ガイ・イツチャコフ(Guy Itzchakov)の論文一覧:耳をすませば、自己肯定感が歩き出す。傾聴オタクの研究航海
ガイ・イツチャコフ(Guy Itzchakov)のプロフィール
ガイ・イツチャコフさんは、ひとことで言うと、「人の話をちゃんと聞くと、心に何が起きるのか」を本気で研究している心理学者です。現在はイスラエルのハイファ大学・人間サービス学部の教授で、「対人傾聴と社会的影響」をテーマにした研究室を率いています。公式プロフィールでは、質の高い傾聴が、話し手の感情やものの見方にどう影響するか、さらに職場での傾聴トレーニングが組織にどんな効果をもたらすかを研究していると紹介されています。
つまり、イツチャコフさんは「聞き上手って、ただ相づちがうまい人でしょ?」という世界に、白衣ならぬ“耳の探検帽”をかぶって乗り込んだ人です。
「うんうん」と聞いてもらうだけで、人は自分の考えを整理できるのか。
否定されずに聞かれると、自分の弱さや矛盾を受け止めやすくなるのか。
話を聞くことは、ただのマナーではなく、人の自尊心や考え方を支える力になるのか。
そういう、日常の会話にひそむ“心の化学反応”を研究しています。
学歴としては、2017年にヘブライ大学エルサレム校の経営学系の分野で博士号を取得し、その後、2018年から2019年にかけてカナダのトロント大学ロットマン経営大学院で研究員を務めました。現在はハイファ大学で、傾聴、人間関係、態度の変化、組織行動などを研究しています。
研究テーマの中心にあるのは、「高品質な傾聴」です。これは、ただ黙って聞くことではありません。相手をさえぎらず、すぐに評価せず、「あなたの話をちゃんと受け止めていますよ」という姿勢で聞くことです。言ってみれば、相手の言葉を“会話のゴミ箱”に入れるのではなく、“心の応接室”に案内するような聞き方です。
とくに面白いのは、イツチャコフさんの研究が、カウンセリングの部屋だけでなく、職場、対立場面、偏見についての話し合い、意見が割れる会話などにも広がっているところです。たとえば、偏見について話す場面で、質の高い聞き方をされると、話し手の自律性や自己肯定感が支えられる可能性が示されています。
要するに、イツチャコフさんの研究は、私たちにこう教えてくれます。
「話し方」ばかりが注目されがちだけれど、本当は「聞き方」も、ものすごく大きな力を持っている。人は、ちゃんと聞いてもらえると、自分の考えを少し安全に見つめられる。心の中に散らかった紙束が、少しずつ机の上に並んでいくような感じです。
ガイ・イツチャコフさんは、まさに“聞くこと”を心理学の主役席に座らせた研究者です。話す人を変えようとする前に、まず聞く側の姿勢を変えてみる。そこから、人間関係も、職場も、社会の対話も、少しずつやわらかくなるかもしれない。そんな希望を、データと実験でコツコツ照らしている人だと言えます。
参考文献・確認先:ガイ・イツチャコフ 公式プロフィール / ハイファ大学プロフィール / ガイ・イツチャコフ 論文・研究助成一覧 / Google Scholar:Guy Itzchakov 論文・引用情報 / PubMed:Guy Itzchakov 関連論文

1.『質の高い傾聴は、偏見について語る人の「自分で考える力」と「自尊心」を支える』ガイ・イツチャコフ、ネッタ・ワインスタイン(2021)
Itzchakov, G., & Weinstein, N. (2021). High-Quality Listening Supports Speakers’ Autonomy and Self-Esteem when Discussing Prejudice. Human Communication Research, 47(3), 248–283. DOI:10.1093/hcr/hqab003
この論文は、ざっくり言うと「ちゃんと聞いてもらえると、人は自分の考えを安心して見つめ直せるのか?」を調べた研究です。テーマは偏見についての会話。普通ならちょっと身構える話題ですが、聞き手が評価せず、丁寧に耳を傾けると、話し手は「自分で考えて話している感覚」や自己肯定感を保ちやすくなるそうです。つまり、傾聴はただの“うんうん係”ではなく、心の安全ベルト。人間関係の会話力を磨きたい人には、かなり刺さる一本です。


2.『つながりは傷を癒す:社会的拒絶を打ち明けたあと、「聴いてもらえた」と感じることが語り手の孤独感をやわらげる』ガイ・イツチャコフ、ネッタ・ワインスタイン、ドヴォリ・サルク、モティ・アマール(2023)
Itzchakov, G., Weinstein, N., Saluk, D., & Amar, M. (2023). Connection Heals Wounds: Feeling Listened to Reduces Speakers’ Loneliness Following a Social Rejection Disclosure. Personality and Social Psychology Bulletin, 49(8), 1273–1294. DOI: 10.1177/01461672221100369
この論文は、ざっくり言うと「つらい拒絶体験を話したあと、ちゃんと聞いてもらえると孤独はやわらぐのか?」を調べた研究です。実験では、過去に仲間外れや拒絶を感じた経験を話してもらい、聞き手の“聞き方”を比較しました。すると、質の高い傾聴を受けた人ほど、その場の孤独感が低くなったのです。つまり、心が「いや、世界にまだ自分の席あったわ」と小さく回復する感じ。アドバイスより先に、耳。孤独に効くのは、説教薬ではなく“ちゃんと聞く湿布”かもしれません。


3.『親しい人との難しい会話で、人を前向きに動かす「聴く力」』ネッタ・ワインスタイン、ガイ・イツチャコフ、ニコール・レゲイト(2022)
Weinstein, N., Itzchakov, G., & Legate, N. (2022). The motivational value of listening during intimate and difficult conversations. Social and Personality Psychology Compass, 16(2), e12651. DOI:10.1111/spc3.12651
「ちゃんと聴いてくれる人」って、ただの相づち職人ではありません。実は、心の中で縮こまっていた“自分らしさ”を、そっと外へ連れ出してくれる存在なのです。この論文は、親しい人との難しい会話で、聴くことがどれほど相手のやる気や安心感を支えるかを探った研究。話し合いが苦手な人ほど、「聴く力って、地味に最強の人間関係スキルでは?」と思える一本です。

