デイヴィッド・T・ニール(David T. Neal)の論文一覧:「気づけばまたやっている」を追いかけて、習慣の舞台裏をのぞいた心理学者

デイヴィッド・T・ニール(David T. Neal)の論文を読む女性
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デイヴィッド・T・ニール(David T. Neal)のプロフィール

デイヴィッド・T・ニールは、「人はどうして、わかっているのに同じことを繰り返してしまうのか」という、人類のちょっと切ない、でもかなり身近な謎を追いかけてきた心理学者です。

たとえば、「今日は早く寝よう」と決めたのに、気づけばスマホを持ったまま深夜の動画の海を漂っている。あるいは、「間食は控えよう」と宣言した直後に、いつもの棚からいつものお菓子を取り出している。頭の中では立派な会議が開かれているのに、手と足はすでに前回と同じ議案を可決している。ニールは、そんな人間の不思議な自動運転に、研究のライトを当ててきました。

彼が大切にしたのは、「人は毎回、よく考えて行動している」という見方だけではありません。むしろ私たちの毎日には、場所、時間、目の前の物、直前の行動などを合図にして、半自動的に始まる行動がたくさんあります。朝、台所に立つと自然にコーヒーを入れる。映画館に入ると、そこまで空腹ではなくてもポップコーンを食べたくなる。帰宅すると、なぜかソファに吸い寄せられる。人間は意外と、気合いだけで動く生き物ではないのです。場面に背中を押され、習慣にハンドルを握らせながら生きています。

ニールは、こうした習慣を「意志が弱い人の失敗」として片づけませんでした。習慣とは、何度も同じ場面で同じ行動をくり返すうちに、心と環境のあいだにできる近道のようなものです。一度舗装されると、私たちはその道をほとんど意識せず歩けるようになります。だから習慣は、朝の支度や歯みがきのような良い行動を助けてもくれます。しかし、夜更かしや衝動買いのような困った行動にも、同じくらい律儀に働いてしまう。習慣は善悪を判断する裁判官ではなく、ただ仕事熱心な自動運転係なのです。

彼の研究が面白いのは、「やる気を出そう」で話を終わらせないところにあります。悪い習慣を変えたいなら、自分を説教部屋に閉じ込めるより、行動が始まるきっかけを見直したほうがいい場合がある。お菓子を食べすぎるなら、目につく場所に置かない。スマホを触りすぎるなら、寝室の外で充電する。運動を続けたいなら、帰宅後に迷わず履ける場所へ靴を置く。つまり、意志の力だけで巨大な象を押すより、象が歩く道そのものを少し変える。そんな発想です。

デイヴィッド・T・ニールは、オーストラリアのメルボルン大学で心理学と哲学を学び、社会心理学の博士号を取得しました。その後はアメリカのデューク大学や南カリフォルニア大学で研究に携わり、習慣、判断、意思決定、消費者の行動、健康に関わる行動の変化などを幅広く研究してきました。現在は、行動科学を活用する調査・助言会社の創設パートナーとして、人が何を選び、何を信じ、どのように行動するのかを、研究だけでなく現実の社会課題にもつなげています。

彼の仕事を読むと、「自分はだめだ」と責める前に、一度まわりを見渡したくなります。自分を動かしているのは、本当に決意だけなのか。それとも、机の上のスマホ、帰り道のコンビニ、いつもの時間、いつもの場所が、知らないうちにこちらの背中を押しているのか。

習慣とは、人生を乗っ取る怪物ではありません。けれど、放っておくと勝手に運転席へ座る、少々せっかちな同乗者ではあります。デイヴィッド・T・ニールの研究は、その同乗者に怒鳴るのではなく、地図を見せ、座る場所を変え、行き先を少しずつ調整するための知恵を教えてくれます。

参考文献・確認先:David T. Neal 公式プロフィール(Catalyst Behavioral Sciences) / Google Scholar:David Neal 論文・引用情報 / PubMed:David T. Neal 共著代表論文

阿部牧歌(管理人)
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デイヴィッド・T・ニール(David T. Neal)の研究から学べること

デイヴィッド・T・ニールの研究から学べることは、意外なくらい人にやさしい話です。

世の中には、「続かないのは意志が弱いからだ」と言いたがる人がいます。早起きできない。運動が三日坊主。ついスマホを見てしまう。お菓子を買わないと決めたのに、帰り道のコンビニで新作チョコを手にしている。

すると心の中に、腕組みをした厳しい監督が現れます。

「もっと根性を出しなさい」
「気合いが足りません」
「あなたは自分に甘いです」

しかし、デイヴィッド・T・ニールたちの習慣研究を読むと、その監督には少し静かにしてもらったほうがよさそうです。なぜなら私たちは、毎回すべてを“決意”で動かしているわけではないからです。

人はかなりの部分を、いつもの場所、いつもの時間、いつもの流れに押されながら生きています。

朝、洗面所に立つと歯ブラシを取る。仕事から帰ると、何となくソファに座る。テレビをつけると、何となく何か食べたくなる。布団に入ると、何となくスマホを開く。

この「何となく」が、なかなか侮れません。

習慣とは、毎日の中で何度も使われた行動の近道です。心が「この場面では、いつものあれを出しておけばいいですね」と、親切にも過去の行動を自動で持ってきてくれる。便利な仕組みです。歯みがきや家の鍵かけのような良い習慣なら、まさに生活の名脇役です。

ただし、この名脇役、ときどき勝手に主役顔をします。

「夜だから動画ですね」
「休憩だから甘いものですね」
「不安だから買い物ですね」

こちらが頼んでいないのに、過去の台本を開いて、せっせと再演を始めるのです。しかも本人は悪気がありません。習慣は意地悪な怪物ではなく、少し仕事熱心すぎる自動運転係なのです。

だから、変えたい行動があるときに、自分だけを責めてもあまりうまくいきません。「私はだめだ」と反省会を開くより先に、「この行動は、何をきっかけに始まっているのだろう」と観察するほうが役に立ちます。

たとえば、夜更かしをやめたいなら、寝る前にスマホを見ないよう気合いを入れるだけでは、毎晩の自分との格闘技大会になります。そこで、充電器を寝室の外に置く。ベッドの近くには本を置く。眠る時間になったら照明を少し落とす。こうして「夜更かしへ向かう流れ」そのものを変えていく。

運動も同じです。「明日こそ走るぞ」と心に大太鼓を鳴らすより、玄関に運動靴を出しておく。仕事から帰ったら、まず着替える。散歩コースに入りやすい道を選ぶ。行動の入口を少しだけ広くする。

要するに、人生を変えるのは、ときどき大きな決意ではありません。むしろ、目の前に置く物、通る道、始める時間、手の届く場所。そんな小さな仕掛けのほうが、毎日の行動にはよく効くことがあります。

これは、気合いを否定する話ではありません。気合いは大切です。大切なのですが、気合いは毎日フル出勤できる社員ではありません。寝不足の日もありますし、落ち込む日もありますし、雨の日には有給を取りたがることもあります。

だからこそ、気合いが不在でも回る仕組みをつくる。

デイヴィッド・T・ニールの研究は、その発想を私たちに渡してくれます。「強い人になろう」と自分を追い込むより、「良い行動が始まりやすい環境をつくろう」と考える。失敗したときも、「また意思が弱かった」と判決を下すのではなく、「どんな場面が、この行動のスイッチになったのだろう」と探偵の目で見てみる。

人は、立派な決意だけで生きているわけではありません。私たちは、身の回りの景色に影響され、昨日までの繰り返しに助けられ、ときには振り回されながら生きています。

だから人生を少し変えたいときは、自分を叱る前に、まず部屋を見てみる。机の上を見てみる。帰り道を見てみる。いつもの時間帯を見てみる。

そこにはきっと、あなたの行動をこっそり動かしている、小さな舞台装置があるはずです。

習慣を変えるとは、自分を別人に作り替えることではありません。毎日の舞台の小道具を、ほんの少し置き換えることです。すると不思議なことに、未来の自分が、以前より少しだけ楽に、望むほうへ歩き出せるようになります。

阿部牧歌(管理人)
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デイヴィッド・T・ニール(David T. Neal)の論文一覧

1.『習慣をあらためて見つめる――「いつもの行動」と目標が出会う場所』ウェンディ・ウッド、デイヴィッド・T・ニール(2007)

Wood, W., & Neal, D. T. (2007). A New Look at Habits and the Habit–Goal Interface. Psychological Review, 114(4), 843–863. DOI:10.1037/0033-295X.114.4.843

「目標は立派、行動はいつもの道」。そんな人間の小さな反乱を解き明かす論文です。ウッドとニールは、私たちが毎回「よし、やるぞ」と熟考して動くのではなく、場所や時間、直前の行動と結びついた合図で、習慣が半自動的に起動すると描きます。だから「夜更かしをやめる」は決意表明だけでは苦戦。スマホの置き場、帰宅後の流れ、目に入るお菓子まで、舞台装置を変える必要があるのです。目標と習慣は仲良しか、時に別行動か。やる気の迷子を救う、習慣研究の名論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人は「やめたい習慣」を続けてしまうのか? ウェンディ・ウッドらの研究が示した行動の自動運転
【心理学論文】なぜ人は「やめたい習慣」を続けてしまうのか? ウェンディ・ウッドらの研究が示した行動の自動運転

2.『習慣は今日も同じ舞台をくり返す』デイヴィッド・T・ニール、ウェンディ・ウッド、ジェフリー・M・クイン(2006)

Neal, D. T., Wood, W., & Quinn, J. M. (2006). Habits—A Repeat Performance. Current Directions in Psychological Science, 15(4), 198–202. DOI:10.1111/j.1467-8721.2006.00435.x

「またやった……」と、寝る前にスマホを開き、気づけば動画を三本見ている。犯人は意志の弱さだけではありません。本論文が追いかけるのは、場所・時間・前の行動と結びついて、脳内で勝手に再生される“習慣”の仕組みです。いつものソファ、いつもの帰り道、いつもの疲れた夜。舞台がそろうと、行動はアンコールを始める。ダイエットも先延ばしも、気合いの不足ではなく、場面に仕掛けられた自動再生かもしれません。だから変えたいなら、根性を盛るより「いつ・どこで始まるか」を見つけること。習慣の裏口をのぞく、生活に効く一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】なぜ人は同じ行動をくり返すのか?習慣を動かす「いつもの場面」の正体
【心理学論文】なぜ人は同じ行動をくり返すのか?習慣を動かす「いつもの場面」の正体
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