アナ・L・マッキノン(Anna L. MacKinnon)の論文一覧:心理学の話かと思ったら、日々のしんどさにまで効いてきそうな論文たち
アナ・L・マッキノン(Anna L. MacKinnon)のプロフィール
アナ・L・マッキノンさんは、ひとことで言うと、「こころの傷み」と「親子のはじまり」を、かなりまじめに、でも未来につながる形で研究している心理学者さんです。現在はモントリオール大学の医学部・精神医学および依存症学の部門で助成付き助教授級の研究者として活動していて、CHUサント・ジュスティーヌでも臨床心理士・研究者として紹介されています。
研究テーマもなかなか味わい深くて、主に周産期メンタルヘルスと子どもの発達が中心です。つまり、「赤ちゃんが生まれる前後の親のこころの状態」や、「その経験が子どもの成長にどう影響するのか」を見つめているわけです。しかも、ただ「大変ですね」で終わらず、どんな要因がリスクになり、どんな要因が支えになるのかを調べて、予防やレジリエンスを高める支援につなげようとしているのが、この方の研究の芯です。
「なるほど、心を研究している人なんだな」で終わらないのが、またこの人のおもしろいところです。訓練の過程では、大規模コホート研究を使って、近所の環境のような社会的要因から、エピジェネティクスのような生物学的要因まで、かなり幅広く見ていたそうです。つまり、心の問題を「気の持ちよう」で片づけず、社会も体もまとめて見ようとしているタイプの研究者なんですね。研究室の窓から人間を見るのではなく、町の空気や暮らしごと見ている感じです。
さらに現在の研究プロジェクトとして、モントリオール大学の研究者ページでは「周産期メンタルヘルスと子育てを支え、幼児期の発達を促す研究」が挙がっていて、2024年から2028年にかけての助成情報も掲載されています。これはもう、「困りごとが大きくなってから対応する」より、「早い段階で支えを育てよう」という姿勢がかなりはっきりしていると言えそうです。
参考文献・確認先: モントリオール大学:Anna MacKinnon 公式プロフィール / CHUサント・ジュスティーヌ:Anna MacKinnon 研究者プロフィール / Google Scholar:Anna MacKinnon 論文・引用情報 / PubMed:Anna L. MacKinnon 関連論文

アナ・L・マッキノン(Anna L. MacKinnon)の研究から学べること
アナ・L・マッキノンさんの研究から学べることは、ひとことで言うと、「親になる時期の心のゆれは、本人の気合いだけで片づけてはいけない」ということです。
妊娠中や出産後というと、世の中では「幸せいっぱい」「赤ちゃんが来る喜び」「きらきら育児生活」みたいなイメージで語られがちです。もちろん、うれしい瞬間はたくさんあります。でも現実には、体はしんどい、眠れない、ホルモンは大騒ぎ、将来の不安は台所の換気扇みたいに止まらない。そこに「母親なんだから」「親なんだから」と言われたら、心の中の小さな会議室で議長が机に突っ伏してしまいます。
マッキノンさんは、臨床心理士であり、妊娠・出産前後の心の健康や、子どもの発達を研究している研究者です。現在はモントリオール大学の精神医学・依存症学部門の助教で、CHU Sainte-Justine研究センターにも所属しています。研究の関心として、妊娠・出産前後の心の健康、子どもの発達、心の不調を防ぐための新しい支援づくりなどが紹介されています。
ここで大事なのは、マッキノンさんの研究が「お母さん、もっとがんばりましょう」という方向ではないことです。むしろ反対です。「がんばれ」だけでは足りないから、どんな環境が心を守り、どんな支援が届きやすいのかを考えているのです。
たとえば、妊娠中の不安や落ち込み。これを「性格の問題ですね」で終わらせてしまうと、話が雑すぎます。たこ焼きにソースをかけ忘れたくらい雑です。心の状態には、睡眠、家族関係、経済状況、社会的な支え、過去の経験、体調、医療へのアクセスなど、いろいろなものが絡み合っています。マッキノンさんの研究は、そうした「心を取り巻く条件」を丁寧に見ようとします。
特に、妊娠中の睡眠に関する研究はわかりやすいです。マッキノンさんたちは、妊娠中の不眠に対して、認知行動療法という心理的な方法を使う研究計画を発表しています。ざっくり言えば、眠れない人に「早く寝なさい」と圧をかけるのではなく、眠りに関する考え方や生活のリズムを整え、眠りやすくなる道筋をつくる方法です。研究計画では、妊娠中の不眠に対する支援を検証するため、無作為化比較試験という方法が用いられています。
これ、日常的にもかなり大切です。
「眠れないなら寝ればいいじゃん」と言う人がいますが、それができたら全国の不眠さんたちは今ごろ布団の中で優勝パレードをしています。眠れない人に必要なのは、根性のメガホンではなく、眠りを邪魔しているものを一緒にほどくことです。不安、考えすぎ、生活リズム、スマホ、体の違和感、昼間の疲れ。眠りの問題は、夜だけの問題ではなく、一日の過ごし方全体とつながっていることがあります。
また、マッキノンさんは、コロナ禍で妊娠中の人の不安や抑うつが高まったことに関する研究にも関わっています。妊娠という大きな変化の時期に、感染症への不安、医療体制の変化、家族との距離、出産への心配が重なると、心はまるで荷物を積みすぎた自転車のようになります。少しの段差でも、ぐらっとくる。だからこそ、個人だけでなく、社会や医療がどう支えるかが大切になるのです。
ここから学べることは、「心の不調は、その人だけの中にあるのではない」ということです。
もちろん、本人の感じ方や考え方も関係します。でも、それだけではありません。周りに相談できる人がいるか。必要な情報が届いているか。医療や支援につながりやすいか。家庭の中で休める時間があるか。経済的な不安が大きすぎないか。こうした環境が、心の天気に大きく影響します。人間の心は、密閉容器ではありません。外の風を受ける、けっこう繊細な洗濯物です。
さらに面白いのは、マッキノンさんが「支援をどう届けるか」にも関心を持っているところです。研究紹介では、遠隔支援やアプリを使った支援、親子関係を助ける方法などにも取り組んできたことが示されています。つまり、「よい支援があります。でも病院まで来られる人だけどうぞ」ではなく、「どうすれば必要な人に届く形にできるか」を考えているわけです。
これは、まさに現代の大事なテーマです。
支援は、存在しているだけでは足りません。必要な人に届かなければ、棚の上にある高級な救急箱みたいなものです。見えているのに手が届かない。忙しい人、移動が難しい人、子育てで外出しづらい人、相談すること自体に抵抗がある人。そういう人にどう届けるか。ここを考えることが、支援の実力になります。
マッキノンさんの研究から、私たちが生活に持ち帰れる視点は、「しんどい人に、正論の重りを乗せない」ということです。
たとえば、妊娠中や子育て中の人が疲れているときに、「みんなやってるよ」「赤ちゃんがいるんだから幸せでしょ」「もっと前向きに考えたら」と言ってしまうと、励ましのつもりが心の階段にバナナの皮を置くことになります。必要なのは、「何がしんどい?」「眠れてる?」「少し休める時間を作ろうか」「一緒に相談先を探そうか」という、生活に着地する言葉です。
そして、これは親だけの話ではありません。職場でも、支援の現場でも、家庭でも同じです。人が不調になったとき、「本人の気持ちが弱い」と決めつける前に、その人を取り巻く環境を見る。眠れているか。孤立していないか。負担が増えすぎていないか。助けを求める場所があるか。ここを見るだけで、支え方はずいぶん変わります。
アナ・L・マッキノンさんの研究から学べることをまとめるなら、「心を守るには、本人だけでなく、環境と支援の形を整えることが大切」ということです。
妊娠や子育ては、人生の大きな転換期です。そこには喜びもありますが、不安もあります。希望もありますが、眠れない夜もあります。だからこそ、親になる人を「がんばるべき人」として見るのではなく、「支えられてよい人」として見ることが大切です。
心は、ひとりで勝手に強くなる鉄の塊ではありません。安心、睡眠、支え、情報、相談できる場所。そうしたものを少しずつ受け取りながら、やわらかく持ちこたえるものです。
マッキノンさんの研究は、親になる人と子どもの未来を、いきなり大きな理想で包むのではなく、眠り、支援、環境、関係性という身近な材料から守ろうとしているように見えます。大きな愛を語る前に、まず今夜ちゃんと眠れるか。立派な子育て論の前に、親の心が休めているか。そこに目を向けるところが、とても現実的で、やさしいのです。

アナ・L・マッキノン(Anna L. MacKinnon)の論文一覧
1.『大学生女性におけるセルフ・コンパッションとボディイメージのつながりを探る』ルイーズ・ワシルキウ、アナ・L・マッキノン、アレカ・M・マクレラン(2012)
Wasylkiw, L., MacKinnon, A. L., & MacLellan, A. M.(2012). Exploring the link between self-compassion and body image in university women. Body Image, 9(2), 236-245. DOI: 10.1016/j.bodyim.2012.01.007
「自分の体、もうちょっと好きになれたらいいのに…」そんな気持ちに、論文がそっと椅子を引いてくれる一本です。大学生女性を対象に、セルフ・コンパッションと体の見え方の関係を調べたところ、自分にやさしい人ほど、体への不安やこだわりが少ないらしい。しかも、ただの自己肯定感とは少し違う役割も見えてくる。読むと、鏡の前の空気がほんの少し変わるかもしれません。

