デイヴィッド・クロス(David Cross)の論文一覧:「その人、ぼくと違うこと考えてる?」子どもが他人の心に気づく瞬間を追った心理学者

デイヴィッド・クロス(David Cross)の論文一覧:「その人、ぼくと違うこと考えてる?」子どもが他人の心に気づく瞬間を追った心理学者
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デイヴィッド・クロス(David Cross)のプロフィール

デイヴィッド・クロスは、子どもの発達や「人は他人の心をどう理解するようになるのか」を研究してきた心理学者です。

……と書くと、なんだか白衣を着て、難しい顔で子どもの脳をのぞいている人物を想像してしまいますが、クロスの研究をたどっていくと、もう少し人間くさいテーマが見えてきます。

「子どもは、いつから“自分と他人は違うことを考えている”とわかるのだろう?」

「つらい経験をした子どもに、大人はどう関わればいいのだろう?」

「子どもを変えようとする前に、まず安心できる関係をつくることが大切なのでは?」

そんな問いを、研究という道具を使って長年追いかけてきた人です。

アメリカのテキサス・クリスチャン大学で心理学を教え、現在は名誉教授となっています。また、同大学のカリン・パーヴィス子ども発達研究所で、研究や教育、支援活動にも長く携わってきました。

心理学だけでなく「統計」もしっかり学んだ人

クロスは、カリフォルニア州立大学フレズノ校で心理学を学んだあと、ミシガン大学大学院へ進みました。

そこで心理学だけを勉強したのかと思いきや、心理学の修士号に加えて、統計学の修士号も取得しています。さらに教育と心理学の博士号を取得しました。

ここ、地味に重要です。

心理学というと、

「人の心について、じっくり考える学問」

という印象があります。

もちろん、それも間違いではありません。

でも研究の世界では、

「なんとなく、こう見えますね」

では話が終わりません。

「本当にそうなの?」

「何人くらい調べたの?」

「偶然じゃないの?」

「別の研究でも同じ結果になってる?」

と、数字たちがぞろぞろ会議室に入ってきます。

クロスは、いわば「心を見る目」と「数字を見る目」の両方を身につけた研究者だったわけです。

そして、この二刀流が非常によく表れているのが、のちにヘンリー・M・ウェルマン、ジュリアン・ワトソンと発表した有名な研究です。

「その人、間違ったことを信じてます」を子どもは理解できるのか

2001年、クロスはヘンリー・M・ウェルマン、ジュリアン・ワトソンとともに、「心の理論」の発達について、それまでの研究を大規模に整理した論文を発表しました。

扱われた中心テーマは、子どもの「誤信念」の理解です。

「誤信念」と書くと急に教科書が腕組みを始めますので、簡単な例で考えてみましょう。

ある子が、お菓子を青い箱に入れて部屋を出ました。

その間に別の人が、お菓子を赤い箱へ移します。

さて、最初の子が戻ってきたら、どこを探すでしょう?

大人なら、

「本人は移されたことを知らないんだから、青い箱を探すでしょう」

と考えます。

ところが幼い子どもにとって、これは意外と難しい。

自分は「お菓子が赤い箱にある」と知っています。

すると、その自分の知識をいったん脇へ置いて、

「でも、あの人は知らない」

と考えなければなりません。

これができるということは、

「他人の頭の中には、自分とは違う世界がある」

ということを理解しているわけです。

考えてみれば、かなり大きな一歩です。

人間関係の歴史における一大事件と言ってもいい。

「えっ、みんな私と同じことを知ってるわけじゃないの?」

という世界から、

「なるほど、人には人の頭の中があるのか」

という世界へ移るのです。

大人でも、ときどき忘れますけどね。

「普通これくらいわかるでしょ」

と言った瞬間、心の理論が少し休憩に入っています。

178の研究をまとめて見えてきたもの

クロスたちの研究が面白いのは、ひとつの実験だけを見たものではないところです。

それまでに行われていた178の研究をまとめて分析しました。

こうした方法は「メタ分析」と呼ばれます。

一つひとつの研究を木だとすれば、森全体を上空から眺めるような研究方法です。

「この研究では3歳児もできた」

「いや、こちらでは難しかった」

「質問の仕方を変えるとうまくいった」

そんな、一見するとバラバラに見える結果を並べ、

「では全体として、何が起きているのだろう?」

と調べました。

その結果、子どもの年齢だけでなく、国や課題の出し方などによって成績が変わることがわかりました。そして、それらの条件をまとめて考えることで、誤信念課題の成績の違いをかなりの程度説明できることが示されました。

つまり、

「3歳なら絶対できない」

「簡単にすれば赤ちゃんのころから全部わかっている」

と、一本の線でバッサリ切れる話ではない。

子どもの心は、スイッチを押して突然「他人の心理解モード」が起動するわけではなく、条件や経験とかかわりながら発達していく。

そんな複雑な姿が見えてきたのです。

研究室から「傷ついた子どもをどう支えるか」へ

そしてクロスの経歴には、もう一つ大きな柱があります。

それが、虐待やネグレクト、トラウマなど、困難な経験をしてきた子どもたちへの支援です。

テキサス・クリスチャン大学では、カリン・パーヴィスとともに子どもの発達を研究する組織を立ち上げ、2008年には現在のカリン・パーヴィス子ども発達研究所につながる研究所を共同設立しました。

そこで発展させていったのが、子どもとの「信頼関係」を重視する支援の考え方です。

難しい経験をしてきた子どもは、ときに大人から見ると理解しにくい行動をします。

言うことを聞かない。

突然怒る。

物を隠す。

人を試すような行動をする。

大人側から見ると、

「どうしてそんなことするの?」

となります。

でもクロスたちが大切にした視点は、そこで子どもを単純に「問題のある子」と決めつけないことでした。

その行動の後ろには、これまで経験してきた世界があるかもしれない。

安心できなかった記憶があるかもしれない。

「大人は信用していい存在なのか」を確かめているのかもしれない。

つまり、

行動だけを見るのではなく、その子がどんな世界を見ているのかを考える。

これは、クロスが関わってきた「他人の心を理解する研究」と、不思議なくらい響き合っています。

研究対象が変わっても、

「この人には、この人なりに見えている世界がある」

という問いは、ずっと底を流れているように見えます。

「困った子」ではなく「困っている子」かもしれない

クロスとパーヴィスらが発展させた支援法では、愛着やトラウマについての知識をもとに、子どもとのつながり、安全感、適切な行動の学習などを重視します。

クロスは、こうした研究・教育・支援活動を通じて、虐待やネグレクト、早期のトラウマなどを経験した子どもたちについて、多くの学術論文を発表してきました。

ここから見えてくるのは、

「子どもの行動を直せば、それで終わり」

という発想とは少し違う心理学です。

たとえば、大人から見れば、

「この子は言うことを聞かない」

なのかもしれません。

でも子どもの側から世界をのぞけば、

「大人を信用して大丈夫なのかわからない」

なのかもしれない。

表面だけを見ると「反抗」。

少し深く見ると「防御」。

もっと深く見ると「怖い」。

人間の行動というものは、玉ねぎみたいなところがあります。

一枚むくと、また一枚ある。

そして調子に乗ってむきすぎると、こちらが泣きます。

だから心理学は面白いのでしょう。

子どもを見ることは、その子の「世界」を想像すること

クロスは長年テキサス・クリスチャン大学で教壇に立ち、学生や研究者を育てながら、研究と実践の両方に携わりました。

2016年から2022年まではカリン・パーヴィス子ども発達研究所の責任者を務め、2022年末に大学での長いキャリアを終えています。現在は名誉教授として紹介されています。

デイヴィッド・クロスの研究を一本の言葉でまとめるなら、

「人の行動だけではなく、その人から世界がどう見えているのかを考える」

という姿勢なのかもしれません。

幼い子どもは、他人の頭の中に自分とは違う考えがあることを、少しずつ理解していきます。

そして大人になった私たちは、その能力を一応持っているはずなのですが、日常生活では案外よく忘れます。

「なんでそんなことするの?」

「普通こうするでしょう」

「どう考えてもこっちが正しいじゃない」

そんな言葉が口から出そうになったとき、クロスの研究を思い出すと少し面白いかもしれません。

相手の頭の中には、自分とは違う地図が広がっている。

その地図は、こちらからは直接見えません。

だからこそ、人は想像する。

話を聞く。

確かめる。

そして、ときには「そう見えていたのか」と驚く。

子どもの心の発達を研究してきたデイヴィッド・クロスの仕事は、突き詰めれば、そんな当たり前で難しいことを私たちに教えてくれているように思います。

人を理解する第一歩は、「自分にはまだ見えていないものがある」と知ること。

子どもの心を研究していたら、いつの間にか大人の人間関係にも刺さってくる。

心理学という学問、なかなか油断できません。

参考文献・確認先:テキサス・クリスチャン大学:David Cross 公式プロフィール / カリン・パーヴィス子ども発達研究所:David Cross 紹介 / PubMed:David Cross 関連論文 / Google Scholar:David Cross 関連論文

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

デイヴィッド・クロス(David Cross)の研究から学べること

デイヴィッド・クロスの研究を読んでいると、だんだん不思議な気持ちになってきます。

研究の入り口は「子どもは、いつから他人の考えを理解できるようになるのか」という発達心理学の話なのですが、しばらく歩いていると、

「これ、子どもの話だけじゃないな」

と気づくんです。

むしろ大人の人間関係にも、かなり刺さります。

職場で、

「なんでこんな簡単なことが伝わらないんだろう」

家庭で、

「普通、それくらいわかるでしょ」

友人関係で、

「こっちの気持ち、察してくれてもよくない?」

……はい、ここです。

人間は大人になると、他人の心を理解する能力そのものは発達します。

ところが、能力を持っていることと、毎回きちんと使えることは別問題です。

包丁を持っているからといって、全員が毎晩きれいな桂むきをしているわけではありません。

心を想像する力も、それと少し似ています。

クロスの研究から見えてくるのは、結局のところ、

「人には、自分とは違う世界が見えている」

という、とても単純で、とても忘れやすい事実なのです。

「自分が知っていること」を、相手も知っているとは限らない

クロスたちが研究した重要なテーマのひとつに、子どもの「誤った信念」の理解があります。

簡単にいうと、

「自分は本当のことを知っている。でも、相手は間違った情報をもとに考えている」

という状況を理解できるかどうかです。

たとえば、お菓子が最初は引き出しに入っていたとします。

太郎くんはそれを見て、部屋から出ました。

そのあと、お母さんがお菓子を棚へ移します。

あなたはそれを見ています。

さて、太郎くんが戻ってきたら、どこを探すでしょうか。

もちろん、太郎くんは移動したことを知りません。

だから引き出しを探します。

大人からすると、

「そりゃそうでしょう」

という話です。

ところが、この「そりゃそうでしょう」の中には、けっこう高度なことが入っています。

自分は、

「お菓子は棚にある」

と知っています。

でも同時に、

「太郎くんは知らない」

という別の世界を頭の中につくらなければいけない。

つまり、

自分の知識と、相手の知識を分ける必要がある。

これができるようになることは、人間の社会生活にとってものすごく重要です。

なぜなら私たちは毎日、

「あの人は何を知っているだろう」

「この説明だけで伝わるだろうか」

「相手は自分とは違う前提を持っていないだろうか」

と考えながら生きているからです。

ところが大人になると、この基本動作を忘れることがあります。

「前にも言ったよね?」

と言ったけれど、相手は覚えていなかった。

「これくらい説明しなくてもわかるよね?」

と思ったら、まったく伝わっていなかった。

こちらは頭の中で第三話まで進んでいるのに、相手はまだ第一話の冒頭です。

それなのに、

「なんでわからないの?」

と怒ってしまう。

いやいや、放送回が違います。

まず同じ話数まで戻りましょう。

クロスたちの研究から日常生活へ持ち帰れる大事な知恵のひとつは、

「自分が知っていることと、相手が知っていることを分けて考える」

ということです。

仕事でも教育でも、人間関係でも、これはかなり役に立ちます。

「普通はこう思う」を少し疑ってみる

クロスたちの研究では、数多くの研究結果をまとめて分析することで、子どもの成績が年齢だけでは決まらないことも示されました。

課題の出し方。

質問の仕方。

文化や環境。

さまざまな条件によって、結果は変わります。

これは心理学研究として大切な発見ですが、日常生活に置き換えると、もっと面白くなります。

私たちは誰かの行動を見ると、すぐその人の性格で説明したくなります。

「あの人はやる気がない」

「この子は集中力がない」

「この人はコミュニケーションが苦手だ」

パッとラベルを貼る。

人間の脳には、どうやらラベルプリンターが内蔵されているようです。

でもクロスたちの研究を見ていると、

「ちょっと待って。本当にその人そのものの問題なの?」

という視点が出てきます。

説明の仕方を変えればできるかもしれない。

環境を変えればできるかもしれない。

安心できる人と一緒ならできるかもしれない。

時間を少し長く取ればできるかもしれない。

つまり、

「できない人」ではなく、「今の条件では難しい人」なのかもしれない。

この違いは大きいです。

「できない人」と決めてしまえば、話はそこで終了します。

でも、

「条件を変えたらどうだろう?」

と考えれば、まだ次の手があります。

人を見るときに、性格だけでなく環境を見る。

これはクロスの研究から学べる、とても実用的な視点だと思います。

「困った行動」の奥に何があるのか

クロスの研究活動には、もうひとつ重要な柱があります。

虐待やネグレクト、トラウマなど、つらい経験をしてきた子どもたちへの支援です。

こうした子どもたちは、ときに周囲の大人から見ると「理解しにくい行動」をすることがあります。

急に怒る。

言うことを聞かない。

必要以上に警戒する。

人を遠ざける。

わざと大人を困らせているように見える。

ここで、

「この子は問題行動が多い」

とだけ考えてしまうと、その子の表面しか見えません。

でも少し視点を変えてみます。

もし、その子がこれまで、

「大人を信用すると傷つく」

という経験を繰り返していたら?

もし、

「いつ何が起きるかわからない」

という環境で生きてきたら?

すると、警戒することや人を試すことは、本人にとってはむしろ自然な反応だった可能性があります。

つまり、大人にとっては「困った行動」でも、

子どもにとっては、

「これまで自分を守るために必要だった行動」

なのかもしれない。

ここは非常に大切です。

行動だけを見ると、

「なんでそんなことをするの?」

となります。

背景まで見ると、

「そうしないと生き延びられなかったのかもしれない」

に変わる。

同じ人を見ているのに、景色がまるで違ってきます。

行動を変える前に、安心をつくる

クロスらが関わってきた子ども支援では、「信頼できる関係」がとても大切にされています。

これは考えてみれば当然です。

私たち大人だって、不安でいっぱいのときに、

「はい、それでは今日から前向きになりましょう」

と言われても、

「そのボタン、どこですか」

となります。

安心できていない状態では、人は新しいことを学びにくい。

誰かに心を開くことも難しい。

失敗を恐れず挑戦することも難しい。

だから、

「どうすれば正しい行動をさせられるか」

だけを考えるのではなく、

「この人が安心できる条件は何だろう」

と考える。

これは子育てだけの話ではありません。

学校でも職場でも同じです。

新人が質問しない。

会議で誰も発言しない。

失敗を隠す。

相談が遅れる。

そこで、

「もっと積極的に!」

「ちゃんと報告して!」

と言うのは簡単です。

でも、その前に考えてみる価値があります。

質問したとき、笑われないだろうか。

失敗を報告したら、強く責められないだろうか。

弱音を吐いたら、評価を下げられないだろうか。

もしそんな不安があるなら、必要なのは「積極性を持て」という号令ではなく、安心して動ける関係なのかもしれません。

人は機械ではありません。

ボタンを押して、

「協調性アップ」

「自己肯定感+20」

なんてできません。

まず土台がいる。

その土台のひとつが、安心です。

「その人なりの理由」があると考えてみる

クロスの研究から私たちが学べることを、ものすごく簡単に言えば、

「人の行動には、その人なりの理由がある」

ということかもしれません。

もちろん、理由があるからといって、どんな行動でも許されるわけではありません。

人を傷つける行動には、境界線も必要です。

社会にはルールも必要です。

でも、

「その行動を認めること」

と、

「その行動が生まれた理由を理解しようとすること」

は別です。

ここをごちゃ混ぜにすると、

「理解したら甘やかすことになる」

となってしまいます。

そうではありません。

理解することは、賛成することではない。

「なぜそうなったのか」を知ったうえで、よりよい方法を一緒に探すことです。

たとえば、誰かが怒鳴った。

怒鳴ること自体はよくない。

でも、

「怒鳴るなんて最低だ」

で終わるのか、

「何がそこまで追い詰めたんだろう」

まで考えるのかで、その後の関係は変わります。

心理学は、人を無罪にするための学問ではありません。

人間を、少し丁寧に見るための学問なのだと思います。

人間関係がこじれたら「相手の地図」を想像してみる

私たちは、自分の頭の中に一枚の地図を持っています。

ここは安全。

ここは危険。

これは常識。

これは失礼。

これは愛情。

これは裏切り。

ところが、相手の地図は違います。

こちらでは「普通の道」でも、相手の地図では「立入禁止」になっているかもしれない。

こちらでは「親切」のつもりでも、相手には「干渉」に見えることもある。

逆もあります。

だから人間関係では、ときどき、

「なんで?」

という事故が起こります。

ここでクロスの研究的な視点を借りるなら、

「相手がおかしい」

と即決する前に、

「この人の地図では、どう見えているんだろう」

と考えてみる。

もちろん、完璧に理解することなどできません。

人間の心には説明書がついていません。

しかも本人さえ、ときどき説明書を紛失しています。

それでも、

「自分にはまだ見えていない事情があるかもしれない」

と思うだけで、他人を見る目は少し柔らかくなります。

大人になっても「他人の心を理解する練習」は終わらない

子どもは成長するにつれて、

「他人には、自分とは違う考えがある」

と理解するようになります。

でも面白いことに、大人になったからといって、人の心が全部わかるわけではありません。

むしろ、

「わかったつもり」

が増えるぶん、やや厄介になることさえあります。

「この人はこういう人」

「あの人ならきっとこう考えている」

「どうせ言っても無駄」

経験が増えるほど、予測も増えます。

予測は便利です。

でも、ときどき外れます。

だからクロスの研究から学べる最大のことは、

他人の心を理解するとは、正解を当てることではなく、「自分の見方だけが世界のすべてではない」と覚えておくことなのかもしれません。

知らないなら聞く。

わからないなら想像する。

想像したら、決めつけず確認する。

とても地味です。

でも、人間関係を壊さない知恵というものは、たいてい地味です。

魔法の言葉ではなく、

「もしかすると、自分とは違って見えているのかもしれない」

という小さな余白。

その余白があるだけで、人は相手を少し待てるようになります。

少し話を聞けるようになります。

そして、ときには、

「なるほど。あなたにはそう見えていたんですね」

と言えるようになる。

デイヴィッド・クロスの研究が教えてくれるのは、そんな人間理解の基本なのだと思います。

人を理解したいなら、まず「まだ理解できていないかもしれない」と思ってみる。

なんとも控えめな結論です。

でも、たぶん人間関係では、このくらい控えめなほうがちょうどいい。

他人の心というものは、勝手に開けていい引き出しではありません。

ノックして、少し待って、開けてもらったところから眺める。

そのくらいの距離感が、人と人のあいだには必要なのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

デイヴィッド・クロス(David Cross)の論文一覧

1.『子どもはいつ「人は間違って信じる」とわかる? 心の理論の発達を読み解くメタ分析』ヘンリー・M・ウェルマン、デイヴィッド・クロス、ジュラン・ワトソン(2001)

Wellman, H. M., Cross, D., & Watson, J. (2001). Meta-Analysis of Theory-of-Mind Development: The Truth about False Belief. Child Development, 72(3), 655–684.
DOI:10.1111/1467-8624.00304

「子どもって、いつから“他人は自分と違うことを信じている”とわかるの?」。ウェルマン、クロス、ワトソンは、この素朴だけど奥深い疑問に、なんと178の研究を集めて挑みました。すると、成績は質問の仕方だけで決まるのではなく、年齢とともに「他人の心」を理解する力そのものが発達していく傾向がくっきり。

「簡単な問題にすれば、幼い子も最初から全部わかってるのでは?」という説に対して、研究チームは「いや、どうやら心の理解そのものが育っているぞ」と示します。子どもの頭の中で、“自分の世界”の隣に“他人の世界”が生まれていく。その瞬間を大量の研究から追いかけた、発達心理学の名論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
心の理論は何歳から育つ?子どもの「他人の考え」を理解する力を178研究から解説
心の理論は何歳から育つ?子どもの「他人の考え」を理解する力を178研究から解説
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