ジュリー・ヴェレット(Julie Verette)の論文一覧:恋人のムッとした一言に、どう返す?関係を壊す火花を“思いやり”に変える、親密関係の心理学さんぽ

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ジュリー・ヴェレット(Julie Verette)のプロフィール

ジュリー・ヴェレット、現在の表記では ジュリー・ヴェレット=リンデンバウム(Julie Verette-Lindenbaum) として確認できる研究者です。ざっくり言うと、「恋人や夫婦は、相手にムカッとした瞬間、どうすれば関係を壊さずに済むのか?」という、日常の台所から心理学の研究室まで一直線につながるテーマを扱ってきた人です。

所属情報としては、ラッセル・セージ・カレッジの心理学分野に所属する研究者として確認できます。ORCIDにも Russell Sage College の心理学分野での所属が掲載されています。ResearchGateでは、Sage Colleges の心理学系研究者として紹介され、論文や共同研究の情報も確認できます。

彼女の名前が心理学の論文でよく出てくるのは、キャリル・E・ラスバルトらとの共同研究です。とくに有名なのが、1991年の 「親密な関係におけるアコモデーション過程」 の研究です。ここでいう「アコモデーション」は、ホテルの宿泊施設ではありません。恋人やパートナーがちょっとイヤなことをしたときに、「売り言葉に買い言葉」で火炎放射器を取り出すのではなく、いったん破壊的な反応をこらえて、関係を守る方向に返す力のことです。論文では、相手のよくない行動に対して、破壊的に反応するか、建設的に反応するかを研究しています。

つまり、ヴェレットさんの研究テーマはかなり人間くさいです。「愛しているなら我慢しなさい」という根性論ではなく、「人はどんな条件だと、ムッとしても関係を壊さない返し方ができるのか」を、心理学の道具で調べている感じです。恋愛版の火災報知器研究、と言ってもいいかもしれません。煙が出た瞬間に家ごと燃やすのではなく、「ここで一呼吸できる人間のしくみ」を見ているわけです。

また、1996年にはラスバルト、ナンシー・ヨヴェティッチとともに、親密な関係におけるアコモデーションを相互依存理論の視点から論じた章にも関わっています。相互依存理論とは、ものすごく簡単に言えば、「人間関係は、ひとりの気分だけで動くものではなく、お互いの満足感、依存、投資、選択肢などがからみ合って動く」という考え方です。恋愛や夫婦関係を、感情の花火大会だけでなく、かなり精密なからくり時計として見る研究ですね。

さらに、近年の情報では、国際関係研究学会の教育委員会でのリーダーシップにより、2024年の学会で功労賞を受けたことも報じられています。つまり、研究だけでなく、「人間関係の科学をどう教えるか」という教育面にも関わっている研究者だと見てよさそうです。

参考文献・確認先: ORCID:Julie Verette-Lindenbaum プロフィール / Wiley Online Library:Teaching relationship science 掲載情報 / Duke Scholars:Accommodation Processes in Close Relationships 論文情報 / Northwestern University:論文PDF / Google Scholar:Julie Verette-Lindenbaum 関連論文

阿部牧歌(管理人)
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ジュリー・ヴェレット(Julie Verette)の研究から学べること

ジュリー・ヴェレット(Julie Verette)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「親しい人間関係では、ムッとした瞬間の“返し方”が、関係の未来をかなり左右する」ということです。

ヴェレットさんは、キャリル・E・ラスバルトさん、グレゴリー・A・ホイットニーさんたちとともに、親しい関係における「受け止め行動」を研究した人物として知られています。ここでいう受け止め行動とは、相手がちょっと嫌なこと、傷つくこと、関係を壊しそうなことをしたときに、こちらが破壊的に返す衝動を抑え、できるだけ関係を壊さない方向で反応することです。1991年の論文では、この受け止め行動について理論と6つの研究が報告されています。

これ、日常に置き換えると、ものすごく身近です。

たとえば、相手から少し冷たい言い方をされたとします。

「え、なにその言い方?」

心の中では、すぐに小さな火山が噴火します。頭の中の住民たちが「言い返せ!」「負けるな!」「こちらも冷凍ビームを撃て!」と騒ぎ出します。もう脳内は非常ベルです。ヘルメットをかぶった怒り係が走り回っています。

でも、ここでそのまま言い返すと、会話は一気にトゲトゲ道へ入ります。相手がトゲを投げた。こちらもトゲを投げ返した。すると、そこにはハリネズミの交流会ができます。見た目は少し可愛いかもしれませんが、実際はまあまあ痛いです。

ヴェレットさんたちの研究が教えてくれるのは、この「言い返したい瞬間」にこそ、関係の分かれ道があるということです。

親しい人間関係では、相手がいつも完璧に優しいわけではありません。疲れている日もあります。言い方が雑になる日もあります。約束を忘れる日もあります。こちらの気持ちに気づいてくれない日もあります。人間関係とは、たまに靴下の片方が消える洗濯機みたいなものです。なぜか、きれいにそろわないことがあります。

そのとき、こちらの反応にはいくつかの道があります。

ひとつは、攻撃することです。「なんでそんなこと言うの」「あなたっていつもそう」と、相手に言葉の石を投げる道です。これはすっきりすることもありますが、関係には傷が残りやすいです。

もうひとつは、黙って距離を取ることです。「もう知らない」と心のシャッターを下ろす道です。表面上は平和に見えます。でも、心の奥では不満が冷凍保存されます。しかもこの冷凍食品、自然解凍するとだいたい怒りの味が濃くなっています。

そしてもうひとつが、関係を壊さない形で伝える道です。

「今の言い方は少しつらかった」
「責めたいわけではないけど、そこは気になった」
「少し落ち着いて話したい」

これが、ヴェレットさんたちの研究でいう受け止め行動に近い方向です。怒りをなかったことにするのではありません。怒りに、ちゃんと服を着せてから外に出す感じです。裸の怒りは危険です。街を走らせてはいけません。言葉という上着を着せて、「では落ち着いて話しましょう」と送り出すのです。

ここで誤解してはいけないのは、「何でも我慢しましょう」という話ではないことです。

受け止め行動は、サンドバッグになることではありません。相手に失礼なことをされても、いつもニコニコして「大丈夫です」と飲み込むことでもありません。そんなことを続けていたら、心の中に未処理フォルダが山積みになります。「怒り・最終版」「怒り・本当に最終版」「怒り・提出用」みたいなファイルが増えていきます。これは危険です。

大切なのは、相手を攻撃せず、自分の気持ちも消さないことです。つまり、「関係を守る」と「自分を守る」の両方を大事にする反応です。

ヴェレットさんたちの研究では、相手が問題のある行動をしたときに、すぐ破壊的に反応するのではなく、建設的に反応する意志が重要だと整理されています。また、関係への関心や相互依存が弱いと、この受け止め行動は低くなりやすいことも示されています。

これはつまり、「この関係を大事にしたい」と思っているほど、人は一瞬の怒りだけで動かず、少し踏みとどまれる可能性があるということです。

もちろん、踏みとどまるのは簡単ではありません。相手から嫌なことを言われた瞬間、心の中の反射神経はものすごく速いです。怒りは短距離走が得意です。スタートのピストルが鳴ったら、もうゴール付近にいます。一方、冷静さは少し遅れて靴ひもを結んでいます。

だからこそ、日常でできる工夫は、「すぐ返さないこと」です。

たとえば、相手の言葉にムッとしたら、心の中で一拍置く。「今、自分は怒っているな」と気づく。できれば深呼吸する。すぐに結論を出さない。すぐに皮肉を返さない。すぐに長文メッセージを送らない。

特にメッセージは危険です。怒りながら打つ文章は、だいたい包丁の切れ味になります。しかも送信ボタンは、思ったより軽い。親指ひとつで人間関係にミサイルが飛びます。怖いですね。スマホは便利ですが、怒りの瞬間には小さな発射台にもなります。

そんなときは、いったん下書きにする。送らない。お茶を飲む。歩く。寝る。翌朝見て、それでも必要なら整えて送る。これだけで、人間関係の事故はかなり減ります。怒りの文章は、一晩寝かせると発酵することもありますが、だいたい角が取れます。

また、ヴェレットさんの研究から学べるのは、「関係をよくする反応は、派手な愛情表現だけではない」ということです。

高価なプレゼント。記念日のサプライズ。長い愛の言葉。もちろん、それも素敵です。でも、関係を本当に支えているのは、日々の小さな反応だったりします。

相手が疲れているときに、雑な言い方をされても、すぐ爆発しない。
相手の失敗に対して、人格攻撃ではなく具体的な話をする。
不満をため込みすぎず、落ち着いたタイミングで伝える。
「勝つこと」より「関係を壊さずに伝えること」を選ぶ。

こういう地味な反応が、関係の柱になります。見た目は地味です。でも、柱はだいたい地味です。金ぴかの柱ばかりだと家は落ち着きません。大事なのは、ちゃんと支えていることです。

職場でも、この考え方は役立ちます。

同僚や上司、部下の言い方にムッとしたとき、すぐに言い返すと関係がこじれます。かといって、全部飲み込むと自分がしんどくなります。そこで、「今の点について確認したいです」「私はこう受け取りました」「次からこうしてもらえると助かります」と、具体的に伝える。これは、感情を抑え込むのではなく、感情を仕事ができる形に整えることです。怒りにスーツを着せて会議室に入れる感じです。

恋人や夫婦、友人関係でも同じです。

「なんでわかってくれないの!」と言う前に、「わかってほしかったことは何か」を自分で整理する。
「もういい」と突き放す前に、「本当は何を伝えたいのか」を考える。
「いつもそう」と言う前に、「今回のどの行動がつらかったのか」に絞る。

これだけで、言葉の破壊力はかなり下がります。言葉は包丁にもなりますが、ちゃんと使えば料理道具にもなります。相手を切るためではなく、問題を切り分けるために使う。ここが大事です。

ジュリー・ヴェレットの研究からたどりつく学びは、とても実用的です。

親しい関係では、相手に不満を感じること自体は避けられません。問題は、不満が出たときにどう返すかです。攻撃するのか、黙って腐らせるのか、それとも関係を守りながら伝えるのか。その小さな選択が、関係の未来を少しずつ変えていきます。

人間関係は、ガラス細工ではありません。少しぶつかっただけで必ず壊れるわけではありません。でも、毎回雑に扱えば、ひびは入ります。だからこそ、ムッとした瞬間に一呼吸置く。怒りをそのまま投げず、言葉に整える。自分の気持ちも相手との関係も、両方を大切にする。

これは簡単ではありません。でも、かなり価値のある技術です。

怒りを消す必要はありません。
不満をなかったことにする必要もありません。
ただ、そのまま投げつける前に、「この関係をどうしたいのか」と一度だけ考えてみる。

その一呼吸が、人間関係のクッションになります。ヴェレットさんの研究は、私たちに教えてくれます。親しい関係を長く続ける力とは、いつも仲良くする力ではない。嫌なことがあったときに、壊さず向き合う力なのだと。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジュリー・ヴェレット(Julie Verette)の論文一覧

1.『親密な関係における「歩み寄り」の心理過程-傷つけ合わずに関係を守るための理論と初期実証研究』キャリル・E・ラスバルト、ジュリー・ヴェレット、グレゴリー・A・ホイットニー、リンダ・F・スロヴィック、アイザック・リプカス(1991)

Rusbult, C. E., Verette, J., Whitney, G. A., Slovik, L. F., & Lipkus, I. (1991). Accommodation Processes in Close Relationships: Theory and Preliminary Empirical Evidence. Journal of Personality and Social Psychology, 60(1), 53–78. DOI: 10.1037/0022-3514.60.1.53

この論文は、恋人や夫婦のケンカでよく起きる「売り言葉に買い言葉」を、心理学のメスでちょきちょき解剖した研究です。相手が冷たい態度をとったとき、こちらもムッとして反撃するのか、それともグッとこらえて建設的に返すのか。研究では、この“こらえる力”は愛の根性論ではなく、満足感・コミットメント・相手の立場に立つ力などと関係していると示されました。つまり、長続きする関係とは、毎回ドラマの最終回みたいに怒鳴り合わないための、心のブレーキ研究なのです。恋愛の安全運転講習、意外と読ませます。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】なぜ親しい人ほど傷つけ合ってしまうのか? 関係を守る「歩み寄り」の心理学
【論文要約】なぜ親しい人ほど傷つけ合ってしまうのか? 関係を守る「歩み寄り」の心理学
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