エイミー・M・ゴードン(Amie M. Gordon)の論文一覧:「ありがとう」が恋を長持ちさせる?感謝・睡眠・人間関係の“心のメンテナンス室”をのぞく心理学さんぽ
エイミー・M・ゴードン(Amie M. Gordon)のプロフィール
エイミー・M・ゴードンさんは、アメリカの心理学者で、主に「人と人との近い関係は、どうすればよい状態で続いていくのか」を研究している方です。現在はミシガン大学で社会心理学の准教授を務め、親密な人間関係、幸福感、健康、睡眠、感謝、思いやりなどをテーマに研究しています。ミシガン大学の研究室紹介でも、彼女の研究は「私たちのもっとも身近な関係を形づくる、感情・考え方・身体的な要因」を探るものだと説明されています。
ひと言でいうと、ゴードンさんは「恋人や夫婦の関係を長持ちさせる、心の小さなネジ」を探している研究者です。たとえば、「ありがとう」と感じることが、恋愛関係をどう守るのか。相手に感謝されていると感じると、人はもっと相手を大切にしようとするのか。眠れていない日は、なぜか恋人へのやさしさが財布の小銭くらい減ってしまうのか。そんな、日常にひそむ“人間関係あるある”を、心理学の虫めがねでじっくり観察しています。
有名な研究の一つに、親密な関係における感謝の役割を調べた論文があります。この研究では、感謝の気持ちが単なる「いい話」で終わるのではなく、恋人やパートナーとの関係を保つ力につながることが検討されています。つまり、感謝は心の飾りではなく、関係をきしませないための潤滑油みたいなものなのですね。ドアがギギギと鳴る前に、そっと差す油です。
また、ゴードンさんは睡眠と人間関係のつながりにも関心を持っています。よく眠れなかった翌日は、いつもなら笑って流せる一言にも「ん?」と心のセンサーが過敏になることがありますよね。ゴードンさんの研究領域は、そうした「体のコンディションが、人へのやさしさや反応にどう影響するのか」という部分にも広がっています。心だけを見ているのではなく、睡眠や健康といった体の状態も含めて、人間関係を立体的に見ているところが特徴です。
学歴としては、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で心理学を学び、その後、カリフォルニア大学バークレー校で社会・人格心理学の博士号を取得しています。専門分野は、社会心理学、人格心理学、健康心理学などにまたがっており、まさに「人間関係の台所から寝室、職場の空気まで見に行く研究者」という感じです。
エイミー・M・ゴードンさんの研究がおもしろいのは、「愛とは何か」「幸せとは何か」という大きなテーマを、ものすごく日常的な場面から考えているところです。「ありがとうと言えているか」「相手に大事にされていると感じているか」「ちゃんと眠れているか」。こうした小さなことが、実は人間関係の土台をこっそり支えている。まるで、立派な建物を支える目に見えない杭のようです。
参考文献・確認先:ミシガン大学:エイミー・M・ゴードン 公式プロフィール / ミシガン大学社会調査研究所:エイミー・M・ゴードン 紹介ページ / Google Scholar:エイミー・M・ゴードン 論文・引用情報 / PubMed:エイミー・M・ゴードン 関連論文

エイミー・M・ゴードン(Amie M. Gordon)の研究から学べること
エイミー・M・ゴードンさんの研究から学べることは、ひとことで言うと、「人間関係は、愛情だけでできているのではなく、睡眠、感謝、気づかい、体調、日々の小さな反応で毎日こねられている」ということです。
ゴードンさんは、ミシガン大学の心理学の研究者で、親しい人間関係がどのように形づくられるのかを研究しています。大学の公式プロフィールでは、親しい関係に影響する社会的な考え方、感情、体のしくみなどを調べており、特に感謝、相手の立場に立つこと、相手への反応のよさなどを扱っていると紹介されています。つまり、恋人、夫婦、家族、友人といった関係の中で、「なぜうまくいく日とうまくいかない日があるのか」を、心理学の虫めがねで見ている人です。
まず面白いのは、ゴードンさんが「人間関係」を、ふわふわした愛の物語だけで見ていないところです。
もちろん、愛情は大事です。めちゃくちゃ大事です。でも、愛情があれば何でも解決、というわけではありません。寝不足の日に、相手の何気ない一言が妙に刺さることがあります。「え、今の言い方なに?」と心の中で小さな裁判所が開廷する。いつもなら笑って流せることが、睡眠不足の日には、なぜか国家的事件になります。布団の不足は、平和条約を破ります。
ゴードンさんは、睡眠と人間関係のつながりにも注目しています。2021年の総説では、健康な人々における睡眠と社会的関係の研究をまとめ、睡眠と人間関係が互いに関係し合うことを整理しています。つまり、よく眠れないと人間関係がぎくしゃくしやすくなり、人間関係が悪いと眠りにも影響する可能性がある、ということです。
ここから学べる一つ目のことは、「人間関係の問題に見えて、実は睡眠の問題かもしれない」ということです。
これは、かなり使えます。
たとえば、恋人や家族や同僚にイラッとしたとき、「この人とはもう根本的に合わないのでは?」と大きな結論に走りたくなることがあります。でも、その前に一度こう聞いてみたいのです。
「私は昨夜、ちゃんと寝たか?」
これ、地味ですが強い問いです。寝不足の脳は、世界を少し攻撃的に見ます。相手の言葉の角が、いつもより鋭く見える。ちょっとした沈黙が「不機嫌なのかな」に見える。返信が遅いだけで「嫌われた?」と心の中の警報装置が鳴る。睡眠不足の日の心は、雨の日の紙袋みたいに破れやすいのです。
もちろん、すべてを睡眠のせいにしてはいけません。本当に話し合うべき問題もあります。でも、寝不足のまま重大会議を開くと、議長が感情、書記が不安、傍聴席に怒り、というなかなか危険な布陣になります。大切な話ほど、まず寝る。これは人間関係の隠れた知恵です。
二つ目の学びは、「感謝は、人間関係の潤滑油になる」ということです。
ゴードンさんは、感謝や相手への前向きな反応が、親しい関係をどう支えるのかも研究しています。ミシガン大学の紹介でも、感謝や反応のよさなど、相手を大切にする心の働きが、親しい関係にどう関わるかを研究しているとされています。
感謝というと、「ありがとうを言いましょう」という道徳の時間みたいに聞こえるかもしれません。でも、関係の中の感謝は、ただの礼儀ではありません。相手のしてくれたことに気づく力です。
たとえば、家族がごみを出してくれた。恋人が話を聞いてくれた。同僚がさりげなくフォローしてくれた。こういう小さなことは、慣れると背景になります。最初は「ありがたい」と思っていたことが、いつの間にか「まあ、普通でしょ」になる。感謝の視力が落ちてくるわけです。老眼ならぬ、ありがた眼の低下です。
でも、相手の小さな親切に気づけると、関係の空気は変わります。「してもらって当然」から「助かっている」に変わる。すると、相手も「自分の行動はちゃんと届いているんだ」と感じやすくなります。人間関係は、見えない貯金箱のようなところがあります。感謝は、その貯金箱に小銭を入れる行為です。地味ですが、積み重なると大きい。
三つ目の学びは、「親しい関係ほど、相手への反応が大切」ということです。
人は、自分の話に相手がどう反応してくれるかをよく見ています。うれしいことを話したとき、相手が「へえ」で終わるのか、「それ、よかったね!どんな感じだったの?」と乗ってくれるのか。しんどいことを話したとき、相手がすぐに正論を投げてくるのか、「それはきつかったね」と受け止めてくれるのか。反応の違いは、関係の温度をかなり変えます。
親しい関係では、豪華なプレゼントより、日々の反応のほうが効くことがあります。もちろん、プレゼントも嬉しいです。甘いものならなお嬉しいです。でも、普段の会話でずっと雑に扱われていると、たまのプレゼントだけでは心の帳尻が合いません。関係は記念日だけでなく、平日の夕方に試されます。洗濯物をたたみながらの一言、帰宅後の「おつかれ」、相手の話を最後まで聞くこと。そういう小さな反応が、関係の骨組みになります。
ゴードンさんの研究は、「人間関係は二人でつくるもの」だという視点を大切にしています。研究紹介でも、親しい関係を形づくる感情、社会的な考え方、体の要因を、相互作用の中で見ていることが示されています。
ここから四つ目の学びが出てきます。「関係がうまくいかないとき、相手だけでも自分だけでもなく、“二人のあいだ”を見ること」です。
たとえば、けんかになったとき、「相手が悪い」と思うのは簡単です。相手の悪いところは、なぜか高画質で見えます。4Kです。細部までくっきりです。一方、自分の言い方や疲れや思い込みは、なぜかモザイクがかかります。人間の心のカメラは、なかなか都合よくできています。
でも、関係は片方だけでできていません。自分の疲れ、相手の不安、睡眠不足、仕事のストレス、感謝の不足、話を聞く余裕のなさ。そういうものが、二人のあいだにたまっていきます。けんかは、突然の雷に見えて、実は湿気がずっとたまっていた結果かもしれません。
だから、関係をよくしたいときは、「どちらが正しいか」だけではなく、「何が二人のあいだをしんどくしているのか」を見ることが大切です。
五つ目の学びは、「見えない体の状態が、思いやりを邪魔することがある」ということです。
ゴードンさんの研究室では、親しい関係に影響する見えにくい要因として、体の調整の乱れや睡眠などにも注目しています。 これはとても現実的です。私たちは、自分の性格だけで人と関わっているわけではありません。疲労、空腹、寝不足、体調不良、ストレス。こういうものが、相手へのやさしさの蛇口をきゅっと締めてしまうことがあります。
お腹が空いているとき、人は聖人でいるのが難しいです。寝不足のとき、人は仏像のように穏やかではいられません。体がしんどいと、相手の話を聞く余裕も減ります。つまり、思いやりは心だけの問題ではなく、体のコンディションにも支えられているのです。
これは、自分にも相手にもやさしい見方です。
「あの人は冷たい」と決めつける前に、「疲れているのかもしれない」と考える。
「自分は思いやりがない」と責める前に、「今日は余裕がなかったのかもしれない」と見る。
もちろん、だから何を言っても許されるわけではありません。でも、背景を見れば、責めるだけではなく整える方向に進めます。
日常に置き換えるなら、ゴードンさんの研究は、かなり実用的です。
大切な人と関係をよくしたいなら、まず睡眠を軽視しない。感謝を言葉にする。相手のよいニュースにちゃんと反応する。しんどい話には、すぐ解決策を投げずに、まず受け止める。自分がイライラしているときは、「相手が悪い」の前に、「自分の電池は残っているか」を見る。
この「自分の電池チェック」は、かなり効きます。
電池が3%のスマホで動画編集をしようとすると落ちますよね。人間も同じです。電池3%の心で、人間関係の難しい会話をしようとすると、途中で感情が強制終了します。だから、話し合いは充電してから。ごはんを食べて、少し寝て、落ち着いてから。これは逃げではなく、関係を守るための準備です。
エイミー・M・ゴードンさんの研究から学べることをまとめるなら、「親しい関係は、大きな愛だけでなく、小さな体調管理と小さな感謝と小さな反応で守られている」ということです。
愛情は大事です。でも、愛情だけを掲げていても、睡眠不足、感謝不足、会話不足、余裕不足が積み重なると、関係はきしみます。反対に、派手なことはなくても、よく眠り、相手のしてくれたことに気づき、話に反応し、疲れている日は無理に重大会議をしない。それだけで、関係の床板は少しずつ丈夫になります。
ゴードンさんの研究は、心にこう語りかけているようです。
「人間関係は、特別な日だけでなく、ふつうの日の扱い方で育ちますよ。」
これは、とてもやさしくて、同時に現実的な知恵です。恋愛も夫婦関係も友情も、ドラマの名場面だけで続くわけではありません。むしろ、寝不足の日に言いすぎないこと。相手の小さな親切を見逃さないこと。自分の疲れを相手への攻撃に変えないこと。そういう地味な一手が、関係を守ります。
人間関係は、巨大な花束ではなく、毎日の水やりに近いのかもしれません。水を忘れる日もあります。葉っぱがしおれる日もあります。でも、気づいたときにまた水をあげればいい。
エイミー・M・ゴードンさんの研究は、その水やりの大切さを、睡眠や感謝や思いやりという身近な道具で教えてくれる研究なのだと思います。

エイミー・M・ゴードン(Amie M. Gordon)の論文一覧
1.『感謝は、愛を長持ちさせる。親密な絆を守り育てる“ありがとう”の力』エイミー・M・ゴードン、エミリー・A・インペット、アレクサンドル・コーガン、クリストファー・オヴェイス、ダッチャー・ケルトナー(2012)
Gordon, A. M., Impett, E. A., Kogan, A., Oveis, C., & Keltner, D. (2012). To have and to hold: Gratitude promotes relationship maintenance in intimate bonds. Journal of Personality and Social Psychology, 103(2), 257–274. DOI: 10.1037/a0028723
この論文、ひと言でいえば「恋愛における“ありがとう”は、ただの礼儀ではなく、関係を長持ちさせる接着剤かもしれない」という研究です。恋人から大切にされていると感じる人ほど、相手への感謝も高まり、その感謝が「もっと大事にしよう」という行動につながる。つまり感謝は、愛の棚にそっと置かれた万能メンテナンス工具。恋がギシギシ鳴る前に、読む価値ありです。

