アーノルド・B・バッカー(Arnold B. Bakker)の論文一覧:働く元気の燃料タンクから、バーンアウトの煙まで追いかける職場心理学さんぽ

アーノルド・B・バッカー(Arnold B. Bakker)の論文を読む女性
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アーノルド・B・バッカー(Arnold B. Bakker)のプロフィール

アーノルド・B・バッカーさんは、ひとことで言うと、「職場のしんどさ」と「仕事のやる気」の両方を研究している、働く人の心の整備士さんのような人物です。エンジン音を聞いて「これは疲労のカラカラ音ですね」「ここに上司の支援という潤滑油を入れましょう」みたいに、仕事と心の関係をていねいに見てきた研究者です。🛠️

バッカーさんは、オランダのエラスムス大学ロッテルダム校で、仕事・組織心理学の教授を務めています。仕事・組織心理学というのは、ざっくり言えば「人は職場でどう疲れ、どう元気になり、どう力を発揮するのか」を研究する分野です。会議、上司、同僚、締め切り、達成感、燃え尽き、やる気。つまり、会社という名の小さな劇場で起こる心のドラマを研究しているわけです。

特に有名なのが、エヴァンゲリア・デメルーティさんと一緒に発展させた**「仕事の要求度と資源の理論」**です。英語では「Job Demands–Resources Theory」と呼ばれますが、ここではわかりやすく言うと、仕事には“心を削るもの”と“心を支えるもの”があるよね、という考え方です。たとえば、忙しすぎる、責任が重い、人間関係がしんどい。これは「仕事の要求」です。一方で、上司のサポート、同僚の助け、自分で工夫できる自由、成長の機会などは「仕事の資源」です。心の財布から小銭が出ていくものと、こっそり補充してくれるものがある、という感じですね。

バッカーさんの研究のおもしろいところは、「仕事はしんどいから悪い」と単純に言わないところです。仕事が大変でも、支えや裁量、やりがいがあれば、人は前向きに働けることがあります。逆に、仕事量がそこまで多くなくても、支援がない、認められない、成長感がないとなると、心はじわじわ干からびます。職場のやる気は、気合いだけで生まれるものではなく、環境という土、水、日当たりが必要なのです。観葉植物だって、根性論だけでは育ちません。🌱

また、バッカーさんはワーク・エンゲイジメント、つまり「仕事に前向きに関わっている状態」の研究でも知られています。これも英語を使わずに言えば、仕事に対して、元気・熱意・集中がほどよくそろっている状態です。「仕事最高!毎日ハイテンション!」という意味ではありません。朝からラッパを吹いて出勤する必要はありません。そうではなく、「大変だけど、自分なりに意味を感じられる」「集中できる」「少し成長している感じがある」という、静かな火が灯っている状態です。

さらに、バッカーさんの関心は、燃え尽き、仕事への前向きな関わり、仕事の工夫、仕事と家庭の関係、遊び心を取り入れた働き方、学生の学びへの関わりなど、かなり幅広いです。公式の研究者情報でも、こうしたテーマが研究関心として紹介されています。要するに、「人はどうすれば、ただ消耗するだけでなく、少しでも生き生きと働けるのか」を、いろいろな角度から掘っている人です。

バッカーさんを身近なたとえで言うなら、職場の“心の電力会社”を調べている研究者です。どこで電力を使いすぎて停電しそうになるのか。どこに充電スポットを置けば、人はもう少し元気に働けるのか。残業という怪獣、上司の支援という回復アイテム、同僚との信頼というあったか毛布。それらをまとめて、「働く人の心は、どうすれば燃え尽きずにすむのか」を考えてきた人なのです。

つまり、アーノルド・B・バッカーさんは、「がんばれ」だけでは人は働き続けられないよ、ちゃんと支える仕組みも必要だよということを、研究の世界から教えてくれる学者です。職場の元気は、個人の性格だけで決まるのではありません。環境、支援、自由度、認められる感覚、成長の機会。そういう目に見えにくいものが、人の心の燃料になります。バッカーさんの研究は、その燃料タンクの中を、懐中電灯で照らしてくれるようなものなのです。

参考文献・確認先:Erasmus University Rotterdam:Arnold B. Bakker 公式プロフィール / Erasmus University Rotterdam Pure:Arnold Bakker 研究者情報 / Arnold B. Bakker 公式サイト / Google Scholar:Arnold B. Bakker 論文・引用情報 / ORCID:Arnold B. Bakker 研究者ID

阿部牧歌(管理人)
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アーノルド・B・バッカー(Arnold B. Bakker)の研究から学べること

アーノルド・B・バッカーさんの研究から学べることは、ざっくり言うと「仕事で人が元気をなくす理由」と「仕事で人が元気を取り戻す理由」は、ちゃんと分けて考えたほうがいい、ということです。

これ、ものすごく大事です。

私たちはつい、仕事で疲れている人を見ると、「休んだら?」「気合いが足りないんじゃない?」「もっと前向きに考えようよ」などと言ってしまいがちです。でも、バッカーさんの研究を読むと、そんな雑なアドバイスは、雨漏りしている家に向かって「部屋を明るくしよう!」と言っているようなものだとわかります。いやいや、まず屋根を直しましょう、という話です。

バッカーさんは、エヴァンゲリア・デメルーティさんらとともに、「仕事の負担」と「仕事の資源」という考え方を発展させました。仕事の負担とは、たとえば仕事量が多い、時間に追われる、人間関係がしんどい、感情を使いすぎる、責任が重い、といった“心と体の電池を削るもの”です。一方、仕事の資源とは、上司や同僚の支え、仕事の進め方を自分で決められること、成長の機会、きちんとした評価、わかりやすい目標など、“心と体の充電器になるもの”です。2007年の論文では、この考え方が職場の燃え尽きや働く意欲を理解するための重要な枠組みとして整理されています。

ここで面白いのは、バッカーさんが「負担を減らせば、それだけで元気いっぱいになる」とは考えていないところです。もちろん、負担を減らすことは大切です。仕事量が山盛りごはんどころか、日本昔ばなし級のてんこ盛りになっていたら、誰だって苦しくなります。けれど、人が仕事に前向きになるためには、負担を減らすだけでなく、「支え」や「裁量」や「成長感」といった資源も必要になるのです。

つまり、仕事の元気は、ただの根性論ではありません。

「やる気を出せ!」と叫んでも、やる気は出ません。やる気はカエルではないので、叫んでも池からぴょこんとは出てきません。やる気が出るには、出てこられる環境が必要です。安心して相談できる人がいる。自分の工夫が認められる。失敗してもすぐに人格否定されない。仕事の意味が見える。そういう条件がそろってくると、人は少しずつ「よし、やってみようかな」と思えるようになります。

バッカーさんの研究では、燃え尽きとは、仕事による疲れや冷めた気持ちと関係する状態として扱われます。一方で、働く意欲は、活力、熱心さ、夢中になれる感覚をもつ前向きな状態として説明されています。2014年の総説でも、燃え尽きと働く意欲は、仕事環境や個人の要因と結びつきながら、人の健康や成果に影響するものとして整理されています。

ここから私たちが学べるのは、「疲れている自分を責める前に、環境を見よう」ということです。

たとえば、毎日くたくたで、「自分は弱いのかな」と思ってしまう人がいたとします。でも、その人の職場を見てみると、仕事量は多い、相談相手はいない、評価はされない、急な変更ばかり、休憩も取りにくい。これでは、心の中の働き者たちが、全員ヘルメットをかぶって避難訓練を始めても不思議ではありません。

そんな状態で「もっと頑張れ」と言われても、心は「いや、もう十分に頑張っておりますが?」と、ちゃぶ台の下から小声で抗議したくなります。

バッカーさんの研究のありがたいところは、働く人の不調を「本人の弱さ」だけに押し込めないところです。仕事には、人を疲れさせる仕組みもあれば、人を元気にする仕組みもある。だから、個人の努力だけでなく、職場の設計や支援のあり方を考える必要があるのです。

また、バッカーさんの研究は、「よい職場」とは、ただ楽な職場ではないことも教えてくれます。仕事の負担がまったくない場所が理想なのではありません。むしろ、適度な挑戦があり、それを乗り越えるための支えや道具がある職場こそ、人が成長しやすい場所だと考えられます。重い荷物を持たせるなら、せめて台車をください。急な坂を登らせるなら、水筒と地図と応援係をください。そういう話です。

仕事で大切なのは、「負担」と「資源」のバランスです。

負担ばかり増えて、資源が少ないと、人はだんだん燃え尽きます。まるで、ガソリンを入れずに車を走らせ続けるようなものです。最初はなんとか走れても、やがてエンジンが「もう知らん」と沈黙します。逆に、資源がしっかりあると、多少大変な仕事でも、人は踏ん張りやすくなります。「大変だけど、支えてくれる人がいる」「難しいけど、自分で工夫できる」「忙しいけど、意味がある」と思えると、仕事の景色は少し変わります。

この考え方は、支援の現場にもかなり使えます。

利用者さんや職員さんが疲れているとき、「本人の気持ちの問題」と見るだけでは足りません。作業量は合っているか。説明はわかりやすいか。相談できる人はいるか。達成感を感じられる仕組みはあるか。休める余白はあるか。こうした視点を持つことで、支援はぐっと現実的になります。心に「がんばれ」と旗を振るだけでなく、足元にちゃんと橋をかける支援になるのです。

アーノルド・B・バッカーさんの研究から学べることを一言でまとめるなら、「人を元気にするには、気合いではなく、資源を増やそう」ということです。

もちろん、努力は大事です。でも、努力だけを燃料にして走り続けると、心のエンジンはいつか煙を上げます。必要なのは、支え、工夫できる余地、認められる経験、成長できる道筋、そして安心して弱音を置ける場所です。

仕事とは、ただタスクを片づける場所ではありません。人の元気が減ったり、増えたりする場所でもあります。バッカーさんの研究は、その見えにくい元気メーターを、そっと見える形にしてくれました。

だから、明日から仕事で誰かが疲れていたら、こう考えてみたいところです。

「この人のやる気が足りないのかな?」ではなく、「この人の充電器は足りているかな?」と。

この視点があるだけで、職場の空気は少しやわらかくなります。人を責める虫めがねではなく、人を支える地図を持てるようになる。そこに、バッカーさんの研究のいちばんおいしいところがあるのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

アーノルド・B・バッカー(Arnold B. Bakker)の論文一覧

1.『燃え尽きを読み解く、仕事の負荷と資源モデル』エヴァンゲリア・デメルーティ、フリートヘルム・ナハライナー、アーノルド・B・バッカー、ウィルマー・B・シャウフェリ(2001)

Demerouti, E., Nachreiner, F., Bakker, A. B., & Schaufeli, W. B. (2001). The Job Demands-Resources model of burnout. Journal of Applied Psychology, 86(3), 499–512. DOI:10.1037/0021-9010.86.3.499

「仕事って、なぜ人を燃え尽きさせるんでしょう?」この論文は、そんな職場の“心の火災原因”を調べた名作です。ポイントは、仕事には「要求」と「資源」があるということ。要求は、忙しさ・プレッシャー・感情労働など、心の体力をゴリゴリ削るもの。一方、資源は、上司の支援・裁量・成長機会など、働く人を回復させる給水所です。つまり、燃え尽きは「根性不足」ではなく、職場設計の問題でもあるのです。読めば、あなたの職場の疲労メーターもピコーンと光るかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】燃え尽きはなぜ起こるのか? 仕事の負荷と職場の支えからわかったバーンアウトのしくみ
【論文要約】燃え尽きはなぜ起こるのか? 仕事の負荷と職場の支えからわかったバーンアウトのしくみ

2.『仕事の負担と資源モデル:職場のストレスと活力を読み解く最前線』アーノルド・B・バッカー、エヴァンゲリア・デメルーティ(2007)

Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2007). The Job Demands-Resources model: state of the art. Journal of Managerial Psychology, 22(3), 309–328. DOI:10.1108/02683940710733115

「仕事がしんどいのは、根性が足りないから?」いえいえ、この論文はそこに待ったをかけます。BakkerとDemeroutiは、仕事には締切・責任・人間関係などの“体力を吸うモンスター”と、裁量・支援・成長機会などの“元気回復アイテム”があると整理しました。つまり職場は、ゲームでいうステージ設計が大事。敵ばかり増やして回復薬なしでは、そりゃバーンアウトしますよね。働く元気の仕組みを、楽しくまじめにのぞける一論です。

阿部牧歌(管理人)
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この論文の要約を読む
【論文要約】がんばっているのに疲れる職場、なぜか元気が出る職場:職務要求・資源モデルから見える違い
【論文要約】がんばっているのに疲れる職場、なぜか元気が出る職場:職務要求・資源モデルから見える違い
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