ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)の論文一覧:人にどう思われるかが気になりすぎる心を、かなり本気で見つめた論文たち

ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)の論文を読む女性
adler-nap

ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)のプロフィール

ジェラルディン・ダウニーをひとことで言うなら、
「人に拒まれるかもしれない」という心のヒリヒリを、感情論で終わらせず、きちんと研究にした心理学者です。コロンビア大学の心理学教授で、対人関係の研究室を率いながら、「拒絶されるかもしれないという予感が、人の見え方や反応をどう変えるのか」を長く研究してきました。特に有名なのは、のちに「拒絶敏感性」と呼ばれる考え方に深く関わってきたことです。つまり、「まだ何も起きていないのに、もう心が“嫌われる準備”を始めてしまう」あの感じを、心理学の言葉で丁寧にすくい上げてきた人なんですね。

学歴もなかなか筋が通っています。アイルランドのダブリンにある大学で心理学を学び、その後、コーネル大学で発達心理学の修士号と博士号を取得しています。研究の関心は、親しい人からの拒絶だけでなく、社会的な立場や集団の中での拒絶にも広がっていて、「人は人との関係の中で、どれほど傷つき、またどれほど反応を変えるのか」という問いを、ずっと掘ってきた研究者です。

しかもこの方、研究だけしていた人ではありません。コロンビア大学では心理学部長や、多様性推進を担う副学長級の役職、文理学部の要職なども務めています。研究室にこもるだけの学者ではなく、「大学という場所をどう公平で開かれたものにするか」にも関わってきたわけです。研究テーマが“拒絶”で、大学内では“排除されにくい場づくり”にも携わってきたというのは、なんだか一本、筋の通った物語を感じます。なお、アメリカ心理学会のメンター賞を受けていることも紹介されています。

参考文献・確認先: Columbia Center for Justice:Geraldine Downey 公式プロフィール / Columbia Social Relations Lab:Geraldine Downey 研究室プロフィール / Google Scholar:Geraldine Downey 論文・引用情報 / PubMed:拒絶敏感性に関する代表論文 / Association for Psychological Science:2019 APS Mentor Awards

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)の研究から学べること

ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)の研究から学べることは、ひとことで言うと、「人間関係のしんどさは、相手の言動そのものだけでなく、“拒絶されるかもしれない”という予想によっても大きくふくらむ」ということです。

ダウニーさんは、コロンビア大学の心理学者で、「拒絶への敏感さ」を中心に研究してきた人物です。これは、ものすごく簡単に言うと、「相手に拒まれるかも」「嫌われるかも」「見捨てられるかも」と不安に思いやすく、あいまいな相手の反応まで拒絶として受け取りやすくなり、強く反応してしまう傾向のことです。ダウニーさんの研究紹介でも、人が拒絶を予想することが、社会的な場面の前後で、相手の行動の受け止め方にどう影響するかが主な関心だとされています。

これ、日常で考えるとめちゃくちゃ身近です。

たとえば、相手から返信が遅い。
「忙しいのかな」で済む日もあります。
でも、心の中の“嫌われセンサー”が高性能すぎる日は、すぐこうなります。

「あれ、怒ってる?」
「何か変なこと言った?」
「もう嫌われた?」
「関係終了のお知らせですか?」

いやいや、まだ返信が遅いだけです。なのに心の中では、すでに記者会見が開かれています。「本日、私の人間関係は重大な局面を迎えました」と、脳内アナウンサーが深刻な顔で読み上げる。大げさです。でも本人にとっては、本当にそう感じてしまうのです。

ダウニーさんとフェルドマンさんの有名な研究では、拒絶に敏感な人は、拒絶を不安に予想し、相手のあいまいな行動を拒絶として受け取りやすく、それに強く反応しやすいと説明されています。この傾向は、親しい関係をむしろ不安定にしてしまうことがあると示されました。

ここが切ないところです。拒絶に敏感な人は、本当は関係を大切にしたいのです。嫌われたくない。見捨てられたくない。大事にされたい。ところが、その不安が強すぎると、相手の小さな反応に過剰に意味を読み込んでしまう。

相手が少し疲れた顔をしている。
「自分といるのが嫌なのかな」

相手の返事が短い。
「もう冷めたのかな」

相手が予定を変更した。
「自分は大切にされていないのかな」

こうして、心の翻訳機がすべてを「拒絶語」に変換してしまうわけです。普通の「今日は忙しい」が、「あなたは重要ではありません」に翻訳される。これはなかなか困った翻訳機です。アップデートが必要です。

でも、ここで大事なのは、「拒絶に敏感な人が悪い」という話ではないことです。むしろダウニーさんの研究は、人がなぜそう感じてしまうのかを理解するためのものです。過去に傷ついた経験がある人、安心できない関係を経験してきた人、拒まれることが何度もあった人は、心が先回りして身を守ろうとします。

つまり、拒絶への敏感さは、心の防犯ブザーみたいなものです。危険を知らせようとしてくれる。けれど、感度が高すぎると、風でカーテンが揺れただけでも鳴ってしまう。本人は疲れるし、周りもびっくりします。問題はブザーがあることではなく、必要以上に鳴りっぱなしになることなのです。

この研究から学べることは、「相手の反応」と「自分の解釈」を分けて見ることの大切さです。

たとえば、返信が遅いという事実があります。
それに対して、「嫌われた」という解釈が出てきます。

この二つは、似ているようで違います。返信が遅いことは事実です。でも、嫌われたかどうかはまだわかりません。ここを混ぜてしまうと、心は一気に苦しくなります。事実は小雨なのに、解釈が台風を呼んでくる。傘で済むところに、なぜか避難所を開設してしまうのです。

だから、日常で使える合言葉はこれです。

「今わかっていることは何か」
「自分が想像していることは何か」

この二つを分けるだけで、心の混乱は少し整理されます。たとえば、「相手からまだ返信がない」は今わかっていること。「嫌われた」は想像です。「表情が硬かった」は今わかっていること。「自分を責めている」は想像です。想像が悪いわけではありません。でも、想像を事実として扱うと、心の裁判が早すぎます。まだ証拠提出の前に判決が出ています。

ダウニーさんの研究は、親しい関係ほど、この拒絶への敏感さが強く働きやすいことも教えてくれます。どうでもいい相手なら平気なのに、大切な人ほど小さな反応が気になる。これは自然です。大切だからこそ、失うのが怖いのです。大事な茶碗ほど、落としたらどうしようと慎重になりますよね。紙コップなら気楽です。でもお気に入りの湯のみは、両手で持ちます。人間関係もそれに似ています。

ただし、怖さが強くなりすぎると、相手を試したくなることがあります。

「本当に自分のこと大事なら、すぐ返してくれるはず」
「本当に好きなら、気づいてくれるはず」
「本当にわかってくれるなら、何も言わなくても察してくれるはず」

こうなると、相手は知らないうちに試験会場へ連れてこられます。しかも問題用紙は配られていません。制限時間だけ始まっています。これは相手もしんどいです。

だから、拒絶への不安が出てきたときは、「試す」より「伝える」ほうが関係を守りやすくなります。

「返信がなくて、少し不安になってしまった」
「さっきの反応を、私は冷たく感じてしまった」
「責めたいわけではないけれど、確認したい」

こう言えると、相手を追いつめるのではなく、自分の内側を共有できます。もちろん、相手がいつも丁寧に受け止めてくれるとは限りません。でも、少なくとも「怒りの爆弾」ではなく、「気持ちのメモ」として差し出せます。爆弾処理班を呼ばなくてすみます。

また、ダウニーさんの研究は、子どもの対人関係にも広がっています。子どもの拒絶への敏感さと、友人関係や対人上の困難との関係を扱った研究もあります。つまり、この問題は大人の恋愛だけでなく、子どものころからの人との関わり方にも関係しているのです。

ここから見えてくるのは、「安心して関われる経験」がとても大切だということです。拒絶に敏感な人に、「気にしすぎだよ」と言うだけでは、あまり助けになりません。本人も気にしすぎていることは、どこかでわかっていることが多いからです。でも、わかっていても不安になる。心のセンサーが勝手に鳴る。そこに「気にしすぎ」という言葉を投げると、センサーの上にさらに石を置くようなものです。ピーピーが増えます。

必要なのは、「安心できる確認」です。

「返信が遅れただけだよ」
「怒っているわけではないよ」
「気になることがあれば聞いていいよ」
「あなたのことを否定したわけではないよ」

こうした言葉は、拒絶に敏感な人にとって、心の手すりになります。階段を上るとき、手すりがあると少し安心できますよね。もちろん、ずっと相手に手すり役を求めすぎると、相手も疲れます。だから、自分の中にも手すりを作る必要があります。

自分の中の手すりとは、「不安になったときに確認する手順」です。

まず、事実を見る。
次に、解釈を分ける。
そして、別の可能性を探す。
最後に、必要なら落ち着いた言葉で確認する。

これだけでも、心の暴走列車は少しスピードを落とせます。急停車は無理でも、減速ならできます。人間関係では、この減速がとても大事です。

さらに、拒絶への敏感さは、注意力にも影響することがあります。関連研究では、拒絶に敏感な人は、社会的な脅威に注意を奪われやすく、目の前の目標に集中しにくくなることが示されています。

これも日常でよくあります。相手の表情が少し曇っただけで、もう作業どころではなくなる。会議中に誰かがため息をついたら、「自分の発言が悪かったのかな」と気になって、内容が頭に入らない。心の中の警備員が、ずっと人の顔色を監視している状態です。働き者ですが、少し過労です。

だから、拒絶への不安が強い人には、「今ここに戻る工夫」も役立ちます。足の裏の感覚に注意を向ける。呼吸を一回ゆっくりする。目の前の作業を一つだけ確認する。「今は推測ではなく、目の前の書類に戻ろう」と声をかける。これは、不安を否定することではありません。不安に全画面表示を許さない工夫です。

ジェラルディン・ダウニーの研究からたどりつく学びは、とても実用的で、そしてやさしいものです。

人は、拒絶されることを恐れます。
それは自然なことです。
大切な人に受け入れられたい、つながっていたいと思うのは、人間らしい願いです。

でも、「拒絶されるかもしれない」という不安が強くなりすぎると、まだ起きていない拒絶を先に感じ取り、相手の行動を悪い方向に読み、関係を守りたいはずなのに、かえって関係をこじらせてしまうことがあります。

だからこそ、自分にこう言ってあげたいのです。

「不安になるのは、関係を大切にしているからかもしれない」
「でも、不安が言うことが、いつも事実とは限らない」
「すぐに結論を出さず、事実と想像を分けてみよう」

拒絶への敏感さは、壊れた心ではありません。むしろ、過去の経験から一生懸命身を守ろうとしてきた心かもしれません。ただ、その守り方が今の関係では少し強すぎることがある。だから、責めるより調整する。追い払うより、感度を少し下げていく。

人間関係は、完全な安心だけでできているわけではありません。ときどき不安になります。相手の気持ちは見えません。返信の遅さも、表情の硬さも、言葉の短さも、いろいろな意味に見えてしまいます。

でも、そこで心の中の“嫌われセンサー”だけに運転を任せないことです。センサーは役に立ちます。でも、ハンドルまで握らせると、すぐ山道に突っ込みます。

ダウニーさんの研究は、私たちに教えてくれます。拒絶が怖いときほど、まず立ち止まり、事実を見て、解釈をほどき、必要なら穏やかに確認すること。その一呼吸が、人間関係を壊さずに守るための、小さくて大切な技術なのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ジェラルディン・ダウニー(Geraldine Downey)の論文一覧

1.『拒絶されることへの敏感さが、親密な関係に落とす影』ジェラルディン・ダウニー、スコット・I・フェルドマン(1996)

Downey, Geraldine, & Feldman, Scott I. (1996). Implications of Rejection Sensitivity for Intimate Relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 70(6), 1327-1343. DOI: 10.1037/0022-3514.70.6.1327

この論文、ひとことで言うと、「嫌われるかもセンサー」が敏感すぎると、恋愛はちょっとした一言でも心の火災報知器が鳴りやすくなる、という話です。拒絶に敏感な人ほど、相手の態度に「冷たさ」を見つけやすく、不安や怒りが強まりやすい。その結果、関係そのものがギクシャクしやすい。恋は甘いだけじゃない、心の読み違い大会にもなりうるぞ、と教えてくれる論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【10分で読める】恋愛で傷つきやすい人の心理とは? 拒絶感受性の論文をやさしく要約
【10分で読める】恋愛で傷つきやすい人の心理とは? 拒絶感受性の論文をやさしく要約
記事URLをコピーしました