ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)の論文一覧:心のざわざわに座布団を敷く、マインドフルネス研究さんぽ

ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)の論文を読む女性
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ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)のプロフィール

ジョン・カバットジンは、ひとことで言うと、「瞑想を白衣の世界に連れてきた人」です。お坊さんの世界にあった“今ここに気づく練習”を、病院や大学や研究の世界に「ちょっと失礼します」と連れてきて、ストレスや不安、慢性痛などに向き合う方法として広めた人物です。

正式には、アメリカの医学系大学であるマサチューセッツ大学医学部の名誉教授です。1979年に、同大学で「マインドフルネス・ストレス低減法」というプログラムを始めました。英語ではよく MBSR と略されますが、日本語で言えば「呼吸や瞑想を使って、ストレスとの付き合い方を学ぶ方法」という感じです。心の中に散らかった書類を、無理やり捨てるのではなく、「これは不安の書類ですね」「これは怒りのメモですね」と、そっと机の上に並べ直すような取り組みです。

彼のすごいところは、瞑想を「ふわっとした癒やし」だけで終わらせなかった点です。昔ながらの瞑想や仏教的な気づきの考え方を、医療・健康・科学の場に合う形へ翻訳しました。つまり、線香の煙だけで勝負するのではなく、研究論文という名のヘルメットをかぶせたわけです。公式プロフィールでも、彼は古くからの瞑想実践を、医療・ヘルスケア・科学などの主流の場に持ち込んだ人物として紹介されています。

もともと彼は科学者で、博士号を持つ研究者です。だから「心を静かにしましょう。以上!」ではなく、「では、それを医療の現場でどう使えるのか」「患者さんの苦痛や不安にどう役立つのか」という方向へ進めました。ここがカバットジンさんの“ただ者じゃない感”です。瞑想界の翻訳こんにゃくというか、東洋の知恵を西洋医学の言葉に変換した人と言ってもよいかもしれません。

彼が広めたマインドフルネスの考え方は、ざっくり言うと、「今この瞬間に、評価しすぎず、ていねいに気づくこと」です。たとえば、嫌な気持ちが出てきたときに、「こんな気持ちになる自分はダメだ」とすぐ裁判長モードに入るのではなく、「今、自分の中に嫌な気持ちがあるな」と気づく。心の中の天気予報を読むようなものです。「本日の心は、朝から不安雲多め。昼すぎにイライラ前線が通過するでしょう」くらいの距離感で眺めるのです。

ただし、カバットジンの考え方は、「瞑想すればすべて解決!」という魔法のつえではありません。むしろ、しんどさを消すというより、しんどさに飲み込まれない練習に近いです。波を止めるのではなく、波にさらわれにくい立ち方を覚える。ここがとても現実的で、人間くさいところです。

また、彼は多くの本も書いています。代表的なものには、マインドフルネスやストレス対処についての一般向けの著作があります。難しい研究だけでなく、日常生活の中で「今ここ」に戻る方法を、多くの人に伝えてきました。医療者、心理職、教育関係者、企業人、そして日々のストレスに「うわ、また心の鍋が吹きこぼれた」と感じている普通の人たちにも影響を与えています。

まとめると、ジョン・カバットジンは、瞑想を怪しいものではなく、医療や心理支援の中で使える実践として広めた先駆者です。彼の仕事は、心を無理やりポジティブに塗り替えるものではありません。むしろ、「不安も怒りも悲しみも、まずはそこにあると認めてみよう」という、静かだけれど芯のある姿勢です。

つまりカバットジンさんは、心の中で暴れるストレス怪獣に向かって、「まあまあ、まず座りなさい。お茶でも飲みながら、呼吸を見てみましょう」と言った人です。瞑想の世界と医療の世界をつなぎ、現代人のざわざわした心に、そっと座布団を敷いた人物だと言えます。

参考文献・確認先:Jon Kabat-Zinn 公式プロフィール / Google Scholar:Jon Kabat-Zinn 論文・引用情報 / PubMed:Jon Kabat-Zinn 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)の研究から学べること

ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「苦しみをすぐ消せなくても、苦しみとの向き合い方は変えられる」ということです。

カバットジンさんは、マインドフルネスを医療や健康支援の現場に広げた中心人物です。1979年にマサチューセッツ大学メディカルセンターで、マインドフルネスストレス低減法を開発しました。これは、瞑想、身体への気づき、ヨガなどを組み合わせたプログラムで、もともとは慢性的な痛みやストレスを抱える人たちのために作られました。現在では、医療、教育、職場など、さまざまな場面に広がっています。

ここで大事なのは、「マインドフルネスをすれば、悩みが全部消えます!」という話ではないことです。そんな便利な心の洗濯機があれば、世界中の人が毎朝5分で真っ白ふわふわの精神状態になっています。現実の心は、もう少し生活感があります。昨日言われた一言、明日の予定、将来の不安、なんとなく胸に残るモヤモヤ、冷蔵庫の奥で忘れられた漬物みたいな記憶。いろいろ入っています。

カバットジンさんの研究と実践が教えてくれるのは、そのモヤモヤを力ずくで追い出すのではなく、「今、自分の中で何が起きているのか」に気づくことの大切さです。怒りがある。不安がある。体がこわばっている。呼吸が浅い。頭の中で同じ考えがぐるぐる回っている。まず、それに気づく。これが出発点です。

たとえば、不安なとき、人の心は未来へ飛びます。

「失敗したらどうしよう」
「変に思われたらどうしよう」
「また調子が悪くなったらどうしよう」
「この先ずっとこうだったらどうしよう」

もう、心の中の映画監督が勝手に不安映画を制作しはじめます。しかも毎回、上映時間が長い。予告編だけで疲れます。そこでマインドフルネスは、「いま、その映画を見ている自分に気づきましょう」と教えてくれます。

不安をゼロにするのではありません。
不安に飲み込まれすぎないようにするのです。

これは、川の流れに似ています。不安や痛みやストレスは、川の水のように流れてきます。強い日もあります。冷たい日もあります。そこで「川を止めるぞ!」と全力で立ちはだかると、だいたい流されます。自然相手に腕まくりしても、なかなか勝てません。けれど、「あ、いま流れが強いな」と気づき、足場を探すことはできます。呼吸、身体の感覚、今この瞬間。それが足場になります。

カバットジンさんの初期の研究では、慢性的な痛みを持つ患者に、瞑想を中心としたプログラムを行いました。そこでは、痛みそのものを完全になくすというより、痛みに対する注意の向け方や反応を変えることで、苦しみの感じ方が変わる可能性が示されています。痛みの感覚と、それに対する不安や評価の反応を少し切り離すことが重要だと説明されています。

これはとても大切です。痛みやストレスには、二階建て構造があることがあります。

一階には、実際の痛みや出来事があります。
二階には、「こんな痛みがある自分はダメだ」「このまま悪くなるのでは」「もう終わりだ」という考えや不安があります。

つらいのは一階だけではなく、二階が増築されすぎることです。しかも心の大工さん、なぜか増築だけは仕事が早い。「痛い」に「不安」「怒り」「自己批判」「未来の最悪予想」まで建て増しします。気づけば、心の中に巨大な不安マンションが完成しています。

マインドフルネスは、この二階建てを少し見分ける練習です。

「痛みがある」
「そして、痛みに対して不安になっている」
「その不安を見て、さらに自分を責めている」

こうやって分けて見られると、少しだけ余白ができます。余白ができると、すぐ反応する代わりに、「今できることは何か」と考えられるようになります。痛みや不安が消えなくても、それに振り回される度合いが少し変わるのです。

この「余白」が、カバットジンさんの研究から学べる大きな宝物です。

日常でも、私たちはよく自動反応しています。嫌なことを言われたら、すぐ言い返す。返信が遅いと、すぐ「嫌われた」と思う。失敗すると、すぐ「自分はダメだ」と結論を出す。心が自動販売機みたいに、ボタンを押されたら決まった缶が出てくる状態です。怒りボタンなら皮肉缶。不安ボタンなら最悪予想ソーダ。自己批判ボタンなら「自分なんて」コーヒー。苦いです。

マインドフルネスは、この自動販売機の前で一度立ち止まる練習です。

「あ、今怒りが出ている」
「あ、今不安が強くなっている」
「あ、今また自分を責めようとしている」

そう気づくだけで、次の反応を少し選びやすくなります。気づきは、心の一時停止ボタンです。動画を止めるように、人生を完全停止できるわけではありません。でも、一瞬止まるだけで、次に何を言うか、どう動くかが変わることがあります。

もちろん、マインドフルネスは簡単ではありません。座って目を閉じた瞬間、心はだいたい旅に出ます。

「今日の夕飯どうしよう」
「あのメール返したっけ」
「昔の恥ずかしい記憶、なぜ今?」
「明日の予定、やばくない?」

脳内商店街が開店します。八百屋も魚屋も不安屋も、みんな大声です。でも、それで失敗ではありません。マインドフルネスは「何も考えない技術」ではなく、「考えていることに気づいて、また戻る練習」です。

呼吸に戻る。
身体に戻る。
今ここに戻る。

何度それても、何度戻ってもいい。むしろ、戻る練習そのものがマインドフルネスです。心が迷子になったら、「はいはい、未来売り場まで行っていましたね。こちらが現在です」と、やさしく連れ戻す。心の迷子センターです。

カバットジンさんの考え方でとても人間的なのは、「今この瞬間を大切にする」という点です。カバットジンさん自身の公式サイトでも、マインドフルネスは人生やこの瞬間と関わり、自分自身と友好的な関係を育てる招きとして紹介されています。

これは、「過去を忘れましょう」「未来を考えるな」という意味ではありません。過去から学ぶことも、未来に備えることも大切です。でも、私たちが実際に生きられるのは、いつも今だけです。過去の後悔会議に長時間出席しても、未来の不安映画を何本上映しても、身体は今にいます。呼吸も今、足の裏も今、目の前のお茶も今です。

心が過去や未来に行きっぱなしになると、今が留守になります。家にいるのに、心だけ出張中。これでは疲れます。マインドフルネスは、心に「そろそろ帰っておいで」と声をかける練習です。

日常に活かすなら、難しいことをしなくても大丈夫です。いきなり一時間座る必要はありません。人生、急に禅寺へ転職しなくていいのです。

朝、起きたときに三回だけ呼吸を感じる。
お茶を飲むとき、最初の一口だけ温かさを味わう。
歩くとき、足の裏が床に触れる感覚に気づく。
イラッとしたとき、「怒りが来ている」と心の中で言う。
寝る前に、今日一日働いた身体に「おつかれさま」と声をかける。

これだけでも、心の流れは少し変わります。大事なのは、完璧にやろうとしないことです。マインドフルネスを完璧にやろうとすると、今度は「うまく気づけない自分はダメだ」という新しい自己批判が生まれます。せっかく心を整えようとしているのに、心の中に検定試験を作ってしまう。これは本末転倒です。

マインドフルネスは競技ではありません。
気づきの点数を競うものでもありません。
ただ、今の自分に戻る練習です。

ジョン・カバットジンの研究からたどりつく学びは、とても静かで、でも力強いものです。

苦しみは、すぐ消せないことがあります。
痛みも、不安も、ストレスも、人生から完全に追い出すことはできません。
けれど、それらとどう関わるかは、少しずつ変えられます。

痛みがあるとき、「痛みしかない」と思うのではなく、「痛みがある。そして呼吸もある」と気づく。
不安があるとき、「もう終わりだ」と飲み込まれるのではなく、「不安が来ている」と気づく。
怒りがあるとき、すぐ言葉の石を投げるのではなく、「怒りがある。どう伝えようか」と一呼吸置く。

この小さな気づきが、人生の中にすき間を作ります。そのすき間で、人は少し自由になります。

カバットジンさんの研究は、私たちに教えてくれます。心を整えるとは、心を力で支配することではない。心の動きを見つめ、身体に戻り、今この瞬間にそっと根を下ろすことなのだと。

人生には、ざわざわする日があります。心の中でアヒルの大群が池に着水するような日もあります。波が立ちます。水面が騒がしいです。でも、波があることに気づけたら、そこから少し戻れます。

呼吸に戻る。
身体に戻る。
今ここに戻る。

その小さな帰り道を何度も歩くことが、心の回復力を育てていくのだと思います。ジョン・カバットジンの研究は、その帰り道に、そっと灯りを置いてくれる研究なのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)の論文一覧

1.『不安障害の治療における、瞑想にもとづくストレス低減プログラムの効果』ジョン・カバットジン、アン・O・マシオン、ジーン・クリステラー、リンダ・ゲイ・ピーターソン、ケネス・E・フレッチャー、ロリ・プバート、ウィリアム・R・レンダーキング、サキ・F・サントレリ(1992)

Kabat-Zinn, J., Massion, A. O., Kristeller, J., Peterson, L. G., Fletcher, K. E., Pbert, L., Lenderking, W. R., & Santorelli, S. F. (1992). Effectiveness of a meditation-based stress reduction program in the treatment of anxiety disorders. American Journal of Psychiatry, 149(7), 936–943. DOI:10.1176/ajp.149.7.936

不安って、心の中で非常ベルが鳴りっぱなしになる感じがありますよね。この論文は、そんな不安障害の人たちに「ちょっと呼吸を見てみませんか」と瞑想ベースのストレス低減法を試した研究です。対象は全般性不安障害やパニック障害などの患者さん22名。結果、不安やパニック症状の軽減が見られ、その効果も維持されたとのこと。心の消防署に“呼吸班”を配属したような一報です。読んでみると、瞑想がただのリラックスではなく、医療の現場でどう働くのかが見えてきます。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】不安障害に瞑想は効くのか?ストレス低減プログラムの研究からわかった心の整え方
【論文要約】不安障害に瞑想は効くのか?ストレス低減プログラムの研究からわかった心の整え方
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