではだいたい立派です。大きな窓のある部屋で、未来の自分がコーヒーでも飲んでいる。ところが現実では、締切がある。お金も時間も足りない。気力はときどき布団に立てこもる。未来は美しいのに、現在はなかなか世知辛いのです。

シュネッターが共同研究者として参加した目標設定の研究は、まさにこの「夢はあるのに、足が動かない」問題を扱いました。ポイントは、ただ明るい未来を思い描くだけではなく、その未来と、いま自分の前にある障害を並べて考えることです。

たとえば、「資格を取って転職したい」と願う。そこで終わると、頭のなかには合格後の自分だけが住みはじめます。名刺も新しくなり、同僚もやさしく、通勤中の空まで少し青い。けれど、そのあとに「勉強時間はどこから出す?」「苦手な分野は?」「今週、最初に何をする?」と現実を見つめる。すると願いは、ぼんやりしたポスターではなく、予定表に書ける計画へ変わっていきます。

ただし、この考え方は「気合いで何でも叶えよう」という精神論ではありません。むしろ反対です。実現できそうな願いには力を注ぎ、難しすぎる願いには、必要以上に人生を差し出さない。未来を見て元気になるだけでなく、現実を見て判断する。夢にブレーキをかけるのではなく、ちゃんとハンドルをつける研究です。

シュネッターの歩みがおもしろいのは、研究室のなかだけで人のやる気を眺めていたわけではないところです。彼女は教育や社会参加に関わる事業の評価にも携わり、学校教育、教員研修、デジタル機器を使った学び、矯正施設での学習支援、若者向けの暴力防止プログラムなど、かなり現場の風が強い場所を扱ってきました。

ここでいう「評価」とは、誰かに赤ペンで「はい、がんばりましょう」と採点する仕事ではありません。ある取り組みが本当に役に立ったのか。どこで参加者がつまずいたのか。支援する側は何に困ったのか。続けるなら何を直せばよいのか。そんな問いを、聞き取りや調査を通して丁寧に確かめる仕事です。華やかではないけれど、支援を“なんとなく良さそう”から“もう少し良くできる”へ運ぶための大切な裏方です。

特に印象的なのは、矯正施設での学びに関する研究です。パソコンを使った学習が、学ぶ意欲や成果にどう影響するのか。画面のなかの教材だけでなく、教える人との関わりや支援のあり方まで見つめています。便利な仕組みを置けば人が勝手に変わる、という話ではありません。人が前に進むには、道具だけでなく、見守る人、声をかける人、失敗しても戻ってこられる場所がいる。そんな当たり前で、けれど置き去りにされやすい事実が、彼女の仕事には静かに流れています。

カロリーネ・シュネッターの研究は、「ポジティブに考えれば何とかなる」という軽やかな励ましに、少しだけ現実派の上着を着せてくれます。願いは大切です。でも、願いだけでは玄関から出られない。未来を思い描き、いまの障害を見つけ、自分にできる次の一歩を決める。その地味で確かな往復運動こそが、人を動かす力になるのです。

夢を壊すために現実を見るのではありません。夢を、現実の世界でちゃんと生きられる形にするために見る。シュネッターは、そんな「夢の現実派」を支える研究に名を残した人だといえるでしょう。

参考文献・確認先:Karoline Schnetter 研究者プロフィール(ResearchGate) / Karoline Schnetter 論文・研究ページ(Academia.edu) / Google Scholar:Karoline Schnetter 論文・引用情報 / PubMed:代表論文「未来の空想を目標へ変える自己調整」

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

カロリーネ・シュネッター(Karoline Schnetter)の研究から学べること

「今年こそ資格を取る」
「仕事を変えたい」
「生活を立て直したい」
「もう少し、自分を好きになりたい」

人間は、たいへん立派な願いを持つ生き物です。年の初め、月曜日の朝、お風呂に入っているとき。私たちは急に人生の社長になります。「よし、ここから変えるぞ」と宣言し、心のなかでは新しい自分が拍手を浴びています。

ところが翌日になると、布団がこちらの腕をつかんできます。通知が鳴ります。やることが増えます。夕方には「今日は準備運動ということで……」などと言いながら、願いがソファの隙間に転がり落ちていく。人間のやる気は、なかなか野良猫です。呼んでも来ないし、来たと思ったら急にいなくなります。

カロリーネ・シュネッターが共同で発表した研究から学べるのは、そんな願いを「気持ちのいい空想」で終わらせず、実際の目標へ変えていくための考え方です。

大切なのは、未来だけを見ることでも、現実だけを見ることでもありません。
望む未来と、いま目の前にある壁。その二つを、心のなかでちゃんと向かい合わせることです。

たとえば、「半年後には転職したい」と考えたとします。

未来だけを思い描くなら、新しい職場、少し整った服装、帰り道の足取りまで軽い自分が見えてきます。これは悪いことではありません。未来が少し明るく見えることは、心にとって大事な燃料です。

ただ、未来の映像だけを何度も眺めていると、脳内ではなぜか「もう少し進んだ気」になってしまうことがあります。まだ履歴書を開いてもいないのに、心だけが内定祝いのケーキを切りはじめる。未来の自分は優秀なのに、現在の自分はパジャマのまま。ここに、夢と行動のすれ違いが生まれます。

反対に、現実の大変さだけを見るとどうでしょう。

「求人を探すのが面倒だ」
「経験が足りない」
「失敗したら恥ずかしい」
「そもそも平日は疲れている」

はい、急に人生が曇ります。現実を見ることは必要ですが、壁だけを数えていると、人はその壁の前で正座してしまいます。慎重さは大切ですが、慎重さが育ちすぎると、心のなかに“出発見合わせ課”が設置されます。

そこで役に立つのが、未来と現実を一緒に見るという発想です。

「転職できたら、生活に少し余裕が生まれそうだ」
その一方で、
「でも、平日は求人を見る気力が残らない」

ここまで見えたら、次に考えることは精神論ではありません。
「じゃあ、日曜日の午前中に二十分だけ求人を見る」
「求人サイトを一つだけ登録する」
「履歴書の下書きを、まず名前から始める」

願いが、急に小さな行動へ変わります。

ここが、この研究から受け取れる大事なところです。人生を変えるのは、壮大な決意そのものではありません。決意が現実と出会い、「では、今日は何をする?」という問いに変わった瞬間です。

願いは、遠くにある灯台のようなものです。行き先を照らしてくれます。けれど、灯台を見つめているだけでは港から出られません。船を出すには、風向きを見る必要がある。荷物も積む必要がある。途中で波が高くなることもある。未来への希望と、いまの障害を同じ画面に映すことは、まさにその準備です。

そしてもう一つ、忘れたくないことがあります。

「壁が見つかった」というのは、失敗ではありません。むしろ、行動を始めるための地図が手に入ったということです。

たとえば、「勉強が続かない」という壁が見えたなら、意志が弱いと決めつけなくていいのです。帰宅後は疲れすぎるのかもしれない。教材が難しすぎるのかもしれない。一人だと始めにくいのかもしれない。壁の正体が見えれば、対策も考えられます。

「朝に十分だけやる」
「最初のページだけ開く」
「誰かに今週やることを宣言する」
「できなかった日も、翌日に再開する」

こうして願いは、根性論から救出されます。大きな目標を掲げた自分を責めるのではなく、動けない理由を観察し、次にできることを小さく置く。これは、自分を甘やかすことではありません。自分を動かすために、現実に合った設計図を描くことです。

カロリーネ・シュネッターたちの研究は、「前向きに考えましょう」とだけ言う研究ではありません。むしろ、もっと実用的で、少し人間くさい話です。

未来は見よう。
でも、現在の困りごとも見よう。
そして、その二つの間に、今日できる一歩を置こう。

願いごとは、心のなかで大切に抱えるだけでも美しいものです。けれど、ときには靴を履かせて、玄関まで連れていく必要があります。

「いつか変わりたい」を、
「今夜、十分だけ始めてみる」へ。

その小さな翻訳こそが、願いを現実の味方に変えてくれるのです。

阿部牧歌(管理人)
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カロリーネ・シュネッター(Karoline Schnetter)の論文一覧

1.『未来への「ただの空想」を、逃げられない目標に変える方法――目標設定を自分で動かす心理学』ガブリエレ・エッティンゲン、ヒョンジュ・パク、カロリーネ・シュネッター(2001)

Oettingen, G., Pak, H.-J., & Schnetter, K. (2001). Self-regulation of goal setting: Turning free fantasies about the future into binding goals. Journal of Personality and Social Psychology, 80(5), 736–753.
DOI:10.1037/0022-3514.80.5.736

「いつか資格を取る」「そのうち生活を変える」。その“いつか”は、だいたい予定表を持っていません。この論文は、明るい未来を夢見るだけでも、目の前の苦労だけを見るだけでも、人はなかなか本気で動き出せないことを示します。では、どうするのか。叶えたい未来を思い浮かべたあと、今それを邪魔している現実をまっすぐ見るのです。すると「転職したい」は「今夜、求人を一件見る」へ変わる。夢を壊す研究ではありません。夢に靴を履かせ、玄関の外まで連れ出す研究です。空想が行動に化ける、その瞬間をぜひ読んでみてください。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ
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