仕事の満足度が高い人ほど成果も高い?5万人超の研究からわかった関係

仕事の満足度が高い人ほど成果も高い?5万人超の研究からわかった関係
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「仕事が楽しい」と「仕事ができる」は、同じ方向を向いているのか?

『仕事に満足している人は、本当に仕事もできるのか?―職務満足と仕事の成果の関係を徹底検証』ティモシー・アラン・ジャッジ、カール・J・ソレセン、ジョイス・E・ボノ、グレゴリー・ケネス・パットン(2001)

Judge, T. A., Thoresen, C. J., Bono, J. E., & Patton, G. K.(2001). The Job Satisfaction–Job Performance Relationship: A Qualitative and Quantitative Review. Psychological Bulletin, 127(3), 376–407.
DOI:10.1037/0033-2909.127.3.376

「この仕事、けっこう好きなんですよね」

そう言いながら、毎日わりと楽しそうに働いている人を見ると、なんとなく仕事もできそうな気がしませんか。

機嫌よく出勤して、同僚とも話して、仕事にも前向き。「これはきっと成果もバリバリ出しているに違いない」と、こちらの頭の中では勝手に“仕事できる人認定”が始まります。

でも、ちょっと待ってください。

世の中には、

「仕事? 別に好きではないです」

と言いながら、とんでもなく仕事ができる人もいます。

反対に、

「この仕事、大好きです!」

と満面の笑みで語りながら、締切だけは毎回きれいに通り過ぎていく人もいます。

どうやら、「仕事が好き」と「仕事ができる」は、同じものではなさそうです。

では、この二つには本当に関係があるのでしょうか。

仕事への満足度が高い人ほど、実際の仕事の成果も高いのか。

それとも、「仕事が楽しいこと」と「成果を出すこと」は、思っているほど関係がないのでしょうか。

昔からみんな気になっていた「満足した社員はよく働くのか問題」

実はこの疑問、心理学や経営学の世界でもかなり昔から研究されてきました。

会社側から考えても、ものすごく気になるテーマです。

もし、

「社員が仕事に満足する

仕事の成果も上がる」

という関係がはっきりしているなら、話はかなり分かりやすい。

給料や職場環境、人間関係、働きやすさなどを整えて、みんなが気持ちよく働ける職場をつくればいい。

社員はうれしい。会社もうれしい。

めでたし、めでたし。

会社の会議も早く終わりそうです。

ところが、人間というものは、そんなに一直線にはできていません。

満足しているから成果が出るのか。

成果が出ているから仕事が楽しくなるのか。

あるいは、もともと能力の高い人が成果を出し、その結果として仕事への満足度も高くなっているのか。

考え始めると、急に話が枝分かれしてきます。

「満足度を上げればいいんですね!」

と立ち上がったところで、心理学から静かに、

「まあ、いったん座りましょうか」

と言われるわけです。

そこで登場したのが、5万人を超えるデータをまとめた研究

2001年、ティモシー・ジャッジらの研究チームは、この長年の疑問について、それまでに行われてきた数多くの研究をまとめて検討しました。

一つの会社だけを見るのではありません。

一つの職種だけでもありません。

さまざまな研究を集めて、

「仕事への満足度と、実際の仕事の成果には、全体としてどれくらいの関係があるのか」

を調べたのです。

分析された人数は、合計で5万人を超えます。

こうなると、もう「隣の田中さんは楽しそうだから仕事ができる気がする」という世界ではありません。

田中さんには少し休んでいただいて、大量のデータに聞いてみよう、という話になります。

そして、この研究から見えてきたのは、

仕事への満足度と仕事の成果は、まったく無関係ではない。けれど、「満足すれば誰でも成果が上がる」と言えるほど単純でもない

という、なんとも人間らしい答えでした。

白でも黒でもない。

でも、ぼんやりした灰色でもない。

その間に、ちゃんと意味のある関係がある。

ここが、この研究のおもしろいところです。

私たちは仕事について考えるとき、つい、

「好きな仕事をすればうまくいく」

あるいは逆に、

「仕事なんだから楽しくなくても成果さえ出せばいい」

と、どちらか一方に話を寄せたくなります。

けれど実際の働くという営みは、もう少し複雑です。

満足感も大事。

成果も大事。

そして、この二つは別々の島ではなく、少し離れながらも橋が架かっている。

この記事では、ジャッジらの研究を手がかりに、

仕事に満足している人ほど本当に成果も高いのか。

そして、

「楽しく働くこと」と「仕事ができること」は、どれくらいつながっているのか。

その距離を、難しい統計の森で迷子にならないよう、ゆっくり見ていきたいと思います。

仕事に満足できていない人も、今の仕事がわりと好きな人も、「自分の働き方って、このままでいいのかな」と思ったことがあるなら、少し面白い景色が見えてくるかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

この論文をひとことで言うと

「仕事に満足している人ほど、仕事の成果もやや高い。でも、“満足させれば自動的に成果が上がる”ほど単純な話ではない」

この論文をひとことで言うなら、これです。

「仕事が楽しい人って、やっぱり仕事もできるんじゃない?」

なんとなく、そう思いますよね。

気持ちよく働いている人は、やる気もありそうです。職場にも前向きに関わりそうですし、「よし、今日もやるか」と机に向かう回数も多そうです。

だから、

仕事への満足度が高い

仕事の成果も高い

という一本の矢印を描きたくなります。

ところがジャッジたちは、ここで赤ペンを持ってきます。

「矢印を引くのは、まだ早いです」

と。

この研究では、それまでに行われた多数の研究をまとめて、「仕事への満足度」と「仕事の成果」の関係を改めて調べています。

その結果を見ると、両者にはたしかに正の関係がありました。

つまり全体としては、

仕事に満足している人ほど、仕事の成果も高い傾向がある。

これは言えそうです。

ただし、

「では社員を満足させれば、来月から売上がドーン!」

というほど話は簡単ではありません。

心理学は、そういう都合のいい自動販売機ではないのです。

「関係がある」と「原因である」は別のお話

ここで大事なのが、

関係があることと、原因であることは同じではない

という点です。

たとえば、仕事が楽しいから成果が上がるのかもしれません。

でも逆に、仕事がうまくいって成果が出るから、

「なんだかこの仕事、けっこう好きかも」

と満足度が上がる可能性もあります。

あるいは、働きやすい職場環境や良い上司、本人の能力など、別の要因が両方を押し上げていることだって考えられます。

つまり、

「満足しているから成果が出る」

だけではなく、

「成果が出るから満足する」

「別の何かが両方に影響している」

というルートもありえるわけです。

人間の仕事人生、一本線ではありません。

地下鉄の路線図くらいには入り組んでいます。

それでも「満足度なんて関係ない」とは言えない

ここがおもしろいところです。

この論文は、

「仕事なんて満足度はどうでもいい。成果だけ見ればよい」

とも言っていません。

むしろ、多くの研究をまとめると、仕事への満足度と仕事の成果には、無視できない程度の関連があることが見えてきました。

ですから、

「楽しさなんて仕事には不要」

と言い切るのも乱暴ですし、

「楽しい職場さえ作れば全部解決」

と言うのも乱暴です。

そのちょうど間。

満足感は成果と関係している。でも、それだけですべてが決まるわけではない。

この少し地味で、でも現実にかなり近い答えこそ、この論文の価値だと思います。

私たちはつい、「仕事は楽しいほうがいいのか」「成果を出せればそれでいいのか」と二択にしたくなります。

けれど、この研究が見せてくれるのは、もう少し柔らかな景色です。

仕事への満足と成果は、手をつないで歩くことはある。

ただし、いつも同じ歩幅ではない。

そんな関係です。

だからこの論文は、

「楽しく働くことには意味がある。でも、それを成果への魔法のボタンだと思わないほうがいい」

と教えてくれる研究だと考えると、ぐっと分かりやすくなるでしょう。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

この論文の要点

1. 仕事の満足度が高い人ほど、仕事の成果も高い傾向がある

まず、この論文のいちばん大きな結論です。

「仕事への満足度」と「仕事の成果」は、まったく別々のものではありません。

ジャッジらは、それまでに行われてきた研究をまとめて分析し、312のサンプル、合計5万人を超えるデータから、仕事への満足度と仕事の成果には正の関連があることを示しました。推定された相関はおよそ r=.30 です。

つまり、大ざっぱに言えば、

「この仕事、けっこういいな」

と思って働いている人ほど、仕事の成果も高い傾向があったということです。

「気持ちなんて関係ない。仕事は結果だけだ!」

と会議室の机をバーンと叩くには、ちょっと待ったをかける結果です。

働く人がその仕事をどう感じているかは、少なくとも成果と無関係ではないようなのです。


2. ただし、「満足すれば成果が上がる」という単純な話ではない

ここが、この論文を読むうえでとても大事なところです。

仕事への満足度と成果に関係があるからといって、

「社員を満足させれば、そのぶん仕事ができるようになる」

と、そのまま因果関係を決めつけることはできません。

なぜなら、

「満足しているから成果が出る」

可能性もあれば、

「成果が出ているから仕事に満足する」

可能性もあるからです。

さらに、性格、能力、職場環境、仕事内容など、別の要因が両方に関係している可能性もあります。

この論文では、満足度と成果の関係について、過去に提案されてきた7つの考え方を整理していますが、「これ一本で説明できます」という決着には至っていません。

人間はどうも、

「満足度+10ポイントで、成果+10ポイント!」

というゲームの能力値みたいには動いてくれません。

そこが面倒で、そこがおもしろいところです。


3. 「気持ちよく働くこと」も「成果を出すこと」も、どちらか一方だけでは語れない

この研究から持ち帰りたいのは、

仕事の満足度を軽く見なくていい。でも、万能薬にもしてはいけない

ということです。

「仕事なんだから、楽しいかどうかなんて関係ない」

と言い切るには、満足度と成果のあいだにはちゃんと関係があります。

かといって、

「みんなが楽しく働けば、自然と成果もついてくる」

と考えるのも少し早い。

つまり、この二つは、

無関係ではないけれど、同じものでもない。

そんな距離にあります。

仕事への満足感は、成果を考えるうえで無視できない一枚のカードです。

でも、そのカード一枚ですべての勝負が決まるわけではありません。

この論文は、「楽しく働くか、成果を出すか」という二択ではなく、

「人が気持ちよく働けることと、よい仕事ができること。その二つをどう一緒に考えるか」

という、もう少し豊かな問いを私たちに残してくれる研究なのです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

研究の背景:仕事に満足している人ほど成果も高い?長年研究されてきた大きな疑問

「仕事に満足している人ほど、いい仕事をする」

こう聞くと、なんだか当たり前のように感じます。

仕事が好きで、職場にも不満が少なくて、「今日もやるか」と前向きに働ける。そんな人のほうが、やる気も出そうですし、成果も高そうです。

逆に、

「もう月曜日なんて来なければいいのに」

と思いながら働いている人は、仕事の成果も下がりそうです。

ここまで聞くと、

「はい、結論出ましたね。満足している人ほど仕事ができる。以上!」

と会議を閉じたくなります。

ところが、研究の世界では、そう簡単には閉店できませんでした。

「たしかに関係ありそう」なのに、研究結果がそろわなかった

仕事への満足度と仕事の成果の関係は、昔から多くの研究者が調べてきたテーマです。

ところが、研究を一つひとつ見ていくと、結果がきれいにそろわなかったのです。

ある研究では、

「満足している人ほど成果も高いですね」

となる。

別の研究では、

「うーん、思ったほど関係ないですね」

となる。

さらに別の研究では、

「職種によって違うのでは?」

「成果の測り方によって変わるのでは?」

「本人の性格や能力も関係しているのでは?」

と、話がどんどん増えていきます。

一つの答えを探しに来たのに、会議室から出てきたら付箋が30枚くらい増えている。

そんな状態でした。

つまり、研究者たちが困っていたのは、

「仕事の満足度と成果に関係があるかどうか」だけではありません。

もっと大きな問題は、

「結局、全体として見ると、どれくらい関係しているの?」

ということでした。

満足しているから成果が出る?成果が出るから満足する?

さらに話をややこしくするのが、原因と結果の向きです。

たとえば、

仕事に満足する

やる気が出る

仕事の成果が上がる

という流れは、たしかにありそうです。

でも逆だって考えられます。

仕事がうまくいく

上司から評価される

達成感が生まれる

「この仕事、けっこう好きかも」と思う

こちらも十分ありそうですよね。

つまり、

満足が成果を生むのか。
成果が満足を生むのか。

ここが、まだはっきりしていませんでした。

しかも、人間の仕事には第三の登場人物もたくさんいます。

能力、性格、職場環境、上司、人間関係、給与、仕事内容、裁量、忙しさ。

舞台袖から次々に出てきます。

「私も関係あります」

「いや私もです」

と、全員が手を挙げ始める。

こうなると、「仕事の満足度だけを見れば全部わかる」という話ではなくなります。

研究がたくさんあるからこそ、全体を見直す必要があった

そこでジャッジらが行ったのが、

これまで積み重ねられてきた研究をまとめて、全体像を見直すこと

でした。

一つの会社。

一つの職種。

一つの研究。

それだけを見ていると、たまたまその職場だけで起きた特徴に引っぱられる可能性があります。

ならば、たくさんの研究を集めて、

「全体として見ると、仕事の満足度と成果はどのくらい結びついているのか」

を確認しよう。

これが、この論文の大きな狙いでした。

言ってみれば、

「個別の証言はいろいろ聞きました。では、全員いったんこちらへ。まとめて話を聞きましょう」

という研究です。

そして、ここが大事なのですが、この論文は単に、

「満足している社員は優秀ですよ」

と言いたかったわけではありません。

むしろ、

長いあいだ“ありそう”と言われ続けてきた関係を、いったん冷静に整理し直そう

とした研究なのです。

仕事への満足は、成果と本当に結びついているのか。

結びついているなら、どれくらいなのか。

そして、その関係を「満足すれば成果が上がる」と単純に説明してよいのか。

このあたりが、まだすっきりしていなかった。

だからこそ、5万人を超えるデータをまとめた大きな検討が必要になったわけです。

なんとなく「そうでしょう」と思っていたことを、なんとなくで終わらせない。

この論文は、そんなところから始まっています。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

研究方法:仕事の満足度と成果はどれくらい関係する?5万人超の研究をまとめて検証

この研究でジャッジたちがやったことを、かなりざっくり言うと、

「今まで世界中で行われてきた研究を集めて、“仕事の満足度と成果って、結局どれくらい関係あるの?”をまとめて調べ直した」

というものです。

ここで一つ大事なのは、研究者たちが新しく5万人の会社員を集めて、

「仕事、楽しいですか?」

「今月の成績はいかがですか?」

と巨大アンケート大会を開催したわけではない、ということです。

そうではなく、すでに行われていた多数の研究を集め、その結果を統計的にまとめ直しました。

こうした方法をメタ分析といいます。

名前だけ聞くと、白衣を着た統計学者が地下室で何かを合成していそうですが、考え方そのものは意外とシンプルです。

一つの研究だけではなく、たくさんの研究をまとめて、

「全体として見ると、どんな傾向があるのか」

を確認する方法です。

312のサンプル、合計5万人超をまとめて見てみる

今回のメタ分析には、312のサンプル、合計54,417人分のデータが含まれました。研究者たちは、仕事への満足度と仕事上の成果が個人レベルで測定されている研究を集め、実際の職場で働く人を対象にしたものを中心に検討しています。実験室だけで行われた作業などは対象から外されました。

つまり、

「ある会社の営業部30人を調べたらこうでした」

という一つの結果だけを見るのではありません。

さまざまな職場、さまざまな仕事、さまざまな研究を大きなテーブルの上に並べて、

「では皆さん、全体としてどうでしょう」

と見渡したわけです。

これなら、一つの職場だけにたまたまあった事情に、結論が引っぱられにくくなります。

「満足度」と「成果」の測り方にも気を配った

研究者たちが特に重視したのは、仕事全体への満足度と、仕事全体の成果をなるべく対応させて比べることでした。

たとえば、

「給料には満足していますか?」

という一部分だけの満足度と、

「その人は総合的に仕事ができていますか?」

という広い成果を比べると、少し話の大きさが合いません。

リンゴ一個の味を聞いておいて、

「では果物全体について結論を出します」

と言われても、

「ちょっと待ってください」

となります。

そこでこの研究では、できるだけ仕事そのものへの総合的な満足度総合的な仕事の成果の関係に焦点を当てています。過去のメタ分析では、この点の扱い方などに問題があるとジャッジたちは考え、それを改善する形で分析をやり直しました。

数字だけでなく、「なぜ関係するのか」も整理した

そして、この論文がおもしろいのは、数字をまとめて終わりではないところです。

ジャッジたちはメタ分析に加えて、それまで研究者たちが考えてきた、

「満足しているから成果が上がるのでは?」

「いや、成果が上がるから満足するのでは?」

「両方が影響し合っているのでは?」

「実は別の要因が関係しているのでは?」

といった考え方も整理しました。

論文では、こうした過去の考え方を7つのモデルとして検討しています。つまり、「どれくらい関係しているのか」という数字の話と、「なぜ関係するのか」という仕組みの話を、両方から見直した研究なのです。

ですから、この研究方法を一言でまとめるなら、

「大量の過去研究を集めて、仕事の満足度と成果の関係を“大きな地図”に描き直した研究」

と考えるとわかりやすいでしょう。

一人の社員をじっと観察した研究ではありません。

一つの会社を調べた研究でもありません。

これまで積み上がってきた研究をまとめて、

「木を一本ずつ見るのは一度やめて、森全体を見てみよう」

としたのが、この論文の研究方法です。

そして、その森を見渡したところ、仕事への満足度と成果のあいだには、思っていたよりもちゃんとしたつながりが見えてきます。

では実際、どのくらいの関係があったのでしょうか。

ここからが、この研究のいちばんおもしろいところです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

この研究でわかったこと:仕事の満足度が高い人ほど成果も高い?5万人超の分析で見えた関係

結論から言うと、この研究では、

仕事への満足度が高い人ほど、仕事の成果も高い傾向がある

ことが確認されました。

ジャッジらが多数の研究をまとめて分析したところ、仕事への満足度と仕事の成果のあいだには、全体として正の関連が見られました。

推定された相関は、およそ r=.30 です。

……と言われても、

「その0.30って、強いの?弱いの?おいしいの?」

となりますよね。

ざっくり言えば、

「まったく関係がないわけではない。でも、二つがほぼ同じように動くほど強い関係でもない」

くらいに考えると分かりやすいでしょう。

つまり、

仕事に満足している

必ず仕事ができる

ではありません。

でも、

仕事への満足度

仕事の成果

のあいだには、確かにある程度のつながりが見えてきたのです。

意外だったのは、「ほとんど関係ない」で終わらなかったこと

ここが、この研究のおもしろいところです。

仕事への満足度と成果の関係については、それ以前にも長く研究されていました。

ところが、過去には、

「思ったほど強い関係ではないのでは?」

という見方もかなりありました。

たしかに、現実を見てもそうですよね。

仕事は嫌いだけど、めちゃくちゃ腕のいい人。

います。

反対に、

「この仕事、大好きです!」

と言いながら、机の上では締切が静かに息を引き取っている人もいます。

だから、

「満足度なんて成果とはほとんど関係ないのでは?」

と考えたくなるのも自然です。

ところが、ジャッジらが大量の研究をまとめ直してみると、そう単純には片づけられませんでした。

全体として見ると、仕事への満足度と成果には、それなりに一貫した正の関係があったのです。

ここが一つ目の意外な点です。

「仕事への気持ちなんて、成果とは別でしょう」

と完全に切り離すには、少し関係がありすぎた。

でも、

「楽しく働けば全部うまくいくでしょう」

と言うには、関係はそこまで強くない。

なんとも絶妙です。

心理学、ときどき答えを出すというより、雑な二択を壊しにきます。

「満足しているから成果が出る」とは、まだ言い切れない

そして、もう一つ大切なのがここです。

仕事への満足度と成果に関係があったとしても、

「仕事に満足すれば、成果が上がる」

とそのまま言えるわけではありません。

なぜなら、この二つのあいだには、いくつもの道筋が考えられるからです。

たとえば、

仕事に満足する

やる気が出る

成果が上がる

という流れ。

これは直感的にも分かりやすいですね。

でも反対に、

成果が出る

ほめられる

達成感が生まれる

仕事への満足度が上がる

という流れもありえます。

さらに、

「もともと職場環境がいい」

「本人の能力と仕事が合っている」

「上司との関係がいい」

といった第三の要因が、満足度と成果の両方を押し上げている可能性もあります。

なので、この研究から言えるのは、

「仕事への満足度と成果には関係がある」

というところまで。

「満足度を上げれば成果が上がります」という一本の矢印までは、まだ引けません。

矢印を描きたくなる気持ちは分かります。

資料もきれいになります。

でも、人間の心はパワーポイントほど一直線ではありません。

仕事全体への満足度のほうが、成果との関係が見えやすかった

この研究では、仕事への満足度をどう測るかにも注目しています。

たとえば、

「給料に満足していますか?」

「上司に満足していますか?」

「昇進制度に満足していますか?」

といった仕事の一部分への満足と、

「この仕事全体に、どれくらい満足していますか?」

という総合的な満足では、少し意味が違います。

ジャッジらの分析では、仕事の一部分だけを見るよりも、仕事全体への満足度を見るほうが、全体的な仕事の成果との関係を捉えやすいことが示されました。

これは考えてみれば納得できます。

「給料には不満だけど、仕事内容は大好き」

という人もいますし、

「人間関係は最高だけど、仕事そのものは合わない」

という人もいます。

一部分だけをつまんで、

「この人は仕事に満足している」

と判断するのは、少し乱暴です。

カレーを一口だけ食べて、

「この店の料理は全部こういう味です」

と言うようなものです。

仕事への満足というのは、給料、人間関係、仕事内容、裁量、評価など、いろいろなものが混ざった総合点として見る必要がある。

この研究は、そのことも改めて示しています。

「幸せな社員なら高業績」は半分正しく、半分言いすぎ

この研究を読んでいると、つい、

「では、幸せな社員を増やせば会社もうまくいくんですね!」

と言いたくなります。

でも、ここで少しだけブレーキです。

今回の結果は、

「仕事への満足度は成果と無関係ではない」

ことを示しています。

けれど、成果にはほかにも多くの要因が関わります。

知識。

経験。

能力。

道具。

人員配置。

上司の支援。

仕事量。

職場環境。

そして、その仕事が本人に合っているかどうか。

満足度は、その中の一つです。

大切な一つ。

でも、たった一つではありません。

だからこの研究の結果は、

「社員を楽しませれば業績アップ!」

という経営テクニックというより、

「働く人の気持ちは、成果とは切り離せない。でも、気持ちだけですべてを説明しないほうがいい」

という、もう少し落ち着いたメッセージとして受け取るのがよさそうです。

いちばん面白いのは、「どちらか」ではなく「両方」だったこと

仕事について語るとき、私たちはつい二択にしてしまいます。

「楽しく働くことが大事」

なのか。

それとも、

「成果を出すことが大事」

なのか。

でも、この研究を見ると、その問い自体が少しずれているのかもしれません。

仕事への満足と成果は、同じものではありません。

けれど、完全に別々でもありません。

少し距離を取りながら、ちゃんと関係している。

だから、

「楽しく働ければそれでいい」でもなく、
「成果さえ出れば気持ちはどうでもいい」でもない。

働く人の満足と、そこで生まれる成果。

その二つを一緒に考えたほうが、現実の仕事には近いのです。

この研究で見えてきたのは、

仕事への満足は、成果を保証する魔法ではない。でも、成果と無関係な飾りでもない。

そんな、少し地味だけれど、とても人間らしい関係でした。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

ここが面白い:「仕事が楽しい=仕事ができる」ではなかった。満足度と成果の絶妙な距離

この研究のおもしろさは、「仕事に満足している人ほど、成果も高い傾向がありました」という結果そのものだけではありません。

むしろ私は、その先にある、

「でも、それほど単純ではありませんでした」

という部分がおもしろいと思います。

だって、私たちは仕事の話になると、すぐに分かりやすい物語を作りたくなるんです。

「好きな仕事をすれば、能力を発揮できる」

「やりがいのある職場なら、人は頑張れる」

「社員を幸せにすれば、会社の業績も上がる」

どれも、なんとなく正しそうです。

本屋に並んでいても違和感がありません。

むしろタイトルとしては強そうです。

ところが、この論文はその横から、

「だいたい方向は合っています。でも、その直線、ちょっと消しゴム貸してもらえます?」

と入ってきます。

「好き」と「できる」は、仲良しだけれど双子ではない

仕事への満足度と成果の相関は、およそ r=.30 でした。

統計の数字をいったん脇へ置いて日本語にすると、

「満足している人ほど成果も高い傾向はある。でも、満足度だけを見れば、その人の成果までだいたい分かる、というほどではない」

ということです。

ここが、とても人間らしい。

たとえば、こんな人を想像してみてください。

仕事そのものは大好き。

同僚も好き。

会社にも愛着がある。

でも、仕事はものすごく遅い。

本人は幸せです。

メール一通に40分かかります。

逆に、

「この仕事、別に好きじゃないです」

と言いながら、とんでもない速さで仕事を片づける人もいるでしょう。

午後3時には今日の仕事が終わっている。

でも本人は時計を見ながら、

「あと2時間か……」

と言っています。

どちらも、ちゃんと現実にいそうですよね。

つまり、

満足している人=高業績者

という一対一の関係ではないのです。

仕事への満足感と成果は、お互いを少し気にしている。

でも、四六時中一緒にいるわけではない。

このくらいの距離感です。

「楽しい仕事を探さなきゃ」というプレッシャーからも少し自由になれる

この研究は、働く個人にとっても、ちょっと優しいところがあります。

今は、

「好きなことを仕事にしよう」

「やりがいを持って働こう」

「仕事を楽しもう」

という言葉をよく見かけます。

もちろん、仕事を楽しめるなら、それは素敵なことです。

でも、この言葉が強くなりすぎると、

「仕事を楽しめていない自分は、何か間違っているのでは?」

と感じることがあります。

朝起きて、

「今日も仕事だ!最高!」

と毎日跳ね起きられる人ばかりではありません。

むしろ布団とかなり本格的な交渉をしている人のほうが多いでしょう。

でも、この研究を読むと、

仕事への満足度は大事だけれど、それだけで仕事の価値や能力が決まるわけではない

ことが見えてきます。

今の仕事が「人生最高の天職」ではなくても、いい仕事はできます。

ものすごく情熱を感じていなくても、誰かの役に立つ仕事はできます。

「仕事が好き」という感情と、「仕事をきちんとする」という能力は、重なる部分はあっても別物です。

これは意外と、働く人の肩から小さな荷物を一つ下ろしてくれる考え方ではないでしょうか。

そして会社側にも、「楽しい職場を作ればOK」ではないと教えてくれる

逆に、会社側から見ても重要です。

社員満足度調査をして、

「今年は満足度が5ポイント上昇しました!」

となれば、もちろん喜ばしい。

でも、

「よし、これで業績も自動的に上がるぞ!」

とシャンパンを開けるには、少し早い。

仕事の成果には、満足度以外にもたくさんの条件が関わっています。

ちゃんと仕事を教えてもらえるか。

必要な道具があるか。

適切な人数が配置されているか。

仕事量は無茶ではないか。

本人の得意なことと仕事内容が合っているか。

目標が分かりやすいか。

フィードバックをもらえるか。

いくら職場の雰囲気が最高でも、パソコンが毎日フリーズしていたら仕事は進みません。

上司がものすごく優しくても、

「この仕事、どうやってやるんですか?」

「まあ、自分らしくやってみて」

では困ります。

つまり、人を大切にすることと、仕事ができる環境を整えることは、両方必要なのです。

満足度は大切。

能力を発揮できる仕組みも大切。

この研究は、そのどちらか一方に話を寄せすぎることを防いでくれます。

「幸せだから成功するのか、成功するから幸せなのか」という話にもつながる

もう一つ面白いのが、原因と結果の問題です。

仕事に満足しているから成果が上がるのか。

成果が出るから仕事に満足するのか。

ここは、きれいには片づいていません。

でも考えてみると、私たちの日常には同じような問いがたくさんあります。

「自信があるからうまくいくのか、うまくいくから自信がつくのか」

「友達がいるから幸せなのか、幸せな人だから友達ができやすいのか」

「運動するから元気になるのか、元気だから運動できるのか」

人間の世界には、こういうぐるぐる回る関係がたくさんあります。

原因が一人で先頭を歩いて、その後ろを結果がついていく。

そんな行列ばかりではありません。

お互いに影響しながら回っていることもある。

だから心理学の研究では、

「AとBに関係がありました」

と分かった瞬間から、

「では、どっちが先なの?」

「他の何かが関係していない?」

という次の問いが始まります。

答えが出たと思ったら、ドアの向こうにもう一つ廊下がある。

研究というのは、なかなか建物の外へ出してくれません。

でも、そこが面白いところでもあります。

この論文が壊したのは、「どちらか一つ」という考え方かもしれない

私はこの研究を、

「仕事の満足度と成果には相関があります」

という数字だけで読んでしまうのは、少しもったいないと思います。

もっと面白いのは、

私たちが仕事について持っている“分かりやすすぎる物語”を、少し複雑にしてくれること

です。

好きな仕事なら必ず成功するわけではない。

嫌いな仕事なら必ず成果が下がるわけでもない。

だからといって、働く人の満足を無視していいわけでもない。

成果だけ見ればいいわけでもない。

どちらか一つではありません。

人は、機械のように、

「満足度を20%増量しました。したがって生産性も20%上昇します」

とは動かないのです。

むしろ人間は、

好きだったり、

得意だったり、

疲れていたり、

認められたり、

失敗したり、

それでも翌朝また会社に行ったりする。

そういういろいろなものを抱えたまま働いています。

だからこそ、

仕事の満足度と成果は、少し離れて、でも確かにつながっている。

私は、この距離感がこの研究のいちばん面白いところだと思います。

「仕事を楽しめ」

でもなく、

「仕事は成果だけ見ろ」

でもない。

気持ちよく働けることも大切だし、力を発揮できる環境も大切。

人間の仕事を、人間の複雑さのまま見ようとしたところに、この論文の静かな面白さがあります。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

私たちの生活にどう活かせる?:仕事が楽しくないとダメ?満足度と成果の研究から学ぶ、ちょうどいい働き方

この研究を日常に持ち帰るとき、いちばん大事なのは、

「もっと仕事を好きにならなきゃ」

と自分に新しい宿題を増やさないことです。

仕事への満足度と成果には関係がありました。

でも、それは、

「仕事を好きになれば、あなたも高業績!」

という話ではありません。

ここを間違えると、せっかくの研究が急に自己啓発ポスターになってしまいます。

朝、目覚ましを止めながら、

「よし!今日も仕事が大好きだ!」

と言えない日があっても大丈夫です。

人間ですから。

布団のほうが魅力的な朝くらいあります。

この研究から私たちが持ち帰れそうなのは、もっと静かなことです。

「仕事への気持ちも、ちゃんと働き方の一部として見ていい」

という視点です。

「仕事が好きか」ではなく、「何がしんどいか」を分けて考えてみる

仕事に不満があるとき、私たちはつい、

「この仕事、向いてないのかな」

と全部まとめてしまいがちです。

でも実際には、

仕事そのものが嫌なのか。

人間関係がしんどいのか。

忙しすぎるのか。

評価のされ方に納得できないのか。

通勤で体力を全部持っていかれているのか。

「何が嫌なのか」で、話はかなり変わります。

たとえば仕事内容は嫌いではないのに、毎朝の通勤だけでHPが半分になるなら、問題は「仕事への情熱不足」ではないかもしれません。

上司との関係だけがつらいなら、職業そのものまで嫌いと決めなくてもいい。

逆に、職場の人はみんな優しいけれど、仕事内容そのものが苦痛ということもあります。

だから、

「仕事に満足しているか、していないか」

を一枚の答案用紙で採点するより、

「どこは満足していて、どこに無理があるのか」

と細かく見ていくほうが、自分の働き方を考えやすくなります。

「会社が嫌だ!」

と思っていたけれど、よく見たら、

「毎週水曜の朝会が嫌だった」

ということだってあります。

犯人、思ったより小さい。

そういうことはあります。

「仕事を楽しむ」より、「少し働きやすくする」を目標にする

仕事の満足度を考えるとき、

「どうすれば仕事を好きになれますか?」

という大きな問いを立てると、少し苦しくなります。

仕事を好きになる。

人生の意味を見つける。

天職に出会う。

言葉が大きいんです。

いきなり富士山です。

でも、毎日の働き方を変えるのに、必ずしも山頂を目指す必要はありません。

たとえば、

「質問しやすい人を一人見つける」

「午前中に難しい仕事を終わらせる」

「休憩をちゃんと取る」

「自分が得意な作業を少し増やせないか相談する」

「嫌だったことだけでなく、助かったことも一つ記録する」

こういう小さな調整でも、

「昨日より少し働きやすい」

は作れます。

そして仕事への満足というのは、案外こういう小さなものの寄せ集めなのかもしれません。

大好きな仕事ではない。

でも、昨日ほど嫌ではない。

ものすごくやりがいがあるわけではない。

でも、今日は一つうまくできた。

そのくらいの変化も、十分に意味があります。

成果が出ないとき、気合いだけを責めない

この研究からもう一つ持ち帰りたいのは、

成果が出ない原因を、本人のやる気だけにしないこと

です。

仕事の成果には、満足度以外にもいろいろな条件が関わります。

仕事のやり方を教えてもらえているか。

必要な時間があるか。

道具がそろっているか。

仕事内容が本人の得意不得意と合っているか。

仕事量が現実的か。

困ったときに聞ける人がいるか。

こういう環境の問題を無視して、

「最近、やる気が足りないんじゃない?」

と本人だけを修理しようとすると、話がおかしくなります。

自転車のタイヤがパンクしているのに、

「もっと強くこげ!」

と言っているようなものです。

いや、まず空気入れましょう。

だから、自分の仕事がうまくいっていないと感じたときも、

「自分は仕事ができない」

と一気に結論を出す前に、

「力を出しやすい環境になっているかな」

と考えてみる価値があります。

これは、自分を甘やかすこととは違います。

状況を正確に見ることです。

うまくいった日は、満足感もちゃんと受け取る

原因と結果の向きが一つではない可能性を考えると、

「仕事への満足度を高めてから成果を出そう」

と考えなくてもよいことも見えてきます。

もしかすると、

小さく成果が出ることで、仕事への満足度が上がる

こともあるからです。

たとえば、

「今日は電話対応がうまくできた」

「昨日より早く資料を作れた」

「ありがとうと言ってもらえた」

「わからなかった仕事が一人でできた」

そんな小さな成功があると、

「あれ、この仕事、少しできるようになってきたかも」

という感覚が生まれます。

その感覚が、

「ここで働くのも悪くないな」

につながることがあります。

だから、仕事への満足度を上げようとして、壮大な「やりがい探し」を始めなくてもいい。

まずは、

できたことを、できたこととして受け取る。

これもかなり大切です。

私たちは失敗には蛍光ペンを引くのに、成功には鉛筆で小さく丸をつけて終わりがちです。

少しくらい逆でもいい。

転職を考えるときも、「好きか嫌いか」の二択にしない

この研究は、転職を考えるときにもヒントになります。

「この仕事、好きじゃない」

と思ったとき、

すぐに、

「では辞めるべきだ」

とも、

「仕事なんだから我慢すべきだ」

とも限りません。

まず見るのは、

「何が変われば、今より少し働きやすくなるのか」

です。

仕事内容なのか。

人間関係なのか。

勤務時間なのか。

給料なのか。

評価なのか。

役割なのか。

もし変えられる部分が大きいなら、今の職場で調整する道もあります。

反対に、いちばん大事な部分がどうしても変えられないなら、環境そのものを変えることが選択肢になるかもしれません。

大事なのは、

「仕事を愛しているか」だけで人生の進路を決めないこと

です。

愛してはいない。

でも、得意。

生活には合っている。

人間関係は穏やか。

家に帰れば自分の時間がある。

それなら、その仕事はかなり良い仕事かもしれません。

逆に、仕事内容は大好きだけれど、毎日心身が削られているなら、

「好きなんだから我慢しなきゃ」

と考えなくてもいい。

好きと、続けられるは、別の話です。

仕事は「好き」より「ちょうどいい」でもいい

この論文を生活に活かすなら、私はここがいちばん大切だと思います。

仕事は、人生でいちばん好きなものでなくてもいい。

ものすごく好きではないけれど、

まあまあ得意で、

人間関係も悪くなくて、

生活できるくらいのお金をもらえて、

夜にはちゃんと自分に戻れる。

そんな仕事もあります。

そして、それは決して「妥協した人生」ではありません。

仕事への満足度と成果が完全に同じものではないように、

仕事の価値も「好きか嫌いか」だけでは測れません。

安心できる。

続けられる。

少し成長できる。

誰かの役に立てる。

生活が守られる。

休みの日に仕事を忘れられる。

そういうものも、立派な仕事の価値です。

だから、

「仕事を好きになれない自分はダメなのかな」

と思ったときは、問いを少し変えてみてもいい。

「この仕事を、もう少し自分に合う形にできないかな」

そのくらいの問いなら、今日から考えられます。

仕事への満足度は、成果を生む魔法のボタンではありません。

でも、自分の働き方が無理をしていないか教えてくれる、小さな温度計にはなります。

熱すぎるのか。

冷え切っているのか。

それとも、

「まあ、このくらいなら悪くない」

という温度なのか。

毎日を働く私たちに必要なのは、いつも100点の仕事愛ではなく、

自分が長く座っていられる、ちょうどいい椅子を探すこと

なのかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

少し注意したい点:仕事の満足度が高ければ成果も上がる?「相関」と「因果」は分けて考えよう

この研究は、とても面白いです。

仕事への満足度と仕事の成果には、全体として正の関係がある

「やっぱり、気持ちよく働けることって大事なんだな」

と、少しうれしくなる結果でもあります。

ただし、ここで勢いよく、

「よし、社員満足度を上げれば業績も上がる!」

とホワイトボードに大きな矢印を描くのは、少し待ったほうがよさそうです。

研究を読むときには、

「何がわかったのか」だけでなく、「どこまではまだ言えないのか」

も一緒に見ておく必要があります。

研究結果は、お土産ではあります。

でも、持ち帰る前に賞味期限と取り扱い説明くらいは見ておきたいところです。

「関係がある」と「原因である」は、似ているようで別物

いちばん大切なのは、ここです。

この研究からは、

仕事への満足度が高い人ほど、仕事の成果も高い傾向がある

とは言えます。

しかし、

仕事への満足度を高めれば、その結果として成果が上がる

とまでは言い切れません。

この違いが、「相関」と「因果」です。

たとえば、

仕事に満足する

意欲が高まる

成果が上がる

という流れは考えられます。

でも逆に、

仕事で成果が出る

周囲から評価される

自信や達成感が生まれる

仕事への満足度が上がる

という流れもありえます。

さらに、

「その人の能力と仕事が合っている」

「上司との関係がいい」

「仕事の裁量が大きい」

「職場環境が整っている」

といった別の条件が、満足度と成果の両方に影響している可能性もあります。

つまり、

「満足度さんが成果さんを連れてきました」

と犯人を一人に決めるには、まだ証拠が足りないわけです。

研究の世界は、ドラマのように開始45分で犯人を確定してくれません。

相関があるからといって、一人ひとりに当てはまるわけではない

もう一つ大切なのが、平均的な傾向と個人の話を分けることです。

今回の研究では、大量のデータをまとめることで、

「全体としては、満足度が高い人ほど成果も高い傾向があります」

という結果が得られました。

でもこれは、

「仕事に満足しているAさんは、必ず仕事ができる」

という意味ではありません。

仕事が大好きだけれど成果が出ない人もいます。

仕事にはあまり満足していないけれど、非常に高い成果を出している人もいます。

全体の傾向というのは、あくまで大きな空から見た地図です。

地図では道が一本に見えても、実際に歩いてみると坂もあれば、信号もあれば、なぜか猫が道の真ん中に座っていることもあります。

個人には個人の事情があります。

だから、この研究を使って、

「あなたは仕事に不満があるから成果が低いんですよ」

などと人を診断することはできません。

研究は、人を決めつけるための判子ではないのです。

「仕事の成果」といっても、測り方はいろいろある

さらに注意したいのが、仕事の成果とは何を指すのかという問題です。

一口に「仕事ができる」と言っても、仕事によって意味はずいぶん違います。

営業なら売上。

製造なら生産量や品質。

事務なら正確さや処理量。

対人援助職なら、数字だけでは測れない対応の質もあります。

また研究によっては、上司による評価が使われることもあります。

つまり、

「仕事の成果」という箱の中には、いろいろなものが入っている

わけです。

そして、成果の測り方が違えば、満足度との関係の見え方も変わる可能性があります。

だから、

「満足度と成果には相関が約.30ありました」

という数字だけを取り出して、

「どんな仕事でも必ず同じくらい関係する」

と考えるのは少し乱暴です。

仕事の種類も違えば、評価の方法も違います。

お寿司屋さんと消防士と経理担当者を、全部同じ物差しで測るわけにはいきません。

この論文は2001年の研究であることも忘れない

もう一つ、年代にも少し注意が必要です。

この論文が発表されたのは2001年です。

つまり、そこにまとめられている研究は、それ以前に行われたものです。

もちろん、だから価値がないわけではありません。

むしろ、仕事の満足度と成果の関係について大きな流れを整理した、重要な研究です。

ただし、働き方そのものは、その後かなり変わっています。

在宅勤務。

オンライン会議。

副業。

フリーランス。

柔軟な勤務時間。

チャット中心の職場。

2001年当時には、今ほど一般的ではなかった働き方が増えました。

ですから、この論文は、

「仕事の満足度と成果には関係があるらしい」という大きな土台

として読むのがよく、

「2026年のすべての働き方に、そのまま数字を当てはめられる」

と考えないほうが安全です。

研究はタイムカプセルではありませんが、時代の空気は少し入っています。

満足度が高ければ、それだけで「良い職場」とも限らない

ここも少し面白いところです。

仕事への満足度が高い。

それ自体は、もちろん望ましいことです。

でも、

満足度が高い=その職場には何の問題もない

とは限りません。

たとえば、

「仕事は楽だし、人間関係もいいので満足しています」

という職場が、必ずしも成長できる環境とは限りません。

逆に、新しい仕事に挑戦している時期には、

「難しいなあ」

「まだ思うようにできないなあ」

と一時的に満足度が下がることもあります。

人間には、

心地よいことと、成長につながることが完全には一致しない

場面があります。

だから、職場づくりでも、

「満足度の数字だけ上げればいい」

と考えてしまうと、本来見るべきものを見失うことがあります。

働きやすさ。

成長。

公平さ。

安心。

仕事の意味。

適切な負荷。

成果。

こうしたものを、いくつかの窓から見る必要があります。

満足度は大事な窓です。

でも、家じゅう全部が窓では困ります。

この研究を「仕事を楽しめ」という圧力に使わない

そして、これは働く個人にとってかなり大切です。

研究結果を、

「成果を出したいなら、もっと仕事を好きにならなければならない」

と受け取る必要はありません。

仕事に満足できない時期はあります。

疲れている日もあります。

職場への不満があることもあります。

それは、その人が仕事人として失格だという意味ではありません。

今回の研究が示しているのは、

満足度と成果には平均的な関連がある

ということです。

「笑顔で出勤できない日は成果が落ちます」という朝礼用の標語ではありません。

むしろ、この研究は、

「働く人の気持ちは成果と無関係ではないんだから、ちゃんと扱おう」

と読むほうが自然です。

「気持ちは仕事に持ち込むな」

でもない。

「いつも前向きでいろ」

でもない。

その間です。

研究は「答え」より、考えるための地図として使う

心理学研究を読むとき、私は、

「これは私に何を命令しているのか」

ではなく、

「これは私を見るためのどんな視点を増やしてくれるのか」

と考えるのがちょうどいいと思います。

今回なら、

「仕事への満足度は、成果と完全に別物ではない」

という視点が一つ増えます。

すると、

「最近うまくいかないのは能力の問題だけなのかな」

「仕事の中で、何に不満を感じているんだろう」

「成果が出たとき、自分の仕事への感じ方も変わっていないかな」

と、自分の働き方を少し丁寧に見ることができます。

これくらいの使い方が、研究とのいい付き合い方ではないでしょうか。

研究結果は、人生の取扱説明書ではありません。

もっと言えば、

地図です。

道の存在は教えてくれます。

でも、どの道を歩くかまでは決めてくれません。

仕事への満足度と成果には、確かに関係がある。

でも、そこにはたくさんの別の道も交差している。

その複雑さまで忘れずに受け取ることが、この論文をいちばん大切に読む方法だと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

まとめ:仕事の満足度と成果はつながっている。でも「好きなら成功する」ほど単純じゃない

ここまで見てきたように、この研究が教えてくれたことは、意外とシンプルです。

仕事への満足度が高い人ほど、仕事の成果も高い傾向がある。

ただし、

「だから仕事を好きになれば成果が上がる」

と一本の矢印で結んでしまうほど、話は単純ではありません。

この少し歯切れの悪い感じこそ、むしろこの研究の良さだと思います。

人間の仕事というものは、

「満足度を上げました」

「はい、成果も上がりました」

と、電子レンジのボタンみたいには動いてくれません。

仕事への満足度も大切。

能力も大切。

職場環境も大切。

上司や同僚との関係も大切。

仕事のやり方がわかっているか、必要な時間や道具があるか、自分の得意なことと仕事が合っているかも関係します。

つまり、成果という一つの数字の後ろには、かなり大勢の登場人物がいるのです。

「仕事が楽しい」と「仕事ができる」は、同じではない

この論文では、多くの研究をまとめて分析した結果、仕事への満足度と成果のあいだに正の関連が見られました。

これは、

「働く人の気持ちなんて、成果とは関係ありません」

とは言えないということです。

でも同時に、

「仕事が好きなら、その人は仕事ができる」

とも言えません。

ここは、かなり大事です。

世の中には、

「仕事はそれほど好きではありません」

と言いながら、とても丁寧で正確な仕事をする人もいます。

逆に、

「この仕事、本当に大好きなんです!」

と言いながら、パソコンのデスクトップが未整理ファイルで地層になっている人もいます。

人間ですから、あります。

だから、「好き」と「できる」を同じ箱に入れないこと

これだけでも、仕事を見る目はかなり変わります。

満足度は、成果への「魔法のボタン」ではなく、一つの大事な手がかり

では、仕事への満足度なんて気にしなくてもいいのでしょうか。

もちろん、そういう話でもありません。

むしろ今回の研究からは、

働く人が仕事をどう感じているかは、無視してよいものではない

と考えたほうが自然です。

毎日、

「もう無理だ」

「ここにいるのが苦しい」

「この仕事を続けるのがしんどい」

と思いながら働いているのに、

「でも成果は出ているから問題なし」

で終わらせるのも、少し違います。

成果は出ていても、本人が長く続けられないなら、その働き方にはどこか無理があるかもしれません。

反対に、

「すごく楽しい職場です!」

だけで、仕事の仕組みや教育、適切な配置を考えなくてもいいわけではありません。

満足度は万能薬ではありません。

でも、職場や働き方の状態を知るための大切な手がかりではあります。

温度計みたいなものです。

温度計だけでは部屋は暖まりません。

でも、温度計がなければ、

「なんか寒い気がするけど、まあ気のせいでしょう」

で冬を越そうとしてしまいます。

それはちょっと無理があります。

「もっと仕事を好きにならなきゃ」と思わなくていい

この研究を個人の生活に持ち帰るなら、私はここを強調したいです。

仕事を大好きになる必要はありません。

仕事への満足度と成果に関係があると聞くと、

「じゃあ、もっと前向きに働かなきゃ」

「今の仕事を好きになれない自分はダメなのかな」

と思ってしまう人もいるかもしれません。

でも、そんな結論にはなりません。

仕事に求めるものは、人によって違います。

やりがいを一番にしたい人もいる。

安定を大切にしたい人もいる。

家族との時間を守りたい人もいる。

仕事は仕事としてきちんとやって、人生の楽しみは別のところに置きたい人もいる。

どれもおかしくありません。

「仕事が人生そのものです」

という人もいれば、

「仕事は人生を支える大事な一部分です」

という人もいる。

会社の入口で人生観の統一試験を受ける必要はないのです。

ただし、「ずっとしんどい」は見過ごさなくていい

一方で、

「仕事は楽しくなくてもいいんだから、どれだけつらくても我慢しよう」

という話にもなりません。

ここは間違えたくないところです。

毎日強い不満を抱えているなら、

「自分は根性がない」

と結論づける前に、

何に不満を感じているのか

を見てみる価値があります。

仕事内容なのか。

人間関係なのか。

勤務時間なのか。

評価なのか。

仕事量なのか。

自分の得意不得意とのズレなのか。

問題を細かくすると、

「仕事そのものを辞めるしかない」

と思っていたところに、

「ここだけ変われば、かなり違うかもしれない」

という道が見えることがあります。

もちろん、環境そのものを変えたほうがいい場合もあります。

大切なのは、

苦しさを気合いで押し込めることではなく、苦しさが何を知らせているのかを見ること

です。

成果だけで自分の仕事人生を採点しない

そしてもう一つ。

仕事の成果は大切です。

働いている以上、ある程度の結果を求められるのは自然なことです。

でも、

成果が高い

いい人生

でもありません。

逆に、

思うように成果が出ない

人として価値がない

でもありません。

ここは、かなり距離を取って考えていいところです。

仕事の成果は、あなたという人間全体につけられた点数ではありません。

ある仕事を、ある環境で、ある時期に行ったときの結果です。

そこには能力だけでなく、経験、体調、環境、支援、役割など、たくさんの条件が関わります。

仕事がうまくいかなかった日に、

「今日は仕事がうまくいかなかった」

で止めていい。

そこから、

「だから自分はダメな人間だ」

まで行かなくていいのです。

一日の仕事の失敗から人格全体まで話を広げると、会議の議題が大きくなりすぎます。

いったん案件を戻しましょう。

この研究が残したのは、「ちょうどよく働く」という視点

最終的に、この論文から見えてくるのは、

「楽しく働くこと」と「成果を出すこと」のどちらか一方を選ぶ必要はない

ということだと思います。

できれば、気持ちよく働ける。

できれば、自分の力も発揮できる。

無理なく続けられる。

誰かの役に立てる。

生活も守れる。

全部が100点でなくてもいい。

70点と65点と80点くらいで、

「まあ、これなら明日も来られるかな」

と思える働き方だって、十分に価値があります。

仕事への満足度と成果は、完全に同じものではありません。

でも、遠く離れた他人でもありません。

少し距離を取りながら、お互いに関係している。

この研究が見せてくれたのは、そんな現実的な風景でした。

だからもし今、

「この仕事、好きじゃないから向いていないのかな」

とか、

「成果が出ていないから、自分には価値がないのかな」

と思っているなら、少しだけ問いを変えてみてもいいかもしれません。

「私は、どんな条件なら少し気持ちよく働けるだろう」

そして、

「どんな環境なら、自分の力を出しやすいだろう」

仕事を愛せるかどうかだけでなく、その二つを考えてみる。

それくらいが、人間の働き方にはちょうどいいのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

あとがき

この論文を読んでいて、私は何度も、

「人間って、ほんとうに都合よくできていないなあ」

と思いました。

もちろん、いい意味でです。

仕事に満足している人ほど成果も高い。

ここだけ切り取れば、話はとてもきれいです。

「では、みんなが仕事を好きになればいいですね」

「職場を楽しくすればいいですね」

「はい、解決!」

となりそうです。

ところが実際には、そこまで単純ではない。

満足していても成果が出ないことはあるし、仕事が好きではなくても、ものすごくいい仕事をする人もいる。

成果が出たから満足することだってあるでしょうし、そもそも本人の能力や職場環境、上司との関係など、別のものが両方に影響している可能性もある。

人間は、心理学の教科書の右ページにある図のようには動いてくれません。

矢印一本で説明しようとすると、

「いや、こっちにも道がありますよ」

と横道からぞろぞろ人が出てくる。

私は、そういう研究がけっこう好きです。

「好きな仕事をしなさい」が、少し重たく感じるとき

世の中には、

「好きなことを仕事にしよう」

という言葉があります。

もちろん、好きなことを仕事にできたら素敵です。

朝起きるたびに、

「今日もあれができる!」

と思えたら、人生はかなり明るいでしょう。

でも私は、この言葉が少しだけ苦しくなる人もいるんじゃないかなと思っています。

仕事を大好きになれない。

天職だとも思えない。

月曜日の朝には、普通に、

「休み、短くなかった?」

と思う。

そんな自分を見て、

「自分は人生を間違えているのかな」

と思ってしまう人です。

でも今回の論文を読んでいると、少なくとも、

「仕事を愛していないと、いい仕事はできない」

とは言えないことが見えてきます。

これ、私はけっこう救いのある話だと思うんです。

仕事というものを、もう少し普通の場所まで下ろしてくれるからです。

仕事は運命の恋人でなくてもいい。

毎朝抱きしめたくなるほど好きでなくてもいい。

「まあ、悪くないかな」

くらいの関係だってあります。

長年連れ添った近所のおじさんみたいな距離感でも、案外うまくやっていけるかもしれません。

私は「大好き」より、「明日も来られる」が好きです

「アドラーの昼寝」で心理学の論文を読んでいると、私はよく、

人間にとって本当に大事なのは、最大値ではなく持続可能性なのではないか

と思います。

最高に楽しい。

最高にやりがいがある。

最高に成長できる。

もちろん、それは魅力的です。

でも、それを毎日に求めると、人生はなかなか忙しい。

仕事に関して言えば、

「大好き!」

よりも、

「明日も来られる」

のほうが、長い人生では大事なこともある気がします。

今日は70点。

昨日は55点。

金曜日は92点。

月曜日は、まあ38点。

でも、それでも続いている。

たまにうまくいく。

ときどき誰かに「助かった」と言われる。

帰り道にコンビニで好きなものを買えるくらいの気力が残っている。

私は、そういう仕事人生もかなり立派だと思うのです。

世の中はどうしても、輝いている仕事人生を紹介したがります。

夢を叶えました。

天職を見つけました。

毎日が充実しています。

でも、その陰にはきっと、

「今日もなんとか終わったな」

と靴を脱ぐ無数の人がいる。

私はむしろ、その人たちの人生もちゃんと肯定されてほしいと思っています。

成果が出ない日は、人格まで反省会に呼ばなくていい

今回の論文を読んでいて、もう一つ考えたことがあります。

私たちは仕事がうまくいかないと、なぜか話を大きくしがちです。

資料を一つ間違えた。

「自分は仕事ができない」

上司に注意された。

「自分は社会人としてダメだ」

予定通り進まなかった。

「そもそも自分には能力がない」

いやいや。

議題が広がりすぎです。

資料のミスの話をしていたのに、気づけば「人間としての総合評価」まで会議資料に追加されています。

そこまで審議しなくていい。

仕事の成果には、本人の努力だけではなく、経験や体調、環境、支援、仕事内容との相性など、いろんなものが関係します。

そして今回の研究が示してくれたように、仕事への満足感もその一つです。

だから、成果が出ない日には、

「今日は何がうまくいかなかったんだろう」

くらいで止めておいていい。

「自分はダメだ」まで飛ばない。

この一駅を飛ばさないだけでも、働くことは少し楽になるのではないでしょうか。

満足度は、「幸せですか?」という面接ではない

「仕事の満足度」という言葉も、私は今回あらためて面白いなと思いました。

満足していますか。

そう聞かれると、

「ええと……幸せかどうかを答えればいいんでしょうか」

となりそうです。

でも実際には、もっと小さな話でもいいんですよね。

この仕事は得意。

人間関係は悪くない。

給料には不満がある。

休みはもう少しほしい。

仕事内容は面白い。

通勤は嫌。

こんなふうに、私たちの仕事への気持ちはパーツに分かれています。

全部が好きか、全部が嫌いか。

そんなきれいな二択ではありません。

私はそこに、少し安心します。

「仕事に満足しています!」

と言い切れなくてもいい。

逆に、

「全部最悪です」

とまとめなくてもいい。

ここは好き。ここはしんどい。

それくらい細かく自分を見るほうが、人間には似合っている気がします。

「アドラーの昼寝」は、答えより椅子を置いておきたい

このサイトで心理学の論文を紹介していると、

「結局どうすればいいんですか?」

という問いに、いつもぶつかります。

研究には答えがあります。

でも、人の人生には、研究結果をそのまま貼りつけられません。

だから私は、「アドラーの昼寝」を、

人生の正解を配る場所にはしたくない

と思っています。

どちらかというと、

「こんな研究がありましたよ」

「あなたの場合は、どうでしょうね」

と、その間に椅子を一脚置いておくような場所にしたい。

疲れているなら、少し座る。

元気なら、そのまま通り過ぎる。

また考えたくなったら戻ってくる。

それくらいがいい。

今回の論文も、

「仕事に満足しましょう」

と命令してくる研究ではありません。

まして、

「満足していないあなたは成果が出ません」

なんて話でもありません。

むしろ私には、

「仕事への気持ちも大事ですよ。でも、人間はそれだけでは決まりませんよ」

と言っているように見えました。

この「それだけでは決まりません」という部分が、私は好きです。

人間には余白があるからです。

仕事を大好きでなくても、今日をちゃんと生きている

もし今の仕事を、

「大好きです」

とは言えない人がいたとしても、私はそれほど心配しなくていいと思います。

それでも朝起きている。

支度をしている。

職場へ向かっている。

誰かに挨拶をしている。

一つ仕事を終わらせている。

失敗したら少し落ち込んで、それでも帰ってきている。

それだけでも、毎日はけっこうな仕事量です。

仕事の満足度と成果には関係がある。

でも、あなたの価値と仕事の成果が同じものだとは、この論文はどこにも書いていません。

ここは、そっと切り離しておきたいところです。

いい仕事をした日は、

「今日はよくやった」

と思えばいい。

うまくいかなかった日は、

「今日はうまくいかなかった」

でいい。

仕事が好きな日は、その気持ちを大事にする。

嫌になった日は、

「今日は嫌だったな」

と認める。

人間は、毎日同じ温度では働けません。

それでも生活は続いていきます。

そしてたぶん、その揺れを含めたものが「働く」ということなのでしょう。

仕事への満足と成果は、少し離れながら、たしかにつながっている。

今回の論文を読み終えて、私の頭に残ったのはそんな景色でした。

ぴったり手をつないでいるわけではない。

でも、知らない他人でもない。

同じ帰り道を、ときどき並んで歩いている。

そのくらいの距離が、なんだか人間らしくて、私は好きです。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

制作ノート

出典論文:Judge, T. A., Thoresen, C. J., Bono, J. E., & Patton, G. K.(2001).
The Job Satisfaction–Job Performance Relationship: A Qualitative and Quantitative Review.
Psychological Bulletin, 127(3), 376–407. American Psychological Association.

DOI:10.1037/0033-2909.127.3.376

掲載・確認先PubMed / Google Scholar / APA PsycNet

記事について:本記事は、上記論文の内容をもとに、一般の読者向けに要約・解説したものです。原文の趣旨を尊重しつつ、読みやすさを重視して再構成しています。

制作体制:本記事は、GPT-5.6 Thinking (Sol)を用いて下書きを作成したうえで、当サイト管理人・阿部牧歌が内容を確認し、表現や流れを整えながら仕上げています。機械の速さと、人の目と感覚の両方を生かしながら、読みやすく信頼できる記事づくりを目指しています。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
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阿部牧歌
阿部牧歌
心理学論文のうたたね案内人
はじめまして。心理学の論文要約サイト「アドラーの昼寝」を運営している阿部牧歌です。 これまで、障がい者福祉事業所の施設長などを経て、現在は某就労支援機関にてキャリアコンサルタントとして働いています。 日々、さまざまな悩みや不安、迷いにふれる中で感じるのは、人の心はとても複雑なのに、ひとつの言葉や考え方で少し楽になることがある、ということです。心理学の論文には、そんな「心を理解するためのヒント」がたくさん詰まっています。けれど、そのまま読むには少しかたくて、専門用語も多く、気軽には近づきにくいものでもあります。 「アドラーの昼寝」では、そんな心理学の論文を、なるべくわかりやすく、やわらかく、そして少し面白く読める形にしてお届けしたいと思っています。読書が好きで、本の中を歩くように言葉を読む時間が昔から好きでした。論文もまた、少し入り口を整えるだけで、ぐっと親しみやすいものになります。 このサイトが、忙しい日々のなかでほんの少し立ち止まり、自分や誰かの心をやさしく見つめるきっかけになれば嬉しいです。
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