子どもの心は、どうやって育っていく?発達・子育て・教育を考える心理学の名論文25選

子どもの心は、どうやって育っていく?発達・子育て・教育を考える心理学の名論文25選
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Contents
  1. 子どもの頭の中では、今日も「人間になる会議」が開かれている
  2. 第1章 赤ちゃん、どうやら思った以上にいろいろ考えています
  3. 第2章 ほめれば伸びる?ごほうびをあげれば頑張る?大人の声かけ研究室
  4. 第3章 「ちゃんとしなさい」の前に知りたい、自制心と実行機能

子どもの頭の中では、今日も「人間になる会議」が開かれている

子どもを見ていると、ときどき不思議になります。

さっきまで床に寝転んで、

「くつした、はきたくない!」

と人生最大の危機みたいな顔をしていたのに、10分後には、

「どうして空は青いの?」

と、急に人類規模の質問を投げてくる。

いや、こちらはまだ靴下問題から立ち直っていないんですが。

でも考えてみれば、子どもというのは毎日ものすごい勢いで世界を勉強しています。

言葉を覚える。

人の表情を読む。

「これはやっていい」「これは怒られる」を覚える。

友だちとケンカして、仲直りして、ときには仲直りできなくて布団の中で悔しがる。

失敗して、「もうやらない」と言った翌日に、また挑戦する。

そうやって少しずつ、

「この世界で、どう生きていけばいいのか」

を学んでいきます。

大人になると、「成長」という言葉から身長や成績を思い浮かべがちですが、子どもの中で育っているものは、それだけではありません。

我慢する力。

考える力。

人を信じる力。

気持ちを言葉にする力。

失敗から立ち直る力。

誰かと一緒にやっていく力。

そして、「自分はここにいても大丈夫なんだ」と感じる力。

目には見えませんが、心の中では毎日、大工事が行われています。

しかも工事現場には説明書がありません。

親も先生も、

「こちらが完成予定図です」

なんて渡されていない。

だから大人は迷います。

「ほめたほうがいいのかな?」

「叱らないほうがいい?」

「ごほうびって使っていいの?」

「宿題はちゃんとやらせるべき?」

「友だちとうまくいかないとき、どこまで口を出す?」

「この子、集中力がないのかな……」

子育ても教育も、正解のないクイズ大会みたいなところがあります。

しかも回答時間はだいたい3秒です。

子どもが牛乳をこぼした瞬間、

「さあ、あなたならどう声をかけますか?」

と突然出題される。

そんなもの、あとで心理学の本を読んでいるときなら立派な回答ができます。

現場では、

「だから言ったでしょう!」

が先に飛び出すこともある。

人間ですもの。

そこで頼りになるのが、心理学や発達科学の研究です。

もちろん論文を読めば、

「子育ての正解が全部わかります」

というわけではありません。

残念ながら、そんな万能取扱説明書はまだ出版されていません。

でも研究は、

「どうやら、こういう傾向がありそうです」

「昔はこう考えられていましたが、最近は少し見方が変わっています」

「大人の何気ない言葉が、意外なところで子どもの心に影響するようです」

と、暗い道に小さな街灯を置いてくれます。

この特集では、そんな子どもの発達・子育て・教育を考えるうえで知っておきたい心理学の名論文を25本集めました。

赤ちゃんはどうやって言葉を覚えるのか。

「頭いいね」とほめることは、本当に良いことなのか。

ごほうびをあげると、やる気はどうなるのか。

我慢できる子は将来成功する、という有名な話は本当なのか。

先生との関係は、その後の学校生活にどれくらい関わるのか。

宿題や休み時間には、本当に意味があるのか。

そんな身近な疑問を、研究者たちはかなり本気で調べてきました。

なかには、

「そこまで調べる?」

と思わず笑ってしまう研究もあります。

しかし、その「そこまで調べる?」の積み重ねのおかげで、私たちは少しずつ子どもの心を理解できるようになってきました。

そして、この25本を読んでいくと、おそらく最後にはひとつのことに気づくと思います。

子どもを育てるというのは、

優秀な人間を効率よく製造することではない。

一人の人間が、失敗したり、泣いたり、誰かとぶつかったりしながら、

「自分なりに世界と付き合っていく力」

を育てていくことなのだ、と。

赤ちゃんだった人が、やがて誰かを好きになり、何かに夢中になり、自分で人生を選んでいく。

その長い旅の途中で、心の中では何が起きているのでしょうか。

研究者たちが残した25本の論文を道しるべに、ちょっとのぞいてみることにしましょう。

どうやら子どもの心の中は、大人が思っているよりずっと忙しく、ずっと繊細で、そしてかなり面白い世界のようです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

この特集でわかること

この特集でわかるのは、ひと言でいえば、

「子どもって、思っていたよりずっと複雑に世界を見ているんだな」

ということです。

たとえば赤ちゃん。

まだ言葉も話せないし、こちらとしては、

「眠いのかな」
「おなかすいたのかな」
「いや、そのスプーンは食べ物じゃないよ」

くらいのやり取りをしている時期ですが、研究の世界から見ると、赤ちゃんはかなり忙しい。

音の並びから言葉の規則を見つけたり、人の表情を読み取ったり、目の前から消えた物が「なくなったわけではない」と理解したり。

こちらが思っている以上に、頭の中では世界の取扱説明書をせっせと作っています。

しかも説明書は白紙からです。

なかなかの大仕事です。

この特集では、そんな赤ちゃんの発達から始まり、幼児期、学童期、思春期へと進みながら、子どもの心がどんなふうに育っていくのかを研究から追いかけていきます。

「ほめれば伸びる」は、本当にそれだけでいい?

子育てや教育の話になると、

「いっぱいほめましょう」

という言葉をよく聞きます。

もちろん、ほめてもらえたらうれしい。

大人だって、

「今日の資料、わかりやすかったですよ」

と言われた日は、帰り道の足取りが若干軽くなります。

ところが心理学は、そこで止まりません。

「では、何をどうほめるのかによって違いはあるのでしょうか?」

と聞いてくる。

たとえば、

「頭がいいね」

と能力そのものをほめるのと、

「ずいぶん工夫したね」

と努力や過程に注目するのでは、その後の失敗への向き合い方が違うかもしれない。

さらに、

「ごほうびをあげれば、もっとやる気になるでしょう」

という直感にも、

「ちょっと待った」

をかける研究があります。

つまりこの特集では、

大人の何気ない言葉や関わり方が、子どものやる気や考え方とどう結びつくのか

も見ていきます。

「ほめるか、ほめないか」という二択ではありません。

心理学はだいたい、二択で終わらせようとすると横から椅子を持ってきて、

「まあ、もう少し条件を見ましょう」

と座り始めます。

「我慢できる子=将来成功する子」なのか?

子どもの発達研究には、世間でとても有名になった実験もあります。

代表的なのが、いわゆる「マシュマロ実験」。

目の前のお菓子を我慢できた子どもほど、将来うまくいく。

そんな話をどこかで聞いたことがある人もいるかもしれません。

すると大人としては、

「よし、我慢できる子に育てよう!」

となりそうですが、研究というのはそう簡単には終わらない。

後になって、

「家庭環境なども考えたら、結果の見え方が変わるのでは?」

という再検討が行われました。

ここが科学の面白いところです。

有名な研究だから永久に正しい、ではありません。

一度わかったと思ったことでも、別の研究者が、

「本当に?」

ともう一度調べる。

すると話が少し変わることがあります。

この特集では、研究結果だけでなく、そんな心理学が自分自身を修正していく姿も紹介していきます。

子どもについて学ぶ特集ですが、同時に、

「科学ってどうやって少しずつ確かになっていくんだろう?」

というところまで味わえる構成です。

成績の前には、「学べる心」がある

教育の話になると、どうしても最後は成績の話になりがちです。

点数。

順位。

テスト。

偏差値。

通知表。

数字はわかりやすいので、つい目立ちます。

けれど、子どもが学ぶためには、その手前にいろいろな力があります。

集中する。

気持ちを切り替える。

失敗してももう一度やってみる。

わからないときに助けを求める。

先生を信頼する。

友だちとうまくやっていく。

「自分にもできるかもしれない」と思う。

こうした力はテスト用紙には直接書かれません。

でも学ぶことの土台になっています。

この特集では、実行機能、自制心、動機づけ、成長マインドセット、教師との関係、社会性や感情の学習などを通して、

「勉強ができる・できない」の奥には、どんな心の働きがあるのか

を見ていきます。

すると、

「この子はやる気がない」

という一言だけでは片づけられなくなってきます。

もしかすると、やる気の問題ではなく、疲れているのかもしれない。

失敗が怖いのかもしれない。

どう取り組めばいいかわからないのかもしれない。

周囲との関係に安心できていないのかもしれない。

人間は、外から見える行動だけでは案外わからないものです。

これは子どもだけではなく、大人もだいぶ同じですが。

親や先生は、「完璧な人」でなくてもいい

そして、この特集を通してもうひとつ見えてくるのが、

子どもの成長は、子ども一人だけの問題ではない

ということです。

先生との関係。

親との関係。

友だちとの関係。

学校という環境。

遊ぶ時間。

眠る時間。

そうしたものが、複雑に絡み合っています。

だから、

「子ども本人がもっと頑張ればいい」

だけでもないし、

「全部親の育て方で決まる」

でもありません。

人間の発達は、そんな一人犯人探しの刑事ドラマみたいな仕組みではないのです。

いろいろな要因が重なり合って、一人の子どもの毎日ができています。

これは少し安心できる話でもあります。

親も先生も、毎回100点の対応をする必要はありません。

牛乳をこぼされた瞬間に、発達心理学の論文を思い出して完璧な声かけをする必要もありません。

たぶん無理です。

大事なのは、

「こういう見方もあるのか」

と知っておくこと。

知識は、誰かを採点するために使うよりも、

「もしかすると、この子にはこんな事情があるのかもしれない」

と想像するために使ったほうが、ずっと役に立ちます。

この25本の論文は、子どもを思い通りに動かすための攻略本ではありません。

むしろ、

子どもの行動を急いで決めつけないための25枚の虫眼鏡

のようなものです。

泣く。

怒る。

飽きる。

失敗する。

友だちとぶつかる。

勉強したくないと言う。

それらを単なる「困った行動」として見るのではなく、

「この子の中では、いま何が起きているんだろう?」

と一歩だけ近づいて考えてみる。

そのとき心理学の研究は、答えそのものではなく、問い方を少し上手にしてくれます。

この特集を読み終えるころ、

子どもを見る目がほんの少しだけ変わっていたら。

そしてついでに、

「そういえば、自分にもこんな時期があったな」

と、自分の子ども時代にも少しやさしくなれたなら。

この25本を集めた意味は、十分にあるのではないかと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

第1章 赤ちゃん、どうやら思った以上にいろいろ考えています

1.『8か月の赤ちゃんは、ことばの規則を見抜ける? 音の並びから学ぶ「統計学習」』ジェニー・R・サフラン、リチャード・N・アスリン、エリッサ・L・ニューポート(1996)

Saffran, J. R., Aslin, R. N., & Newport, E. L. (1996). Statistical Learning by 8-Month-Old Infants. Science, 274(5294), 1926–1928.
DOI:10.1126/science.274.5294.1926

「赤ちゃんって、まだ言葉も話せないのに、どうやって単語を見つけてるの?」そんな素朴な疑問に挑んだのがこの研究です。8か月の赤ちゃんに、区切りのない人工的な音の流れを聞かせると、なんと「この音とこの音はよく一緒に出てくる」という規則を手がかりに、単語らしいまとまりを見分けました。つまり赤ちゃん、静かに寝転がっているだけに見えて、耳の奥ではかなり働いています。言葉を教わる前から、世界のパターンを拾っている。人間の学びの始まりをのぞける、なんとも愛らしくて奥深い一本です。

阿部牧歌(管理人)
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赤ちゃんはどうやって言葉を覚える?8か月児が音の規則から単語を見つける力
赤ちゃんはどうやって言葉を覚える?8か月児が音の規則から単語を見つける力

2.『赤ちゃんは外国語の音をどう学ぶ?短い外国語体験と人との交流が育てる「聞き分ける力」』パトリシア・K・クール、フェンミン・ツァオフエイメイ・リウ(2003)

Kuhl, P. K., Tsao, F.-M., & Liu, H.-M. (2003). Foreign-language experience in infancy: Effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learning. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 100(15), 9096–9101.

「赤ちゃんに外国語、流しておけば覚えるのでは?」さて、本当にそうでしょうか。クールたちは9か月ごろの赤ちゃんに中国語を体験してもらい、生身の人との交流と、映像・音声だけの場合を比べました。すると、中国語を話す人と直接やり取りした赤ちゃんでは、外国語特有の音を聞き分ける学習が見られた一方、映像や音声だけでは同じ効果が確認されませんでした。「耳に入れば同じ」ではなかったのです。言葉は音として届くけれど、学びは“人とのあいだ”で育つのかもしれない。赤ちゃんの小さな耳から、人間の学びの大きな謎をのぞく一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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赤ちゃんの外国語聞き流しは効果がある?対面と録音を比べた研究
赤ちゃんの外国語聞き流しは効果がある?対面と録音を比べた研究

3.『「見えなくなっても、ちゃんとそこにある?」生後3か月半・4か月半の赤ちゃんにみる物体の永続性』ルネ・バイヤルジョン(1987)

Baillargeon, R. (1987). Object permanence in 3½- and 4½-month-old infants. Developmental Psychology, 23(5), 655–664.
DOI:10.1037/0012-1649.23.5.655

「赤ちゃんって、見えなくなった物は“消えた”と思ってるの?」そんな素朴な疑問に挑んだのが、バイヤルジョンの有名な研究です。生後3か月半・4か月半の赤ちゃんに、箱があるのにスクリーンが通り抜けるような「ありえない場面」を見せると、赤ちゃんはそこをじーっ。どうやら「いや、箱そこにありますよね?」と気づいているらしいのです。まだ話せない、探せない。でも世界のルールはもう少しわかっているのかもしれない。赤ちゃんの「見る時間」から、知性の芽生えをのぞく一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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物体の永続性はいつから?生後3か月半・4か月半の赤ちゃんを検証
物体の永続性はいつから?生後3か月半・4か月半の赤ちゃんを検証

4.『子どもはいつ「人は間違って信じる」とわかる? 心の理論の発達を読み解くメタ分析』ヘンリー・M・ウェルマン、デイヴィッド・クロス、ジュラン・ワトソン(2001)

Wellman, H. M., Cross, D., & Watson, J. (2001). Meta-Analysis of Theory-of-Mind Development: The Truth about False Belief. Child Development, 72(3), 655–684.
DOI:10.1111/1467-8624.00304

「ぼくが知ってるんだから、あの人も知ってるよね?」さて、子どもはいつから「他人には自分とは違う考えがある」とわかるのでしょうか。ウェルマンたちは、なんと178もの研究をまとめて大検証。すると、3〜5歳ごろに「本当はここ。でも、あの人は別の場所だと思ってる」という理解がぐんと育つことが見えてきました。ただし、問題の出し方でも成績は変わる。つまり「4歳で心が読めます、はい完成!」ほど単純ではありません。子どもの頭の中に“他人の世界”が生まれていく瞬間を追った、発達心理学の名研究です。

阿部牧歌(管理人)
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心の理論は何歳から育つ?子どもの「他人の考え」を理解する力を178研究から解説
心の理論は何歳から育つ?子どもの「他人の考え」を理解する力を178研究から解説

5.『スティルフェイス・パラダイムのさまざまな顔:赤ちゃんの反応を読み解くレビューとメタ分析』ジュディ・メスマン、マリヌス・H・ファン・アイゼンドールン、マリアン・J・バケルマンス=クラネンブルグ(2009)

Mesman, J., van IJzendoorn, M. H., & Bakermans-Kranenburg, M. J. (2009). The many faces of the Still-Face Paradigm: A review and meta-analysis. Developmental Review, 29(2), 120–162.
DOI:10.1016/j.dr.2009.02.001

「赤ちゃんって、親の顔をどこまで見てるの?」そんな疑問に迫ったのが、スティルフェイス実験です。親が突然、無表情・無反応になると、赤ちゃんは笑顔が減り、不快そうになったり、視線をそらしたりします。メスマンらは、こうした研究を大量に集めて検証。「たまたま泣いた」ではなく、多くの研究で似た反応が確認されました。しかも面白いのは、親が普通に戻っても、赤ちゃんの気持ちは即リセットとは限らないこと。人は言葉を話す前から、ちゃんと“返事”を待っているのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
親が無表情になると赤ちゃんはどうなる?スティルフェイス実験の研究結果
親が無表情になると赤ちゃんはどうなる?スティルフェイス実験の研究結果

第2章 ほめれば伸びる?ごほうびをあげれば頑張る?大人の声かけ研究室

6.『子どもは攻撃行動を見て学ぶ?大人のマネから広がる攻撃性を調べた研究』アルバート・バンデューラ、ドロシア・ロス、シーラ・A・ロス(1961)

Bandura, A., Ross, D., & Ross, S. A. (1961). Transmission of aggression through imitation of aggressive models. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 63(3), 575–582.
DOI:10.1037/h0045925

「子どもって、大人のことをどこまで見てるの?」その疑問に真正面から挑んだのが、バンデューラらの有名なボボ人形実験です。大人が人形をたたいたり蹴ったりする姿を見せると、子どもたちはその後、似た攻撃行動をまねしました。しかも「やってみて」と言われたわけではありません。ただ見ていただけ。つまり、人は教えられなくても、他人の行動から学ぶことがあるのです。「子どもは大人の背中を見て育つ」という言葉を、心理学が実験室で確かめにいったような一篇。観察学習の原点をのぞきたい人には、ぜひ読んでほしい研究です。

阿部牧歌(管理人)
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子どもは大人の攻撃行動をまねする?実験でわかった観察学習の影響
子どもは大人の攻撃行動をまねする?実験でわかった観察学習の影響

7.『ごほうびをあげると、『好き』が減る? 外的報酬が子どもの内発的な興味を弱める:『過剰正当化』仮説の検証』マーク・R・レッパー、デイヴィッド・グリーン、リチャード・E・ニスベット(1973)

Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjustification” hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137. DOI:10.1037/h0035519

「ご褒美をあげれば、もっとやる気が出るでしょ?」――と思ったら、心理学がそっと首をかしげました。レッパーたちは、もともとお絵描きが好きな子どもたちに「描いたらご褒美」を約束。すると後日、ご褒美がない自由時間では、自分から描く時間が減ったのです。ポイントは、ご褒美そのものより「好きだからやる」が「もらうためにやる」へ変わること。人のやる気は、ニンジン一本で操れるほど単純じゃない。子育てにも仕事にも刺さる、ちょっと怖くてかなり面白い古典的実験です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
ご褒美でやる気は下がる?子どもの「好き」を弱めた心理学実験
ご褒美でやる気は下がる?子どもの「好き」を弱めた心理学実験

8.『「頭がいいね」と褒めると、かえってやる気が下がる? 子どもの意欲と成績を揺らす“知能への称賛”』クラウディア・M・ミューラー、キャロル・S・ドゥエック(1998)

Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52. DOI:10.1037/0022-3514.75.1.33

「頭がいいね!」って、最高の褒め言葉……ですよね? ところがミューラーとドゥエックは、そこに静かに「ほんとに?」を置きました。子どもたちに問題を解いてもらい、「頭がいい」と褒める場合と「よく頑張った」と褒める場合を比較。すると差が出たのは、成功した瞬間より“失敗したあと”。能力を褒められた子ほど、挑戦を避けたり、やる気や成績を落としたりする傾向が見えました。褒め言葉はごほうびではなく、次の失敗の受け止め方まで変えるかもしれない。子育てだけでなく、大人にも妙に刺さる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
子どもの褒め方でやる気は変わる?「頭がいい」と努力を褒める違い
子どもの褒め方でやる気は変わる?「頭がいい」と努力を褒める違い

9.『「あなたはいい子」と「よく工夫したね」は何が違う? 人そのものを褒める・叱ることと、取り組み方を褒める・叱ることが自己価値と立ち直る力に与える影響』メリッサ・L・カミンズ、キャロル・S・ドゥエック(1999)

Kamins, M. L., & Dweck, C. S. (1999). Person versus process praise and criticism: Implications for contingent self-worth and coping. Developmental Psychology, 35(3), 835–847.
DOI:10.1037/0012-1649.35.3.835

「いい子だね!」。ほめ言葉なのだから、子どもの心にはプラスになる……と思いますよね。ところがカミンズとドゥエックは、「ちょっと待って。その“いい子”って、何をほめてるの?」と実験しました。5〜6歳児を対象に、人そのもの・結果・取り組み方への評価を比べると、違いが顔を出したのは失敗したあと。人そのものを評価された子どもは、「今回は失敗した」から「自分がダメなのかも」へ傾きやすい反応を示しました。褒めるな、ではありません。褒め言葉にも“宛先”がある。何気ない「いい子だね」の奥をのぞいてみたくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
「いい子だね」と褒めるとどうなる?5〜6歳児の研究でわかった失敗後の反応
「いい子だね」と褒めるとどうなる?5〜6歳児の研究でわかった失敗後の反応

10.『知能についての暗黙の理論は、思春期の移行期における学業成績を予測する:縦断研究と介入研究』リサ・S・ブラックウェル、カリ・H・トジェスニエフスキー、キャロル・ソリッチ・ドゥエック(2007)

Blackwell, Lisa S., Trzesniewski, Kali H., & Dweck, Carol Sorich. (2007). Implicit Theories of Intelligence Predict Achievement Across an Adolescent Transition: A Longitudinal Study and an Intervention. Child Development, 78(1), 246–263. DOI:10.1111/j.1467-8624.2007.00995.x

「頭の良さって、生まれつき決まってるんじゃないの?」――この素朴な疑問を、中学生を追いかけて本気で調べたのがBlackwellらの研究です。ポイントは、最初から頭がいいかどうかより、「知能は伸ばせる」と考えているかどうか。その考え方は、努力の意味づけや失敗後の行動、さらに数学成績の伸び方とも関係していました。しかも研究者たちは、実際に「知能は伸びる」と教える介入まで実施。「前向きに考えよう!」で終わらず、本当に成績の軌道まで変わるのかを追った、成長マインドセット研究の代表作です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
成長マインドセットと成績は関係する?中学生を2年間追った研究
成長マインドセットと成績は関係する?中学生を2年間追った研究

第3章 「ちゃんとしなさい」の前に知りたい、自制心と実行機能

11.『「子どもは『今すぐ』を我慢できる? ごほうびを待つ力から見える自己コントロールの発達」』ウォルター・ミシェル、正田佑一、モニカ・ラレア・ロドリゲス(1989)

Mischel, W., Shoda, Y., & Rodriguez, M. L. (1989). Delay of gratification in children. Science, 244(4907), 933–938. DOI:10.1126/science.2658056

「マシュマロを我慢できた子は将来うまくいく」……そんな話で有名なこの研究。でも、本当に面白いのはそこだけではありません。「食べたい。でも待ちたい!」そんな心の綱引きの中で、子どもたちは目をそらしたり、別のことを考えたりして誘惑との距離を調整していました。さらに、幼いころの“待つ力”は、その後の学業や社会的な適応とも関連していたのです。自制心は根性なのか、それとも心の使い方なのか。マシュマロ一個から、人間の「未来を選ぶ力」をのぞいてみる論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
子どもが我慢できないのはなぜ?マシュマロ実験でわかった注意と自制心のしくみ
子どもが我慢できないのはなぜ?マシュマロ実験でわかった注意と自制心のしくみ

12.『マシュマロ・テストを再検証する:「我慢できる子は将来うまくいく」は本当か? 幼少期の『待つ力』とその後の人生を追った研究』タイラー・W・ワッツ、グレッグ・J・ダンカン、ハオナン・クアン(2018)

Watts, T. W., Duncan, G. J., & Quan, H. (2018). Revisiting the Marshmallow Test: A Conceptual Replication Investigating Links Between Early Delay of Gratification and Later Outcomes. Psychological Science, 29(7), 1159–1177.

「マシュマロを我慢できる子は、将来もうまくいく」そんな有名な話、本当にそこまで単純なのでしょうか。ワッツたちは、918人の子どもをもとに、4歳半ごろの“待てる力”と15歳の成績や行動を再検証しました。すると、たしかに待てた子ほど成績が高い傾向はありましたが、家庭環境や幼いころの能力まで考えると、その関係はぐっと小さくなります。マシュマロ一個に未来を背負わせすぎていたのかも?「意志の強さ」だけでは語れない、人の成長の複雑さが見えてくる研究です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
マシュマロテストで将来はわかる?子どもの我慢と15歳の成績の関係
マシュマロテストで将来はわかる?子どもの我慢と15歳の成績の関係

13.『勉強ができる子は、頭がいいだけ? 自分をコントロールする力と、算数・読み書き能力の関係』クランシー・ブレア、レイチェル・ピーターズ・ラッザ(2007)

Clancy Blair & Rachel Peters Razza (2007).
Relating Effortful Control, Executive Function, and False Belief Understanding to Emerging Math and Literacy Ability in Kindergarten.
Child Development, 78(2), 647–663.
DOI:10.1111/j.1467-8624.2007.01019.x

「勉強ができる子って、やっぱり頭がいいんでしょ?」と思ったら、ちょっと待った。この研究が注目したのは、知能だけではなく「やりたいことを少し我慢する」「気持ちを切り替える」「注意を向け直す」といった心のブレーキとハンドルです。3〜5歳の子ども141人を追ったところ、こうした自己調整力は、のちの算数や読み書きの力と関係していました。特に目立ったのが「今それをやらない!」と自分を止める力。つまり、勉強の土台には知識より先に、頭の中の小さな交通整理係がいるのかもしれません。「賢さって何だろう?」を少し考え直したくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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子どもの学力は頭のよさだけじゃない?自制心との関係を調べた研究
子どもの学力は頭のよさだけじゃない?自制心との関係を調べた研究
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