アンドリュー・ガムリー(Andrew Gumley)の論文一覧:こころのしんどさをまじめに追いかけたら、希望のほうが先に見つかった論文たち

アンドリュー・ガムリー(Andrew Gumley)の論文を読む女性
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アンドリュー・ガムリー(Andrew Gumley)のプロフィール

アンドリュー・ガムリーさんは、ひとことで言うと、「こころが大きく揺らいだ人が、どうすればもう一度、自分との関係を結び直せるのか」を研究してきた心理学者です。現在は、イギリス・スコットランドのグラスゴー大学で心理療法の教授を務めており、臨床心理士としても登録されています。大学の公式プロフィールでは、精神病、つまり幻覚や妄想などを含む重いこころの不調を経験した人への心理的支援を研究する国際的な研究者として紹介されています。

この方の研究テーマは、なかなかまっすぐで、そしてやさしいです。中心にあるのは、統合失調症や精神病を経験した人の再発予防、回復、心理療法、そして「自分への思いやり」です。なんというか、こころが嵐にあったあと、「はい、元気出して!」と雑に励ますのではなく、「まずは濡れた毛布を乾かしましょう。話はそれからです」と、順番を大事にするタイプの研究者ですね。

特に有名なのは、統合失調症の再発予防に対する認知行動療法の研究です。グラスゴー大学の紹介によると、ガムリーさんは、統合失調症の再発を防ぐための認知行動療法について、初めてのランダム化比較試験を開発・評価した研究者とされています。これは心理学研究の世界では、かなり「地味に見えて、じつは大仕事」です。料理でいえば、「なんとなく効きそう」ではなく、ちゃんと分量を測り、火加減を見て、味見までしたような研究です。

また、ガムリーさんは「愛着理論」と精神病からの回復にも関心を持っています。愛着理論とは、ざっくり言えば「人は、安心できる相手との関係によって、こころの土台をつくっていく」という考え方です。ガムリーさんはこの視点を使って、精神病を経験した人が、他者との関係や自分自身との関係をどう回復していくのかを考えてきました。古い紹介資料でも、精神病の理解と回復に愛着理論を応用することが主な関心として示されています。

さらに、セルフ・コンパッション、つまり「自分への思いやり」に関する研究でも名前がよく出てきます。精神病を経験した人は、症状そのものだけでなく、「自分はだめだ」「人に知られたら恥ずかしい」といった恥や自己批判にも苦しみやすい。そこでガムリーさんたちは、回復のなかで思いやりや安心感を育てるアプローチに注目してきました。2009年の「精神病後の回復」に関するプログラムでは、思いやりを育てるトレーニングをもとに、抑うつの改善や自分への思いやり、助けを求める力を高めることが目指されています。

肩書きだけ見ると、教授、臨床心理士、研究代表者……と、ちょっと近寄りがたい「学術界の重装備ナイト」みたいに見えます。でも研究内容を見ていくと、かなり人間くさいです。ガムリーさんが見ているのは、診断名というラベルだけではありません。「その人が何に傷つき、何を恥じ、どんな関係の中で少しずつ回復していくのか」という、こころの生活感そのものです。

現在もグラスゴー大学の精神病研究グループで中心的な役割を担っており、重いメンタルヘルスの問題を抱える人への心理療法や、当事者の経験を研究に生かすことにも関心を持っていると紹介されています。

まとめると、アンドリュー・ガムリーさんは、「精神病からの回復」を、薬や診断だけでなく、人間関係、自分へのまなざし、恥、安心感、思いやりといった面から見つめてきた心理学者です。こころが折れた人に向かって「強くなれ」と言うのではなく、「折れたところにも、ちゃんと手当ての仕方がある」と研究で示そうとしてきた人。そんな印象のある研究者です。こころの救急箱に、包帯だけでなく、あたたかい毛布まで入れておくような先生ですね。

参考文献・確認先:グラスゴー大学:Andrew Gumley 公式プロフィール / Google Scholar:Andrew Gumley 論文・引用情報 / PubMed:Andrew Gumley 関連論文 / ORCID:Andrew Gumley 研究者情報

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

アンドリュー・ガムリー(Andrew Gumley)の研究から学べること

アンドリュー・ガムリーさんの研究から学べることは、ひとことで言うと、「心の回復は、症状を消すことだけではなく、その人が“自分の人生に戻っていく道”を一緒につくること」だと思います。

ガムリーさんは、イギリスのグラスゴー大学で心理療法を研究している臨床心理学者です。大学の公式プロフィールでは、精神病体験のある人への心理的支援を研究する国際的な研究者として紹介され、統合失調症の再発予防に向けた認知行動療法の無作為化比較試験を早くから行った人物とされています。

ここで言う「精神病体験」とは、かなりざっくり言えば、現実の受け取り方が大きく揺れる体験のことです。たとえば、誰かに見張られているように感じる、聞こえないはずの声が聞こえる、周りの人の言動が自分に向けられているように感じる、などです。もちろん、こうした体験は本人にとって、とても怖く、混乱しやすいものです。心の中で非常ベルが鳴りっぱなしになり、しかも警備員さんまで慌てて廊下を走り回っているような状態です。

ガムリーさんの研究の大事なところは、こうした体験を「ただ症状として片づける」のではなく、その人がどのように意味づけ、どのように不安になり、どのように回復していくのかを丁寧に見ようとするところです。グラスゴー大学の研究紹介でも、精神病からの回復に関わる感情の調整、対人関係、発達、認知や行動の土台を研究していると説明されています。

つまり、ガムリーさんは「症状が出ました。薬です。終了です」という一本道ではなく、「その人は何を怖がっているのか」「どんな関係の中で安心できるのか」「どうすれば再び生活に戻れるのか」を見ているわけです。これは、心の修理工場というより、人生の道案内に近い感じがあります。

ガムリーさんの研究から学べる一つ目のことは、「再発を防ぐには、早めに小さな変化に気づくことが大切」ということです。

心の不調は、ある日いきなり大爆発するように見えることがあります。でも実際には、その前に小さなサインが出ていることがあります。眠れなくなる。人に会うのが怖くなる。考えがぐるぐる止まらなくなる。ちょっとした出来事が大きな脅威に感じられる。こうした変化は、心が「そろそろ整備が必要です」と出している点検ランプかもしれません。

ただし、この点検ランプに気づいたとき、「また悪くなるんだ。もう終わりだ」と思うと、不安がさらに燃料を追加してしまいます。心のガソリンスタンドで、間違えて不安を満タンにしてしまう感じです。だから大切なのは、「サインに気づくこと」と「それを破滅の予告にしないこと」です。

ガムリーさんの研究では、精神病体験の再発を、単なる症状の再出現としてではなく、本人がそのサインをどう受け止めるか、どれほど脅威として感じるかも重要な視点になります。再発への恐れが強すぎると、その恐れ自体が心を追いつめることがあります。つまり、「また調子を崩すかも」という不安が、心の中で拡声器を持ってしまうのです。

二つ目の学びは、「回復には、人との関係が深く関わっている」ということです。

心が不安定なとき、人は孤立しやすくなります。誰にもわかってもらえない気がする。迷惑をかけたくない。変に思われたくない。そうして少しずつ人との距離ができていく。でも、孤立は心の部屋を狭くします。窓を閉め切った部屋みたいに、空気が重くなっていきます。

ガムリーさんの研究関心には、精神病からの回復における対人関係の土台も含まれています。これはとても大事です。人は、ひとりで全部を抱えて回復するわけではありません。安心できる支援者、家族、友人、医療者、仲間との関係の中で、少しずつ「自分はまだ大丈夫かもしれない」と感じられるようになります。

ここでポイントなのは、「励ませばいい」という話ではないことです。

「大丈夫大丈夫!気にしすぎ!」と言われても、本人の不安は消えません。むしろ、「いや、こちらは気にしすぎで済まないから困っているんですけど」と、心の中で静かに膝を抱えることもあります。必要なのは、軽い励ましよりも、安心して話せる関係です。「そう感じているんですね」「一緒に整理しましょう」「何が助けになりそうですか」と、本人の体験を否定せずに受け止める関わりです。

三つ目の学びは、「自分への思いやりは、心の回復に関係している」ということです。

ガムリーさんは、アンガス・マクベスさんとともに、自分への思いやりと精神的不調の関係をまとめた研究にも関わっています。この研究では、過去の研究を統合して、自分への思いやりが高いほど、抑うつ、不安、ストレスなどの精神的不調が低い傾向にあることが示されました。

ここでいう「自分への思いやり」は、甘やかしではありません。「つらいから全部サボって寝転び、ポテチを国宝に認定しましょう」という話ではないのです。そうではなく、苦しいときに自分を責めすぎないことです。失敗したときに「自分はもうダメだ」と人格ごと焼却炉に入れないことです。つらい気持ちを「こんなことで苦しむなんて情けない」と切り捨てず、「これはしんどいよね」と認めることです。

精神病体験のある人は、体験そのもののつらさに加えて、「自分はおかしいのではないか」「また悪くなるのではないか」「人に迷惑をかけるのではないか」という二重三重の苦しみを抱えることがあります。そこに自己批判が加わると、心はかなりきつくなります。まるで、重い荷物を持って坂道を登っている人に、後ろから別の荷物をそっと追加するようなものです。いや、そっと追加しないでください。

だからこそ、自分への思いやりは、回復の足場になります。

「また不安になってしまった。だめだ」ではなく、「不安になっている。今は支えが必要な状態なんだ」と見る。
「こんな体験をする自分は終わりだ」ではなく、「こういう体験があっても、自分の人生全体がそれだけで決まるわけではない」と見る。
「迷惑をかけたくないから黙っていよう」ではなく、「早めに相談することは、自分と周りを守る行動かもしれない」と考える。

この見方の転換は、小さいようで大きいです。心の中の裁判官を、少しずつ相談員に交代させるようなものです。

ガムリーさんの研究から、支援の現場で学べることもたくさんあります。たとえば、利用者さんや相談者さんが不安定になっているとき、「症状をなくす」ことだけに目を向けると、その人の人生が見えにくくなります。大切なのは、「その人が何に困っているのか」「どんなサインが出やすいのか」「どういう関わりなら安心できるのか」「本人が自分を責めすぎていないか」を一緒に見ていくことです。

心の支援は、火事が起きてから消火するだけではありません。煙のにおいに早めに気づくこと。逃げ道を確認しておくこと。消火器の場所を本人と一緒に見ておくこと。そして何より、「火が出たら終わり」ではなく、「火を小さくして、また暮らしを立て直せる」と伝えることです。

アンドリュー・ガムリーさんの研究から学べることをまとめるなら、「回復とは、症状との戦いだけでなく、不安とのつき合い方、人とのつながり、自分への思いやりを取り戻す過程である」ということです。

人は、調子を崩したら終わりではありません。再発のサインが出たら、人生が崩壊するわけでもありません。もちろん、つらいものはつらいです。軽く見る必要はありません。でも、早めに気づき、安心できる人とつながり、自分を責めすぎず、必要な支援を受けることで、回復の道はまた作れます。

ガムリーさんの研究は、心にこう語りかけているようです。

「あなたは、症状だけの人ではありません。回復していく物語を持った人です。」

これは、とても大切な視点です。支援とは、人を“問題のかたまり”として見ることではありません。その人がもう一度、自分の生活、自分の関係、自分の希望に戻っていけるように、横で灯りを持つことです。

心の道は、ときどき霧が出ます。足元が見えなくなる日もあります。でも、霧の中でも、小さな灯りがあれば一歩は進めます。ガムリーさんの研究は、その灯りの置き方を教えてくれる研究なのだと思います。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)

アンドリュー・ガムリー(Andrew Gumley)の論文一覧

1.『自分へのやさしさは心の不調とどう関わるのか 自己コンパッションと精神的なつらさをめぐるメタ分析』アンガス・マクベス、アンドリュー・ガムリー(2012)

MacBeth, A., & Gumley, A. (2012). Exploring compassion: A meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathologyClinical Psychology Review, 32(6), 545-552. DOI:10.1016/j.cpr.2012.06.003

「落ち込んだとき、自分にまで冷たくしてませんか?」と、この論文は静かに聞いてきます。MacBeth & Gumley(2012)は、複数の研究をまとめて、セルフ・コンパッションが高い人ほど、うつ、不安、ストレスなどの心の不調が少ない傾向を示しました。つまり“自分へのやさしさ”は、ただの甘やかしではなく、こころを守る力かもしれない。そんな発見に、ちょっと前のめりで読みたくなる一本です。

阿部牧歌(管理人)
阿部牧歌(管理人)
この論文の要約を読む
【論文要約】自分にやさしい人ほど心は壊れにくい? 自己コンパッション研究の重要ポイント
【論文要約】自分にやさしい人ほど心は壊れにくい? 自己コンパッション研究の重要ポイント
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