ジェフリー・M・クイン(Jeffrey M. Quinn)の論文一覧:「またこれやってる…」の再放送から、習慣の正体を追いかけた心理学者

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ジェフリー・M・クイン(Jeffrey M. Quinn)のプロフィール

ジェフリー・M・クインは、「またやっちゃった……」を、ため息だけで終わらせなかった心理学者です。

私たちは毎日、びっくりするほど同じことを繰り返しています。朝、決まった順番で歯を磨く。休憩になると、なぜか同じ場所に座る。スマホを開いたつもりが、気づけば同じ動画を見ている。人生には、ときどき自由意志がハンドルを握っている顔をしながら、実は習慣が後部座席からナビをしている瞬間があります。

クインが共同で取り組んだ研究は、そんな「自分で決めたつもりの行動」の舞台裏をのぞきました。2002年の研究では、人が日常で行う行動のうち、およそ3分の1から半分ほどが、ほぼ毎日、ほぼ同じ場所で繰り返される習慣的な行動として扱われました。しかも習慣の最中、人は目の前の行動そのものより、別のことを考えがちだったのです。歯を磨きながら晩ごはんを考え、通勤しながら過去の会話を反省し、洗い物をしながら世界の平和まで心配する。手は働いているのに、心は遠足中。なんとも人間らしい話です。

この研究の面白さは、習慣を「意志が弱い人の悪いクセ」として片づけなかったところにあります。むしろ習慣は、毎回すべてを考え直さなくても生活を回すための省エネ装置です。朝起きてから顔を洗うべきか、靴下を左右どちらから履くべきか、毎日、脳内会議を開いていたら出勤前に夕方になってしまいます。習慣は、私たちの頭の中にいる無口な事務員のようなものです。目立たないけれど、今日も黙って業務を進めています。

クインは、習慣が「何をしたいか」という気持ちだけで動くのではなく、「どこで」「いつ」「何のあとに」といった場面と結びついて動きやすいことを重視しました。つまり、夜にソファへ座るとお菓子の袋を探してしまうのは、空腹だけが原因とは限りません。ソファ、テレビ、仕事終わり、ほっとした気分。そうした景色一式が、心のなかの「いつもの行動」ボタンを押しているのかもしれません。2006年の論文では、習慣を、過去に行動と一緒に経験した場面の手がかりによって自動的に呼び起こされる反応として説明しています。

そしてクインの研究は、悪い習慣を前にして「気合いで勝て!」とは言いません。そこが、実にありがたいところです。2010年の研究では、変えたい強い習慣に対しては、「やめよう」と自分の行動を注意深く見張ることが役立つ可能性が示されました。習慣は、心の奥にある古参の自動販売機のようなものです。ボタンを押した瞬間に出てくるので、商品が出てから後悔するより、ボタンへ伸びる手に先に気づくほうが現実的なのです。

クインの歩みをたどると、テキサスA&M大学でウェンディ・ウッドの指導を受け、日常の習慣に関する研究の一部を修士論文としてまとめていたことが確認できます。その後はデューク大学でも、ウッドらとともに、習慣と動機づけ、行動の繰り返し、変化の難しさを研究しました。習慣を「根性」ではなく、「人と環境が長い時間をかけて作った関係」として見つめた研究者だった、と言えるでしょう。

三日坊主になった日に、クインの研究は少し肩の力を抜かせてくれます。続かないのは、あなたの人格が壊滅的だからではありません。古い場面が、古い行動を呼び出しているだけかもしれない。だったら自分を責める前に、行動を起こす「いつもの場面」を見つけてみる。習慣を変える第一歩は、自分に説教をすることではなく、「あ、またこの景色で始まっているな」と気づくことなのです。

参考文献・確認先:米国心理学会:Jeffrey M. Quinn 共著「日常生活における習慣」掲載情報 / Google Scholar:Jeffrey M. Quinn 論文・引用情報 / PubMed:Jeffrey M. Quinn 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジェフリー・M・クイン(Jeffrey M. Quinn)の研究から学べること

「よし、今日から変わるぞ」と決意した翌朝、気づけばいつものようにスマホを見て、いつものように出発がギリギリになり、いつものように「明日こそ本気出す」と言っている。

人間、なかなか味わい深い生き物です。

ジェフリー・M・クインの研究から見えてくるのは、こうした出来事を、すぐに「意志が弱い」「だらしない」「私という人間は終わっている」と人格裁判にかけなくてよい、ということです。

私たちが繰り返している行動のかなりの部分は、毎日のように同じ場所、同じ時間、同じ流れのなかで起きています。クインらの研究では、参加者が記録した日常行動のうち、およそ3分の1から半分ほどが、「ほぼ毎日、だいたい同じ場面で行う習慣」として分類されました。つまり私たちは、思っている以上に“その場の自分”ではなく、“いつもの流れの自分”で暮らしているのです。

たとえば、夜にソファへ座ると、なぜかお菓子を探してしまう。仕事が終わると、反射で動画を開いてしまう。駅の近くを通ると、別にお腹がすいていないのにコンビニへ吸い込まれてしまう。

このとき、心のなかでは毎回、

「よし、お菓子を食べて人生を少しだけ甘くしよう」
「今こそ動画を見るべき時だ」

などと、壮大な会議が開かれているわけではありません。

景色が合図を出し、体が「はいはい、いつものですね」と動き出している。習慣とは、心のなかに住みついた古参の案内係のようなものです。頼んでいないのに、慣れた道だけはやたら詳しい。

だから、悪い習慣を変えるときに必要なのは、まず自分を説教することではありません。

「またやってしまった!」ではなく、

「私は、どんな場面でこれを始めやすいのだろう?」

と観察することです。

帰宅してすぐなのか。疲れているときなのか。ひとりになったときなのか。机に座った瞬間なのか。誰かに嫌なことを言われたあとか。

行動だけを見ると、「私はスマホを見すぎる」という話になります。けれど場面まで見ると、「仕事終わりに疲れを感じると、ソファに座ってスマホを開く」という、もっと具体的な物語が見えてきます。

ここまで来ると、敵の正体が少し見えてきます。

クインらの研究では、習慣として行っている最中、人はその行動そのものとは関係のないことを考えやすいことも示されました。歯を磨きながら将来を心配し、車を運転しながら昨日の会話を反省し、洗い物をしながら急に十年前の黒歴史を掘り返す。手はせっせと動いているのに、心は勝手に時間旅行へ出かけているわけです。

これは、習慣が悪者だという意味ではありません。

むしろ習慣は、頭の使う力を節約してくれる便利な仕組みでもあります。朝の支度を毎日ゼロから考えていたら、「靴下は右から履くか左から履くか」という会議だけで午前が終わります。歯磨き、通勤、片づけ、あいさつ、寝る前の準備。こうした小さな行動が習慣になっているからこそ、私たちは大事なことに頭を使えます。

だからクインの研究から学べる大きなポイントは、習慣をなくすのではなく、味方につけることです。

たとえば、「読書をしたい」と思うなら、気合いで毎晩一時間読むよりも、「歯を磨いたら、本を一ページ開く」と決める。
「運動したい」と思うなら、「元気な日に三十分走る」よりも、「帰宅したら靴下を脱ぐ前に、ストレッチを一回する」と決める。

立派な行動を急に始めるより、今ある生活の流れに、小さな新しい動きをくっつける。習慣は、人生を一気に改造するブルドーザーではありません。毎日の隅っこで静かに増える、小さなレールのようなものです。

そして、強い悪習慣に対しては、「気持ちを入れ替えよう」だけでは足りない場合があります。

クインらは、やめたい強い習慣を抑えるには、「やらないぞ」と注意を向け、うっかり始めそうな瞬間を見張ることが役立つと報告しました。大事なのは、行動が始まったあとに大反省会を開くことではありません。「あ、今ここで始まりそうだ」と、出発前に気づくことです。

夜の間食を減らしたいなら、空になったお菓子の袋を見て落ち込むより、ソファへ座る前に「今、食べ物を探しに行きたくなる時間だな」と気づく。
無意識のネット通販を減らしたいなら、注文確認メールを見て青ざめるより、商品をカートに入れた瞬間に「今日はここまで」と止まる。

習慣との勝負は、気合いの量を競う大会ではありません。自分の“いつもの入口”を見つける、探偵仕事に近いものです。

もうひとつ、クインの研究は、私たちに少しやさしい見方をくれます。

習慣的な行動は、必ずしも「その人の本音」や「人間性」をそのまま表すわけではありません。何度も繰り返すうちに、行動は半分自動運転になります。だから、ついスマホを見たからといって、「私は怠け者だ」と決めなくていい。つい余計なものを買ったからといって、「私はだめな人間だ」と判決を出さなくていい。

それはあなたのすべてではなく、ただの“よく使われている道”です。

道は、少しずつ舗装し直せます。

人生を変えるとは、毎朝まったく別人になることではありません。いつもの場面で、いつもと一ミリ違う行動を選ぶことです。その一ミリが繰り返されると、やがて心のなかの古参案内係も、「こちらの新しい道ですね」と案内先を変え始めます。

習慣は、あなたを閉じ込める檻ではありません。
毎日を支えるために、これまでのあなたが作ってきた道です。

だからこそ、責めるより観察する。
壊すより、少しずつ道を付け替える。

クインの研究は、その静かで現実的な変化の方法を教えてくれます。

阿部牧歌(管理人)
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ジェフリー・M・クイン(Jeffrey M. Quinn)の論文一覧

1.『習慣は今日も同じ舞台をくり返す』デイヴィッド・T・ニール、ウェンディ・ウッド、ジェフリー・M・クイン(2006)

Neal, D. T., Wood, W., & Quinn, J. M. (2006). Habits—A Repeat Performance. Current Directions in Psychological Science, 15(4), 198–202. DOI:10.1111/j.1467-8721.2006.00435.x

「またやっちゃった」の犯人は、意志の弱さではなく“いつもの景色”かもしれません。朝のコーヒー、帰宅後のソファ、通勤路のコンビニ。何度も同じ場面で同じ行動をくり返すうち、脳は「はい、恒例行事ですね」と自動運転を開始します。しかもその最中、手は歯ブラシを動かしながら、心は明日の心配へ遠足中。本論文は、習慣が目標ややる気だけではなく、場面の合図で動き出すしくみを解説します。三日坊主の正体を根性論から救い出してくれる、読めば自分への見方が少し変わる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人は同じ行動をくり返すのか?習慣を動かす「いつもの場面」の正体
【心理学論文】なぜ人は同じ行動をくり返すのか?習慣を動かす「いつもの場面」の正体
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