心がしんどい日に読む心理学論文25選

人間関係がしんどいときに読みたい心理学論文を読む女性
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Contents
  1. 心がしんどい日にも、心理学はそっと隣に座ってくれる
  2. 第1章 感情に振り回されないための心理学
  3. 第2章 ストレスの正体を知る心理学
  4. 第3章 職場ストレスと燃え尽きの心理学
  5. 第4章 心を回復させる心理学
  6. 第5章 メンタル不調を理解する心理学

心がしんどい日にも、心理学はそっと隣に座ってくれる

「なんか今日、心が重いなあ」
そんな日、ありますよね。

理由がはっきりしている日もあります。仕事で疲れた、人間関係でモヤモヤした、寝不足で世界が全体的に灰色フィルター。
でも、ときには理由がよくわからないまま、心だけが「本日は臨時休業です」とシャッターを半分下ろしている日もあります。

そんなときに、いきなり「前向きに考えよう!」と言われても、心の中の店長が「いや、今日は仕入れが間に合ってません」と言いたくなるものです。
ポジティブの大売り出しをされても、こちらのメンタル財布には小銭しか入っていない。そういう日だってあります。

この特集では、感情・ストレス・メンタルに関する心理学論文を25本選びました。
テーマは、不安、怒り、落ち込み、反すう思考、職場ストレス、燃え尽き、睡眠、自尊心、セルフ・コンパッション、マインドフルネス、レジリエンスなど。つまり、心の中でよく開かれる「しんどい祭り」の出店を、ひとつずつ見て回るような内容です。

ただし、ここで目指したいのは「この論文を読めば、あなたの悩みは一発解決!」という魔法の杖づくりではありません。
人の心は、電子レンジのようにボタンひとつで温まるものではないからです。どちらかというと、弱火でじっくり火を入れる煮込み料理に近い。焦らず、少しずつ、自分の状態を知っていくことが大切です。

心理学の論文は、しんどさを「気合いが足りない」「性格が弱い」と片づけません。
「なぜ感情は強くなるのか」
「なぜストレスは体にも影響するのか」
「なぜ同じことを何度も考えてしまうのか」
「なぜ人とのつながりが心を守るのか」
そうした問いに、研究という小さな灯りをともしてくれます。

もちろん、論文はお医者さんの診断書ではありません。読んだからといって、すぐに心の嵐がぴたりと止むわけではないでしょう。けれど、名前のなかったしんどさに言葉がつくと、人は少し息がしやすくなります。
「ああ、自分だけじゃなかったんだ」
「これは根性の問題だけではなかったんだ」
そう思えるだけで、心の中の固まった結び目が、ほんの少しゆるむことがあります。

このページは、心が絶好調の日に読む必要はありません。
むしろ、少し疲れている日、なんとなく気持ちがざらつく日、頭の中で不安が町内放送している日、そんな日にこそ、ふらっと立ち寄ってもらえたらうれしいです。

では、ここからは感情とストレスとメンタルをめぐる、心理学論文25本の研究さんぽへ。
歩く速度は、ゆっくりで大丈夫です。心の靴ひもを結び直しながら、ひとつずつ見ていきましょう。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

第1章 感情に振り回されないための心理学

1.『感情調整という新しい地平:心の動きを整える研究の統合レビュー』ジェームズ・J・グロス(1998)

Gross, J. J. (1998). The Emerging Field of Emotion Regulation: An Integrative Review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299. DOI:10.1037/1089-2680.2.3.271

感情って、放っておくと心の中で勝手に会議を始めます。「怒り部長、前に出すぎです」「不安課長、資料を増やさないでください」みたいな感じです。この論文は、そんな感情たちをどう扱うのかを整理した“感情調整の地図”のようなレビューです。感情を抑え込むだけでなく、状況の選び方、考え方の変え方、反応の整え方まで、心の操縦席をわかりやすく案内してくれます。感情に振り回されがちな人ほど、「なるほど、心には操作パネルがあったのか」と読みたくなる一本です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【心理学論文】気持ちは「我慢」ではなく「調整」できる? 感情調整という新しい心理学
【心理学論文】気持ちは「我慢」ではなく「調整」できる? 感情調整という新しい心理学

2.『感情を「見直す人」と「押し殺す人」は何が違うのか:感情・人間関係・幸福感に及ぼす影響』ジェームズ・J・グロス、オリバー・P・ジョン(2003)

Gross, J. J., & John, O. P. (2003). Individual Differences in Two Emotion Regulation Processes: Implications for Affect, Relationships, and Well-Being. Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362. DOI:10.1037/0022-3514.85.2.348

感情って、ただ「出すか」「我慢するか」の二択だと思っていませんか?この論文は、そこにズバッと心理学のメスを入れます。ポイントは「再評価」と「抑制」。つまり、出来事の見方を変えて心を整える人と、平気なふりで感情を押し込める人では、気分・人間関係・幸福感に違いが出るのです。外は無表情、内心は感情の満員電車……そんなあなたにも刺さるかもしれない、心の取扱説明書みたいな一本です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】感情を押し殺す人と切り替えられる人の違いとは? 幸福感と人間関係に表れる意外なしくみ
【論文要約】感情を押し殺す人と切り替えられる人の違いとは? 幸福感と人間関係に表れる意外なしくみ

3.『感情は、理性でどこまで操れるのか-心のブレーキとハンドルをめぐる認知コントロール研究』ケヴィン・N・オクスナー、ジェームズ・J・グロス(2005)

Ochsner, K. N., & Gross, J. J. (2005). The cognitive control of emotion. Trends in Cognitive Sciences, 9(5), 242–249. DOI:10.1016/j.tics.2005.03.010

感情って、勝手に暴れるだけの困った住人だと思っていませんか?この論文は、「怒り」「不安」「悲しみ」に、脳がどう手綱をかけているのかを探る研究です。ポイントは、感情を力ずくで押さえ込むのではなく、出来事の見方を変えることで感じ方も変わるということ。「嫌われたかも」が「忙しかったのかも」に変わるだけで、心の天気は少し回復します。感情に振り回されがちな人にこそ読みたい、脳と心の“作戦会議”をのぞく一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】感情はどうコントロールできるのか? 認知科学が明かした心のしくみ
【論文要約】感情はどうコントロールできるのか? 認知科学が明かした心のしくみ

4.『うつ病と不安・抑うつ混合症状における「反すう思考」の役割-心が同じ場所をぐるぐる歩き続けるとき、何が起きているのか』スーザン・ノーレン=ホークセマ(2000)

Nolen-Hoeksema, S. (2000). The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms. Journal of Abnormal Psychology, 109(3), 504–511. DOI:10.1037/0021-843X.109.3.504

この論文は、頭の中で同じ悩みをぐるぐる再生してしまう「反すう思考」が、うつ病や不安にどう関わるのかを調べた研究です。「ちゃんと考えれば解決するはず」と思っていたら、いつの間にか心の会議室で“自分責めサミット”が開幕していること、ありませんか?この研究は、そんな考えすぎが気分の落ち込みや不安を長引かせる可能性を示しています。読むと、「考えること」と「考えに飲み込まれること」の違いが、少し見えてくる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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【10分で読める】反すう思考の心理学|なぜ人は同じ悩みを何度も考えてしまうのか
【10分で読める】反すう思考の心理学|なぜ人は同じ悩みを何度も考えてしまうのか

5.『トラウマと向き合うということ:心に閉じ込めた感情が、からだの病につながる仕組みを探る』ジェームズ・W・ペネベーカー、ジャニス・K・キーコルト=グレイザー、ロナルド・グレイザー(1988)

Pennebaker, J. W., Kiecolt-Glaser, J. K., & Glaser, R. (1988). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 97(2), 183–189. DOI:10.1037/0021-843X.97.2.183

つらい出来事を「心の押し入れ」にしまい込むと、いったい何が起こるのでしょうか。ペネベーカーらのこの論文は、トラウマ体験を語らずに抑え込むことが、ストレスや体の不調とどう関係するのかを探った研究です。ポイントは、「黙っている=何もしていない」ではないかもしれない、というところ。心の中では小さな門番が、記憶や感情を外に出さないよう残業しているのかもしれません。話すこと、書くこと、言葉にすることが、心と体の風通しを変えるかもしれない。そんな“沈黙の重さ”を考えたくなる一本です。

阿部牧歌(管理人)
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【心理学論文】「我慢すれば大丈夫」は本当か?トラウマを抑え込むことと病気の関係
【心理学論文】「我慢すれば大丈夫」は本当か?トラウマを抑え込むことと病気の関係

第2章 ストレスの正体を知る心理学

6.『心がどれだけ“ストレスを感じているか”を測る、知覚ストレスの総合尺度』シェルドン・コーエン、トム・カマーク、ロビン・マーメルスタイン(1983)

Cohen, S., Kamarck, T., & Mermelstein, R. (1983). A global measure of perceived stressJournal of Health and Social Behavior, 24(4), 385–396. DOI:10.2307/2136404

ストレスって、「忙しい出来事の数」で決まると思いがちですよね。でもこの論文は、「ちょっと待った。大事なのは、本人がどれくらい“無理かも…”と感じているかですよ」と教えてくれます。コーエンらが作った知覚ストレス尺度は、心の中の“しんどさメーター”。予定変更、予測不能、コントロール不能感などを質問で測り、見えないストレスに名札をつけます。「最近なんかしんどい」の正体を探る、心理学の懐中電灯みたいな名論文です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】「ストレスが多い人」とは何か?知覚ストレス尺度から見えた心の負担の正体
【論文要約】「ストレスが多い人」とは何か?知覚ストレス尺度から見えた心の負担の正体

7.『ストレスの衝撃を、人とのつながりはやわらげるのか:社会的支援と「緩衝仮説」』シェルドン・コーエン、トーマス・A・ウィルズ(1985)

Cohen, S., & Wills, T. A. (1985). Stress, social support, and the buffering hypothesis. Psychological Bulletin, 98(2), 310–357. DOI:10.1037/0033-2909.98.2.310

ストレスがドカンと来たとき、心はひとりで受け止めるしかないのでしょうか。コーエンとウィルズさんは、「いやいや、人とのつながりがクッションになるかもしれませんよ」と考えました。この論文は、社会的支援がストレスの衝撃をどうやわらげるのかを整理した名論文です。友だちの数が多ければOK、という単純な話ではなく、「どんな支えが、どんな場面で効くのか」がポイント。心のエアバッグ研究、いざ開封です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】ストレスと人とのつながりの研究からわかった、心を守る支援の意外なしくみ
【論文要約】ストレスと人とのつながりの研究からわかった、心を守る支援の意外なしくみ

8.『ストレスとは「大切なものを失いそうになること」だった:資源保存理論から見たストレスの新しい考え方』スティーヴァン・E・ホブフォール(1989)

Hobfoll, S. E. (1989). Conservation of resources: A new attempt at conceptualizing stress. American Psychologist, 44(3), 513–524. DOI:10.1037/0003-066X.44.3.513

ストレスって、ただ「嫌なことがあった!」だけで起きるのでしょうか?ホブフォールさんは、「いやいや、心の資源が減ってるんですよ」と教えてくれます。時間、体力、自信、人間関係……それらが失われそうになると、心の中の在庫係が「緊急事態です!」と走り回る。ストレスを“気合い不足”ではなく、“大切なものを守る反応”として読み直せる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】ストレスは「大切なものを失う不安」から生まれる?資源保存理論の名論文をやさしく解説
【論文要約】ストレスは「大切なものを失う不安」から生まれる?資源保存理論の名論文をやさしく解説

9.『ストレスを運ぶ体内メッセンジャーの光と影-守ってくれる力と、傷つけてしまう力』ブルース・S・マキューエン(1998)

McEwen, B. S. (1998). Protective and damaging effects of stress mediators. The New England Journal of Medicine, 338(3), 171–179. DOI:10.1056/NEJM199801153380307

この論文は、ストレスを「悪者」として即逮捕するのではなく、「実は警備員でもあり、暴走すると困った番犬でもあるんです」と紹介してくれる一冊です。ストレスホルモンは、危機のときには体を守る頼れる助っ人。でも出番が長すぎると、脳・免疫・心血管にじわじわ負担をかけてしまいます。マキューエン先生いわく、問題はストレスそのものより“働かせすぎ”。心と体の裏方スタッフが過労で机に突っ伏す前に、ぜひ読んでおきたい名論文です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】ストレスは敵なのか?マキューエンの研究からわかった、心身を守るしくみと傷つけるしくみ
【論文要約】ストレスは敵なのか?マキューエンの研究からわかった、心身を守るしくみと傷つけるしくみ

10.『学習された無力感:「どうせ無理」を覚えてしまう心のしくみ』マーティン・E・P・セリグマン(1972)

Seligman, M. E. P. (1972). Learned helplessness. Annual Review of Medicine, 23, 407–412. DOI:10.1146/annurev.me.23.020172.002203

「どうせ無理」と思う心、実はただの弱気ではないかもしれません。セリグマンのこの論文は、逃げられない経験や、努力しても変わらない経験が続くと、人は本当は動ける場面でも「あ、今回も無理ですね」と心のシャッターを下ろしてしまうことを示した古典研究です。心の中の慎重すぎる係長が、過去の失敗資料を抱えて止めにくる感じですね。でも裏を返せば、無力感は“学んだもの”。ならば、小さな成功体験で少しずつ学び直せる可能性もあるのです。

阿部牧歌(管理人)
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【心理学論文】なぜ人はあきらめてしまうのか? 学習性無力感の研究からわかったこと
【心理学論文】なぜ人はあきらめてしまうのか? 学習性無力感の研究からわかったこと

第3章 職場ストレスと燃え尽きの心理学

11.『仕事の負荷と裁量は、心の疲れをどう変えるのか:働き方を設計し直すための視点』ロバート・A・カラセック・ジュニア(1979)

Karasek, Robert A., Jr. (1979). Job Demands, Job Decision Latitude, and Mental Strain: Implications for Job Redesign. Administrative Science Quarterly, 24(2), 285–308. DOI:10.2307/2392498

「仕事がしんどいのは、仕事量が多いからでしょ?」と思ったそこのあなた。カラセックさんは、そこに「ちょっと待った」の札を出します。この論文が見たのは、忙しさだけでなく「自分で決められる余地」。仕事が多くても裁量があれば踏ん張れる。でも、忙しいのにハンドルを握れないと、心はぐったり。職場ストレスの正体を、根性論ではなく“仕事の設計”から見直した名論文です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】仕事のストレスは「忙しさ」だけで決まらない?カラセックの研究からわかった職場ストレスのしくみ
【論文要約】仕事のストレスは「忙しさ」だけで決まらない?カラセックの研究からわかった職場ストレスのしくみ

12.『「燃え尽き」はどう測れるのか:体験されたバーンアウトをとらえるための尺度研究』クリスティーナ・マスラック、スーザン・E・ジャクソン(1981)

Maslach, C., & Jackson, S. E. (1981). The measurement of experienced burnout. Journal of Organizational Behavior, 2(2), 99–113. DOI:10.1002/job.4030020205

「最近、仕事で心の電池がすぐ切れるんです」「それ、ただの疲れじゃないかもしれません」。この論文は、バーンアウトを“なんとなくしんどい”で終わらせず、感情的消耗・人への冷めた態度・達成感の低下という3つの側面から測ろうとした名研究です。心の燃料切れに、そっとメーターをつけたような一篇。働く人のしんどさを根性論で片づけたくない人におすすめです。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人は仕事で燃え尽きてしまうのか?バーンアウト研究が示した3つのポイント
【心理学論文】なぜ人は仕事で燃え尽きてしまうのか?バーンアウト研究が示した3つのポイント

13.『努力しても報われない職場が、心と身体に及ぼす悪影響』ヨハネス・ジーグリスト(1996)

Siegrist, J. (1996). Adverse health effects of high-effort/low-reward conditions. Journal of Occupational Health Psychology, 1(1), 27–41. DOI:10.1037/1076-8998.1.1.27

「こんなに頑張ってるのに、なんで報われないの?」という職場のモヤモヤに、心理学が白衣でそっと登場する論文です。ジーグリストは、仕事のストレスを単なる忙しさではなく、「努力」と「報酬」のバランスから考えました。給料、評価、安心感、尊重が少ないまま頑張り続けると、心だけでなく体にも負担がかかるかもしれない。職場のしんどさを“根性不足”で片づけないための、かなり人間味ある研究です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】努力しても報われない職場が心と体を壊す?努力報酬不均衡モデルの研究をやさしく解説
【論文要約】努力しても報われない職場が心と体を壊す?努力報酬不均衡モデルの研究をやさしく解説

14.『燃え尽きを読み解く、仕事の負荷と資源モデル』エヴァンゲリア・デメルーティ、フリートヘルム・ナハライナー、アーノルド・B・バッカー、ウィルマー・B・シャウフェリ(2001)

Demerouti, E., Nachreiner, F., Bakker, A. B., & Schaufeli, W. B. (2001). The Job Demands-Resources model of burnout. Journal of Applied Psychology, 86(3), 499–512. DOI:10.1037/0021-9010.86.3.499

「仕事で燃え尽きるのは、あなたの心が弱いから?」この論文は、その問いに「いやいや、職場のしくみも見ましょうよ」とツッコミを入れてくれる研究です。仕事量や時間のプレッシャーなどの“負荷”が多く、相談相手や裁量、評価などの“支え”が少ないと、人は疲れ切り、仕事から心が離れていきます。バーンアウトを根性論で終わらせず、仕事環境から読み解いた名論文。職場のSOS探知機みたいな一作です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】燃え尽きはなぜ起こるのか? 仕事の負荷と職場の支えからわかったバーンアウトのしくみ
【論文要約】燃え尽きはなぜ起こるのか? 仕事の負荷と職場の支えからわかったバーンアウトのしくみ

15.『仕事の負担と資源モデル:職場のストレスと活力を読み解く最前線』アーノルド・B・バッカー、エヴァンゲリア・デメルーティ(2007)

Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2007). The Job Demands-Resources model: state of the art. Journal of Managerial Psychology, 22(3), 309–328. DOI:10.1108/02683940710733115

仕事には、締切・量・プレッシャーみたいな“体力を吸う妖怪”もいれば、裁量・支援・成長機会みたいな“やる気の回復アイテム”もいる。BakkerとDemeroutiは、それを「仕事の要求度」と「仕事の資源」に分けて、燃え尽きる職場と、いきいき働ける職場の違いを整理しました。
読むと、「あれ?うちの職場、敵キャラ多めでは?」と笑いながら、働き方改善の地図が見えてくる一論です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】がんばっているのに疲れる職場、なぜか元気が出る職場:職務要求・資源モデルから見える違い
【論文要約】がんばっているのに疲れる職場、なぜか元気が出る職場:職務要求・資源モデルから見える違い

第4章 心を回復させる心理学

16.『不安障害の治療における、瞑想にもとづくストレス低減プログラムの効果』ジョン・カバットジン、アン・O・マシオン、ジーン・クリステラー、リンダ・ゲイ・ピーターソン、ケネス・E・フレッチャー、ロリ・プバート、ウィリアム・R・レンダーキング、サキ・F・サントレリ(1992)

Kabat-Zinn, J., Massion, A. O., Kristeller, J., Peterson, L. G., Fletcher, K. E., Pbert, L., Lenderking, W. R., & Santorelli, S. F. (1992). Effectiveness of a meditation-based stress reduction program in the treatment of anxiety disorders. American Journal of Psychiatry, 149(7), 936–943. DOI:10.1176/ajp.149.7.936

「不安を消したい!」と思うほど、不安が前のめりで会議に参加してくること、ありませんか?この論文は、不安障害の人たちに瞑想ベースのストレス低減プログラムを行い、不安やパニック症状がどう変わるかを調べた研究です。ポイントは、不安を力ずくで追い出すのではなく、「あ、いま不安が来ているな」と気づき、距離をとる練習をすること。心の非常ベルを壊すのではなく、鳴っていても落ち着いて避難経路を探すような話です。マインドフルネスの原点をのぞきたい人におすすめの一本です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】不安障害に瞑想は効くのか?ストレス低減プログラムの研究からわかった心の整え方
【論文要約】不安障害に瞑想は効くのか?ストレス低減プログラムの研究からわかった心の整え方

17.『マインドフルネス介入:いまここに心を戻す実践は、健康・感情・人間関係に何をもたらすのか』J・デイヴィッド・クレスウェル(2017)

J・デイヴィッド・クレスウェル(J. David Creswell)(2017). Mindfulness Interventions. Annual Review of Psychology, 68, 491–516. DOI:10.1146/annurev-psych-042716-051139

「マインドフルネスって、結局ほんまに効くの?」そんな疑問に、白衣を着た研究の虫眼鏡で挑むのがこの論文です。ストレス、不安、うつ、身体の健康まで、マインドフルネス介入の効果と限界をぐるっと整理。心を無にする魔法ではなく、「不安さん、来てますね」と気づく練習として見えてくるのが面白いところ。瞑想ブームをふわっと信じる前に、一度のぞいておきたい心の研究地図です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】マインドフルネスは本当に効果があるのか?心理学研究から見えた心の整え方
【論文要約】マインドフルネスは本当に効果があるのか?心理学研究から見えた心の整え方

18.『セルフ・コンパッションを測るものさしの開発と検証――自分にやさしくする力を、心理学はどう測ったのか』クリスティン・D・ネフ(2003)

Neff, K. D. (2003). The Development and Validation of a Scale to Measure Self-Compassion. Self and Identity, 2(3), 223–250. DOI:10.1080/15298860309027

「自分にやさしくするって、ただの甘えでは?」と思ったことがある人に読んでほしい論文です。ネフは、セルフ・コンパッションを“心のふわふわ言葉”で終わらせず、心理学で測れる尺度として形にしました。失敗した自分を責め倒すのではなく、人間としてちゃんと扱う力とは何か。心の中の鬼コーチに、保健室の先生を同席させるような研究です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】自分への思いやりは測れるのか? ネフのセルフ・コンパッション尺度研究をやさしく解説
【論文要約】自分への思いやりは測れるのか? ネフのセルフ・コンパッション尺度研究をやさしく解説

19.『ポジティブ心理学におけるポジティブ感情の役割:心を広げ、人生の力を育てる「拡張形成理論」』バーバラ・L・フレドリクソン(2001)

Fredrickson, B. L. (2001). The role of positive emotions in positive psychology: The broaden-and-build theory of positive emotions. American Psychologist, 56(3), 218–226. DOI: 10.1037//0003-066x.56.3.218

「ポジティブ感情って、ただ気分がよくなるだけでしょ?」と思ったそこのあなた。実は、うれしい・楽しい・ありがたい気持ちは、心の視野を広げ、行動の選択肢を増やし、未来の自分を育てる“心の園芸係”かもしれません。フレドリクソンの拡張形成理論は、幸せをふわふわした飾りではなく、人生の力を育てるしくみとして描き出します。ポジティブ心理学の名論文、これは読んでおきたい一篇です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】ポジティブ感情の研究からわかった、幸せが心を広げる意外なしくみ
【論文要約】ポジティブ感情の研究からわかった、幸せが心を広げる意外なしくみ

20.『心が折れそうなとき、前向きな感情が助走になる-レジリエンスの高い人が、つらい経験から立ち直るしくみ』ミシェル・M・トゥガデ、バーバラ・L・フレドリクソン(2004)

Tugade, M. M., & Fredrickson, B. L. (2004). Resilient individuals use positive emotions to bounce back from negative emotional experiences. Journal of Personality and Social Psychology, 86(2), 320–333. DOI:10.1037/0022-3514.86.2.320

「立ち直れる人って、そもそも傷つかない人でしょ?」と思ったら、この論文がそっと首を振ります。レジリエンスの高い人も、不安になり、心臓はしっかりドキドキ。違うのは、そのあとでした。小さな安心や楽しさ、前向きな意味を見つけることで、心と体が早く日常へ戻っていたのです。ポジティブ感情は、悲しみを追い払う応援団ではなく、帰り道を照らす常夜灯。強さのイメージが少しやさしく変わる研究です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】立ち直れる人は何が違う? ポジティブ感情が心を回復させる意外なしくみ
【論文要約】立ち直れる人は何が違う? ポジティブ感情が心を回復させる意外なしくみ

第5章 メンタル不調を理解する心理学

21.『心の沈み具合を測るものさし――うつ状態を見つめるための評価票』アーロン・T・ベック、クライド・H・ウォード、マイヤー・メンデルソン、J・E・モック、J・K・アーボー(1961)

Beck, A. T., Ward, C. H., Mendelson, M., Mock, J. E., & Erbaugh, J. K. (1961). An Inventory for Measuring Depression. Archives of General Psychiatry, 4(6), 561–571. DOI:10.1001/archpsyc.1961.01710120031004

この論文は、いわば「心のどんより天気」を数値で測ろうとした名作です。ベックたちは、うつの人がどんな考え方・感じ方・体のしんどさを抱えやすいのかを質問票にまとめました。気分、悲しさ、自責感、疲れ、睡眠など、心の部屋をひとつずつノックしていく感じです。「うつって、ただ落ち込むだけじゃないんだな」とわかる、心理測定の原点みたいな論文。心に温度計を差し出した、かなり重要な一篇です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【心理学論文】うつ状態はどうやって測る? ベックうつ病評価尺度(BDI)誕生の研究をやさしく要約
【心理学論文】うつ状態はどうやって測る? ベックうつ病評価尺度(BDI)誕生の研究をやさしく要約

22.『ネガティブ感情の設計図:うつ・不安・ストレス尺度(DASS)とベック式うつ・不安検査を比べて見えた、心の曇り空のかたち』ピーター・F・ラヴィボンド、シドニー・H・ラヴィボンド(1995)

Lovibond, P. F., & Lovibond, S. H. (1995). The structure of negative emotional states: Comparison of the Depression Anxiety Stress Scales (DASS) with the Beck Depression and Anxiety Inventories. Behaviour Research and Therapy, 33(3), 335–343. DOI:10.1016/0005-7967(94)00075-U

この論文は、心の中の「どんより三兄弟」こと、抑うつ・不安・ストレスを仕分けた研究です。ラヴィボンド夫妻はDASSを使い、「悲しみ担当」「ビクビク担当」「イライラ緊張担当」は本当に別物なのかを、ベックの尺度とも比べながら調べました。結果、心の不調はごちゃ混ぜ鍋に見えて、ちゃんと味の違う具材があるぞ、と示した一篇。読むと、感情の棚卸しがちょっと上手になります。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【心理学論文】うつ・不安・ストレスはどう違うのか? DASS研究から見えたネガティブ感情のしくみ
【心理学論文】うつ・不安・ストレスはどう違うのか? DASS研究から見えたネガティブ感情のしくみ

23.『眠れない夜は、なぜ頭の中で長引くのか:不眠を支える認知モデル』アリソン・G・ハーヴェイ(2002)

Harvey, A. G. (2002). A cognitive model of insomnia. Behaviour Research and Therapy, 40(8), 869–893. DOI:10.1016/S0005-7967(01)00061-4

この論文は、眠れない夜の頭の中で開かれる「ひとり反省会議」を見事に描いた研究です。ハーヴェイは、不眠の原因をただの“寝つきの悪さ”ではなく、「明日まずいぞ」「眠れない自分、終わったかも」と考えすぎる心のクセに注目しました。しかも眠れないことを監視しすぎて、脳内の見張り番が徹夜勤務。そりゃ眠れません。読むと、不眠とはベッドの問題だけでなく、頭の中の小さな騒音問題でもあるとわかる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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【心理学論文】なぜ人は眠れない夜に考えすぎてしまうのか?不眠の認知モデルをやさしく解説
【心理学論文】なぜ人は眠れない夜に考えすぎてしまうのか?不眠の認知モデルをやさしく解説

24.『高い自尊心は、本当に人生をよくするのか? – 成果・人間関係・幸福・健康的な暮らしをめぐる自尊心研究の大検証』ロイ・F・バウマイスター、ジェニファー・D・キャンベル、ヨアヒム・I・クルーガー、キャスリーン・D・ヴォース(2003)

Baumeister, R. F., Campbell, J. D., Krueger, J. I., & Vohs, K. D. (2003). Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles? Psychological Science in the Public Interest, 4(1), 1–44. DOI:10.1111/1529-1006.01431

この論文は、「自尊心を上げれば人生ぜんぶ良くなるんでしょ?」という世間の期待に、研究者たちが白衣でそっとツッコミを入れた一篇です。バウマイスターたちは、成績、人間関係、幸福、健康的な生活を調べ、「高い自尊心は気分のよさとは関係するけど、万能の魔法薬ではないぞ」と整理しました。つまり、自尊心は王様ではなく、少し声の大きい案内係。読むと、自己肯定感ブームの霧がすうっと晴れていきます。

阿部牧歌(管理人)
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【心理学論文】自己肯定感が高い人は本当に成功するのか? 自尊心研究が明かした意外な真実
【心理学論文】自己肯定感が高い人は本当に成功するのか? 自尊心研究が明かした意外な真実

25.『自己肯定感の低さは、思春期から若年成人期の抑うつにつながるのか』オース、ロビンズ、ロバーツ(2008)

Orth, U., Robins, R. W., & Roberts, B. W. (2008). Low self-esteem prospectively predicts depression in adolescence and young adulthood. Journal of Personality and Social Psychology, 95(3), 695–708. DOI:10.1037/0022-3514.95.3.695

「うつになるから自信がなくなるんでしょ?」と思ったあなた。この論文は、そこで腕まくりします。思春期から若年成人期の人たちを追いかけた結果、低い自尊心がその後のうつ症状を予測する可能性が見えてきました。つまり「自分なんて」という心の小声は、ただの弱音ではなく、未来の心の天気を知らせる小さな雲かもしれないのです。自尊心とうつの“どっちが先?”問題に挑んだ、心の名探偵みたいな研究です。

阿部牧歌(管理人)
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【論文要約】自己肯定感の低さはなぜ危ないのか? 若者のうつを予測した心理学研究
【論文要約】自己肯定感の低さはなぜ危ないのか? 若者のうつを予測した心理学研究

まとめ

感情・ストレス・メンタルの研究を見ていくと、まず思うのはこれです。
人の心、けっこう忙しい。

怒ったり、不安になったり、落ち込んだり、同じことをぐるぐる考えたり。
心の中では毎日、小さな会議が開かれています。

「この不安、どうする?」
「昨日のあの一言、まだ気になるんだけど」
「疲れてるけど、がんばる?」
「いや、今日はもう閉店でよくない?」

まるで心の中に、心配部長、反省課長、やる気係長、そして布団に帰りたい新人社員が同居しているようなものです。

でも、心理学の論文が教えてくれるのは、こういう心の動きを「弱さ」や「甘え」だけで片づけなくていい、ということです。
感情には感情の役割があります。ストレスにはストレスの仕組みがあります。メンタルの不調にも、背景やパターンがあります。

不安は、危険を知らせようとする心のセンサーかもしれません。
怒りは、大切なものが傷ついたサインかもしれません。
落ち込みは、心が一度立ち止まって、何かを整理しようとしている時間かもしれません。
そしてストレスは、「もう少し休ませてください」と心と体が出している、かなりまじめな申請書なのかもしれません。

もちろん、論文を読んだからといって、悩みが一瞬で消えるわけではありません。
心理学の論文は、魔法の薬ではなく、どちらかというと心の地図に近いものです。

今、自分はどのあたりで迷っているのか。
このしんどさには、どんな名前がつくのか。
どこに休める場所がありそうか。
誰に助けを求めればよさそうか。

そういうことを、少しずつ見えやすくしてくれます。

大事なのは、心がしんどいときに「自分はダメだ」と決めつけすぎないことです。
心が疲れるのは、怠けているからとは限りません。
がんばりすぎているのかもしれないし、抱えている荷物が多すぎるのかもしれないし、眠れていないのかもしれないし、誰にも言えない不安をひとりで抱えているのかもしれません。

心は、スマホのように充電が必要です。
しかも厄介なことに、残量表示がけっこう雑です。
朝は「まだ40%あります」と言っていたのに、昼には突然「残り3%です。省電力モードに入ります」と言い出すことがあります。

だからこそ、感情やストレスについて知ることには意味があります。
知ることで、自分を責める前に「今、何が起きているんだろう」と考えられるようになります。
それは、心に対して少しだけやさしい態度です。

このカテゴリーページでは、感情、ストレス、メンタルに関する論文を通して、心のしくみをわかりやすく紹介していきます。
不安な日も、疲れた日も、落ち込んだ日も、ここに並ぶ研究が「あなたの心は変です」と言うことはありません。

むしろ、そっとこう言ってくれるはずです。

「なるほど。そう感じるには、ちゃんと理由があるのかもしれませんね」

心を完全にコントロールすることは、たぶんできません。
でも、心の声を少し聞き取れるようになることはできます。
そのための小さな手がかりとして、これらの論文要約を読んでもらえたらうれしいです。

心が晴れの日も、くもりの日も、どしゃ降りの日も。
研究という小さな傘を持って、ゆっくり歩いていきましょう。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

あとがき

感情・ストレス・メンタルの論文をまとめていると、毎回思うことがあります。

人の心って、ほんとうに忙しいですね。

朝は「今日はいけるぞ」と言っていたのに、昼には「ちょっと不安です」と肩をたたいてくる。夕方には「そういえば、あの一言どういう意味だったんでしょうね」と反すう思考が勝手に再放送を始める。夜になると、布団の中で不安と反省が座談会を開く。

いや、もう寝かせてください。
心の会議室、24時間営業しなくていいんです。

けれど、心理学の論文を読んでいると、そういう心のややこしさも、少しだけ愛おしく見えてきます。

不安は、ただの邪魔者ではないのかもしれません。
怒りは、ただ性格が悪い証拠ではないのかもしれません。
落ち込みは、心が壊れたサインというより、心が一度立ち止まっている時間なのかもしれません。

もちろん、しんどいときに「それも大切な感情ですよ」なんて言われても、「いや、今はそういう美しい話じゃなくて、普通にしんどいんですけど」と言いたくなることもあります。わかります。心が大雨の日に、感情の意味を語られても、傘をください、タオルをください、あたたかい味噌汁をください、となります。

でも、それでもやっぱり、知ることには意味があると思うのです。

「自分は弱いから不安になるんだ」
「自分はダメだから落ち込むんだ」
「自分は根性がないからストレスに負けるんだ」

そうやって自分を責めていたところに、心理学の研究は、そっと別の言葉を置いてくれます。

「それは、感情調整の問題かもしれません」
「それは、ストレスの負荷が大きすぎるのかもしれません」
「それは、睡眠や人間関係や環境の影響もあるかもしれません」
「それは、あなた一人のせいではないかもしれません」

この「かもしれません」が、私は好きです。

断定しすぎない。
決めつけない。
でも、少しだけ心の逃げ道を作ってくれる。

心理学の論文は、ときどき難しい言葉をまとっています。専門用語という厚手のコートを着て、ちょっと近寄りがたい顔をしていることもあります。でも、そのコートを一枚ずつ脱がせていくと、中にはけっこう人間くさい問いがあります。

なぜ、人は不安になるのか。
なぜ、何度も同じことを考えてしまうのか。
なぜ、がんばっている人ほど燃え尽きるのか。
なぜ、人とのつながりは心を守ってくれるのか。
なぜ、自分にやさしくすることが、回復につながるのか。

どれも、私たちの毎日に直結している問いです。

「アドラーの昼寝」では、そうした論文をできるだけわかりやすく、できれば少し笑える形で紹介していきたいと思っています。心の話は大切ですが、ずっと深刻な顔で読み続けるのもしんどいですからね。メンタルの話をしているうちに、こちらのメンタルが体育座りを始めてしまっては困ります。

だから、このサイトでは、研究のまじめさは大切にしつつ、文章には少しだけ湯気を立てたいと思っています。読んだあとに、「なるほど」と思えて、ついでに「まあ、人間ってややこしいけど、ちょっと面白いな」と思えるような場所にしたいのです。

心がしんどい日は、誰にでもあります。

元気な人にもあります。
明るい人にもあります。
まじめな人にもあります。
よく笑う人にもあります。
支援する側の人にも、もちろんあります。

心がしんどい日に必要なのは、必ずしも立派な正解ではないのかもしれません。
ときには、「ああ、そういう仕組みもあるんだ」と知るだけでいい。
ときには、「自分だけじゃないんだ」と思えるだけでいい。
ときには、「今日はもう無理せず寝よう」と思えるだけで、十分立派な回復の一歩です。

このカテゴリーページが、そんな小さな一歩の手がかりになればうれしいです。

感情も、ストレスも、メンタルのゆらぎも、私たちの人生から完全になくなることはないのでしょう。
でも、それらを少し理解できるようになると、心の中で起きていることに、前より少しだけやさしくなれる気がします。

研究という小さなランプを片手に、心の森を歩いていく。
道に迷う日もあります。ぬかるみに足を取られる日もあります。急に変な鳥が鳴く日もあります。

それでも、ひとつ論文を読むたびに、足元が少しだけ見える。
それでいいのだと思います。

今日の心が晴れていても、曇っていても、少し雨が降っていても。
ここにある論文たちが、あなたの心にそっと腰かける、小さな休憩所になりますように。

阿部牧歌(管理人)
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