ヒョンジュ・パク(Hyeon-Ju Pak)の論文一覧:「いつかやる」の夢見がち会議に、現実という議題を持ち込んだ心理学者

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ヒョンジュ・パク(Hyeon-Ju Pak)のプロフィール

ヒョンジュ・パクは、「やりたいことはあるのに、なぜかソファから立ち上がれない」という人類の古典的な謎に、心理学の側から近づいてきた研究者です。

夢を見ることは楽しい。資格を取った自分、仕事がうまくいった自分、少し自信を取り戻した自分。頭の中では拍手も鳴り、紙吹雪も舞い、エンディング曲まで流れている。ところが、現実の自分はというと、提出期限を見て固まり、机の上の書類を見てお茶をいれ、気づけば動画を一本見ている。未来は華やかなのに、現在はなぜか静かな待合室。さて、この不思議な距離をどう縮めるのか。

パクが共同研究者たちと取り組んだのは、まさにこの「願い」と「行動」のあいだにある、見えない溝でした。

彼女が関わった代表的な研究では、ただ望ましい未来を思い描くだけでなく、「その未来を邪魔している、いまの現実」にも目を向けることが大切だと示されました。たとえば、「仕事で評価されたい」と願うなら、「でも私は、失敗が怖くて準備を先延ばしにしやすい」という現実も見つめてみる。ここで大事なのは、自分を責めるために障害を探すことではありません。

むしろ、「敵の正体が見えたので、作戦会議ができるようになった」という話です。

夢だけを見ていると、心はちょっと満足してしまいます。まだ何も始めていないのに、脳内では祝賀会が始まり、やる気が帰宅してしまうことさえある。反対に、現実の大変さだけを眺めていると、「無理かもしれない」が部屋の主役になってしまう。そこでパクたちが注目したのが、未来への願いと、現在の障害を並べて見つめるやり方でした。

すると人は、「これは本当にやりたいことだろうか」「できそうなら、何から始めようか」と考え始めます。うまくいく見込みがあると感じられれば、目標への気持ちは強くなります。一方で、どう考えても今は難しいとわかれば、無理に気合いで自分を引きずらず、いったん手放す判断もできる。これは敗北ではありません。心の燃料を、走れる道に回すための、かなり賢い方向転換です。

パクの研究の魅力は、「ポジティブに考えよう」で終わらないところにあります。希望は大事。でも、希望だけでは靴ひもは結べない。現実を見ることも大事。でも、現実だけでは朝から雨雲を抱えて歩くことになる。その両方を机の上に置き、「さて、この願いをどう扱おうか」と静かに考える。その姿勢に、彼女の研究の芯があります。

研究者としてのパクは、目標に向かう心の動き、感情、やる気を扱ってきました。その後は、前向きな心のあり方やマインドフルネス、ストレスとの付き合い方、瞑想やコーチングの実践にも活動を広げています。夢を描く力と、いまここに戻ってくる力。その二つを別々のものとしてではなく、人生を進める両輪として見ているようです。

「いつかやりたい」と思うことは、決して悪くありません。むしろ、それは未来から届いた小さな手紙です。ただし、手紙を読んで満足するだけでは、返事は届かない。ヒョンジュ・パクの研究は、未来への憧れに現在の現実をそっと重ね、「では、今日のあなたは何をしますか」と聞いてくるのです。

少し耳が痛い。でも、その問いは責めるためのものではありません。空想を地面に着地させ、ちゃんと歩き出せる形にするための、やさしくも実務的な問いなのです。

参考文献・確認先:Hyeonju Pak 公式プロフィール / Google Scholar:Hyeon-ju Pak 論文・引用情報 / PubMed:Hyeon-ju Pak 関連論文

阿部牧歌(管理人)
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ヒョンジュ・パク(Hyeon-Ju Pak)の研究から学べること

「こうなれたらいいな」と思うことは、人生にとって大切です。

収入が少し増えたらいいな。人前で堂々と話せるようになれたらいいな。部屋を片づけて、気持ちよく暮らしたいな。転職したいな。勉強を始めたいな。健康になりたいな。

人は未来を思い描くとき、なかなか素敵です。頭の中では、資格を取った自分が笑い、仕事がうまくいった自分が拍手され、片づいた部屋では朝日がきらきら差し込んでいます。未来の自分、だいたい照明がいいんですよね。現実の自分は、洗濯物の山の前で「明日から本気出す」とつぶやいているのに。

ヒョンジュ・パクたちの研究から学べるのは、そんな私たちにとって少し耳の痛い、でもかなり役に立つことです。

それは、「願いごとだけを眺めていても、目標は動き出しにくい」ということです。

夢を見ること自体が悪いわけではありません。むしろ、未来を想像できるからこそ、人は前に進めます。ただ、未来の完成図だけを何度も思い浮かべていると、心が少しだけ満足してしまうことがあります。

まだ走ってもいないのに、脳内ではゴールテープを切っている。

まだ申し込みもしていないのに、資格を取ったあとの名刺を眺めている。

まだ一文字も書いていないのに、本が売れてインタビューを受けている。

人間の心には、ときどき「予告編だけで満腹になる映画館」があります。予告編は最高だったのに、本編の机には座らない。そんなことが起きるわけです。

そこで大切になるのが、「望む未来」と「いま目の前にある障害」を並べて考えることです。

たとえば、「毎朝、少し早く起きて勉強する」という願いがあるとします。未来だけを見るなら、「朝活を続ける自分、すごい。知的。コーヒーもおしゃれ」となります。しかし、現実も一緒に見るなら、「夜ふかしをしてしまう」「寝る前にスマホを見てしまう」「朝は布団が強すぎる」といった問題が姿を現します。

ここで重要なのは、障害を見つけて自分を責めることではありません。

「私はだめだ」ではなく、「あ、ここにボスキャラがいたのか」と気づくことです。

敵の正体がわからないまま戦うのは、暗い部屋で掃除機をかけるようなものです。ぶつかるし、踏むし、だいたいコードが絡まります。でも障害が見えれば、対策を立てられます。

夜ふかしが問題なら、寝る一時間前にスマホを別の部屋へ置く。朝に机へ座れないなら、前日のうちにノートを開いておく。勉強の量が重すぎるなら、「毎日一時間」ではなく「毎日五分」にする。

願いが、ようやく手足を持ちはじめます。

パクたちの研究が面白いのは、「夢を追え」とも、「現実を見ろ」とも、片方だけを言わないところです。未来だけを見てもふわふわしやすい。現実だけを見ても、気持ちはしぼみやすい。

だからこそ、未来と現実を同じテーブルに座らせる。

「私はこうなりたい」
「そのためには、いま何が邪魔をしている?」
「それでも進めそうか」
「進めるなら、最初の一歩は何か」

この会話ができるようになると、目標は単なる願いごとから、少しずつ予定表の中の存在へ変わっていきます。

そして、もう一つ大切な学びがあります。

それは、「手放すことも、目標に向き合う力の一部だ」ということです。

考えてみた結果、いまの条件では難しい目標もあります。時間が足りない。体力が追いつかない。環境が整っていない。お金や支援が必要になる。そんなとき、無理に「絶対にできる!」と叫び続けることが、いつも正しいとは限りません。

いったん保留にする。目標を小さくする。順番を変える。必要な助けを探す。

それは逃げではなく、人生の資源を守るための判断です。

全力疾走しようとしているのに靴ひもがほどけているなら、まず靴ひもを結ぶ。遠回りに見えても、そのほうが結局は前に進めます。

ヒョンジュ・パクの研究は、私たちに「前向きであれ」と命令しているわけではありません。もっと現実的で、もっとやさしいことを教えてくれます。

夢を見るなら、障害も見る。
障害を見るなら、対策も考える。
難しいなら、目標の形や順番を変えてもいい。
進めそうなら、小さくても今日から始める。

未来は、ただ眺めるためのポスターではありません。

少しずつ現実に持ち帰り、手を汚し、失敗もしながら組み立てていくものです。夢と現実をちゃんと出会わせるとき、「いつかやりたい」は、ようやく「今日はこれをやる」に変わりはじめるのです。

阿部牧歌(管理人)
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ヒョンジュ・パク(Hyeon-Ju Pak)の論文一覧

1.『未来への「ただの空想」を、逃げられない目標に変える方法――目標設定を自分で動かす心理学』ガブリエレ・エッティンゲン、ヒョンジュ・パク、カロリーネ・シュネッター(2001)

Oettingen, G., Pak, H.-J., & Schnetter, K. (2001). Self-regulation of goal setting: Turning free fantasies about the future into binding goals. Journal of Personality and Social Psychology, 80(5), 736–753.
DOI:10.1037/0022-3514.80.5.736

「資格を取った自分、かっこいいなあ」「部屋が片づいたら人生が始まりそう」。未来を想像するだけで、心の中ではもう祝賀会です。ところが現実は、申込書を前にお茶をいれ、片づける前に動画を見ている。なぜだ。
この論文は、願いだけを見るのではなく、「いま何が邪魔をしているか」も一緒に考える方法を検証しました。夢と現実を並べると、できそうな目標には本気で動き出し、難しいものには無駄に消耗せず向き合える。空想を、予定表に引っ越させるための心理学です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ
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