仕事・勉強のパフォーマンスを高める心理学論文25選|やる気・記憶・集中・上達・職場環境

仕事・勉強のパフォーマンスを高める昼寝をする女性
adler-nap
Contents
  1. 頑張っているのに結果が出ない。その努力、少しだけ置き場所が違うのかもしれません
  2. 第1章 人は、どうすれば動き出せるのか
  3. 第2章 どう学べば、知識は頭に残るのか
  4. 第3章 集中力は、どこへ消えていくのか
  5. 第4章 人は、どうすれば上達できるのか

頑張っているのに結果が出ない。その努力、少しだけ置き場所が違うのかもしれません

「もっとやる気を出さないと」

「集中力さえあれば、仕事も勉強も進むのに」

「自分は覚えるのが苦手だから、何度も読み直すしかない」

そんなことを考えながら、今日も机に向かっている人は多いのではないでしょうか。

ところが、心理学の論文を読んでいると、ときどき研究者が静かにこちらを見て、こんなことを言ってきます。

「その頑張り方、本当に合っていますか?」

なかなか失礼な質問です。こちらはもう十分に頑張っているのです。朝は眠い目をこすり、昼は通知に追い回され、夜には「今日は何をしていたんだろう」と天井を見つめています。努力なら、ちゃんと出勤しています。成果だけが、たまに無断欠勤しているのです。

けれども、仕事や勉強の結果は、単純な努力量だけでは決まりません。

どんな目標を立てるのか。
いつ、どこで行動を始めるのか。
学んだ内容を読み返すのか、それとも思い出すのか。
集中が切れたとき、さらに踏ん張るのか、短く休むのか。
どんな練習をして、どんな言葉でフィードバックを受けるのか。
そして、失敗や質問を安心して口にできる職場なのか。

こうした小さな条件が、人のやる気や記憶、集中力、上達、仕事の成果を大きく左右します。

つまり、成果が出ないときに見直すべきなのは、必ずしも「自分の根性」ではありません。根性は便利な言葉ですが、何でも入れられる押し入れのようなものです。集中できないのも根性、覚えられないのも根性、疲れたのも根性不足。そんなに詰め込んだら、そろそろ襖が外れます。

この特集では、仕事・学び・パフォーマンスに関する心理学研究から、特に知っておきたい25本の論文を紹介します。

扱うのは、目標設定、モチベーション、記憶に残る勉強法、集中力を奪う中断、上達につながる練習、効果的なフィードバック、心理的安全性、職場からの支援などです。

「結果を出す人は、意志が強い特別な人なのだ」と考えるのではなく、

「人が力を発揮しやすい条件とは何だろう」

という視点で、一つひとつの研究を見ていきます。

論文と聞くと、難しい言葉が眼鏡をかけて廊下を歩いてくるような印象があるかもしれません。ですが、その中で研究されているのは、私たちが毎日のように経験していることです。

なぜ、やろうと思ったのに始められないのか。
なぜ、勉強した直後は覚えていたのに、翌日には消えているのか。
なぜ、仕事を切り替えたのに、頭だけが前の作業に残っているのか。
なぜ、同じアドバイスでも、伸びる人と落ち込む人がいるのか。

研究者たちは、そんな日常の「なぜ」を実験室や職場で待ち伏せし、少しずつ正体を明らかにしてきました。

この25本を読み終えたとき、「もっと頑張らなければ」と自分を追い立てるのではなく、「頑張りやすい形に変えてみよう」と思っていただけたらうれしいです。

努力を増やす前に、努力が働きやすい環境をつくる。

この特集は、そのための心理学的な作戦会議です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

この特集でわかること

この特集では、仕事や勉強で結果を出すために必要なものを、「気合」「才能」「朝4時起き」の三点セットだけで説明しません。

もちろん、努力は大切です。けれども、努力というのは少々お人よしで、置かれた環境によって働きぶりが大きく変わります。

目標がぼんやりしていれば、努力は玄関で靴を履いたまま立ち尽くします。
通知が鳴り続ければ、集中力はそのたびに席を外します。
勉強法が合っていなければ、記憶は「それでは失礼します」と翌朝には帰ってしまいます。

そこで、この特集では「もっと頑張る方法」ではなく、頑張った力がきちんと成果につながる条件を、25本の心理学論文から考えていきます。

やる気がなくても、行動を始める方法がわかる

「やる気が出たら始めよう」と思っているうちに、夕方になっていた。そんな経験はないでしょうか。

やる気は、こちらの都合に合わせて定時出勤してくれるとは限りません。呼んでも来ない日がある一方で、寝る直前になって突然、「今から部屋を片づけよう」と張り切り始めることもあります。自由人です。

この特集では、やる気の到着を待つのではなく、目標の立て方や行動計画を工夫することで、動き始めやすくする方法を紹介します。

「いつか勉強する」ではなく、「夕食後に机を開く」。
「仕事を頑張る」ではなく、「午前中に資料の見出しを3つ作る」。

行動を小さく、具体的にするだけで、心のエンジンは少し回りやすくなります。

覚えたことを、頭に残す勉強法がわかる

教科書を何度も読み返し、蛍光ペンで大事なところを黄色く染め、ノートを美しくまとめる。

ここまでくると、勉強したという満足感はかなりあります。ノートだけ見れば、もう合格していても不思議ではありません。

ところが、いざ問題を解こうとすると、

「見たことはあるんですが、お名前が出てきません」

と、記憶が初対面のふりをすることがあります。

この特集では、読み返すだけでなく、自分の頭から思い出す練習や、時間を空けて学び直す方法など、記憶に残りやすい学習法を扱います。

大切なのは、勉強中に「わかりやすい」と感じることだけではありません。少し苦労して思い出す時間が、あとで使える知識を育てることもあるのです。

集中力を奪っているものがわかる

「自分には集中力がない」

そう思っている人もいるかもしれません。

けれども、集中して資料を作っている最中に、メールが届き、チャットが光り、電話が鳴り、誰かが「今ちょっといいですか」と顔を出してくる環境では、集中力にも同情の余地があります。

この特集では、作業の中断、仕事の切り替え、未完了の課題、心のさまよいなどが、注意力にどう影響するのかを紹介します。

人は、仕事を切り替えた瞬間に、頭まで完全に切り替えられるわけではありません。体は新しい仕事の席に座っていても、思考の一部は前の会議室でまだ資料を片づけています。

集中できない自分を叱る前に、集中を細切れにしているものを見つける。その視点が手に入ります。

上達する練習と、伸びにくい練習の違いがわかる

長く続けていれば、いつか自然に上達する。

そう信じたいところですが、残念ながら、人は間違ったやり方にもかなり上手に慣れることができます。

同じ作業を何年もしているからといって、必ずしも毎年上達しているとは限りません。「経験10年」が、「1年分の経験を10回繰り返した状態」になっていることもあります。

この特集では、ただ回数を重ねる練習と、弱点を見つけ、課題を調整し、フィードバックを受けながら行う練習の違いを考えます。

また、アドバイスなら何でも人を伸ばすわけではないことも見ていきます。

「もっと頑張って」
「積極性を出して」
「君ならできる」

言われた側が、「具体的には何を?」と心の中で会議を始めてしまう言葉もあります。

役に立つフィードバックとは何か。どのように伝えれば、次の行動につながるのか。その手がかりも見えてきます。

人が力を発揮しやすい職場環境がわかる

仕事の成果というと、つい本人の能力や性格だけに注目しがちです。

しかし、質問すると嫌な顔をされる。失敗を報告すると責められる。仕事量は増えるのに、相談相手も裁量もない。

そんな職場で「もっと主体的に動いてください」と言われても、心はなかなか前に出られません。主体性にも、防具が必要な日があります。

この特集では、心理的安全性、仕事の意味、職場からの支援、仕事の負担と資源など、環境とパフォーマンスの関係も扱います。

優秀な人を集めれば、自然によいチームになるわけではありません。意見を言えること、助けを求められること、自分の仕事が誰かにつながっていると感じられること。そうした見えにくい条件が、チームの学習や成果を支えています。

「自分がダメだから」という結論から、少し離れられる

この特集で最も持ち帰ってほしいのは、仕事や勉強がうまくいかないときに、すぐ自分の性格を犯人にしなくてもよい、という視点です。

始められないのは、怠けているからとは限りません。
覚えられないのは、頭が悪いからとは限りません。
集中できないのは、意志が弱いからとは限りません。
成果が出ないのは、努力が足りないからとは限りません。

目標の立て方、学習方法、仕事の区切り方、休憩、助言の受け方、周囲との関係、職場の仕組み。変えられる場所は、意外とたくさんあります。

人間の心は、叱れば必ず動く機械ではありません。条件が整えば動きやすくなり、条件が悪ければ立ち止まります。それは甘えではなく、かなり人間らしい仕組みです。

25本の論文を通して見えてくるのは、「できる人になる秘訣」という魔法の呪文ではありません。

自分の力が働きやすいように、目標を整え、学び方を選び、集中を守り、練習を工夫し、環境を見直すこと。

この特集は、自分をさらに追い込むためのムチではなく、今ある努力が迷子にならないための案内板です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

第1章 人は、どうすれば動き出せるのか

1.『目標は、なぜ人を動かすのか:実践で役立つ目標設定とモチベーション理論を築いた35年の軌跡』エドウィン・A・ロック、ゲイリー・P・レイサム(2002)

Locke, E. A., & Latham, G. P.(2002). Building a Practically Useful Theory of Goal Setting and Task Motivation: A 35-Year Odyssey. American Psychologist, 57(9), 705–717. DOI:10.1037/0003-066X.57.9.705

「目標は高いほどいいんでしょ?」
「ちょっと待った。高すぎる目標は、心が先に帰宅します」

ロックとレイサムが35年分の研究を整理して見つけたのは、ただ「頑張れ」と言うより、具体的で少し難しい目標のほうが人を動かしやすいということでした。しかも大事なのは、本人の納得、途中経過の確認、そして方法を学ぶ余地。目標は根性を叩き起こすムチではなく、注意や努力を一か所に集める道しるべだったのです。「やる気がない」と自分を責める前に、目標の作り方を疑ってみたくなる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】目標はなぜ人を動かすのか?ロック&レイサムの「目標設定理論」をやさしく解説
【論文要約】目標はなぜ人を動かすのか?ロック&レイサムの「目標設定理論」をやさしく解説

2.『実行意図:「もし〜なら、〜する」という小さな計画が、行動を大きく変える』ピーター・M・ゴルヴィツァー(1999)

Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503. DOI:10.1037/0003-066X.54.7.493

「よし、明日から運動するぞ!」。ところが翌日、決意はソファの隙間へ失踪。ゴルヴィッツァーは、そんな“やる気の神隠し”に対して、「もし夕食を食べ終えたら、靴を履いて10分歩く」のように、行動の合図まで決めておこうと提案します。これが「実行意図」です。気合いを増やすのではなく、未来の自分が迷わないよう、行動へのレールを先に敷いておく。目標がいつも三日坊主になる人ほど、「意志の弱さではなく、計画の形が問題だったのかも」と膝を打ちたくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【心理学論文】「やるつもり」が続かないのはなぜ? 「もし〜なら、〜する」で行動を変える「実行意図」の研究
【心理学論文】「やるつもり」が続かないのはなぜ? 「もし〜なら、〜する」で行動を変える「実行意図」の研究

3.『未来への「ただの空想」を、逃げられない目標に変える方法――目標設定を自分で動かす心理学』ガブリエレ・エッティンゲン、ヒョンジュ・パク、カロリーネ・シュネッター(2001)

Oettingen, G., Pak, H.-J., & Schnetter, K. (2001). Self-regulation of goal setting: Turning free fantasies about the future into binding goals. Journal of Personality and Social Psychology, 80(5), 736–753.
DOI:10.1037/0022-3514.80.5.736

「夢は大きく! 明るい未来を思い描こう!」……ところが、夢だけでお腹いっぱいになると、脳はそこで祝勝会を始めてしまうかもしれません。エッティンゲンらは4つの実験から、望む未来と、それを邪魔する現実を頭の中で並べる「メンタル・コントラスティング」を検証しました。実現できそうなら決意と努力が強まり、難しそうなら無謀な目標から手を引きやすくなる。夢をしぼませる研究ではなく、夢にタイヤをつける研究です。「前向きに考えれば十分」と思っていた人ほど、続きを読みたくなる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ
【心理学論文】夢を描くだけでは叶わない?「空想」を本気の目標に変える心のしくみ

4.『ごほうびは、やる気の火を強めるのか消すのか:外からの報酬が内なる意欲に与える影響を読み解くメタ分析レビュー』エドワード・L・デシ、リチャード・ケストナー、リチャード・M・ライアン(1999)

Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668. DOI:10.1037/0033-2909.125.6.627

「これをやったら、ご褒美をあげるよ!」
よし、やる気アップ……と思いきや、心の中では「ご褒美がないなら、もうやらなくていいか」となることがあります。デシたちは128件の実験をまとめ、外から与えられる報酬が、もともとあった「やりたい!」を弱める場合があると報告しました。ただし、ほめ言葉まで悪者ではありません。ご褒美は心のガソリンか、それともやる気に貼られた値札なのか。読むと、子どもの教育も職場の評価制度も、少し違って見えてくる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】ごほうびはやる気を奪うのか?報酬と内発的動機づけの意外なしくみ
【論文要約】ごほうびはやる気を奪うのか?報酬と内発的動機づけの意外なしくみ

5.『「この仕事には意味がある」は成果を変えるのか? – 仕事の意義がパフォーマンスを高める仕組みと、その効果が生まれる条件』アダム・M・グラント(2008)

Grant, A. M.(2008). The Significance of Task Significance: Job Performance Effects, Relational Mechanisms, and Boundary Conditions. Journal of Applied Psychology, 93(1), 108–124.
DOI:10.1037/0021-9010.93.1.108

「最近、仕事のやる気が出なくてさ」

「その仕事、誰の役に立ってるか知ってる?」

「えっ、給料日の自分?」

「それも大事。でもグラントは、仕事で実際に助かった人の存在が見えると、働き方や成果が変わるのかを職場実験で確かめたんだ」

電話の仕事も、プールの見張りも、作業自体は同じ。それでも“仕事の向こう側”が見えると、人はもう一歩動けることがある。ただし、誰にでも同じように効く万能薬ではありません。やりがいは気合ではなく、誰かとのつながりから生まれるのかも。仕事を見る目が、少しだけ変わる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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仕事のやりがいは成果を高める?3つの職場実験でわかった条件
仕事のやりがいは成果を高める?3つの職場実験でわかった条件

第2章 どう学べば、知識は頭に残るのか

6.『テストが学びを強くする:記憶を試すことが、長期的な定着を高める』ヘンリー・L・ローディガー3世、ジェフリー・D・カーピック(2006)

Roediger, H. L., III, & Karpicke, J. D.(2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. DOI:10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x

「同じページを4回読めば、さすがに覚えるでしょう」

そう思ったあなたに、ローディガーとカーピックが静かにテスト用紙を差し出します。

「では、本を閉じて思い出してください」

研究では、何度も読み返した人は直後の成績こそ好調でしたが、2日後、1週間後には、途中で何度も思い出すテストをした人のほうがよく覚えていました。しかも読み返し組ほど「覚えられそう」と自信満々。記憶は、見つめるより呼び出したほうが育つ。勉強法の常識を、じわっと裏返す一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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記憶を定着させる方法は?読み返すより「思い出す」復習が効く
記憶を定着させる方法は?読み返すより「思い出す」復習が効く

7.『記憶は「詰め込み」より「間を空ける」と強くなるのか?――言葉を長く覚える分散学習の研究レビューと定量的統合』ニコラス・J・セペダ、ハロルド・パシュラー、エドワード・ヴァル、ジョン・T・ウィクステッド、ダグ・ローラー(2006)

Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D.(2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380. DOI:10.1037/0033-2909.132.3.354

「一気に10回読めば、さすがに覚えるでしょう?」

「その場ではね。でも来週、記憶が静かに退去しているかもしれません」

セペダたちは184本の論文をまとめ、詰め込み学習より、時間を空けて何度か学ぶほうが記憶に残りやすいと示しました。しかも、復習は早ければ早いほどよいわけではありません。明日まで覚えたいのか、半年後まで残したいのかで、ちょうどよい間隔は変わります。記憶は根性よりも再会の予定を重視するらしい。勉強時間を増やす前に、次にいつ会うかを考えたくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
復習のタイミングはいつがいい?間隔を空ける分散学習の効果を解説
復習のタイミングはいつがいい?間隔を空ける分散学習の効果を解説

8.『思い出す練習は、概念マップを使って詳しく学ぶよりも、大きな学習効果を生み出す』ジェフリー・D・カーピック、ジャネル・R・ブラント(2011)

Karpicke, J. D., & Blunt, J. R.(2011). Retrieval Practice Produces More Learning Than Elaborative Studying With Concept Mapping. Science, 331(6018), 772–775.
DOI:10.1126/science.1199327

「勉強したぞ!」と満足げな概念マップ君。対する検索練習君は、資料を閉じて「ええと、何だったかな……」と苦戦中。ところが1週間後のテストでは、思い出す練習をした人のほうが、暗記問題だけでなく理解を問う問題でも好成績でした。「分かった気がする」と「本当に使える」は別ものだったのです。きれいなノートより、白紙の前でうなる時間が記憶を育てる?勉強の常識を静かにひっくり返す一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
勉強しても覚えられない人へ|「思い出す練習」の効果を実験で解説
勉強しても覚えられない人へ|「思い出す練習」の効果を実験で解説

9.『数学の問題は「シャッフル」して解くと、もっと身につく』ダグ・ローラー、ケリー・M・テイラー(2007)

Rohrer, D., & Taylor, K.(2007). The Shuffling of Mathematics Problems Improves Learning. Instructional Science, 35(6), 481–498.
DOI:10.1007/s11251-007-9015-8

「数学の問題は、同じ種類をまとめて解くのが効率的ですよね?」「ところが、問題をバラバラに混ぜたほうが、あとでよく解けたんです」。ローラーとテイラーは、大学生に数学問題を練習させ、1週間後にテストしました。すると、練習中は苦戦していた“シャッフル組”が、本番で見事に逆転。スラスラ解ける勉強ほど身につくとは限らないのです。問題集の順番を少し変えるだけで、脳が「どの解き方を使う?」と本気を出す。勉強の手応えを気持ちよく裏切ってくれる、意外性たっぷりの研究です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
数学の勉強法|同じ種類の問題を続けるより混ぜて解くほうが身につく?
数学の勉強法|同じ種類の問題を続けるより混ぜて解くほうが身につく?

10.『自分の学びを自分で導くには?――勉強法への思い込み、学習テクニック、そして「わかったつもり」の罠』ロバート・アレン・ビョーク、ジョン・ダンロスキー、ネイト・コーネル(2013)

Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N.(2013). Self-Regulated Learning: Beliefs, Techniques, and Illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417–444. DOI:10.1146/annurev-psych-113011-143823

「このページ、3回読んだから完璧です!」

「では、本を閉じて説明してください」

「ええと……大切なことが書いてありました」

ビョーク、ダンロスキー、コーネルが追いかけたのは、勉強中に生まれるこの“わかったつもり”。人は、読みやすさや見覚えを、記憶の強さと勘違いしやすいのです。しかも、スラスラ進む勉強より、思い出す、間隔を空ける、問題を混ぜるといった少し苦戦する学びのほうが、あとまで残ることがある。脳内の「理解済み判子」は、なぜこんなに早押しなのか。勉強法だけでなく、自分の記憶をどう見張るかまで教えてくれる、学習心理学の取扱説明書です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
勉強しても覚えられない人へ|「わかったつもり」を防ぐ学び方
勉強しても覚えられない人へ|「わかったつもり」を防ぐ学び方

第3章 集中力は、どこへ消えていくのか

11.『なぜ、仕事に集中できないのか? タスクを切り替えても頭に残る「注意の残り香」という難敵』ソフィー・ルロワ(2009)

Leroy, S.(2009). Why Is It So Hard to Do My Work? The Challenge of Attention Residue When Switching Between Work Tasks. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(2), 168–181.
DOI:10.1016/j.obhdp.2009.04.002

「よし、次の仕事に集中しよう!」と資料を開いたのに、頭の中ではさっきのメールがまだ会議中。そんな経験はありませんか?ソフィー・ルロワは、仕事を切り替えても注意の一部が前の作業に居残る「注意残余」を実験で調べました。本人は次へ進んだつもりでも、脳内では前の仕事が勝手に残業中。その結果、次の仕事の出来まで下がることがあるのです。集中力がないのではなく、注意がまだ帰宅していないだけかもしれません。忙しい人ほど「それ、私の頭です」と言いたくなる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
仕事に集中できないのはなぜ?タスク切り替えで残る「注意残余」
仕事に集中できないのはなぜ?タスク切り替えで残る「注意残余」

12.『仕事を中断される代償:作業は速くなる。でも、ストレスは増えていく』グロリア・マーク、ダニエラ・グディス、ウルリッヒ・クロッケ(2008)

Mark, G., Gudith, D., & Klocke, U.(2008). The Cost of Interrupted Work: More Speed and Stress. Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI ’08), 107–110. Association for Computing Machinery. DOI:10.1145/1357054.1357072

「仕事中に話しかけられたら、当然ペースは落ちますよね?」

「ところがどっこい。人はむしろ速く働くことがあるんです」

マークたちの実験では、電話やメッセージで中断された人ほど、失った時間を取り返すように作業をスピードアップ。しかも、ミスや丁寧さは大きく崩れませんでした。

「じゃあ、中断って意外と便利?」

「いえ、その請求書は心に届きます」

仕事は速くなっても、ストレスや焦り、努力は増えていたのです。成果だけ見れば順調。でも心は、机の下で全力疾走。この論文は、“できている人ほど疲れが見えにくい”という職場の盲点を、鮮やかに教えてくれます。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
仕事を中断されるとどうなる?仕事は速くてもストレスが増す実験結果
仕事を中断されるとどうなる?仕事は速くてもストレスが増す実験結果

13.『ほんの短い、たまの「心の休憩」が集中力を守る-課題をいったん手放し、再び向き合うことで注意力の低下を防ぐ』有賀敦紀、アレハンドロ・ジェラス(2011)

Ariga, A., & Lleras, A.(2011). Brief and rare mental “breaks” keep you focused: Deactivation and reactivation of task goals preempt vigilance decrements. Cognition, 118(3), 439–443.
DOI:10.1016/j.cognition.2010.12.007

「集中したいなら、絶対に目をそらすな!」。そう思っているあなたに、脳から異議申し立てです。「同じ仕事ばかりだと、私、背景だと思って省エネしますよ」。有賀敦紀とアレハンドロ・ジェラスの実験では、単調な課題の途中でほんの短く別のことをした人だけ、最後まで集中力が落ちにくい結果になりました。休憩というより、脳の小さな換気です。ただし、SNSへ旅立つのは別問題。集中力とは、離れない力ではなく、ちゃんと戻ってくる力なのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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集中力が続かないとき、短い気分転換は効果がある?実験の結果
集中力が続かないとき、短い気分転換は効果がある?実験の結果

14.『さまよう心を「今ここ」へ-マインドフルネス訓練がワーキングメモリ容量とGRE成績を向上させる』マイケル・D・ムラゼック、マイケル・S・フランクリン、ダワ・タルチン・フィリップス、ベンジャミン・ベアード、ジョナサン・W・スクーラー(2013)

Mrazek, M. D., Franklin, M. S., Phillips, D. T., Baird, B., & Schooler, J. W.(2013). Mindfulness Training Improves Working Memory Capacity and GRE Performance While Reducing Mind Wandering. Psychological Science, 24(5), 776–781. DOI:10.1177/0956797612459659

「集中しよう」と思った瞬間、心だけが昨日の失敗や夕飯の献立へ出張していませんか? ムラゼックたちは大学生を2グループに分け、2週間のマインドフルネス訓練を実施しました。すると、心の寄り道が減り、頭の中の作業机であるワーキングメモリと、GREの読解成績が改善。「瞑想で急に天才になるの?」いいえ。雑念に持っていかれていた力が、少し戻ってきたのかもしれません。集中力を“気合い”ではなく“帰り道”から考え直したくなる論文です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
雑念で集中できないとき、マインドフルネスは役立つ?2週間の実験結果
雑念で集中できないとき、マインドフルネスは役立つ?2週間の実験結果

15.『「もう終わったも同然!」計画を立てれば、やり残した目標が頭を占領するのを止められる』E・J・マシカンポ、ロイ・F・バウマイスター(2011)

Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F.(2011). Consider It Done! Plan Making Can Eliminate the Cognitive Effects of Unfulfilled Goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683. DOI:10.1037/a0024192

「仕事は終わったはずなのに、頭の中ではまだ残業中です」。そんな夜に、マシカンポとバウマイスターが差し出したのは、意外にも“気合い”ではなく“計画”でした。未完了の目標は、別の作業中にも「私を忘れてません?」と割り込んできます。ところが、「明日の10時に、ここから再開する」と具体的に決めると、その騒がしさが弱まったのです。仕事はまだ終わっていないのに、脳は少しだけ「では待機します」と席に戻る。計画とは未来を縛る鎖ではなく、今日の心を帰宅させるしおりなのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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仕事のことが頭から離れないときは?具体的な計画が助けになる理由
仕事のことが頭から離れないときは?具体的な計画が助けになる理由

第4章 人は、どうすれば上達できるのか

16.『達人はいかにして生まれるのか――卓越した技能を育てる「意図的な練習」の役割』カール・アンダース・エリクソン、ラルフ・トーマス・クランペ、クレメンス・テッシュ=レーマー(1993)

Ericsson, K. A., Krampe, R. Th., & Tesch-Römer, C.(1993). The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance. Psychological Review, 100(3), 363–406. DOI:10.1037/0033-295X.100.3.363

「一流の人って、やっぱり生まれつき特別なんでしょう?」

「そう決めるのは、まだ早いかもしれません」

エリクソンたちは、優れたバイオリニストたちの練習歴を調べ、達人の舞台裏に「意図的な練習」があると考えました。ただ長く繰り返すのではなく、苦手な部分を選び、集中して直し、助言を受けてまた試す。つまり、得意曲の上映会ではなく、弱点との個別面談です。

しかも、一流に近い人ほど睡眠を削っていたわけではありません。練習し、休み、また取り組む。才能という一言の裏にある、地味で長い成長のしくみをのぞいてみませんか。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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練習しても上達しないのはなぜ?意図的な練習から考える「練習の質」
練習しても上達しないのはなぜ?意図的な練習から考える「練習の質」

17.『「練習すれば一流になれる」はどこまで本当か? 音楽・ゲーム・スポーツ・教育・専門職における意図的練習と成果のメタ分析』ブルック・N・マクナマラ、デイヴィッド・Z・ハンブリック、フレデリック・L・オズワルド(2014)

Macnamara, B. N., Hambrick, D. Z., & Oswald, F. L.(2014).
Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis.
Psychological Science, 25(8), 1608–1618.
DOI:10.1177/0956797614535810

「一万時間練習すれば、誰でも達人になれる?」そんな夢のある話に、研究者たちが電卓を持ってやってきました。音楽、ゲーム、スポーツ、教育、専門職の研究をまとめてみると、意図的な練習はたしかに実力と関係していました。ところが、その説明力はゲームで約26%、音楽で約21%、仕事では1%未満。練習は重要ですが、実力という料理は努力だけでは完成しません。では、残りの材料は才能?環境?指導?努力を否定せず、努力だけで人を裁かないために読みたい一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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練習しても上達しないのはなぜ?努力だけでは説明できない実力差
練習しても上達しないのはなぜ?努力だけでは説明できない実力差

18.『フィードバックは本当に成果を高めるのか?――パフォーマンスに対するフィードバック介入の効果:歴史的レビュー、メタ分析、そして予備的フィードバック介入理論』アヴラハム・N・クルーガー、アンジェロ・S・デニシ(1996)

Kluger, A. N., & DeNisi, A.(1996).
The Effects of Feedback Interventions on Performance: A Historical Review, a Meta-Analysis, and a Preliminary Feedback Intervention Theory.
Psychological Bulletin, 119(2), 254–284.
DOI:10.1037/0033-2909.119.2.254

「アドバイスすれば、人は伸びる」。まあ、そう思いますよね。ところがKlugerとDeNisiが131の研究をまとめて調べると、フィードバックは平均では効果あり。でも、3分の1を超えるケースでは、むしろ成績や作業の出来が下がっていました。「え、励ましたのに?」。カギは、言葉によって注意が“課題”ではなく“自分自身”に向いてしまうこと。仕事の話だったのに、いつの間にか「自分はダメだ」の脳内会議が始まる。褒めれば万能、叱ればダメ、という単純な話でもありません。人を伸ばす言葉は、評価より“次の一歩”を見せるのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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フィードバックはなぜ逆効果になる?注意が「自分」に向くときの落とし穴
フィードバックはなぜ逆効果になる?注意が「自分」に向くときの落とし穴

19.『フィードバックの力――その一言は、学びを伸ばすのか、それとも止めるのか』ジョン・アラン・クリントン・ハッティ、ヘレン・ステイプルトン・ティンパーリー(2007)

Hattie, J., & Timperley, H.(2007). The Power of Feedback. Review of Educational Research, 77(1), 81–112.
DOI:10.3102/003465430298487

「フィードバックって、とりあえず褒めればいいんでしょ?」と思った方、ちょっとお待ちを。HattieとTimperleyは、多くの研究を整理しながら「何を伝えるかで効果はかなり変わります」とフィードバックを解体します。大切なのは、ただ「よかった」「ダメだった」と採点することではなく、「どこを目指す?」「今どこ?」「次はどうする?」を見えるようにすること。しかも「あなたはすごい」より「ここがよかった」のほうが、次の行動につながりやすい場合も。上司、先生、親、そして自分自身にも使いたくなる、“言葉の渡し方”を考え直させてくれる一本です。

阿部牧歌(管理人)
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フィードバックの効果は伝え方で変わる?研究が示した3つの問い
フィードバックの効果は伝え方で変わる?研究が示した3つの問い

20.『本当に効果のある勉強法とは?――認知心理学と教育心理学が明かす、学習効果を高める10の学習テクニック』ジョン・ダンロスキー、キャサリン・A・ローソン、エリザベス・J・マーシュ、ミッチェル・J・ネイサン、ダニエル・T・ウィリンガム(2013)

Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T.(2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. DOI:10.1177/1529100612453266

「結局、どの勉強法がいちばん役に立つんですか?」。そんな学生の長年の疑問に、ダンロスキーたちが10種類の学習法をずらりと並べて答えた論文です。再読、ハイライト、要約、練習テスト、分散学習などを研究の積み重ねから評価すると、意外にも「よくやる方法」と「高く評価された方法」は一致しませんでした。「蛍光ペンさん、人気はあるんですが…」「えっ」。一方で強かったのは、思い出す練習と、時間を空けてまた学ぶ方法。勉強時間を増やす前に、勉強のやり方を見直したくなる一篇です。

阿部牧歌(管理人)
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効果的な勉強法はどれ?10種類を心理学研究から比べてみた
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