アンガス・マクベス(Angus MacBeth)の論文一覧:こころの傷をまじめに調べたら、回復のヒントまで連れてきた論文たち

アンガス・マクベス(Angus MacBeth)の論文を読む女性
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アンガス・マクベス(Angus MacBeth)のプロフィール

アンガス・マクベスさんは、ひとことで言うと、「人の心がしんどくなる仕組み」と「そこから少し回復していく道筋」を、研究と臨床の両方から見つめている心理学者です。現在は、イギリスのエディンバラ大学で臨床心理学の上級講師を務めており、登録臨床心理士、公認心理士としても活動しています。さらに、成人メンタルヘルスの分野で、医療機関とも関わっていることが大学プロフィールで確認できます。つまり、研究室で論文だけを書いている人ではなく、実際に心の困りごとを抱える人たちとも向き合ってきたタイプの先生です。

研究テーマとして有名なのは、セルフ・コンパッション、つまり「自分へのやさしさ」と、うつ、不安、ストレスなどの心の不調との関係です。2012年にはアンドリュー・ガムリーさんと一緒に、自分への思いやりと精神的な不調の関係を調べた大きなまとめ研究を発表しています。この論文では、セルフ・コンパッションが高い人ほど、うつや不安、ストレスなどが低い傾向にあることが示されました。ざっくり言うと、「心の中に鬼コーチだけを住まわせるとしんどい。たまには保健室の先生も呼びましょう」という話です。

マクベスさんの面白いところは、「自分にやさしくしましょうね」で終わらないところです。そこをちゃんとデータで見ます。「やさしさって、ふわっとした気分の問題では?」「本当にメンタルヘルスに関係あるの?」という疑問に対して、「では、研究を集めて比べてみましょう」と、白衣の袖をきゅっとまくる感じです。やさしいテーマを扱いながら、やっていることはかなり堅実。ここが、ふわふわ雲に測量機を持ち込むような魅力です。

また、青年期のセルフ・コンパッションと心理的な苦痛に関する研究にも関わっています。2018年の論文では、10代の若者においても、自分へのやさしさが不安、うつ、ストレスなどと強く関係することが示されています。思春期というのは、心の中に「自分ダメ出し委員会」が勝手に開かれやすい時期です。そこにマクベスさんたちの研究は、「その会議、少し休憩を入れませんか」と声をかけているように見えます。

所属先のエディンバラ大学の情報では、マクベスさんは臨床心理学だけでなく、周産期メンタルヘルス、発達に関わる心の問題、複雑なメンタルヘルス、科学的根拠にもとづく心理支援、国際的なメンタルヘルスにも関心を持っていることが確認できます。つまり、心の問題を「その人の弱さ」として見るのではなく、人生の時期、環境、人間関係、社会の仕組みまで含めて考えようとしている研究者です。

たとえるなら、アンガス・マクベスさんは、心の天気予報士のような人です。ただし、「今日は気分が雨ですね」で終わりません。「その雨はどこから来たのか」「傘になるものは何か」「次に同じ嵐が来たとき、どう備えられるか」まで考えます。セルフ・コンパッションという言葉も、難しく聞こえますが、要するに「失敗した自分を、いきなり裁判にかけないこと」です。自分の中に裁判官だけでなく、弁護人も置く。マクベスさんの研究は、その大切さを静かに、でもかなり説得力をもって教えてくれます。

なので、アンガス・マクベスさんを紹介するなら、「自分にきびしすぎる現代人に、研究というランタンを持って近づいてくる臨床心理学者」と言えるかもしれません。心が折れそうなときに必要なのは、根性のムチだけではありません。ときには、「それでもよくやっているよ」と言える内なる声が、回復の小さな足場になります。マクベスさんは、その足場が本当に人の心を支えるのかを、丁寧に調べてきた研究者なのです。

参考文献・確認先:エディンバラ大学:Angus MacBeth 公式プロフィール / Google Scholar:Angus MacBeth 論文・引用情報 / PubMed:Angus MacBeth 関連論文 / ORCID:Angus MacBeth 研究者識別情報

阿部牧歌(管理人)
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アンガス・マクベス(Angus MacBeth)の研究から学べること

アンガス・マクベスさんの研究から学べることは、ひとことで言うと、「人は、自分を責めることで強くなるのではなく、自分に思いやりを向けられることで、少しずつ回復しやすくなる」ということです。

これ、かなり大事です。

私たちはつい、しんどいときほど自分に厳しくなります。「なんでこんなことで落ち込むんだ」「もっとちゃんとしろ」「他の人はできているのに」と、心の中に鬼教官を住まわせてしまう。しかもこの鬼教官、家賃も払わずに朝から晩まで説教してきます。なかなか迷惑な入居者です。

マクベスさんは、イギリスのエディンバラ大学で臨床心理学を教えている研究者であり、臨床心理士としても活動しています。大学の研究者情報では、複雑な精神的不調、周産期の心の健康、発達と心の問題、根拠にもとづく心理療法、世界の心の健康などに関心を持つ人物として紹介されています。

その中でも特に有名なのが、アンドリュー・ガムリーさんと一緒に発表した「自分への思いやり」と心の不調に関するまとめ研究です。この研究では、過去の複数の研究をまとめて分析し、自分への思いやりが高い人ほど、抑うつ、不安、ストレスなどの心の不調が低い傾向にあることを示しました。PubMedに掲載された要約では、自分への思いやりと精神的不調のあいだに大きな関連があったと報告されています。

ここでいう「自分への思いやり」とは、単なる甘やかしではありません。

「今日はつらいから、全部投げ出してポテトチップスを王国の主食にしよう」という話ではないのです。もちろん、たまには休憩も必要です。でも、マクベスさんたちが注目した自分への思いやりは、もっと落ち着いたものです。失敗したときに、自分を人間失格あつかいしない。苦しいときに、「苦しいのは自分だけではない」と思い出す。つらい気持ちを見ないふりせず、でも飲み込まれすぎずに扱う。そんな心の姿勢です。

つまり、自分への思いやりとは、心の中にふかふかの座布団を一枚置くようなものです。

嫌なことがあったとき、私たちは心の床にそのまま正座させられがちです。床は冷たいし、足はしびれるし、頭の中では反省会が長引くし、もう大変です。そこで「まあ、つらかったよね」「ここから何ができるかな」と、自分に少しやわらかい場所を用意する。それが、自分への思いやりです。

ここから学べる一つ目のことは、「自分を責めるほど、立ち直りが早くなるわけではない」ということです。

もちろん、反省は大切です。失敗したら振り返る。改善点を考える。それは必要です。でも、反省と自己攻撃は別物です。反省は地図です。次に進む道を見つけるためのものです。一方、自己攻撃は心のハンマーです。振り回しても、道はできません。むしろ、足元がガラガラ崩れていきます。

「自分が悪い」「自分はだめだ」と責め続けると、人は改善する前に消耗してしまいます。心のエネルギーが、問題解決ではなく自分いじめに使われてしまうのです。これはもったいない。電気代でたとえるなら、部屋を暖めるためではなく、なぜか外の電柱を温めているようなものです。

二つ目の学びは、「苦しみをひとり占めしなくていい」ということです。

つらいとき、人はよく「こんなことで苦しんでいるのは自分だけだ」と思ってしまいます。周りの人はみんな普通に働いて、笑って、生活しているように見える。自分だけが取り残されたように感じる。でも実際には、多くの人がそれぞれ見えない荷物を持っています。表情には出さなくても、不安、後悔、孤独、恥ずかしさ、疲れを抱えていることがあります。

自分への思いやりは、「自分だけが弱いのではない」と思い出す力でもあります。これは、開き直りではありません。人間として自然な苦しみに、自分も含まれていると認めることです。心の世界でいう、ひとりぼっち解除ボタンですね。

マクベスさんの研究は、精神的不調をもつ人への支援にもつながっています。たとえば、精神病体験をもつ人の語りの中にある思いやりを調べた研究では、自分や他者への思いやりが、脅威、恥、屈辱、被害的な考えなどへの対抗力になりうると説明されています。

これは、とても重要です。

心が傷ついている人に必要なのは、「もっと強くなれ」という号令だけではありません。むしろ、「傷ついた自分をどう扱うか」が大切になります。心がけがをしているときに、そこへさらに説教の塩を塗り込んでも回復しません。必要なのは、傷口を見つけて、清潔な水で洗い、少しずつ手当てすることです。心理的な思いやりは、その手当てに近いものです。

三つ目の学びは、「思いやりは、ふわふわした道徳ではなく、回復のための技術でもある」ということです。

思いやりという言葉は、少しやさしすぎて、研究っぽく聞こえないかもしれません。でも、実際にはかなり実用的です。自分を責めすぎる人は、挑戦もしにくくなります。なぜなら、失敗したときの心の罰が重すぎるからです。失敗するたびに心の裁判所で終身刑を言い渡されるなら、誰だって新しいことに手を出しにくくなります。

反対に、「失敗しても、自分を全部否定しなくていい」と思える人は、もう一度試しやすくなります。自分への思いやりは、甘えではなく、再挑戦の安全ネットでもあるのです。サーカスの空中ブランコだって、下にネットがあるから大胆に飛べます。心にもネットが必要です。

日常に置き換えるなら、マクベスさんの研究は、こんな問いをくれます。

「今、自分にかけている言葉を、大切な友人にも同じように言うだろうか」

もし友人が失敗して落ち込んでいるときに、「あなたは本当にだめですね。なぜ生きているのですか」なんて言わないはずです。そんなことを言ったら、友情の橋が爆破されます。なのに、自分には平気でそれを言ってしまう。ここが人間の不思議なところです。自分への言葉だけ、なぜか軍曹仕様になっているのです。

だから、まずは言葉を少し変えてみる。

「なんでできないんだ」ではなく、「今は何が難しかったんだろう」
「自分はだめだ」ではなく、「今回はうまくいかなかった。でも全部が終わったわけではない」
「もっと頑張れ」ではなく、「少し休んでから、次の一歩を考えよう」

これだけで、心の中の空気が少し変わります。厳しい尋問室から、落ち着いた相談室に移る感じです。

アンガス・マクベスさんの研究から学べることをまとめるなら、「心の回復には、自分を責める力より、自分を支える力が必要」ということです。

人は、叩かれて伸びる棒ではありません。土と水と光が必要な植物に近いです。ときには剪定も必要ですが、毎日ハサミで切り刻まれたら育ちません。心も同じです。反省という剪定は必要です。でも、自己攻撃という伐採はやりすぎです。

自分への思いやりは、怠けるための言い訳ではありません。苦しんでいる自分を見捨てず、立ち直るための土台をつくる姿勢です。

マクベスさんの研究は、心にこう語りかけているように思います。

「あなたは、責められないと変われない人ではありません。支えられることで、変わっていける人です。」

これは、かなり温かいメッセージです。心の中の鬼教官をいきなり追い出すのは難しくても、隣にやさしい相談役を座らせることはできます。鬼教官が「だめだ!」と叫んだら、相談役が「まあ、まずは状況を見ましょう」と言ってくれる。そんな内なるチーム編成を少しずつ変えていく。

それが、自分への思いやりを育てる第一歩なのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

アンガス・マクベス(Angus MacBeth)の論文一覧

1.『自分へのやさしさは心の不調とどう関わるのか 自己コンパッションと精神的なつらさをめぐるメタ分析』アンガス・マクベス、アンドリュー・ガムリー(2012)

MacBeth, A., & Gumley, A. (2012). Exploring compassion: A meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathologyClinical Psychology Review, 32(6), 545-552. DOI:10.1016/j.cpr.2012.06.003

「自分にやさしくすると甘えるだけでは?」と思ったあなた、この論文、なかなか面白いです。MacBeth & Gumley(2012)は、セルフ・コンパッションと心の不調の関係を、いろんな研究をまとめてじっくり確認しました。すると、うつ、不安、ストレスなどが強い人ほど、自分へのやさしさが低い傾向が見えてきます。つまり、心がしんどいときに必要なのは、気合いより先に“自分への思いやり”かもしれない、という話です。根性論にそっと毛布をかけるような論文。読んでみると、心への接し方が少し変わるかもしれません。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】自分にやさしい人ほど心は壊れにくい? 自己コンパッション研究の重要ポイント
【論文要約】自分にやさしい人ほど心は壊れにくい? 自己コンパッション研究の重要ポイント
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