ジョン・M・ゴットマン(John M. Gottman)の論文一覧:夫婦ゲンカの火花から、愛の天気予報まで。結婚生活の“荒れ模様”を読み解く心理学の名探偵ノート
ジョン・M・ゴットマン(John M. Gottman)のプロフィール
ジョン・M・ゴットマンは、アメリカの心理学者で、ひとことで言うなら「夫婦関係を研究室に持ち込んだ、愛の観察名人」です。恋愛や結婚という、ふつうは「気持ちの問題でしょ?」と思われがちな世界を、会話、表情、心拍数、態度の変化などからコツコツ調べ、「うまくいく夫婦」と「関係がこじれやすい夫婦」の違いを研究してきました。ワシントン大学の心理学名誉教授でもあり、結婚の安定性や離婚予測の研究で世界的に知られています。
ゴットマンのすごいところは、夫婦ゲンカを「ただの言い合い」で終わらせなかったところです。普通なら「またケンカしてるわ」で済ませそうな場面を、彼はじっと見つめました。まるで、台所で鳴り出した小さな警報音を聞き逃さない整備士さんです。「批判」「侮辱」「自己防衛」「無視・だんまり」といった、関係をじわじわ傷つけるやり取りに注目し、これらが結婚生活の未来に大きく関わることを示しました。とくに「侮辱」は、愛の畑にまかれる除草剤みたいなもので、放っておくと関係の芽まで弱らせてしまう、というわけです。
また、ゴットマンといえば「ラブ・ラボ」と呼ばれる研究でも有名です。これは、夫婦の会話や反応を観察する研究の場で、いわば「愛の人間ドック」。夫婦がどんなふうに話し、どんなところで笑い、どんなところでムッとし、どんなふうに仲直りしようとするのかを細かく見ていきました。血圧を見るように、会話の温度を測る。レントゲンを撮るように、関係のクセを映し出す。なかなかすごい発想です。
彼の研究でよく知られている考え方の一つに、「うまくいく夫婦は、悪い出来事をゼロにしているわけではない」というものがあります。大切なのは、嫌な言葉や衝突があったあとに、それを上回る温かいやり取り、笑い、感謝、歩み寄りがあるかどうか。つまり、夫婦関係は「ケンカをしない大会」ではなく、「ケンカのあとに橋をかけ直せるか選手権」なのです。怒ること自体よりも、その怒りに軽蔑や防衛、切り捨てが混ざるかどうかが問題になるのですね。
妻のジュリー・シュワルツ・ゴットマンも心理学者で、ふたりはゴットマン研究所を共同で設立しました。ここでは、長年の研究をもとに、カップルや夫婦がよりよい関係を築くための方法を広めています。研究室で見つけた知見を、本や講座、カウンセリングの方法にして、暮らしの中へ届けているわけです。恋愛の地図を、研究者がせっせと折りたたんで、一般の人にも持ち歩けるサイズにしてくれた感じですね。
ゴットマンの魅力は、愛をロマンだけで語らず、かといって冷たい数字だけにも閉じ込めなかったところにあります。「夫婦関係には法則がある。でも、人は変われる」という希望を残しているのです。彼の研究を読むと、結婚生活とは、運命の赤い糸だけでなく、日々の言葉づかい、表情、聞き方、謝り方で編み直されていく布なのだとわかります。ちょっとした「ありがとう」や「ごめんね」が、関係という家の小さなネジを締め直している。ゴットマンは、そのネジの場所を教えてくれる、愛の修理工であり、夫婦心理学の名探偵のような存在です。
参考文献・確認先:ゴットマン研究所:ジョン・M・ゴットマン公式プロフィール / Google Scholar:John M. Gottman 論文・引用情報 / PubMed:John M. Gottman 関連論文

1.『夫婦関係の崩壊を予測するプロセス – 行動・生理反応・健康から見た結婚のゆくえ』ジョン・M・ゴットマン、ロバート・W・レヴェンソン(1992)
Gottman, J. M., & Levenson, R. W. (1992). Marital processes predictive of later dissolution: Behavior, physiology, and health. Journal of Personality and Social Psychology, 63(2), 221–233. DOI: 10.1037/0022-3514.63.2.221
夫婦ゲンカって、ただの「言った・言わない戦争」だと思っていませんか?この論文は、夫婦の会話だけでなく、心拍や体の反応まで見ながら「この関係、あとでどうなる?」を探った研究です。ゴットマンたちは、表情、言葉、沈黙、体の緊張などを手がかりに、結婚生活の未来をじっと観察しました。まるで夫婦関係の天気予報士です。小さなため息、冷たい一言、体のこわばりが、やがて嵐の前ぶれになることもある。愛は気合いではなく、日々のやり取りに宿るのだと教えてくれる一本です。

